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映画『007/リビング・デイライツ』解説&感想 シリアスな4代目ボンド登場の第15作

どうも、たきじです。

 

今回は1987年公開の英米合作映画『007/リビング・デイライツ』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/美しき獲物たち』に続く第15作です。

 

 

↓ 前作の解説&感想はこちら

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作品情報

タイトル:007/リビング・デイライツ

原題  :The Living Daylights

製作年 :1987年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ジョン・グレン

出演  :ティモシー・ダルトン
     マリアム・ダボ
     ジョー・ドン・ベイカー
     アンドリアス・ウイスニウスキー
     アート・マリック
     ジョン・リス=デイヴィス
     ジェローン・クラッベ
     ジョン・テリー
     ロバート・ブラウン
     デスモンド・リュウェリン
     キャロライン・ブリス

上映時間:130分

 

解説&感想(ネタバレあり)

12年間、7作にわたってジェームズ・ボンドを演じたロジャー・ムーアが前作をもって降板。本作では4代目ジェームズ・ボンドのティモシー・ダルトンが登場します。前作公開時58歳だったムーアに対し、本作公開時のダルトンは41歳ということで、かなり若返りました。


同時に第1作から23年間、14作にわたってマネーペニーを演じたロイス・マクスウェル(第14作『美しき獲物たち』公開時58歳)が降板し、26歳のキャロライン・ブリスにバトンタッチしています。こうした世代交代もあり、前作までとはガラリと印象の変わった作品となっています。


一方で、バーナード・リーの死去に伴って第13作『オクトパシー』からMを演じているロバート・ブラウンや、第2作『ロシアより愛をこめて』からQを演じ続けているデスモンド・リュウェリンは続投。これによりシリーズとしての連続性は保たれています。

 


さて、ボンドに話を戻しましょう。演じる役者が変わればボンドのキャラクターにも当然変化があります。前任のムーアのボンドはユーモラスな印象が強かったのに対し、ダルトンのボンドは一転してシリアス。ボンドが随分と真面目になったなという印象です。


ムーアのボンドはティーンエイジャーのように性欲が溢れ出る感じでしたが、それに比べるとプレイボーイ感も控えめですね。悪く言えばキャラクターが弱くなったとも言えますが、私はこのシリアスなボンド像が好きです。6代目のダニエル・クレイグのボンドにも通じるものを感じます。


また、これまでのボンド俳優と比べて、ダルトンはいい意味で、ちゃんと演技している印象を受けます。正の感情も負の感情も表現された、人間的でリアルな演技はなかなかいいです。


アクションの方は、ムーアの頃からスタントマンが演じているシーンも少なくなかったので、ダルトンになって見違えるように変わったという印象はありません。

 


とはいえ、プレタイトル・シークエンスやクライマックスのアクションはなかなか印象に残ります。


プレタイトルでは、ジブラルタルへのパラシュート降下に、カーチェイスで派手に幕開け。最後には再びパラシュートで女性のいるボートへ着地し、女性といい感じに。ダルトン=ボンドの登場シーンとしていい感じに決まっています。


クライマックスでは、飛行機での攻防。飛行機の後部が開き、投げ出されそうになりそうな状態での敵との格闘は手に汗握るアクションでした。このシーンはスタントも相当すごいですね。


といったところで、ティモシー・ダルトンによるシリアスなボンド像は気に入りましたし、アクションもそれなりに見どころがありました。一方で、全体としてストーリーは特筆すべきところがなく平凡と言わざるをえません。


また、メインのボンドガールもあまり魅力的には映りませんでした。どちらかというと添え物的なボンドガールでしたが、終盤に急に勇ましくなるのもちょっと違和感がありました(笑)。

 

最後に

今回は映画『007/リビング・デイライツ』の解説&感想でした。シリアス路線の作風は好きなので、ティモシー・ダルトン演じる比較的真面目なボンド像は肯定的に捉えているものの、ストーリーが弱く、あまり満足度は高くない作品でした。

 

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映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』解説&感想 19年ぶりに製作されたシリーズ第4作

どうも、たきじです。

 

今回は2008年公開のアメリカ映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』の解説&感想です。インディ・ジョーンズ・シリーズの第4作にあたります。

 

 

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作品情報

タイトル:インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

原題  :Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull

製作年 :2008年

製作国 :アメリカ

監督  :スティーヴン・スピルバーグ

出演  :ハリソン・フォード
     ケイト・ブランシェット
     カレン・アレン
     シャイア・ラブーフ
     イゴール・ジジキン
     レイ・ウィンストン
     ジョン・ハート
     ジム・ブロードベント

 上映時間:127分

 

解説&感想(ネタバレあり)

時代は50年代に

インディ・ジョーンズ・シリーズは1981〜1989年にかけて3作が公開され、本作で4作目。実に19年ぶりの続編ということになります。


過去3作は1935〜38年という時代設定でしたが、本作は第3作から19年経過した1957年の設定。悪役も時代に合わせてナチス・ドイツからソ連に変わっています。


50年代の空気感はかなり強調されている印象。オールディーズが流れる中、オープンカーの若者達がはしゃぐオープニングは『アメリカン・グラフィティ』を思わせます(本シリーズの生みの親であり、本作でも製作総指揮を務めたジョージ・ルーカスの監督作品)。


他にも、核実験、ロズウェル事件、赤狩りといった時代を象徴する出来事や、革ジャングループとスタジャングループの対立のようなあるあるネタ(?)など、50年代要素がたっぷり。当時を生きたアメリカ人だと、こういう要素の面白さもひとしおでしょうね。

 

スピード感と緊張感抜群のアクション

さて、本シリーズの一番の魅力はやはりアクションということになるでしょう。本作でも、大きなアクションシークエンスが3つ用意されています。すなわち、米軍基地の倉庫でのソ連兵からの逃走劇、大学周辺でのバイクチェイス、ジャングルでのクリスタル・スカルの争奪戦です。


それぞれ、しっかり趣向を凝らしたアクションが楽しめますね。私が本作を鑑賞するのは劇場公開時に見て以来なので15年ぶりということになりますが、それぞれしっかり記憶に残っていました。


序盤の米軍基地の倉庫のシークエンスでは、倉庫内を縦横無尽に駆け巡るアクションが楽しいです。この倉庫は第1作のラストシーンに登場した倉庫で、機密の保管庫という位置付けですね。第1作のキーアイテムだった聖櫃もしっかり"カメオ出演"していて、古いファンを楽しませてくれます。


中盤のバイクチェイスは、インディの息子マットの大きな見せ場。大学の構内をたっぷり使って興奮のアクションを見せてくれます。マットの運転するバイクとKGBの車との間でインディが行ったり来たりするとか、マーカス・ブロディの銅像の首が取れるとか、ユーモアもたっぷり。最後には、図書館の学生に向かって「真の考古学者は図書館などに用はない!」と言うパンチラインも決まっています。


そして終盤では、ジャングルを舞台にインディ達とソ連兵達がクリスタル・スカルを奪い合う大規模なアクションが楽しめます。車両を跨いでキャラクターがあちこちに、クリスタル・スカルもあちこちに、マットとスパルコはフェンシングのように戦い、やがて車から取り残されたマットはターザンのようにツルを渡り仲間に合流。この辺りはキャラクターごとの時間軸をうまく同期させたアクション設計が見事でした。


いずれのアクションも、動く車やバイクの上で展開しているので、スピード感と緊張感が抜群でした。

 

異星人をフィーチャー

さて、本作のタイトルにもあるクリスタル・スカルは異星人(別次元の生命体)の頭蓋骨であり、クライマックスでは頭の無い骸骨と一体となります。そして最後には実体となって宇宙船のようなもので飛び去っていきます。本シリーズにオカルト要素は欠かせませんが、これはどうでしょうね。


過去作では宗教や伝説、歴史などと紐づいたオカルト要素が盛り込まれていましたが、本作はどちらかというとSF的。異星人というのはスピルバーグやルーカスらしい題材ではありますが、本シリーズの核である考古学との親和性は低いので、違和感を持たざるを得ませんでした。


それもあってか、上述のジャングルでのアクションが終わった後は、やや尻すぼみな印象を受けてしまいますね。遺跡に入るまでの謎解き的な面白さもそれほどでもないですし。

 


キャラクター際立つ演出

過去3作で育て上げてきたインディ・ジョーンズというキャラクターの魅力。登場シーンでは、これを際立たせる演出が見事に決まっています。


ソ連兵によって車のトランクに押し込められているインディ。まずは帽子だけがトランクから投げ出され、やがてインディも外に出されます。空からの構図で撮られ、インディの顔は映りません。


続いて、地面に落ちた帽子と、インディの足元のショット。帽子を拾って、それを被る姿が、車に映るシルエットで描写されます。こうしてたっぷりともったいぶった後にようやくインディの顔が映し出され、テーマ曲のモチーフが流れます。


19年ぶりの続編における主人公の登場シーンとしては最高の演出ですね。トレードマークの帽子をうまく使い、インディのキャラクターを際立たせています。


ラストシーンも然り。インディの結婚式において、風に飛ばされたインディの帽子を手に取るマット。これをマットが被ることで、代替わりが示唆されて終わるのかと思わせたところで、帽子を奪い取るインディ。「まだまだ」と言わんばかりにインディは帽子を被ります。


そして流れ出すテーマ曲。ジョン・ウィリアムズは偉大なり。こんなラストシーンで締められると、些細な不満などどうでもよくなってしまいます。

 


俳優陣について

主演のハリソン・フォードは本作公開時65歳。過去3作の頃に比べるとどうしても歳を取ってしまっています。が、まさかさらに15年後に、80歳でインディを演じることになるとは…。


本作の悪役はケイト・ブランシェット。やはり演技力のある人が悪役を演じると作品が締まります。冷徹なスパルコを貫禄たっぷりに演じていました。


第1作でヒロインのマリオンを演じたカレン・アレンの再演は嬉しいところ。明るく勝気なキャラクターそのままに好演していました。


そして、インディの息子マットを演じたシャイア・ラブーフ。『トランスフォーマー』シリーズに本作と、立て続けに大作に出演していた、当時の若手の有望株の1人でしたね。その後は素行の悪さもあってか、今一つブレイクしきれませんでしたが。

 

最後に

今回は映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』の解説&感想でした。19年を経て製作された続編ながら、インディのキャラクター、ジョン・ウィリアムズのテーマ曲、そしてアクションの魅力は健在。やや尻すぼみな印象はあれど、過去作同様に楽しい作品でした。

 

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映画『007/美しき獲物たち』解説&感想 ロジャー・ムーアの集大成の第14作

どうも、たきじです。

 

今回は1985年公開の英米合作映画『007/美しき獲物たち』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/オクトパシー』に続く第14作です。

 

 

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作品情報

タイトル:007/美しき獲物たち

原題  :A View to a Kill

製作年 :1985年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ジョン・グレン

出演  :ロジャー・ムーア
     タニア・ロバーツ
     グレース・ジョーンズ
     アリソン・ドゥーディ
     パトリック・マクニー
     クリストファー・ウォーケン
     パトリック・ボーショー
     デヴィッド・イップ
     ロバート・ブラウン
     デスモンド・リュウェリン
     ロイス・マクスウェル

上映時間:131分

 

解説&感想(ネタバレあり)

映画を盛り上げるアクション

本作は特別素晴らしい作品というわけではないものの、個人的にはロジャー・ムーアがジェームズ・ボンドを演じた作品の中で1番好きな作品です。


本作のプレタイトル・シークエンスはスキーアクション。007シリーズにおけるスキーアクションとしては、第6作『女王陛下の007』が最初ですが、その後も何度か登場し、この頃には定番にと言っていいくらいになっていますね。


ボンドは片方のスキー板を銃撃で壊され(これは『女王陛下の007』でもやっていました)、ロープを使って敵のスノーモービルを奪い、スノーモービルが破壊されるとその残骸を使ってスノーボードのように滑ります。そして、最後は照明弾を敵のヘリに撃ち込んで墜落させます。雪山の環境をたっぷり使ったアクションはなかなか迫力があり、見どころ十分でした。


スノーボードのように滑るシーンでは、唐突にザ・ビーチ・ボーイズの「カリフォルニア・ガールズ」が流れます(エイドリアン・ベイカーがギデア・パーク名義でカバーしたバージョン)。ムードをぶち壊して笑いに走ったこの演出は好きになれないのですが、今見るととても興味深いですね。


というのも、今でこそこのシーンでは誰もがスノーボードを連想する(というかスノーボードそのもの)わけですが、この演出は「ボンドが雪の上でサーフィンしてるよ笑」というもの。つまりこの頃はスノーボードというものが一般的ではなかったということが想像できます。実際、本作のこのシーンがスノーボードが一般人にも認知されるきっかけになったようです。ちなみにこのシーンでスタントマンを務めたのはSIMSスノーボードの創設者でスノーボードのパイオニアであるトム・シムスです。

 


少し話が逸れましたが、このプレタイトル・シークエンスをはじめとして、本作は要所要所のアクション・シーンが映画を盛り上げます。


まあ、エッフェル塔からパラシュート降下した敵の女殺し屋メイ・デイを追うカーチェイスはちょっと演出過剰でしょうか。ボンドの車が大ジャンプを決めたり、ルーフが吹っ飛んでオープンカーになったり、クラッシュで車体の後ろ半分がなくなったり…。いや、そもそもパラシュートの滞空時間長すぎ?とか、野暮なツッコミは良くないですね(笑)。


中盤では乗馬アクションがあったり、エレベーターでの緊迫感溢れるアクションがあったり。エレベーターのシーンに続く、ハシゴ車でのカーチェイスはなかなかのスタントを見ることができます。


クライマックスは飛行船とゴールデン・ゲート・ブリッジのメインケーブルの上でのアクション。高所恐怖症の人だと目が回ってしまいそうなスタントで、こちらもなかなか見応えがあります。飛行船にぶら下がるというモチーフは『魔女の宅急便』を思い出しますね(本作の方が4年早い)。

 

シリアス路線のストーリー

本作のストーリーはシリーズの他の作品に比べると荒唐無稽さを抑えたシリアス路線。そこに適度なユーモアもあり、私の好みとしてはいいバランスです。


また、本作は競馬がストーリーに絡んできます。近代競馬の発祥の地であるイギリスの競馬場の描写も含め、競馬好きとしてもなかなか興味深いところでした。ただ、ゾリンが競走馬に遠隔制御でステロイドを注入していたという前半の話が後半に一切つながらないのは残念なところでした(ゾリンがステロイド実験で生まれた天才であったということにつながるだけ)。


ゾリンの陰謀は、人工的に大地震を起こしてシリコンバレーを水の底に沈めて壊滅させ、IC市場を独占しようというもの。劇中では、世界のICの8割がシリコンバレーで生産されていると言及されます。シリコンバレーがそんなにシェアを占めていた時代か、と興味深く見ていましたが、調べてみると半導体の世界シェアは当時すでに日本がアメリカを抜いていたようですね。現在ではそれがまた様変わりしていますが…。


さて、本作は全体的にシリアス路線で悪くないストーリーでしたが、やはりちょっとしたツッコミどころはいろいろありますね。例えば唐突に登場するソ連の女性エージェントとかね。しかもなぜかボンドと日本風のスパでお楽しみ。ちょっと笑っちゃいました。


敵の詰めが甘いのも相変わらず。せっかくボンドを追い詰めたのに、回りくどい殺し方をしようとして取り逃がすというのはもはやシリーズのお約束ですね。本作ではボンドを車に閉じ込めて湖に沈めたり、エレベーターに閉じ込めて炎上させたりしますが、無事にボンドに脱出されています(笑)。

 

見どころ十分の俳優陣

歴代最多の7作にわたってボンドを演じたロジャー・ムーア(イーオン・プロダクションズが関わっていない、番外編的な作品である『ネバーセイ・ネバーアゲイン』を入れればショーン・コネリーも7作)。本作は彼がボンドを演じた最後の作品となったわけですが、有終の美と言ってよい作品ではないでしょうか。

 

本作公開時、ムーアは58歳。なかなか高齢ですが、彼が築き上げたエレガントかつユーモラスなボンドを最後まで変わらず演じています。


また、マネーペニーを演じたロイス・マクスウェルも本作で降板。シリーズ第1作から、ボンドの俳優が変わってもマネーペニーを演じ続けたマクスウェル。第1作公開時は35歳でしたが、本作公開当時はムーアと同じ58歳でした。


マネーペニーは、ボンドに好意を持ちつつも、ボンドからはリップサービスで交わされるとい役柄。ボンド役のムーアが降板して次作からティモシー・ダルトンに若返るのに合わせての降板はいいタイミングでしょう。


本作では最後ということもあってか、ドレスアップしてオフィスを飛び出します。毎度ほぼワンシーンの出演ながら、シリーズのお約束でしたから寂しくなりますね。

 


本作のキャストで一番の注目は、悪役のゾリンを演じたクリストファー・ウォーケンでしょう。彼のような実力派の俳優が出演すると、それだけで作品に箔が付きます(オスカー受賞済み俳優の007への出演はウォーケンが初めて)。


やはりウォーケンは微妙な表情の芝居が素晴らしいですね(その究極はオスカー受賞の『ディア・ハンター』ですが)。含みを持った笑顔が最高でした。


ボンドガールの方はどうでしょう。メインのボンドガールのタニア・ロバーツは青い瞳とブロンド(天然ではない)が印象的ではありますが、そこまで強い印象は残らず。


ロバーツよりも強い印象を残すのは、敵のメイ・デイを演じたグレイス・ジョーンズでしょう。モデルや歌手を主として活躍していた彼女ですが、堂々たる演技でしたね。ゾリンに裏切られ、やがてボンドにすべてを託して爆死するという最期も壮絶でした。


また、端役ではありますが、敵のジェニー・フレックスを演じたアリソン・ドゥーディも印象に残ります。本作のボンドガールでは1番美しいでしょう。彼女は後に『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』で、初代ボンドのショーン・コネリーと共演しています。


インディ・ジョーンズと言えば、本作でボンドに協力するCIAのエージェントを演じたデヴィッド・イップは『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』に出演しています。そう言えば、同作でも主人公の味方キャラとして登場しますが、あっさり殺されてしまう役柄でしたね。

 

最後に

今回は映画『007/美しき獲物たち』の解説&感想でした。シリアス路線のストーリーや、見どころ十分のアクションと俳優陣が私好みの作品でした。ロジャー・ムーアによるジェームズ・ボンドの集大成として、有終の美を飾ったと言って良い作品でしょう。

 

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映画『オールウェイズ』解説&感想 スピルバーグ演出は控えめなロマンティックファンタジー

どうも、たきじです。

 

今回は1989年公開のアメリカ映画『オールウェイズ』の解説&感想です。スティーヴン・スピルバーグ監督作品です。

 

youtu.be

 

作品情報

タイトル:オールウェイズ

原題  :Always

製作年 :1989年

製作国 :アメリカ

監督  :スティーヴン・スピルバーグ

出演  :リチャード・ドレイファス
     ホリー・ハンター
     ジョン・グッドマン
     ブラッド・ジョンソン
     オードリー・ヘプバーン

 上映時間:123分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作はスピルバーグ監督自身が大好きな映画『ジョーと呼ばれた男』(1943年)のリメイク作品。同作において、主人公のピートは第二次世界大戦期の空軍パイロットですが、本作では空中消火隊のパイロットに置き換えられています。

 

ピートは消化活動中に同僚のアルを助けますが、ピートの乗る飛行機は炎に包まれます。その事故で死亡したピートは、天使のハップと出会います。そして、ピートはハップから霊体として若いパイロットのテッドを導くように使命を与えられます。その使命を受け入れたピートでしたが、やがて死に別れた恋人のドリンダとテッドが恋に落ちることとなり戸惑います。

 

正直に言って、序盤は少々退屈。ドリンダがドレスに着替え、ピートと踊るシーンも、なんか"いいシーン風"ではありますが、まだ序盤なので2人に感情移入できていませんから、それほど感じ入ることもありません。ピートのような無鉄砲な男に、そもそも魅力を感じませんし。


ピートが死んで、映画がメインの物語に突入してからはそれなりに面白くなります。スピルバーグ監督が惚れ込んでリメイクするだけあって、プロットはよくできています。

 


死んでしまった男が、スピリチュアルな存在として現世の恋人を見守る物語というと、本作の翌年に公開された『ゴースト/ニューヨークの幻』が思い浮かびます。コテコテの娯楽作品に仕上げられた大ヒット作である『ゴースト』に比べると本作は地味な印象ではありますが、ドラマ性や深みという点では本作の方が上でしょう。


死に別れた恋人が新たな恋に落ちる様子を見なければならないのはつらいこと。しかもその相手が、ピートが(霊として)陰ながら育ててきたパイロットなわけですから、なお複雑です。しかしそれを乗り越え、ドリンダの人生を想って別れを告げるラストはなかなか素敵でした。

 

ピートの最後の台詞"That's my girl. And that's my boy."もいいですね。2人の幸せを願う気持ちと、2人を見守ってきた誇らしさのようなものが溢れる台詞だと思います。


『ゴースト』の場合は、男が完全に天に召されていく直前に「愛してる」なんて言い合うわけですよ。今後も女を呪縛し続ける言葉ですよね。これに比べると、本作は随分と大人の結末と言えるかもしれません。


まあ、私は、作品としては『ゴースト』の方が好きなんですけど(笑)。


さて、本作のホリー・ハンターは、美しさもさることながら、感情豊かにドリンダを演じていてとても素敵でした。1993年には『ピアノ・レッスン』でアカデミー主演女優賞に輝くなど、大成した女優さんではありますが、個人的にはもっともっと人気が出てもおかしくなかったと思うんですけどね。


一方で、主演のピート役のリチャード・ドレイファスは、70年代を中心になぜあんなに評価されたのか不思議です(失礼)。いや、悪い役者ではないんですけどね。そこまで魅力を感じないというか。


最後に、忘れてはならないのは、本作はオードリー・ヘプバーンの遺作ということでしょう。天使という役柄で、ワンポイントの出演(正確には2シーン)で、往年の大スターを起用するというのが、なかなか効果的に決まっていました。

 

最後に

今回は映画『オールウェイズ』の解説&感想でした。スピルバーグ監督らしい演出というのはあまり感じられず、物足りなくはあるものの、プロットはなかなか面白く、楽しめる作品ではありました。

 

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映画『ネバーセイ・ネバーアゲイン』解説&感想 007の番外編

どうも、たきじです。

 

今回は1983年公開の米英合作映画『ネバーセイ・ネバーアゲイン』の解説&感想です。007の映画ではありますが、他の007シリーズ作品を製作しているイーオン・プロダクションズは製作に関与しておらず、イーオンの本家007シリーズとは無関係の番外編的な位置付けの作品となります。

 

 

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作品情報

タイトル:ネバーセイ・ネバーアゲイン

原題  :Never Say Never Again

製作年 :1983年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :アーヴィン・カーシュナー

出演  :ショーン・コネリー
     クラウス・マリア・ブランダウアー
     マックス・フォン・シドー
     バーバラ・カレラ
     キム・ベイシンガー
     バーニー・ケイシー
     アレック・マッコーエン
     エドワード・フォックス
 上映時間:134分

 

解説&感想(ネタバレあり)

冒頭述べた通り、本作はイーオンの本家007シリーズとは無関係の作品。そのため冒頭のガンバレル・シークエンスはありませんし、有名なテーマ曲も流れません。


一方で、本家で初代ジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリーがボンドを演じています。コネリーが本家で最後にボンドを演じたのは1971年公開の第7作『ダイヤモンドは永遠に』なので、実に12年ぶりのボンド役ということになります。


本家では30代前半から40代前半までボンドを演じたコネリーが本作では53歳ということで、かなり高齢な印象を受けますが、同年公開の本家007第13作『オクトパシー』でボンドを演じた3代目ボンドのロジャー・ムーアはコネリーよりも3つ歳上。最終的にムーアは58歳までボンドを演じています(6代目ボンドのダニエル・クレイグも第25作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』公開時52歳)。


本作はコネリーがボンドを演じた本家の第4作『サンダーボール作戦』と原案が同じであるため大筋は同作と共通性がありますが、細部はかなり異なりますので新しい作品として見ることができます。


上述の通り、本作と同年に本家の『007/オクトパシー』が公開され、本作は本家に挑む形となったわけですが、興行収入は『オクトパシー』には及びませんでした。ただし、それでも同年の世界興行成績は第4位であり、商業的には大成功と言えるでしょう(『オクトパシー』は第2位)。

 


一方で作品の出来はと言うと、個人的にはとてもいいものとは思えません。


本家の方は『オクトパシー』に至るまでの数作で、かなり大規模で派手なスタントを取り入れてきた中で、本作は公開当時から見ても昔ながらのアクション映画という印象。クライマックスの銃撃戦の締まりのないこと…。


一応、中盤のチェイスシーンは一つの見せ場ではあるでしょうか。バイクによるチェイスという点が本家との差別化ポイントではありますが、それほど目を見張るようなアクションではありません。前のシーンでわざわざバイクを搬入していたのも、ちょっとわざとらしいですよね(笑)。


他に特徴的な要素というと、悪役とのゲーム対決のシークエンスでしょうか。負けるとジョイスティックを介して感電するという危険なゲームですが、いったい何を見せられてるんだという感じでした。そもそもこの手のゲームは初見だと不利すぎでしょ(笑)。


これは当時の流行りに乗っかったんでしょうね。この少し前のシーンではカジノにもアーケードゲームがたくさん並んでいました。公開当時はゲームの進歩が目覚ましかった時代。本作公開の5年前には『スペースインベーダー』、3年前には『パックマン』、公開年には『ゼビウス』がそれぞれアーケードゲームとしてデビューしています。また、公開年には家庭用ゲーム機のファミリーコンピュータ(ファミコン)も発売されています。そんな時代背景あってのこの演出でしょうね。

 

本作で残念なのは、せっかく本家シリーズとは独立した作品なのに、全体の作風としては本家とあまり変わらないところです。シリーズの縛りがない分、もっと大胆な作風で差別化できなかったものでしょうか。


逆に、本家シリーズの独自の要素(原作小説にはない要素)であるブロフェルドの猫や、Qの実験場の描写などを本作は真似てしまっています。これでは、いつものメンバーがいなくて、いつもの曲が流れない劣化版にならざるを得ません。


まあ、ラストシーンは良かったですけどね。仕事を離れ、ドミノと悠々自適に暮らすボンドに、エージェントとして復帰を請うMからの伝言が告げられます。それに対してボンドは「二度と御免だ(Never again)」と言って拒否し、カメラに向かってウインクします。この最終回的なラストシーンは本家にはできないことかもしれませんね。


そしてこの台詞は、コネリーがボンドを演じるのが"Never again"であるという意味も込められています。本作のタイトルは、コネリーに対して彼の妻が言った「(ボンドを演じるのは)二度と御免だなんて言わないで」という言葉に由来するそうですが、今度こそコネリーはもうボンドを演じないと宣言した訳です。


ジェームズ・ボンドのイメージが払拭できず、しばらくは低迷していたコネリーでしたが、本作でボンドとの決別を宣言して4年後、『アンタッチャブル』に出演します。同作でアカデミー助演男優賞を受賞し、再浮上したことはご存知の通りです。

 

さて、本作のメインのボンドガールであるドミノを演じたのはキム・ベイシンガー。色気はありますが、個人的にはそこまで魅力的には映りませんでした。本家の『サンダーボール作戦』でドミノを演じたクローディーヌ・オージェがすごく魅力的だったのでどうしても比較してしまいます。


一方、敵役のボンドガールであるファティマ(バーバラ・カレラ)は良かったですね。コテコテのセクシーさもさることながら、キャラクターが強烈で。ボンドとちゃっかり楽しんだ後で、ボンドを殺そうとする非情さが良いです。ボンドに銃口を向けて、最高の女だったと書き残せなんて命令するのもいいですね。


また、本作でCIAのフェリックス・ライターを演じたのは黒人のバーニー・ケイシー。本家シリーズでは6代目ボンドのダニエル・クレイグ版でジェフリー・ライトが演じましたが、それより前に本作で黒人のフェリックスが誕生していたんですね(ちなみにダニエル・クレイグ版より前は、フェリックス役は1作品ごとに違う役者が演じていました)。


もう1人、本作のキャストで注目したいのは、英国大使館のフォーセットを演じたローワン・アトキンソン。彼がMr. ビーンになる7年前で、20代の初々しい姿を見せています。どこか可笑しい佇まいからは、その片鱗が感じられますね。

 

最後に

今回は映画『ネバーセイ・ネバーアゲイン』の解説&感想でした。ショーン・コネリーのジェームズ・ボンドが楽しめるのはいいものの、本家シリーズには大きく水をあけられた印象。また、せっかく本家シリーズとは独立した作品なのに、全体の作風としては本家とあまり変わらないことも残念でした。

 

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映画『007/オクトパシー』解説&感想 ある意味で平均点な007と言える第13作

どうも、たきじです。

 

今回は1983年公開の英米合作映画『007/オクトパシー』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/ユア・アイズ・オンリー』に続く第13作です。

 

 

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作品情報

タイトル:007/オクトパシー

原題  :Octopussy

製作年 :1983年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ジョン・グレン

出演  :ロジャー・ムーア
     モード・アダムス
     ルイ・ジュールダン
     クリスティナ・ウェイボーン
     カビール・ベディ
     スティーヴン・バーコフ
     ロバート・ブラウン
     ジョフリー・キーン
     デスモンド・リュウェリン
     ロイス・マクスウェル

上映時間:130分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本シリーズは、第10作『私を愛したスパイ』あたりから、毎度プレタイトル・シークエンスで非常に派手なスタントによるアクションを見せるようになっており、作品の見せ場の一つとなっています。


本作ではジェームズ・ボンドが変装して敵基地に侵入し、やがて逃げ出しつつミッション遂行に奮闘する様子を描いており、かなり小慣れた印象でまとまっています。飛行機によるスタント(および特撮)はややリアリティに欠けた過剰演出にも思えますが、オープニングなので挨拶代わりにこれくらいかますのも悪くないか。


本編中も、インドでのカーチェイスや、西部劇ばりの列車アクションなど、アクションシーンはなかなか力が入っていますね。何より目を見張るのは、クライマックス。飛んでいる飛行機の外でのアクションはなかなかの迫力と緊張感です。離陸する飛行機にしがみつくなんてアクションは『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』のトム・クルーズのスタントも有名ですが、本作が元祖でしょう。


アクション以外にも、オークションでの駆け引きや、卵のすり替え、カジノでのイカサマ破りなど、本作のボンドは一流のエージェントらしい活躍を見せます。こういう描写の積み重ねはキャラクター構築においてすごく大事ですね。

 


「かっこいいボンド」が描かれる一方で、荒唐無稽な描写やコミカルな描写は本作でも少なくありません。


サイコロ握りつぶして粉々にする敵の側近の男、半裸で回転刃みたいのを振り回す殺し屋などは、漫画的で荒唐無稽です。


セクシー女性ばかりを集めたオクトパシーの一味も現実離れしてますね(あのユニタードのような謎の衣装も笑)。表向きはサーカス団ということも含め、第3作『ゴールドフィンガー』の空中サーカス団を思い出します。


また、ボンドが、ワニの姿にカムフラージュして潜水したり(これも第3作『ゴールドフィンガー』に登場した、頭に水鳥が付いたシュノーケルを思い出させる)、着ぐるみに身を隠してジタバタしたりといった描写は結構ふざけてますよね(笑)。


極め付けは、ボンドが敵を欺くために道化師に化けるシーン。トレーラーに駆け込んだボンドが道化の姿で出てきますが、衣装だけでなくばっちり白塗りのメイクまでしています。核爆弾の爆発時刻が迫る中で、どんだけ仕上げとんねんと(笑)。


個人的には、シリアス路線の方が好きなので、上記のような描写はふざけ過ぎに映ります。

 

インドのシーンの冒頭、ヘビ使いに変装した協力者のビジャイがボンドへの合図として笛でメロディーを奏でています。この時の奏でられる曲がなんと007のテーマ曲。これくらいの軽いユーモアがちょうどいいです。

 


ビジャイを演じているのは当時現役テニスプレイヤーだったビジャイ・アムリトラジ。ウィンブルドンや全米オープンでベスト8まで行った選手です。敵のテニスクラブに潜入(パート勤務)してバックハンドを覚えたという設定や、カーチェイスシーンでテニスラケットを持って戦うのは、彼を知っていれば笑えるネタです。


それを見ている群衆が、テニスの試合を見ているように首を左右に振るのは、ちょっとふざけ過ぎか(笑)。


さて、本作のメインのボンドガールはタイトルロールのオクトパシー。演じたモード・アダムスは当時最年長のボンドガール(38歳)で、大人の魅力が溢れていました。彼女は第9作『黄金銃を持つ男』でも別の役柄でボンドガール(メインではない)として出演していました。


本シリーズでは、同じ役者が違う役を演じるケースが時々あります。第5作『007は二度死ぬ』でボンドの協力者を演じたチャールズ・グレイが第7作『ダイヤモンドは永遠に』で敵のボスのブロフェルドを演じていたり。


脇役ならまだしも、メインキャラで同じ役者を使い回すのはどうなんでしょう(笑)。

 

最後に

今回は映画『007/オクトパシー』の解説&感想でした。抜きん出て素晴らしいというわけではないものの見どころはそれなりにあり、まずまず楽しめます。いくらかの興奮と、いくらかの荒唐無稽さと、いくらかの笑い。007としてはある意味で平均的な作品と言えるかもしれません。

 

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映画『007/ユア・アイズ・オンリー』解説&感想 現実路線で描かれる第12作

どうも、たきじです。

 

今回は1981年公開の英米合作映画『007/ユア・アイズ・オンリー』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/ムーンレイカー』に続く第12作です。

 

 

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作品情報

タイトル:007/ユア・アイズ・オンリー

原題  :For Your Eyes Only

製作年 :1981年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ジョン・グレン

出演  :ロジャー・ムーア
     キャロル・ブーケ
     ハイアム・トポル
     リン=ホリー・ジョンソン
     ジュリアン・グローヴァー
     ジョフリー・キーン
     ジェームズ・ビリエ
     デスモンド・リュウェリン
     ロイス・マクスウェル

 上映時間:127分

 

解説&感想(ネタバレあり)

ボンドが宇宙に飛び出すなど、かなり荒唐無稽だった前作の反動か、本作はずいぶんと現実路線の作風になっています。Qの目立ったガジェットも登場せず、敵味方の生身のアクションが映画の中心となります。


プレタイトル・シークエンスでは、なかなか派手なヘリコプターアクションを見せてくれます。ボンドの乗るヘリコプターは悪役によって遠隔操作され、ボンドはそれに翻弄されます。ヘリコプターはトリッキーな動きを見せており、撮影にあたったパイロットの腕を感じさせます。


このシーンで登場する悪役は、どう見てもブロフェルドですね。権利関係の大人の事情でブロフェルドやスペクターは登場させられなくなっていたので、名前は一切明かされませんが。

 


序盤のスペインでのカーチェイスもまずまずの出来栄え。ボンドカーのロータス・エスプリは自爆してしまったので、ボンドガールの乗るシトロエン・2CVでチェイスが行われるのも面白いところです。


一番の見せ場はやはり中盤のスキーアクションでしょう。銃撃を交わしながら、バイクで迫る敵から逃げるボンド。ボブスレーが滑る後ろを、スキーとバイクが追走するシーンのスタントは圧巻です。


雪深い町、スキーアクション、ボブスレーというと、第6作『女王陛下の007』を思い出します。映画冒頭でボンドが妻の墓を訪れているのも、ブロフェルドらしき人物が登場するのも、同作へのオマージュでしょうか?(ボンドは同作のラストでトレーシーと結婚するも、ブロフェルドによって彼女を殺される)


妻の墓やブロフェルドらしき人物を出しておきながら、本編には何の関係もなかったことに少しずっこけましたかが、オマージュだと考えるとまだ納得できます。それでも、冒頭で亡き妻に思いを馳せておきながら、女を抱きまくりのボンドにはツッコミを入れたくなりますが(笑)。

 


さて、そんな風にアクションシーンの見せ場はそれなりにある本作ですが、個人的には上述のスキーアクションがピークで、終盤にかけて尻すぼみな印象を受けました。


クライマックスにかけての盛り上がりが今ひとつなんですよね。崖登りのシーンはスリリングではありますが、画的におとなし過ぎてクライマックスには適さないでしょう。テンポも悪くなりますしね。

 

本作のメインのボンドガールはキャロル・ブーケ演じるメリナ。ボンドガールには、とにかくセクシーな女性もいれば、ちょっとアホっぽい女性、敵に近い妖艶な女性など様々。本作のメリナは美しくて知的で落ち着いた女性。個人的にはこのようなタイプが1番ボンドガールにハマるとおもいます。第2作『ロシアより愛をこめて』のタチアナも同じタイプと言えるでしょうか。

 


さて、現実路線の本作ですが、やはりコミカルな要素やツッコミどころはいくつかありますね。


相変わらず敵は回りくどい方法でボンドを殺そうとします。スケートリンクのシーンでは、ご丁寧にアイスホッケーの選手に化けて現れてボンドに襲いかかります(返り討ちにされた3人がアイスホッケーのゴールに押し込まれるたびに掲示板で得点がカウントされていくというギャグも)。


また、悪役に捕まったボンドとメリナは、ロープで縛られて船に引っ張られます。これまた殺すには回りくどい方法です。まあ、こういうのもお約束なのでいいんですけど。


面白いのは、Qの研究室のパスコードの入力音が第10作『私を愛したスパイ』の主題歌になっていること。前作では同じパターンで『未知との遭遇』のメロディーになっていました。このような、作品のムードを壊さない程度の遊び心が好きです。

 

最後に

今回は映画『007/ユア・アイズ・オンリー』の解説&感想でした。荒唐無稽だった前作とは打って変わっての現実路線で、アクションの見せ場もそれなりにありました。作風としては嫌いじゃないのですが、尻すぼみな印象があるのが残念なところです。

 

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映画『名探偵コナン 純黒の悪夢』感想 過剰演出を素直に楽しむ

どうも、たきじです。

 

今回は、2016年公開のアニメ映画『名探偵コナン 純黒の悪夢』の感想です。『名探偵コナン』の劇場版としては第20作にあたります。

 

youtu.be

 

作品情報

タイトル:名探偵コナン 純黒の悪夢

製作年 :2016年

製作国 :日本

監督  :静野孔文

声の出演:高山みなみ
     山崎和佳奈
     小山力也
     池田秀一
     古谷徹
     林原めぐみ
     山口勝平
     緒方賢一
     松井菜桜子
     茶風林
     岩居由希子
     高木渉
     大谷育江
     天海祐希

上映時間:112分

 

感想(ネタバレあり)

コナン映画は推理要素よりアクション要素の方が強い印象のものも少なくないですが、本作は完全にアクションに振り切っていますね。"事件の推理"という要素はなく、公安やFBIを交えた黒の組織との対決のストーリーになっています。


アクションシーンを始めとした過剰演出やツッコミどころも目立ちますが、製作陣は確信犯でやっているでしょうから、こちらも素直に楽しむのが正解でしょうね。


本作のゲストキャラのキュラソーにしても、安室や赤井やコナンにしても、特殊能力を持ったスーパーヒーローの如く人間離れしたアクションを見せます。キュラソーが元太を助けるシーンなんかは、もう笑ってしまいました。


観覧車でのクライマックスは過剰演出でとことん盛り上げていて楽しいですね。安室が爆薬で黒の組織の面々が乗る戦闘ヘリの形を浮かび上がらせ、コナンがサッカーボールの花火で戦闘ヘリの体勢を崩し、赤井がローターを狙撃します。見事に敵を撹乱するのが痛快です。


それにしても、黒の組織は相変わらず目立ちまくっています。停電で真っ暗にしているとは言え、戦闘ヘリで観覧車を破壊するなんてねぇ…。世界中でニュースになるような大事件ですよ(笑)。第13作『漆黒の追跡者』でもそんな感じでしたけどね。


また、キュラソーが5色の光で記憶を失ったり記憶が戻ったりという設定は荒唐無稽に思えます。コナンが5色のシートからそれを見抜くのも、「そんなアホな!」って感じで(笑)。ちょっと無理がありますよね。


キュラソーが黒の組織を裏切るのは予定調和と言ったところでしょうか。映画序盤から、着色されていないキーホルダー(何色にでもなれる)やオセロ(黒が白にひっくり返る)が、それを暗示していました。お酒のキュラソーには5色あるということもまた、彼女は何色にでもなれるのだということを示唆しています。この辺りはなかなかうまいところでした。


ところで、本作冒頭でキュラソーが警察から盗み出したNOCリストは、『ミッション・インポッシブル』(第1作)でもキーアイテムになっていました。ベルリンでリースリングがジンに殺害される現場が、『ミッション・インポッシブル』冒頭のプラハのシーンの現場とよく似ているのはオマージュかな?

 

最後に

今回は、映画『名探偵コナン 純黒の悪夢』の感想でした。完全にアクション映画に振り切っていて、過剰演出やツッコミどころも目立つものの、それさえ受け入れればそれなりに楽しめる作品でした。

 

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★コナン映画の感想

映画『007/ムーンレイカー』解説&感想 ボンドが宇宙へ!?荒唐無稽な第11作

どうも、たきじです。

 

今回は1979年公開の英米合作映画『007/ムーンレイカー』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/私を愛したスパイ』に続く第11作です。

 

 

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作品情報

タイトル:007/ムーンレイカー

原題  :Moonraker

製作年 :1979年

製作国 :イギリス、フランス、アメリカ

監督  :ルイス・ギルバート

出演  :ロジャー・ムーア
     ロイス・チャイルズ
     マイケル・ロンズデール
     リチャード・キール
     コリンヌ・クレリー
     ジョフリー・キーン
     バーナード・リー
     デスモンド・リュウェリン
     ロイス・マクスウェル

 上映時間:126分

 

解説&感想(ネタバレあり)

映画冒頭のプレタイトル・シークエンス、ジェームズ・ボンドはパラシュートなしで飛行機から落とされます。落下しながら空中で繰り広げられる格闘。このオープニングの手に汗握るアクションは今見ても素晴らしい出来で、本作の大きな見どころと言えるでしょう。


が、このオープニング以外に本作の見どころが何かと言われると、少々困ってしまいます。


本作は、何より脚本がひどいです。


本作でのボンドのミッションはスペースシャトルのような宇宙船「ムーンレイカー」がハイジャックされた事件を追うこと。


ボンドはまず、アメリカにあるムーンレイカーの製造元に向かいます。そこで書斎に忍び込み金庫を開けると、ヴェネツィアのとあるガラス工房の情報が。そこでボンドはヴェネツィアに飛んでガラス工房に忍び込み、そこで秘密の研究所を発見します——。


と、ボンドはいつも通り世界を飛び回って事件を追うわけですが、行動の動機づけが弱過ぎじゃないですか?薄い手掛かりで世界を飛び回り、都合よく次の手掛かりが見つかるという繰り返しはご都合主義以外の何ものでもありません。

 


また、前作とは違って、本作はかなり荒唐無稽な内容で、ルイス・ギルバート監督の悪いところが出てしまっています。


その最たるものは、ボンドが宇宙に飛び出すというストーリーでしょう。本作公開の2年前の1977年に『未知との遭遇』や『スター・ウォーズ』(第1作)が公開され、本作の公開の2年後の1981年にはスペースシャトルが初飛行するなど、宇宙に注目が集まる中でそれにのっかったのでしょう(ドラックスの秘密の研究所に入室するためのパスコードの入力音は『未知との遭遇』のあの5音!)。


本作の悪役ドラックスは、宇宙ステーションを密かに建造。そこに選ばれし男女だけが移住して、地球にいる人類は全滅させようという壮大な計画を企てています。


ボンドも彼らと共にムーンレイカーで宇宙に飛び出し、宇宙空間でレーザーガンによる銃撃戦が繰り広げられるなど、随分とSFに振り切った内容になっています。


ボンドが宇宙ステーションの電波妨害装置を破壊した後のシーンは笑ってしまいましたよ。米軍が宇宙ステーションを察知すると、その瞬間に攻撃隊が出動し、宇宙船で宇宙ステーションに駆けつけます。パトカーで出動するくらいのフットワークの軽さ(笑)。


宇宙ステーションの回転が止まり、ステーション内が無重力になるシーンも可笑しかったです。俳優達がゆっくり動くという力技で無重力を表現しているのが(笑)。


そんな感じで、全体的に『スター・ウォーズ』のようなクオリティは持っていないので、どうしても宇宙ブームに乗っかった真似事のように見えてしまいます。

 


他にも、ボンドを狙う殺し屋達も、本作の荒唐無稽な印象を強めています。相変わらずトリッキーな手段でボンドを殺そうとして失敗するんですよ。


東洋人の殺し屋チャンは、ボンドの乗った宇宙飛行の訓練装置を暴走させてボンドを追い詰めます。別のシーンでは、なぜか剣道の防具に身を包み、奇声を上げながら竹刀でボンドに挑みます。このシーンは不意を突かれて爆笑してしまいましたよ。


チャンはボンドに高所から落とされて頭からピアノに突き刺さります。ピアノから足だけが突き出たビジュアルが可笑しいですね。『犬神家の一族』を意識してるとしたら合格です(笑)。


他にも、わざわざ棺桶に隠れて登場して銃撃してきたりとか、ヘビに殺させようとしたりとか、相変わらず回りくどいやり方でボンドを殺そうとする殺し屋が目立ちます。まあ、これはシリーズのお約束のような側面もありますが。

 


本作は他にもコミカルな要素やツッコミどころが満載。


ヴェネツィアでは、ゴンドラがホバークラフトのようになって陸上を走行。周りの人々のみならず、鳩や犬までも二度見するというギャグシーンになっています。前作のロータス・エスプリの上陸シーン以上にふざけていましたね。


前作で登場した不死身の殺し屋のジョーズは、本作でも引き続きボンドを追いかけます。ロープウェイを素手で止めるという現実離れしたパワーを見せますが、本作では偶然出会った女性と恋に落ち、お茶目な姿を見せています。2人のロマンスは、いったい何を見せられているのか、という気になります(笑)。


最後にはボンドの味方になるジョーズ。爆発寸前の宇宙ステーションから脱出しようとするボンドとボンドガールを助けます。宇宙ステーションに残されたジョーズと女性にとってはかなり絶望的な状況ですが、ボンドは「彼らも助かるさ、地球は遠くない」なんて言って自分を正当化しています(笑)。さすがに適当過ぎて笑ってしまいました。まあ、2人は実際に助かったみたいですが。


ボンドがドラックスのアジトに乗り込むシーンで、続々と女性達が登場するシーンも笑ってしまいましたね。みんな胸元が開いたセクシー衣装なのがまた(笑)。肝心のボンドガールはセクシー衣装じゃないのはどういうことでしょう(笑)。今までのパターンなら、敵に捕まったところでセクシー衣装になるはずですが。本作のボンドガールはかなり印象が薄いのはそのせいでしょうか(笑)。


2人がドラックスの野望を打ち砕き、地球に帰還するラストシーンでは、地球で「米英初のジョイント飛行」なんて言われています。これはあっちの意味とのダブルミーニングになっていて面白いですね。Qの「再突入でしょう」なんて一言も。


もしかして本作は、コメディ映画と割り切って見れば、結構面白い作品だったりするのかも?

 

最後に

今回は映画『007/ムーンレイカー』の解説&感想でした。オープニングは傑出した出来栄えながら、脚本のご都合主義と荒唐無稽なところが目立つ作品でした。

 

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映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』解説&感想 大人のためのクレヨンしんちゃん

どうも、たきじです。

 

今回は、2001年公開のアニメ映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』の解説&感想です。アニメ『クレヨンしんちゃん』の劇場版としては第9作にあたります。

 

 

作品情報

タイトル:クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲

製作年 :2001年

製作国 :日本

監督  :原恵一

声の出演:矢島晶子
     ならはしみき
     藤原啓治
     こおろぎさとみ
     真柴摩利
     林玉緒
     一龍斎貞友
     佐藤智恵
     津嘉山正種
     小林愛
     関根勤
     小堺一機

上映時間:89分

解説&感想(ネタバレあり)

良い映画というのは、観終わった後にもいろんなシーンを思い返して咀嚼するので、記憶にもしっかり残りがちです。本作も例に漏れません。私が本作を鑑賞したのは、本作が公開されて間もない頃にテレビ放送されて以来なので、約20年ぶりということになりましょうか。驚かされるのは、見覚えのないシーンがほとんどないということです。


冒頭、野原一家は1970年の大阪万博の会場にいます。やがて暴れ出す怪獣。ひろしは、ウルトラマンのような姿の巨大ヒーロー"ひろしSUN"に変身して怪獣と戦います。


実は野原一家は20世紀博というテーマパークを訪れていて、そこで自分達が主演する特撮を撮影していたという設定。映画冒頭から、舞台設定の説明なしで繰り広げられるアクションは、プレタイトル・シークエンスとして見事な導入です。


ここで注目したいのは、とあるひろしの台詞。怪獣によって破壊されたソ連のパビリオンを見て、「ソ連館が崩壊したー!」と叫びます。大阪万博から21年後の1991年にソ連は崩壊することになるわけで、それを意識したユーモアですね。子供には分からないネタを放り込んできたこの台詞で、本作が大人にも向けて作られていることを確信させられます。

 

それは本編のストーリーからも明らか。ケンとチャコは、現実の21世紀に失望し、人々が心を持って生きていた20世紀を取り戻そうと企てています。ケンが率いる組織はイエスタデイ・ワンスモア。直訳すると「昨日よ、もう一度」となる組織名は彼らの理念と合致しますし、1973年にリリースされたカーペンターズの大ヒット曲のタイトルというのがまた絶妙です。


彼らは、20世紀博を入口として大人達を洗脳し、20世紀の郷愁に浸って生き続けようとしています。このようなストーリー設定もさることながら、全編にわたる昭和のノスタルジックな描写の数々は、公開当時の父母世代の心を掴むものになっていますね。私自身はこの世代よりも20年ほど後の世代ですが、ケンによって作られた永遠に夕焼けの世界には不思議なノスタルジーを感じます。今夜はカレーだという母の声、蕎麦屋の出前、酒屋の配達、オート三輪——。運転するひろしの目から自然と涙が溢れる演出もぐっときました。


大人の心を締め付ける描写の多い本作において、その最たるものは、ひろしの半生を描いたモンタージュでしょう。初恋、失恋、就職、妻との出会い、子の誕生、マイホームの購入、そして仕事でへとへとになって帰宅する自分を出迎えてくれる家族との何気ない日常の幸せ——。


このシーンは公開当時もかなり話題になりました。若い頃に見ても感動しましたが、やはりこのシーンは家庭を持った今見ると余計に刺さる刺さる。「父ちゃん、オラが分かる?」と聞くしんのすけに対し、絞り出すように「ああ」と答え、泣きながら黙って抱きしめるひろしの姿には、どうしても涙腺が緩んでしまいます。

 

そして、ケン達の企みを阻止しようと、野原一家が鉄塔を登るクライマックス。「つまらん人生だったな」と吐き捨てるケンに対し、ひろしは食い下がり、「俺の人生はつまらなくなんかない。家族がいる幸せをあんた達にも分けてあげたいくらいだぜ!」と言います。これは上記のモンタージュを受けた台詞として見事に決まっています。


最後に塔を登りきったしんのすけは、家族と一緒にいたい、大人になりたい、綺麗なお姉さんとお付き合いしたい、と「未来を生きたい」気持ちを叫びます。


20世紀に閉じこもろうとするケンとチャコに対し、野原一家の目は未来に向いています。昔夢見たような21世紀ではなかったとしても、ここまで築きあげてきた何気ない日常の幸せを守りながら、自分達で未来を作っていこう——。そんな想いが感じられました。


しんのすけによって計画を阻止されたケンとチャコは、鉄塔から飛び降りようとします。しかし、彼らの足元にあった巣から飛び出してきた鳩に威嚇され、それをきっかけにチャコに迷いが生まれ、彼女は「死にたくない」と座り込むのです。


野原一家に続き、またも未来のために必死に生きる家族(鳩)が、彼らの計画を阻止するというのは良い結末でした。「また家族に邪魔された」というケンの台詞が無くても、それは十分に伝わるので、個人的にはこの台詞は不要だったと思いますが。

 

と、こうして見ていると、本作は"大人も"楽しめる作品というより、"大人が"楽しめる作品という気がします。子供にとっては、中盤のバスのチェイスシーンのような楽しいシーンが続く方が楽しめるでしょうからね(逆に大人目線で見ると、このシーンは少々だれる)。


子供向けアニメの劇場版で、ここまで大人向けに振り切った作品にするとは、製作陣はなかなか肝が据わっていますね。原恵一監督は、次作『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』と併せて、「クレヨンしんちゃんの映画は感動的」というイメージを作りあげました。

 

さて、公開当時に父母世代の心を掴んだ本作ですが、現代の父母世代には響きにくくなっているという話も聞きます。ひろしは、30代半ばで2人の子に恵まれ、春日部にマイホーム、マイカーを持ち、東京の商社の係長。公開当時は、日本の平均的な一家の主に見えたひろしですが、現代の日本ではハイスペックに見えてしまう。ひろしが享受する"何気ない日常の幸せ"は、"勝ち組のぜいたくな幸せ"に見えてしまう、と。


この20年でOECD各国の平均賃金が20%程度上昇しているのに対し、日本は横ばい。相対的に日本人は貧しくなっています。商社の係長のような収入なんてない、結婚したくてもできない、マイホームやマイカーが欲しくても買えない、という人は増えているでしょう(それ自体を望まない人も増えていますが)。


こんな風に、社会の変化によって過去の作品の見え方が変わってくるというのは、なかなか興味深いことです。本作が大好きな私としては残念なことではあるのですが…。

 

最後に

今回は、映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』の解説&感想でした。時代が変わって受け手の印象に多少の変化はあれど、大人に向けられたストーリーやノスタルジックな描写に心を掴まれる作品です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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↓ クレヨンしんちゃん×原恵一監督の第2作

映画『007/私を愛したスパイ』解説&感想 派手なアクションが楽しめる第10作

どうも、たきじです。

 

今回は1977年公開の英米合作映画『007/私を愛したスパイ』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/黄金銃を持つ男』に続く第10作です。

 

 

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作品情報

タイトル:007/私を愛したスパイ

原題  :The Spy Who Loved Me

製作年 :1977年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ルイス・ギルバート

出演  :ロジャー・ムーア
     バーバラ・バック
     クルト・ユルゲンス
     リチャード・キール
     キャロライン・マンロー
     バーナード・リー
     デスモンド・リュウェリン
     ロイス・マクスウェル

 上映時間:125分

 

解説&感想(ネタバレあり)

イギリス、ソ連両国の原子力潜水艦が消息を断ち、イギリスのスパイのジェームズ・ボンドが調査に当たりますが、ソ連の女スパイのアニヤと鉢合わせします。両国のスパイ同士で競り合いながら、そしてやがては協力しながら真相を追うという展開はなかなか面白いです(アニヤが本作のメインのボンドガール)。


しかし、アニヤはソ連一番の諜報部員という設定のはずが、彼女の行動からは一流という雰囲気がほとんど感じられないのは残念なところ。物語が進むほど、ほとんど添え物のようになってしまいます。最後は敵に捕まり、無駄にセクシーな衣装になったりします(いや無駄ではないか笑)。

 


まあ、それはいいとして、本作の一番の見どころはこれまでにないくらいに派手になったアクションシーンでしょう。


プレタイトル・シークエンスでは、『女王陛下の007』以来のスキーアクションを見せてくれます。このシークエンスのクライマックスではスキーで崖からジャンプしてパラシュートを開くまでをワンカットで見せます。このような大規模なスタントはシリーズで初めてではないでしょうか。パラシュートが開いた瞬間にテーマ曲が流れる演出も効いていますし、パラシュートのユニオンジャックがまたニヤリとさせてくれます。


本編中のカーチェイスもこれまでより派手さを増している印象です。爆薬の積まれたサイドカーの爆発はダイナミックですし、ボンドカーに並走する形で敵のヘリコプターが飛ぶショットも迫力がありました。


本作のボンドカーはロータス・エスプリ。後ろにセメントを噴射したり、水中で潜水艇になったり、ミサイルを発射したりと、ギミックも豊富です。ビーチに上陸するシーンはコミカルになりすぎてあまり好きではないですが。


集団での派手な銃撃戦が行われるクライマックスは『007は二度死ぬ』を思い起こさせます。監督が同じルイス・ギルバートであることもあってか、本作は『二度死ぬ』とストーリー構成が似ていますね。


『二度死ぬ』では、アメリカとソ連の宇宙船が、それぞれ悪役によって乗員もろとも捕捉されますが、本作ではイギリスとソ連の原子力潜水艦が同じように捕捉されます。また、クライマックスでは、悪役に捉えられていた乗員を解放して共に戦います。

 


本作の悪役はストロンバーグという海洋学者ですが、『二度死ぬ』を始め初期作品で何度も登場したボンドの宿敵ブロフェルドに置き換えることもできそうなキャラクターです。権利関係の大人の事情で、この頃はブロフェルドを映画に出せなかったわけですけど。


007シリーズでルイス・ギルバートが監督を務めたのは、第10作の本作の他に第5作『007は二度死ぬ』と第11作『ムーンレイカー』がありますが、両作はシリーズの中でもかなり荒唐無稽な作品でした。これらに比べると、本作は荒唐無稽さが比較的抑えられている印象です。

 

スケール感のある派手な演出という監督の持ち味は出しつつ、荒唐無稽さが抑えられていて、シリアス寄りの作風の方が好きな私としては良かったです。


悪役によって送り込まれる殺し屋のジョーズは、漫画的なキャラクターではありますが、強烈な印象を残します。何をやっても死ぬことなく、どこまでも追いかけてくるのが怖いですね。登場作品で死なず、作品をまたいで追いかけてくる刺客は彼が初めてでしょう。


こういうキャラクターを見ると、まるでターミネーターのよう、と形容したくなりますが、『ターミネーター』の公開は本作の8年後ということになります。

 

最後に

今回は映画『007/私を愛したスパイ』の解説&感想でした。大満足というわけではないですが、これまでにないくらいに派手になったアクションシーンが楽しい作品です。ルイス・ギルバート監督にしては荒唐無稽さが抑えられているのも個人的には好感でした。

 

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映画『007/黄金銃を持つ男』解説&感想 コメディ要素やツッコミどころ満載の第9作

どうも、たきじです。

 

今回は1974年公開の英米合作映画『007/黄金銃を持つ男』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/死ぬのは奴らだ』に続く第9作です。

 

 

↓ 前作の解説&感想はこちら

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作品情報

タイトル:007/黄金銃を持つ男

原題  :The Man with the Golden Gun

製作年 :1974年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ガイ・ハミルトン

出演  :ロジャー・ムーア
     ブリット・エクランド
     モード・アダムス
     エルヴェ・ヴィルシェーズ
     クリフトン・ジェームズ
     リチャード・ロー
     スーン=テック・オー
     バーナード・リー
     デスモンド・リュウェリン
     ロイス・マクスウェル

 上映時間:124分

 

解説&感想(ネタバレあり)

ロジャー・ムーアがジェームズ・ボンドを演じた作品は、比較的コメディ色が強い作品が多い印象ですが、本作は特にその印象が強い作品です。なんというか、結構ふざけてますよね(笑)。ツッコミどころも満載です。


その最たるものは、本作の悪役であるスカラマンガに乳頭が3つあるという設定。これはふざけてますよね。本作のタイトルは「第3の乳頭を持つ男」の方が適切ではないでしょうか(笑)。


彼の第3の乳頭が大写しになる登場シーンもずっこけてしまいましたが、ボンドがスカラマンガになりすますために偽の乳頭をつけるというのはもう笑ってしまいました。プールでわざとらしくシャツを脱いで、相手もそれを見て反応するのがなんとも可笑しいです。毎作品で様々なガジェットを提供するQですが、本作で提供するのは偽の乳頭というのがまた(笑)。


また、映画序盤には、スカラマンガの黄金の銃弾をアクセサリーとしてヘソに付けた踊り子が登場。彼女を懐柔し、お腹にキスをして口で銃弾を取ろうとするボンド。ここは完全にコメディのノリになっています(笑)。


敵がボンドを殺そうとするシーンにしてもそうですね。なぜか置物の力士が動き出し、スカラマンガの側近のニック・ナックもどこかの部族のような姿に変装してボンドに襲いかかります。なぜ力士?なぜこんな回りくどい襲い方?とツッコミたくなります。ボンドが力士のまわしをきつく締めることで、力士が痛がるというのもね(笑)。いや、そうはならんでしょ…。


中盤ではボンドが道場へ。当時、ブルース・リーの影響でカンフーが流行っていたことにあやかって東洋の武術をフィーチャーしたのでしょうが、だらだらと続く空手道場のシークエンスは、何を見せられてるんだ?という気分になってしまいました(ボンドだけ道着が左前になっているのはミス?演出?)。そもそも、ここではタイのバンコクを舞台にしているのに、相撲やら日本風の道場やらをフィーチャーするのはどうなのか。


仰々しく現れた相手を、反則技(不意打ちで股間蹴り)で軽く倒すというのは、後の『レイダース』の有名なシーンを思い出させますね。武道としては、このような反則技で相手を倒すのはいかがなものか、となりますが、この場合は生きるか死ぬかなのでそんなことは言ってられませんね。

 


また、前作でもコメディ・リリーフとして登場したルイジアナの保安官が本作にも登場します。前作同様、本作でもストーリーの流れをぶった斬るのでテンポが悪くなり、私は好きにはなれません。ボンドと合流して一緒にカーチェイスするくだりはまだいいのですけどね。


このカーチェイスのくだりでは、車が360°回転しながら川を飛び越えるというスタントを披露していますが、ここでは何とも間抜けな効果音が付けられていて、なぜかギャグシーンのようになっています。


そして、メインのボンドガールのグッドナイトまでも、本作ではお笑い担当になっています。ボンドに憧れを抱いている諜報部員のグッドナイトですが、ボンドとベッドインしたところで、スカラマンガの愛人アンドレアが登場。グッドナイトはシーツの中に隠され、やがてはクローゼットに押し込まれます。


後のシーンでは敵を尾行しようとしてまんまと見つかって拉致されたり、お尻で太陽エネルギー変換装置のスイッチを推してしまってボンドを窮地に陥れたり、敵の技師を液体ヘリウムの中に落としてしまい大爆発の原因を作ったりと、トラブルメーカーとして描かれています。


スカラマンガに拉致された後には、なぜか水着姿になっているのも笑えますが、これはまあ一つのお約束ですね。


このように、本作はコミカルな要素やツッコミどころが満載なので、その辺を好意的に受け止められるかで評価が分かれるところでしょう。個人的にはシリアス路線の方が好きなのですが、ボンドガールがぞんざいに扱われる感じは新鮮で楽しめました。

 


さて、本作で特筆すべきは、悪役のスカラマンガを演じているのがクリストファー・リーというところでしょう。リーは007の原作者のイアン・フレミングの義理のいとこにあたります。


クリストファー・リーと言えば、イギリス映画『吸血鬼ドラキュラ』のドラキュラ伯爵役。アメリカ映画『魔人ドラキュラ』のベラ・ルゴシと共にドラキュラ俳優の双璧ですね。晩年に出演した『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのサルマン役や『スター・ウォーズ』新三部作のドゥークー伯爵役でさらに名を上げた印象があります。


シリーズ初期の作品では有名俳優が悪役を演じている作品は多くないので、リーの出演は本作の見どころの一つと言えるでしょう。


本作ではQのガジェットが鳴りを潜めていますが、一方でスカラマンガの方がQ顔負けのガジェットを見せてくれます。車は飛行機に変形、黄金銃は万年筆やらライターやらによる組み立て式、使用する銃弾も黄金仕様というこだわり様です。


また、スカラマンガの側近のニック・ナック役は小人症の俳優エルヴェ・ヴィルシェーズ。190cm以上の長身のリーとの対比も面白いところです。

 

最後に

今回は映画『007/黄金銃を持つ男』の解説&感想でした。ロジャー・ムーアがジェームズ・ボンドを演じた作品の中でも際立ってコミカルな要素やツッコミどころが満載の本作。その辺を好意的に受け止められるかで評価が分かれるところでしょう。

 

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映画『ミッション:インポッシブル3』解説&感想 小洒落た雰囲気にまとまった第3作

どうも、たきじです。

 

今回は2006年公開のアメリカ映画『ミッション:インポッシブル3』の解説&感想です。大ヒットスパイアクションシリーズの第3作です。

 

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作品情報

タイトル:ミッション:インポッシブル3

原題  :Mission: Impossible III

製作年 :2006年

製作国 :アメリカ

監督  :J・J・エイブラムス

出演  :トム・クルーズ
     フィリップ・シーモア・ホフマン
     ヴィング・レイムス
     ビリー・クラダップ
     ミシェル・モナハン
     サイモン・ペッグ
     ジョナサン・リース=マイヤーズ
     ケリー・ラッセル
     マギー・Q
     ローレンス・フィッシュバーン

上映時間:126分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本シリーズは5作目までは毎回監督が異なります。前作はジョン・ウー監督のアクの強い演出で個性的な作風になっていましたが、本作では監督がJ・J・エイブラムスへと変わり、随分と小洒落た雰囲気にまとまった印象です。


前作が公開された2000年以降、2002年に『ボーン・アイデンティティー』、2004年に『ボーン・スプレマシー』が公開されるなど、スパイ映画にある種の革命を起こしたボーン・シリーズが始まっています。本作でIMFの内部事情や、イーサンと組織との絡みが描かれたり、時に手ブレするカメラだったりは、ボーン・シリーズを意識した部分もあるのかもしれません。


本作は『ボーン・スプレマシー』や『ボーン・アルティメイタム』には及ばないものの、十分に楽しめる作品ではあります。


序盤から、ファリスの救出作戦での派手なアクションはなかなかエキサイティングです。特に最後のヘリコプターでのチェイスシーン。行く手を阻む風力発電のプロペラ、ファリスの頭に埋め込まれた爆弾、敵のミサイル攻撃、ヘリから落ちそうになる仲間。アクションシーンの緊張感を盛り上げる演出の畳みかけがたまりません。


最も素晴らしいのはバチカンでのデイヴィアン捕獲作戦のシークエンス。綿密な計画、テクノロジーを駆使したスパイアイテム、チームメンバーの連携、それらが合わさって鮮やかにミッションを遂行する様子が楽しいです。それぞれのキャラクターが並行して動き、リアルタイムで進行する臨場感とスリルに酔いしれることができます。こういうシークエンスは、本シリーズの大きな魅力でしょう。

 


序盤や中盤でこうした素晴らしいシークエンスがある一方で、クライマックスは物足りません。スケール感のないこじんまりしたアクションで終わってしまうのが残念です。西塘をイーサンがただ疾走するだけのシーンが、クライマックスで唯一の大きなアクションと言えるかも。だからこのカット、やたら長いのか?(笑)


悪役のデイヴィアンの最期も、格闘の末に車にはねられるというあまりにあっけないもの。私は、血だらけのデイヴィアンが現れるのを最後まで待っていましたよ(笑)。


一方で、デイヴィアン役にフィリップ・シーモア・ホフマンをキャスティングしたのは大正解ですね。どんな役柄もこなす名優ですが、彼のキャリア初期の『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』の時点で、憎たらしい役がハマることは証明済みです。彼の出演が、デイヴィアンというキャラクターの魅力、ひいては本作の魅力を高めていることは間違い無いでしょう。

 

さて、クライマックスの不満点をもう一つだけ挙げるとすれば、イーサンの頭の中に埋め込まれた爆弾の処理。イーサンの身体に電気を流して爆弾を破壊し、意識不明なったイーサンは救急措置で蘇生させる、なんてのは荒唐無稽が過ぎるでしょう。


ストーリーに関しても少し苦言を呈するとすれば、イーサンが結婚するという設定はいかがなものでしょうか。ラビットフットの奪取という目的もあるにせよ、拉致された妻を救うというイーサンの私情が主題になってしまうと、"ミッション"という性質は薄れてしまうので、そこは少しモヤモヤしました。

 

最後に

今回は映画『ミッション:インポッシブル3』の解説&感想でした。ストーリーやクライマックスにやや不満は残るものの、要所要所に素晴らしいシーンも見られ、十分に楽しめる作品でした。

 

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★『ミッション・インポッシブル』シリーズの解説&感想

映画『M:I-2』感想 ジョン・ウー節全開の第2作

どうも、たきじです。

 

今回は2000年公開のアメリカ映画『M:I-2』の感想です。大ヒットスパイアクション『ミッション:インポッシブル』シリーズの第2作です。

 

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youtu.be

 

作品情報

タイトル:M:I-2

原題  :Mission: Impossible 2

製作年 :2000年

製作国 :アメリカ

監督  :ジョン・ウー

出演  :トム・クルーズ
     ダグレイ・スコット
     タンディ・ニュートン
     ヴィング・レイムス
     リチャード・ロクスバーグ
     ジョン・ポルソン
     ブレンダン・グリーソン

上映時間:123分

 

感想(ネタバレあり)

本シリーズは5作目までは毎回監督が異なるので、シリーズでありながら作品ごとに随分と作風が異なります。中でも本作は、ジョン・ウー監督らしい演出が満載で、かなりエッジの効いた作品になっています。


ドラマ性やリアリズムなど二の次。"見せるアクション""かっこいいトム・クルーズ"があればいいのだと割り切っているかのように見えます。


なるほど、それならと、こちらもツッコミを入れながら、割り切って楽しませてもらいました。

 

以下、雑多なツッコミレビューにつき、ご容赦ください。

 

プレタイトル・シークエンスでは、ロッククライミングに興じるイーサン。後のストーリーに全く関係のないシーンです。トム・クルーズのフィジカルを見せたかっただけですね(笑)。


今回の指令はサングラス型のデバイスから。前作ではカセットテープだったのに、たった4年でえらい進歩。そして、お約束のメッセージ自動消滅。燃え上がるサングラスを画面に向けて投げるイーサン。うーん、かっこいい!いや、かっこつけ過ぎて少し鼻につくかも(笑)。そして、ここで早速スローモーション!ジョン・ウー作品のお約束!


そしてタイトルバック。テーマ曲はメタル調にアレンジされています。でも劇中はあまり使われず。もったいない!


続いてイーサンがナイアに接触するシークエンス。互いに離れて意識し合う2人のショット。カットバックで挿入されるのはフラメンコのダンサーのショット。ここでもスローモーション。テンポ遅い!


後のシーンでは2人でカーチェイス。車2台が一緒にスピンしながら、ここでもスローモーション!さすがにこれは意味不明。そしてなぜかキス(笑)。緊張感のないダラダラしたシーンが続きます。そして2人はベッドイン。ん、これは007のノリでは?


ナイアの協力を取り付けたイーサン。敵のアンブローズの元カノであるナイアをアンブローズの元に潜入させたい。ナイアを逮捕すれば、未練たらたらのアンブローズはナイアの身柄を請け出すはず!って都合よすぎでしょ(笑)。

 

アクションシーンでは、2丁拳銃で闘うイーサン。これまたジョン・ウー作品のお約束。監督が変わればイーサンの闘い方も変わるのです。


スローモーションはアクションシーンでも多様。さすがにしつこくて、終盤はうんざりしてしまいました。

 


そして、ジョン・ウーと言えば何といっても。何の脈絡もなくイーサンのいく先に現れる鳩の群れ。無理矢理登場させた感がありましたが、その後も鳩、鳩、鳩!


爆発で燃え上がる炎を背景に、スローモーションでイーサンが登場するシーン。イーサン登場の前に羽ばたく鳩!


イーサンが敵から身を隠して、ドキドキ。そこにも鳩!


もう笑ってしまいました。


バイクチェイスはそれなりに興奮のアクションを見せてくれます。でも、バイクで敵と向き合って走り、そこからジャンプ!には苦笑。


格闘シーンでも無駄な動きの多い"見せるアクション"。前方宙返りして蹴りを入れたり(笑)。


クライマックスのアンブローズとの肉弾戦もしかり。ダラダラ続くプロレス技の応酬。時々挿入されるのは、岩場に打ち付ける波のショット。


最後には、砂に埋もれた銃蹴り上げて、その銃でアンブローズを仕留める。これまたカッコつけ過ぎて鼻につく(笑)。


アンブローズというキャラクターは、イーサン=トム・クルーズと一対一でやり合うには魅力不足かな。イーサンのフリしてナイアに接触するシーンなんて何とも情けないですし。

 

最後に

今回は映画『M:I-2』の感想でした。ジョン・ウー節全開で、シリーズでも異色の本作。割り切って楽しませてもらいましたが、やはり映画としての出来は微妙なところです。

 

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★『ミッション・インポッシブル』シリーズの解説&感想

映画『ミッション:インポッシブル』解説&感想 大ヒットスパイアクションの第1作

どうも、たきじです。

 

今回は1996年公開のアメリカ映画『ミッション:インポッシブル』の解説&感想です。大ヒットスパイアクションシリーズの第1作です。

 

 

作品情報

タイトル:ミッション:インポッシブル

原題  :Mission: Impossible

製作年 :1996年

製作国 :アメリカ

監督  :ブライアン・デ・パルマ

出演  :トム・クルーズ
     ジョン・ヴォイト
     エマニュエル・ベアール
     ヘンリー・ツェニー
     ジャン・レノ
     ヴィング・レイムス
     クリスティン・スコット・トーマス
     ヴァネッサ・レッドグレイヴ
     エミリオ・エステベス

上映時間:110分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作は、日本では『スパイ大作戦』(1966〜1973年)、『新スパイ大作戦』(1988〜1990年)の邦題で放送されたTVシリーズ"Mission: Impossible"の映画版。一応、TV版の続編という位置付けで世界観を共有しているということです。


指令がカセットテープで再生され、自動的に消滅するというのはTV版を踏襲したものですし、あの有名なテーマ曲もTV版の流用です。


本作でジョン・ヴォイトが演じたジム・フェルプスはTV版のリーダー。映画冒頭で彼が指令を受けることで、TV版から映画版へのつなぎになっているのは上手いですね。一方、ラストシーンでは同様のシチュエーションでトム・クルーズ演じるイーサン・ハントに指令のカセットテープが渡されることで、彼が再び任務にあたることが示唆され、映画の余韻を残します(結果的に、これは続編へのつなぎに)。


さて、TV版でリーダーだったジムですが、本作ではIMFを裏切る悪役になっています。これはなかなか大胆なストーリーですよね。実際、TV版でジムを演じたピーター・グレイブスを始め、TV版の関係者には本作に否定的だった人が少なくないようです。


ジムの扱いの是非はさておき、私は本作のストーリーを肯定的に見ています。チームが全滅し、当局から裏切り者と疑われたイーサン。当局を出し抜きながら、うまく立ち回って真の裏切り者を探します。「追われながら追う」というサスペンスの王道ですね。仲間と行動しつつも、本当に信用していいのか怪しい感じも緊張感があって面白いところです。


主軸はイーサンに置きつつも、仲間と協力し、チームで動くことは本シリーズの特徴ですね。スパイ映画シリーズの代表格である007シリーズは、ジェームズ・ボンドの個人プレーがほとんどであることとは対照的です。オープニングのミッションは失敗に終わるものの、巧みなチームプレーにわくわくさせられました。

 


スパイ映画にはつきもののガジェット類は本作でも登場。超小型カメラ付きのメガネや、折り畳むことで爆発するガムなどが活躍します。荒唐無稽なガジェットが登場することの多い007と比べると、割と現実路線のガジェットと言えます。


一方で、精巧なマスクによって他人に変装するとか、CIA本部の内部のセキュリティとかはやや現実離れしている感があります。ただし、これらは映画的ハッタリとして必要なものでしょう。


CIAから本物のNOCリストを盗むために、厳重なセキュリティの部屋に天井のダクトから侵入するシーンは、本作で最も有名なシーン。センサーで検知されている温度、圧力、音というファクターに加え、上でイーサンの体を支えるクリーガー、部屋に戻ろうとしているCIAの技術官の状況がさらに緊張感を演出します。最後に落ちたナイフが机に突き刺さるのもいいですね。


クライマックスでは、味方(イーサンとルーサー)、敵(ジム、クレア、クリーガー)、マックスの一味、CIAの四者を、列車内でうまく動かしてストーリーを展開させています。


そして、イーサンが真相を暴き、CIAの誤解も解けたところでアクションに突入。高速鉄道の外での、スピード感と緊張感の極まるアクションは素晴らしいです。ガムの爆弾の伏線も効いていますし、ここでもテーマ曲が最高の仕事ぶり。ヘリコプターのプロペラがイーサンの目の前ギリギリで止まるのもいい演出です。


いちいち007と比較して悪いですが、同時期の『ゴールデンアイ』や『トゥモロー・ネバー・ダイ』と比較しても、アクションシーンの出来栄えは圧倒的に本作の方が上でした。

 

最後に

今回は映画『ミッション:インポッシブル』の解説&感想でした。サスペンスフルなストーリーと、スピード感と緊張感溢れるアクションが合わさった、スパイアクション映画の良作です。

 

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