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映画『007/死ぬのは奴らだ』解説&感想 3代目ジェームズ・ボンド登場の第8作

どうも、たきじです。

 

今回は1973年公開の英米合作映画『007/死ぬのは奴らだ』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/ダイヤモンドは永遠に』に続く第8作です。

 

 

↓ 前作の解説&感想はこちら

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作品情報

タイトル:007/死ぬのは奴らだ

原題  :Live And Let Die

製作年 :1973年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ガイ・ハミルトン

出演  :ロジャー・ムーア
     ヤフェット・コットー
     ジェーン・シーモア
     グロリア・ヘンドリー
     ジェフリー・ホールダー
     ジュリアス・W・ハリス
     クリフトン・ジェームズ
     デヴィッド・ヘディソン
     バーナード・リー
     ロイス・マクスウェル

 上映時間:121分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作は、3代目ジェームズ・ボンドに就任したロジャー・ムーア主演の第1作となります。007の第6作『女王陛下の007』でジョージ・レーゼンビーを挟んではいるものの、ここまで計6作でボンドを演じたショーン・コネリーのイメージは強く、その中でボンド役を引き受けるというのは相当の覚悟が必要だったろうと想像してしまいます。


ショーン・コネリーのボンドがワイルドで男らしいイメージなら、ロジャー・ムーアのボンドはエレガントで洗練されたイメージ。ショーン・コネリーとは違った演じ方で、独自のボンドを演じています。


また、コネリー=ボンドの外見の特徴の一つであった胸毛(『007は二度死ぬ』では作中の台詞でも言及されていた)は、ムーア=ボンドにはありませんし、コネリー=ボンドが飲む酒の代表格であったマティーニも、ムーア=ボンドはあまり飲みません。


このような、外見やキャラクター設定においても、ショーン・コネリーとの差別化に腐心したことがうかがえます。


一方で変わらないのは女好きなボンド像。本作でも3人の女性と関係を持っています。


本作のメインのボンドガールはジェーン・シーモア演じるソリテール。タロット占いで未来予知する能力を持ったソリテールは、出会ってすぐにボンドにアプローチされます。その後、ソリテールが占うたびに"THE LOVERS(恋人たち)"のカードが出るのには笑ってしまいました。ちょっと笑かしに来てますよね(笑)。

 


敵はボンドを殺すチャンスが何度もありながら、何度も殺し損ねますが、これも終盤は笑ってしまいました。


なかなか撃たなかったり、部屋に蛇を放って殺そうとしたり、スカイダイビングで殺そうとしたり、ワニに食わせようとしたり、サメに食わせようとしたり…。終いには、ボンドに「もっと簡単に済むのに」なんて言われてましたね(笑)。どれだけ動物に殺させたいのよ!


逆に、明らかにコメディリリーフを狙った、ペッパー保安官のシークエンスは全く笑えません。ボンドと敵がボートでチェイスするこのシークエンスは、コメディリリーフのみならず、アクションとしても見せ場であるはず。


しかしながら、このシークエンスでは突然登場するペッパー保安官の視点で描かれるので、ストーリーが突然中断された印象を受けます。本作の主人公はジェームズ・ボンドであり、基本的にボンドの主観で物語が進行します。にもかかわらず、ここでは突然、脇役の視点に切り替わるのです。


これでは、アクションに乗れるはずもありません。しかもそれが10分以上も続き、イライラ。このシークエンスだけで映画の満足度が下がるほどにうんざりしてしまいました。

 


一方で、良かったのは、ジャズ葬の陰でエージェントが殺害されるシーン。ジャズ葬は、ブラスバンドがジャズを演奏しながら遺族と共に行進して死者を弔うという、ニューオリンズ伝統の葬送。異様な空気感の中でエージェントが殺害されて棺に納められ、トランペットの音色を合図にバンドの音楽が明るく変化します(通常は棺を墓地に埋葬した後に明るく変化する)。


参列者全員がグルであるということや、エージェントを殺害した途端に皆が明るく踊り出すという様子が何とも不気味です。2度目のシーンでは殺害の様子は映さず、トランペットの音色で殺害が行われたことを示唆するという演出も良かったです。


それから、本作に登場するガジェット。本作はQが登場しないレアな作品ですが、ガジェットとしては超強力な磁石になる腕時計がメインとして登場します。個人的には、荒唐無稽なガジェットがごちゃごちゃ出てくるよりは、本作のように少数のガジェットにフォーカスした方が好きです。


最後に、Mr.ビッグの右腕として登場するティー・ヒーについて。このキャラクターは、片手が鋼鉄の義手になっていてちょっと漫画的ですね。


敵の陰謀を阻止して一件落着しエンディングへ、と思ったところでティー・ヒーが現れてもう一山。これには意外性がありました。と、言いたいところですが、このパターンはシリーズのお約束みたいになってますね。特にガイ・ハミルトン監督作品はこのパターンが多いです。ボンドも「そろそろあいつ来そうやな」って読んでそうですね(笑)。

 

最後に

今回は映画『007/死ぬのは奴らだ』の解説&感想でした。ロジャー・ムーアが、ショーン・コネリーとは違った魅力でジェームズ・ボンドを演じた第8作。見どころはそれなりにあるものの、ボートのシーンに代表されるように、乗り切れないシーンも少なくない作品でした。

 

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映画『007/ダイヤモンドは永遠に』解説&感想 ショーン・コネリーが再登板した第7作

どうも、たきじです。

 

今回は1971年公開の英米合作映画『007/ダイヤモンドは永遠に』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『女王陛下の007』に続く第7作です。

 

 

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作品情報

タイトル:007/ダイヤモンドは永遠に

原題  :Diamonds Are Forever

製作年 :1971年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ガイ・ハミルトン

出演  :ショーン・コネリー
     ジル・セント・ジョン
     チャールズ・グレイ
     ラナ・ウッド
     ジミー・ディーン
     ブルース・グローヴァー
     パター・スミス
     ブルース・キャボット
     ノーマン・バートン
     バーナード・リー
     デスモンド・リュウェリン
     ロイス・マクスウェル

 上映時間:120分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作は、シリーズの中でさほど評価の高い作品ではないようですが、個人的にはそこそこ好きな作品だったりします。


前作で2代目ジェームズ・ボンドに就任したジョージ・レーゼンビーは1作で降板し、本作では1作限定で復帰したショーン・コネリーがボンドを演じました。レーゼンビーにはレーゼンビーなりの良さがあったと思いますが、やはりショーン・コネリーは魅力が違います。その存在感、セクシーさは格別で華があります。


また、本作のメインの舞台となる都市はラスベガス。高層ホテル、カジノ、サーカスと、舞台設定もまた華やかです。さらには、タイトルにもある通り、キーアイテムとなるのは永遠の輝きを放つダイヤモンド。これがさらに映画を華やかにします。

 


ストーリー展開も悪くありません。


まず、ボンドはダイヤモンドの密輸事件を追います。運び屋のフランクスになりすましてティファニーに接触するシークエンスは見どころの一つ。


指紋を偽装したり、倒れたフランクスと咄嗟にIDをすり替えたりといったくだりは、スパイ映画らしい楽しさがあります。また、フランクスとのエレベーターでの格闘シーンが入ることで、適度な緩急が生まれています。


ストーリーが進むと、次第に大きな陰謀が見えてきて、やがて黒幕としてブロフェルドが現れます。個人的に、これには意外性がありました。


ブロフェルドは映画冒頭にも登場してはいますが、これはてっきり前作からの繋ぎとしての顔出し程度に思っていました。前作のラストで妻を殺されたボンドが復讐を果たし、ブロフェルドが死ぬことで、前作の物語が完結しますからね。


本作のラストで、ブロフェルドは死を迎えたように見えますが、死の瞬間は描かれていません。それに、あのブロフェルドは影武者の可能性もあります。死を明確にしなかったのは今後もブロフェルドの登場の可能性を残すためでしょう。まあ、権利関係の大人の事情で、本作の後、ブロフェルドは映画に出せなくなってしまったわけですけど…。

 


本作でブロフェルドを演じたのはチャールズ・グレイ。第5作の『007は二度死ぬ』では、ボンドの協力者のヘンダーソンを演じていたのに、悪役としてまさかの再出演です。まあ、ブロフェルドはヘンダーソンの顔に寄せて整形したと理解しておきましょう(笑)。


整形手術によってそっくりな顔がたくさんいるというのは、やや現実離れしてはいますが、その辺りの多少のSF要素さえ受け入れれば、本作は比較的現実路線と言えるのではないでしょうか?『ゴールドフィンガー』とか『二度死ぬ』のような荒唐無稽な演出は控えられている印象です。


一方で、月面車によるカーチェイスのシーンで敵の追手がひたすら自滅する様子や、ブロフェルドの女装などは、ネタに走っている感がありましたけど(笑)。


最後に、ゲイの2人組の殺し屋の存在もなかなか効いていましたね。登場シーンから、残忍かつ手際よく標的を殺害する様子と、一癖も二癖もあるキャラクター像が描写され、強く印象づけられていました。


ボンドは二度も気絶させられ、彼らに殺されかけます。ボンドが火葬されかけた時には、もう終わったかと思いましたが、ボンド相手には詰めの甘い2人でした(笑)。


敵の陰謀を阻止して、大団円かと思ったところでもう一山というのは007シリーズでもよく見られるパターンですが、本作でも最後に2人が登場します。最後はボンドがしっかり撃退。酒についての深い知識と、割れた香水の伏線も相まって、実に気持ちの良いラストでした。

 

最後に

今回は映画『007/ダイヤモンドは永遠に』の解説&感想でした。ボンド役に復帰したショーン・コネリーを始めとして、舞台設定やキーアイテムなど、シリーズにおいて非常に華やかな作品。ストーリーも見どころ十分で、シリーズ初期の作品の中では個人的にそこそこ好きな作品です。

 

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映画『女王陛下の007』解説&感想 2代目ジェームズ・ボンド登場の第6作

どうも、たきじです。

 

今回は1969年公開の英米合作映画『女王陛下の007』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007は二度死ぬ』に続く第6作です。

 

 

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作品情報

タイトル:女王陛下の007

原題  :On Her Majesty's Secret Service

製作年 :1969年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ピーター・ハント

出演  :ジョージ・レーゼンビー
     ダイアナ・リグ
     テリー・サバラス
     ガブリエル・フェルゼッティ
     イルゼ・ステパット
     バーナード・リー
     デスモンド・リュウェリン
     ロイス・マクスウェル

 上映時間:140分

 

解説&感想(ネタバレあり)

前作『007は二度死ぬ』まで、5作にわたってジェームズ・ボンド役を務めたショーン・コネリーが降板し、2代目として、本作ではジョージ・レーゼンビーがボンドを演じています。彼がボンドを演じたのは本作一作限りということで、貴重な一作となります。


ボンド役は変わってもM役のバーナード・リーや、マネーペニー役のロイス・マクスウェルは続投。タイトルバックでも過去5作の映像が差し込まれるなど、物語は一応の連続性があることが示唆されています。まあ、肝心の敵役のブロフェルドは前作のドナルド・プレザンスからテリー・サバラスに変わっているのですけど。


ボンド役が変わったということで、ボンドの初登場シーンでは顔を映すのを少しもったいぶっています。モデル出身のジョージ・レーゼンビーは確かにスタイルも良くて格好いいですが、ショーン・コネリーのボンド像とは随分と変わってきます。


俳優の違いという部分のみならず、脚本や演出の面でも、これまでのボンド像とは変わって見えます。冒頭、トレーシーを助けたボンドは「ボンド、ジェームズ・ボンド」の決まり文句で名乗ります。意識の朦朧とするトレーシーに対して、聞かれてもないのに名乗るボンドには笑ってしまいました。

 


このシーンのみならず、雑誌のプレイボーイを眺めてにやける様子とか、ブロフェルドの研究所の女性の部屋に順番に忍び込んで関係を持つ様子とか、笑ってしまいますね。もちろん、過去の作品でも女好きなボンドでしたが、本作はまるで盛ったティーンエイジャーのようで(笑)。


患者の女性のベッドに忍び込んだら、女性が敵の幹部のブントと入れ替わっていたシーンで、「奇遇ですな」なんて言って誤魔化そうとする様子に吹き出してしまいました。


これらのシーンのように、本作は、全体的にちょっとふざけた(ユーモラスな)演出がなされている印象です。


その最たるものはオープニング・シークエンスの最後、ボンドが助けたトレーシーが逃げるように去ったのを呆然と見つめながら吐く台詞です。

 

This never happened to the other fellow.


私が見た日本語字幕では「こんなこと初めてだ」と訳されていましたが、直訳すると「別の奴にはこんなこと起こらなかった」、少し意訳すると「あいつの時にはこんなことなかった」という感じでしょうか?


"other fellow(別の奴)"とはもちろんショーン・コネリーを指すものでしょう。助けた女性に逃げられるようなことはありませんでしたからね。スクリーン外のことを意識した、いわゆるメタ発言。冒頭から随分とふざけていますね(笑)。


それから、本作は新ボンドの登場とあってか、シリーズのお約束要素も満載ですね。上述の"名乗り"もそうですし、マティーニ、タキシードスタイル、カジノでのプレイ、そして毎回欠かさず登場する帽子投げ等々、たくさん見せてくれます。

 


さて、ここまでジョージ・レーゼンビーのボンド像について長々と書きましたが、本作はストーリーの面でも他の作品とは一線を画しています。


トレーシーの父親で犯罪組織のボスであるドラコが、ボンドに娘との結婚を頼むという異色のストーリー。さらには、最初はブロフェルドの情報を聞き出すために話を合わせるボンドが、次第にトレーシーに惹かれていくという展開。これまでの作品にはなかったボンドのロマンスが描かれます。音楽に乗せて2人が関係を深めていくモンタージュなど、007を見ていることを忘れてしまいます。


Qの提供する奇想天外なガジェットも本作では鳴りをひそめ、特に前作で目立った荒唐無稽さは抑えられています。個人的に現実路線なのは大歓迎ではありますが、かと言って本作のロマンスやドラマ性に惹かれるかというとそんなこともなく…。


カーチェイスやスキーアクション、ボブスレーによるチェイスなど、アクションもそれなりに見せてくれますが特筆するほどのものはないというのが正直なところです。


一つ気になったのは、スペクターの首領・ブロフェルドがこれまでの作品とは違って随分とアクティブなこと。キャラは立っているものの、これまでのような大物感は薄れてしまっているのは少し惜しいところです。

 

最後に

今回は映画『女王陛下の007』の解説&感想でした。ジョージ・レーゼンビーがジェームズ・ボンドを演じ、ロマンス要素強めの異色の作品。現実路線には好感を持ちつつも、個人的にはドラマもアクションも物足りない一作でした。

 

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映画『007は二度死ぬ』解説&感想 日本が舞台の第5作

どうも、たきじです。

 

今回は1967年公開の英米合作映画『007は二度死ぬ』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/サンダーボール作戦』に続く第5作です。

 

 

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作品情報

タイトル:007は二度死ぬ

原題  :You Only Live Twice

製作年 :1967年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ルイス・ギルバート

出演  :ショーン・コネリー
     若林映子
     丹波哲郎
     浜美枝
     島田テル
     カリン・ドール
     ロイス・マクスウェル
     デスモンド・リュウェリン
     チャールズ・グレイ
     バーナード・リー
     ドナルド・プレザンス

 上映時間:117分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作の特徴はなんと言っても日本が舞台であること。そして、これまでのシリーズの他の作品から抜きん出て荒唐無稽な内容であることでしょう。


007シリーズはジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)が国際的な舞台で活躍するのが定番ですが、本作のように1ヶ国だけがフィーチャーされるのは珍しいことです。冒頭、香港のシーンは少しあるものの、イギリス本土のシーンは一切ありません(これは本作だけだとか)。


そのため、いつもはロンドンのオフィスにいるM(バーナード・リー)やマネーペニー(ロイス・マクスウェル)が潜水艦で出張してくるという、レアなシーンが楽しめます(お約束の"帽子投げ"も艦内で行われます)。


さらには、これまでは偉そうに椅子に座って愛猫を撫でているだけだったスペクターの首領ブロフェルド(ドナルド・プレザンス)まで日本に来ていて、ついに顔出ししてボンドとも対面します。

 


さて、こうして日本がフィーチャーされると、日本人としては気を引かれるわけですが、肝心な描写はどうでしょう?残念ながら本作も、外国映画にありがちなトンデモな日本になってしまっています。


風俗店のような風呂場での接待、地下鉄の専用車両で移動する諜報機関のボスの田中(丹波哲郎)、諜報機関の特殊部隊として登場する忍者集団など、違和感たっぷりの描写が続きます。


"トンデモな日本"というのを抜きにしても、荒唐無稽な描写は目立ちます。カーチェイス中の敵の車をヘリコプターから巨大な磁石で釣り上げたり(田中が見ている映像は誰が撮影したのか?)、敵の基地のある島に潜入するためにボンドが日本人になりすまして偽装結婚までしたり。


この偽装結婚は、日本の結婚式を描写したかったのですかね?やけに時間を割いていました。大相撲のシーンにしてもそう。忍者集団の訓練場を姫路城に設定しているのもそうですが、外国人が喜びそうな日本の描写を詰め込んだ感がありますね。城好きとしては、撮影で姫路城の城壁を傷つけたことは許しませんよ(笑)


まあ、こうした荒唐無稽なところにいちいち腹を立てるほど殺気立ってはいませんが、一方で、笑って楽しめるかというとそこまでの面白さもないというのが正直なところです。


ボンドとキッシー(浜美枝)が敵の基地を探る際、キッシーがなぜかビキニ姿なのだけは笑って楽しく見られましたけどね(笑)。基地での最終決戦では、最初はビキニの上に服を着て現れたのに、激しい銃撃戦を経て、いつの間にかまたビキニ姿になっていましたね。よく分からないけど、これも良しとしましょう(笑)。

 

最後に

今回は映画『007は二度死ぬ』の解説&感想でした。トンデモな日本の描写や、荒唐無稽なところを楽しめるかどうかで評価の分かれそうな一作でした。私はやはり現実路線の方が好きです。

 

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映画『007/サンダーボール作戦』解説&感想 ボンドが安定の活躍を見せる第4作

どうも、たきじです。

 

今回は1965年公開の英米合作映画『007/サンダーボール作戦』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/ゴールドフィンガー』に続く第4作です。

 

 

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作品情報

タイトル:007/サンダーボール作戦

原題  :Thunderball

製作年 :1965年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :テレンス・ヤング

出演  :ショーン・コネリー
     クローディーヌ・オージェ
     アドルフォ・チェリ
     ルチアナ・パルッツィ
     ガイ・ドールマン
     モーリー・ピータース
     マルティーヌ・ベズウィック
     リク・ヴァン・ヌッター
     バーナード・リー
     デスモンド・リュウェリン
     ロイス・マクスウェル
     アンソニー・ドーソン

 上映時間:130分

 

解説&感想(ネタバレあり)

前作はかなり奇想天外な内容に振り切っていましたが、本作はそうした要素は控えめで、現実路線に戻った印象です。本作でも、オープニングのシークエンスでジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)が唐突にロケットベルトで空を飛んだ時には心配しましたけどね(笑)。


前作の敵のゴールドフィンガーは、犯罪組織スペクターとは関係のない人物でしたが、本作では再びスペクターが敵となります。上述のシークエンスでボンドが殺した相手がスペクターのNo.6だったということで、スムーズに対スペクターの物語に導入させてくれます。


前作とは打って変わって、本作ではボンドがたっぷり活躍。相変わらずの女好きですが、女性を抱きながらもしっかり働いています(笑)。ホテルに現れた刺客は難なく追い返し、何度も敵に捕まりそうになるピンチに見舞われながらも、機転を効かせて毎度うまく切り抜けます。一流のスパイらしさをしっかりと見せてくれていて、その点では前作以上に楽しめますね。


また、本作は水中アクションが見どころの一つ。ですが、これには"公開当時は"という注釈が付きそうです。当時は実際に水中に潜っての撮影で、かなり労力をかけた映像として"見どころ"となり得たのでしょうが、現在ではCGで簡単に表現されますからね。


それに、水中の格闘は動きがスローになってしまいますし、表情も見えず、台詞もなしということで、どうしても単調に感じられるのも残念なところです。


それよりは、クライマックスの暴走する船での格闘シーンの方が見どころかもしれません。撮影が特段素晴らしいわけではないですが、編集の妙味が感じられて好きです。


最後に、本作は女優陣がなかなか魅力的。敵のフィオナ・ヴォルペ(ルチアナ・パルッツィ)は色気ムンムンですね。そして、メインのボンドガールのドミノ(クローディーヌ・オージェ)はキュートかつ美しく、スタイルも抜群で見惚れてしまいました。

 

ちなみに上に貼り付けた予告編のサムネの女性は、上記の2人のどちらでもありません(笑)。

 

最後に

今回は映画『007/サンダーボール作戦』の解説&感想でした。前作とは違って、ボンドの安定した活躍を楽しめる作品でしたが、何よりボンドガールのクローディーヌ・オージェの魅力が強い印象を残す作品でした。

 

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映画『007/ゴールドフィンガー』解説&感想 奇想天外なスパイ映画に振り切った第3作

どうも、たきじです。

 

今回は1964年公開の英米合作映画『007/ゴールドフィンガー』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/ロシアより愛をこめて』に続く第3作です。

 

 

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作品情報

タイトル:007/ゴールドフィンガー

原題  :Goldfinger

製作年 :1964年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ガイ・ハミルトン

出演  :ショーン・コネリー
     オナー・ブラックマン
     ゲルト・フレーベ
     シャーリー・イートン
     タニア・マレット
     ハロルド坂田
     セク・リンダー
     バーナード・リー
     デスモンド・リュウェリン
     ロイス・マクスウェル

 上映時間:112分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作は前二作とは随分と趣が違って、随分と奇想天外なスパイ映画に舵を切った印象があります。


例えば、ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)が乗る車(いわゆるボンドカー)。本作で、ボンドカーの代表格たるアストンマーティンDB5が初登場しますが、この装備がすごい。


ナンバープレートはくるくる回って各国仕様に切り替え可能。発信機の位置を地図上に表示する受信機内蔵。さらに、前方には機関銃、後方には煙幕やオイルを噴射、ホイールからは刃物が飛び出します。極めつきは、ボタン一つで助手席がルーフから飛び立つイジェクトシート。


受信機に関しては、現代ではカーナビとして一般的になっているので当時からみた近未来的な装備と言えるでしょうが、その他はなかなか突飛ですよね。ちょっと漫画的というか…。


かの有名な全身金粉の遺体も然り。皮膚呼吸できなくて死ぬって…、肺呼吸忘れたんでしょうか?そもそもなんと手の込んだ殺し方だよと。つっこみたくなります(笑)。


敵のパイロットとして現れたプッシー・ガロア(オナー・ブラックマン)がやたらとセクシーな女性なのは笑ってしまいますが、ボンドガールならまあいいか。と思ったら、彼女が率いる空中サーカスのパイロット達もセクシーな女性ばかりというのにまた笑ってしまいます。


そしてゴールドフィンガーの部下のオッドジョブ(ハロルド坂田)。彼はいかにも漫画的なキャラクター。ジル(シャーリー・イートン)に金粉を塗った張本人でもあります。刃物のついた帽子を投げて相手を攻撃するというのがまた…。

 


一方のボンドは、前二作よりも女好きキャラに磨きがかかっています。もう出会う女性全員を狙っているような目をしています(笑)。フェリックス・ライター(セク・リンダー)ら、周りからも女好きキャラとして見られてますしね。


厩でプッシーと体を投げ合った末に、キスで懐柔に成功するという流れは笑ってしまいました。結果的にプッシーを味方にできたことがゴールドフィンガーの野望の阻止に繋がったわけですから、これはボンドお手柄なんですけどね(笑)。


振り返ってみると、本作のボンドはほとんど活躍していません。ゴールドフィンガーの会社の工場に潜入したはいいものの、結局捕まってしまいます。ゴールドフィンガーの計画の内容を掴んだはいいものの、それをライターに伝えることは失敗してしまいます。


結果的に、ボンドよりもライターら周りのみんなが頑張った印象が強いです。最後の爆弾も止められなかったですし。爆弾のカウントダウンが止まったのが「007」秒なのもちょっと狙い過ぎか(笑)。


カウントダウンが進む中でのオッドジョブとの肉弾戦は一つの見どころではありましたけどね。台詞もBGMもなくて静かなのはやや物足りないですが。


と、いろいろ述べてきたように、本作は全体的に奇想天外な印象を受けます。ある意味ではエンターテインメント性を高めたとも言えますが、リアリティは無視してネタに走った印象です。それが本作の魅力と言われればそれまでですが、個人的には現実路線の方が好きかな。

 

最後に

今回は映画『007/ゴールドフィンガー』の解説&感想でした。前二作とは随分と趣が違って、随分と奇想天外なスパイ映画に舵を切った印象の第3作でした。

 

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映画『007/ロシアより愛をこめて』解説&感想 満足度の高い第2作

どうも、たきじです。

 

今回は1963年公開の英米合作映画『007/ロシアより愛をこめて』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/ドクター・ノオ』に続く第2作です。公開当時の邦題『007/危機一発』としても知られます。

 

 

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作品情報

タイトル:007/ロシアより愛をこめて

     (別題)007/危機一発

原題  :From Russia with Love

製作年 :1963年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :テレンス・ヤング

出演  :ショーン・コネリー
     ペドロ・アルメンダリス
     ロッテ・レーニャ
     ロバート・ショウ
     バーナード・リー
     ダニエラ・ビアンキ
     デスモンド・リュウェリン
     ロイス・マクスウェル
     アンソニー・ドーソン

 上映時間:115分

 

解説&感想(ネタバレあり)

前作でドクター・ノオが所属する犯罪組織として名前が登場したスペクターが本作では本格的に登場。後の作品でもジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)が戦うことになるスペクターの内幕も描かれ、組織の構図を垣間見ることができたことで、シリーズとしてのワクワク感が増しています。


そのスペクターからの刺客、グラント(ロバート・ショウ)の存在は、作品に緊張感をもたらしています。それに、ヒロインたるボンドガールのタチアナ(ダニエラ・ビアンキ)も、スペクターに利用されながらボンドに接近するという形で、こちらも緊張感を高めています。ストーリーはシンプルで直線的な構成ながら、このような緊張感や駆け引きの要素が物語を面白くしています。


アクション面でも前作を大幅に上回っています。列車内でのグラントとの戦闘では、催涙ガスを吹き出すアタッシュケースが活躍。前作では登場しなかった、Qの提供するガジェットが本作でついに登場です。


このグラントとの戦闘がクライマックスかと思いきや、その後も映画の盛り上がりは途切れません。追撃してくるヘリコプターとの戦い、ボートでのチェイス、変装して現れたクレブとの戦闘など、いくつもの山場が用意されています。こうした点も作品の満足度を高めてくれます。


最後には、タチアナとの"行為"が撮影されたフィルムを川に投げ捨て、タチアナに情熱的にキスするボンド。フィルムに別れを告げるように、ボンドは手を振ります。セクシーでユーモアに富んだラストシーンでした。


本作のボンドガールのタチアナは本当に魅力的です。美貌や色気に加え、前作のハニー・ライダー(ウルスラ・アンドレス)からは感じられなかった知性も備えています。個人的には歴代のボンドガールの中でもトップクラスに好きですね。

 

最後に

今回は映画『007/ロシアより愛をこめて』の解説&感想でした。ストーリー面でもアクション面でも、前作を大きく上回る第2作でした。

 

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映画『007/ドクター・ノオ』解説&感想 007シリーズの第1作

どうも、たきじです。

 

今回は1962年公開の英米合作映画『007/ドクター・ノオ』の解説&感想です。本作は007シリーズの記念すべき第1作。公開当時の邦題『007は殺しの番号』としても知られます。

 

 

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作品情報

タイトル:007/ドクター・ノオ

     (別題)007は殺しの番号

原題  :Dr. No

製作年 :1962年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :テレンス・ヤング

出演  :ショーン・コネリー
     ウルスラ・アンドレス
     ジョセフ・ワイズマン
     ジャック・ロード
     バーナード・リー
     ピーター・バートン
     ロイス・マクスウェル
     アンソニー・ドーソン
     ジョン・キッツミラー
     ゼナ・マーシャル
     ユーニス・ゲイソン

 上映時間:105分

 

解説&感想(ややネタバレあり)

イアン・フレミングによる007シリーズの原作小説は、全12作が出版されています。その中で、本作は第5作にあたる『ドクター・ノオ』を基にした作品です。


映画としては第1作にあたるわけですが、シリーズを象徴する要素は、すでにたっぷりと盛り込まれています。


冒頭、銃口からジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)を覗くショット。ボンドはカメラに向かって銃を撃ちます。いわゆるガンバレルシークエンスですね。そして、それに続く印象的なタイトルバック胸踊るテーマ曲。007シリーズの最近の作品と違って、テーマ曲は劇中も思う存分流れます。


また、本作ではジャマイカが舞台とされているように、007ではボンドがイギリスを飛び出して国際的な舞台で活躍するのが定番です。


そして、ジェームズ・ボンドのキャラクターも確立されています。タキシードスタイル、カジノでのプレイ、「ボンド、ジェームズ・ボンド」、帽子投げ、マティーニの注文、そして片っ端からいい女を抱いていくスタイル(笑)。


巧妙な計画でボンドに立ちはだかる知的な悪役の存在もシリーズの魅力。本作の悪役ドクター・ノオは作品のタイトルにもなっています。


そして、セクシーなボンドガール。本作のメインのボンドガールはウルスラ・アンドレス演じるハニー・ライダー。海から水着で現れるシーンは、あまりに唐突過ぎて、初見時には笑ってしまいましたよ。このシーンは、『007/ダイ・アナザー・デイ』でハル・ベリー演じるボンドガールの登場シーンでオマージュされていましたね。


一方で、Qが提供するユニークなガジェットはまだ登場しません。これは次回作へ持ち越しです。


さて、長々と"007シリーズ"としての話をしてしまいました。やはり本作、作品単体としてはあまり語ることがないんですよね。正直言って、本作の唯一の価値は、大人気シリーズの第1作である点と言わざるを得ません。


見ていて退屈するわけではないのですが、ワクワクもしません。今となってはストーリー構成もアクションも平凡です。ただ、本作が平凡と感じるのは、その後の作品が洗練されていった結果でもあるのですけどね。

 

最後に

今回は映画『007/ドクター・ノオ』の解説&感想でした。作品を重ねながら洗練されてきたシリーズの原点である第1作。それが唯一の価値だとしても、その価値自体は、十分すぎるほどに大きな価値と言えるのかもしれません。

 

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映画『クロース』解説&感想 クリスマス映画の定番になるべき作品

どうも、たきじです。

 

今回は、2019年公開のスペイン映画『クロース』の解説&感想です。ネットフリックス配給作品です。アニメーションのアカデミー賞とも言われるアニー賞で作品賞を含む7部門を受賞しています。アカデミー賞の長編アニメ賞は『トイ・ストーリー4』に譲っていますが、『トイ・ストーリー4』が好きになれない私としては本作が受賞すべきだったと思っています。

 

 

作品情報

タイトル:クロース

原題  :Klaus

製作年 :2019年

製作国 :スペイン

監督  :セルジオ・パブロス

声の出演:ジェイソン・シュワルツマン
     J・K・シモンズ
     ラシダ・ジョーンズ
     ウィル・サッソー
     ノーム・マクドナルド
     ジョーン・キューザック

上映時間:98分

あらすじ

北極圏の僻地の島に、郵便配達員として赴任したジェスパー。そこは二つの民族が大昔から争いを続ける殺伐とした町で、誰も手紙など送ろうとしません。ある時、ジェスパーは雪深い山奥に住むクロースという木こりの家を訪ねます。ジェスパーが持っていた子供の書いた絵を見たクロースは、ジェスパーに子供の家に連れて行くように強制し、クロースはその子におもちゃを届けます。クロースに手紙を書くとおもちゃが貰えるという噂がたちまち島中に広まり…。

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作は、サンタクロースの始まりを描いた物語。と言っても、現実の歴史上でどのようにサンタクロースの文化が始まったか、ということではありません。ファンタジーとして、どのようにサンタクロースが誕生したかを描いているということです。


本作の素晴らしいところは大きく分けて2点。


1点目は、クロースの行動が、徐々にサンタクロースに近づいていく面白さでしょう。プレゼントは煙突から届けられソックスの中へ。馬車を引く馬はトナカイになり、馬車はソリになり、やがて空を飛びます。そして、"Ho! Ho! Ho!"というクセのある笑い方、赤い服というサンタクロース自身の特徴も完成していきます(笑い方はもともとか)。

 


2点目は登場人物達それぞれがポジティブに変化を遂げること。


まず、ジェスパーは郵便局長の父から課されたノルマである6000通の手紙の配達を達成し、贅沢な暮らしに戻ることしか考えていませんでした。それが少女のためにソリを作ったり、教師のアルバと関係を深めたりするうち、島の暮らしに愛着を持つようになっていきます。


少女のためにソリを作り、それを贈るシークエンスはとても素晴らしかったです。当初はおもちゃ作りを拒んでいたクロースも協力してくれ、共に作り上げたソリ。少女が喜んで遊ぶ姿を陰ながら見つめる2人。テーマ曲の良さも相まって感動的なシーンになっています。


次に、クロース。彼は子宝に恵まれず、妻を病気で失ってからは、心を閉ざし孤独な生活を送っていました。それが自分の子供のためにと作っていたおもちゃを島の子供達に与え、子供達の喜ぶ姿を見ることで心を開いていきます。


妻をめぐるエピソードは終盤に差し掛かって物語に絡んできますが、これによって物語に深みが増していますね。家の中にいるジェスパーのシルエットでクロースが何かを思い出す表情を見せるシーンと男女の木彫りの人形を見せるシーンだけで、クロースが何かを抱えていることを示唆するのはとてもスマートな表現でした。


次に、教師のアルバ。子供を敵対する民族と交流させたくない大人達は、誰も子供を学校に通わせようとせません。アルバは教師として島に来たものの、生活のために魚屋を営んでいました。すっかりやさぐれていたアルバですが、クロースに手紙を書くために読み書きを習いたいと集う子供達に心を動かされます。アルバは貯めたお金を投げ打って学校を元に戻し、やがて活力を取り戻していきます。


そして、島の子供達。クロースにおもちゃを貰うためには良い子でいなければならないと聞いた子供達は、民族の対立など関係なしに、人に親切をするようになります。それに感化された大人達も民族間の壁を取り払い、殺伐としていた町は平穏な町へと変わっていきます。


当初の住民達は、敵対する家の洗濯物にゴミをかけたり、植木鉢を落として歩行者にぶつけたり、家に槍を投げたりと殺伐とした争いを続けていました。映画序盤では、これらがユーモアたっぷりに描かれていましたね。これらのシーンで描かれていた争いが、子供達の行動の変化によって変化する、それが心地よく、またユーモラスに描かれていて面白いところです。

 


本作では、"本当に欲のない行いは人の心を動かす"という言葉が、キーワードになっていますが、上記のような登場人物達のポジティブな変化のきっかけはジェスパーが私利私欲のために起こした行動でした。島の子供達の行動にしたって、クロースにおもちゃを貰いたいという私利私欲のための行動です。


結局のところ、きっかけは何でも良いのでしょう。たとえ初めは私利私欲のための行動でも、それがやがて欲のない行動へと変化し、それが人の心を動かす。その様は見ていて心地よいものでした。


サンタクロースの誕生に至る経緯の面白さと、登場人物達のポジティブな変化。そこに見て取れるクリスマス精神。それに作品のクオリティも踏まえると、本作はクリスマス映画の定番になるべき映画だと言えるのではないでしょうか。

 


少し惜しかったのはクライマックスの盛り上がりが物足りなかったことでしょうか。民族間の対立を煽る両民族の長が、クロースの配達を邪魔をしようとし、滑るソリでの攻防が繰り広げられます。


攻防の結果、荷物は崖から海へと落ちてしまいます。しかし、実は邪魔されることを予見していたクロース達が予め荷物をすり替えていて、海に落ちたのはダミーだったというオチ。これでは、クライマックスのアクションは何のための攻防だったのかとなってしまいます。ジェスパー自身もそのようなことを言いますが、これは脚本家の言い訳のように聞こえてしまいました。


ジェスパーの"本当に欲のない行いは人の心を動かす"との決め台詞が両民族の長に向けて放たれますが、長たちが振り返ると両民族の長の子供同士が仲睦まじくなっているというオチ。これも、もっともらしく決め台詞が放たれた割には、ちょっと弱くないですかね。もっと痛快に、彼らにギャフンと言わせる何かを期待してしまいました。

 

最後に

今回は、映画『クロース』の解説&感想でした。少し惜しいところはありつつも、クリスマス映画としては満足の作品でした。ネットフリックスが独占しているので、なかなか定番にはならないでしょうが、人におすすめできるクリスマス映画です。

 

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映画『ジョーズ』解説&感想 スピルバーグ監督の"見せない演出"

どうも、たきじです。

 

今回は1975年公開のアメリカ映画『ジョーズ』の解説&感想です。当時の世界興行収入記録を打ち立てた大ヒット作です。

 

 

作品情報

タイトル:ジョーズ

原題  :Jaws

製作年 :1975年

製作国 :アメリカ

監督  :スティーヴン・スピルバーグ

出演  :ロイ・シャイダー
     ロバート・ショウ
     リチャード・ドレイファス
     ロレイン・ゲイリー
     マーレイ・ハミルトン

 上映時間:124分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作はスティーヴン・スピルバーグが監督した映画としてはわずか2作目。それで史上最高のヒットを飛ばしたのですから、さすが世界最高のヒットメーカーですね。

 

スピルバーグ演出の大きな特徴の一つとして"見せない演出"があります。例えば、映画監督デビュー前に監督した1971年のTV映画『激突!』(日本では劇場公開)では、主人公を執拗に追いかけるトレーラーのドライバーの姿を一切見せないことで、その不気味さを煽っています。あるいは、1993年公開の『ジュラシック・パーク』では、Tレックスの姿をなかなか登場させず、それでいてTレックスが迫り来ることを感じさせる演出を畳みかけ、緊張感を盛り上げています。


見せないことで恐怖を煽るスピルバーグ演出。本作においては、それが特に多用されている印象があります。


映画冒頭、女性が襲われる場面では、獲物を狙うサメの視点によってスリルを高めています。女性が襲われ始めてからも、サメは画面に姿を見せず、女性の体が左右に激しく振り回されることでその襲撃の激しさを見せつけます。女性の遺体も網に絡まった手が映るのみ。死体安置所で、サメに喰われずに残っている体の部位が語られることで、その凄惨さが示されます。


2人目、3人目と犠牲者が出る際にも、被害者の血飛沫や、食いちぎられた足が沈んでいく描写で、恐怖を煽ります。また、海面に出た背ビレの動き、あるいはクイントが打ち込んだタルの動きでサメの接近を表現し、じわじわと緊張感を高めます。


こうした演出は、撮影に使われたサメの模型(アニマトロニクス)の不具合によって、サメを撮影できる期間が限られたことが一因になったと言います。例え元々意図した演出ではなかったとしても、ピンチをチャンスに変えて、よりよい演出を導き出したのはスピルバーグ監督の手腕でしょう。


また、この演出による効果は、観客の恐怖を煽ることにとどまりません。画面にしっかり映すとどうしても模型丸出しになってしまうサメの姿を、最小限に留められたことは、映像のクオリティを高めることにも成功しているでしょう。サメの姿全体をはっきりと映さないカメラワークや短いカット割も相まって、チープさを感じさせない仕上がりになっています。


それから、忘れてはならないのがジョン・ウィリアムズによるスリリングな音楽。テーマ曲は本作と切っても切り離せないものになっていますし、その他の音楽もバックグラウンドでしっかりと映画を盛り上げています。

 

最後に

今回は映画『ジョーズ』の解説&感想でした。シンプルなストーリーながら、スティーヴン・スピルバーグ監督の演出とジョン・ウィリアムズの音楽によって素晴らしい恐怖映画として仕上がった作品。その後、数多くのサメ映画は製作されているものの、本作に並ぶような評価を得た作品がないことを考えても、原点にして頂点と言える作品ですね。

 

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↓スピルバーグの恐怖演出が光る作品

映画『シュレック』解説&感想 ディズニーアニメに対するアンチテーゼ

どうも、たきじです。

 

今回は、2001年公開のアメリカ映画『シュレック』の解説&感想です。本作はドリームワークス・アニメーションの代表作の一つ。アカデミー賞では、ピクサーの『モンスターズ・インク』を抑えて創設初年の長編アニメ映画賞を受賞した他、アニメ映画として初めて脚色賞にノミネートされました。

 

 

作品情報

タイトル:シュレック

原題  :Shrek

製作年 :2001年

製作国 :アメリカ

監督  :アンドリュー・アダムソン
     ヴィッキー・ジェンソン

声の出演:マイク・マイヤーズ
     エディ・マーフィ
     キャメロン・ディアス
     ジョン・リスゴー

上映時間:90分

解説&感想(ネタバレあり)

上述の通り、本作は批評家に絶賛され、賞レースも賑わせた作品です。アカデミー賞にもノミネートされた脚本(絵本『みにくいシュレック』を原作としているので脚色賞へのノミネート)は素晴らしく、大人も子供も楽しめる作品になっています。


その最大の特徴は、ディズニーアニメに対するアンチテーゼになっていることでしょう。今でこそポリコレ配慮に傾倒している感のあるディズニーですが、かつてはルッキズム的なところが色濃く出ていました。すなわち、「美男美女こそ正義!」というわけです。野獣がハンサムな王子様に戻ってハッピーエンド、という『美女と野獣』なんかはいい例です。


翻って、本作。シュレックは「中身を見ろ」と説きます。シュレックとフィオナは惹かれ合いますが、フィオナは昼は美女、夜は緑色の怪物の姿になる魔法をかけられています。クライマックスでシュレックが怪物姿のフィオナにキスをすることで魔法が解けますが、フィオナは怪物姿のまま。フィオナは怪物の方が真の姿だったというオチです。シュレックは、その姿を見て「綺麗だよ」と声をかけます。醜いままの怪物姿の2人が結ばれてハッピーエンドというわけです。


これなんて完全に『美女と野獣』に対するアンチテーゼですよね。とは言っても、本作はダイバーシティの大切さを訴えるような意識高い系の作品というわけではなく、どちらかと言えば、従来のディズニー的マーケティングをイジって茶化している感じでしょう。本気でディズニーに喧嘩を売っているわけではないと思うので、ディズニー好きな人でも腹を立てる必要はありません(笑)。


悪役であるファークアード卿の城や城下町がまるでディズニーランドだったり、フィオナが白雪姫よろしく鳥に歌いかけると鳥が爆発したり、私はニヤニヤしながら見てしまいましたよ。

 


さて、そんな素晴らしい脚本を備えた本作ですが、映像面はどうしても色褪せてしまった部分はありますね。史上初のフルCG長編アニメ映画『トイ・ストーリー』の公開が1995年。本作の公開はそのわずか6年後の2001年。まだまだCGアニメの技術が発展途上の過渡期の作品ですからね。


ただ、それでも中盤のドラゴンの塔でのシーンのアクションなんかは見応えがありました。要所要所でスローモーションを使っているのも効果的で、緑色の怪物でさえもヒロイックな存在に演出されています。


対照的に、クライマックスは物足りません。フィオナとシュレックとの間の誤解が解けて、ドラゴンが味方として登場し、フィオナとファークアード卿の結婚式にいざ乗り込まん!というクライマックスにかけての勢いは素晴らしかったのですが、アクションはほとんどなく終わってしまいます。


今の時代なら間違いなくアクションシーンのクライマックスで一盛り上がり入れるところでしょうが、本作ではドラゴンの一撃でファークアード卿を倒してあっさり終了。これは惜しいところでした。

 

最後に

今回は映画『シュレック』の解説&感想でした。アニメーション表現といった映像面は古くなってしまった印象はあるものの、ディズニーに対するアンチテーゼを含んだ脚本によって楽しい作品になっています。

 

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↓ ドリーム・ワークス・アニメーションの傑作

映画『ボーン・アルティメイタム』解説&感想 シリーズの魅力際立つ最高傑作

どうも、たきじです。

 

今回は2007年公開のアメリカ映画『ボーン・アルティメイタム』の解説&感想です。『ボーン・アイデンティティー』、『ボーン・スプレマシー』に続く、ボーンシリーズの第3作です。

 

↓ 過去作はこちら

 

 

作品情報

タイトル:ボーン・アルティメイタム

原題  :The Bourne Ultimatum

製作年 :2007年

製作国 :アメリカ

監督  :ポール・グリーングラス

出演  :マット・デイモン
     ジュリア・スタイルズ
     ジョアン・アレン
     デヴィッド・ストラザーン
     スコット・グレン
     アルバート・フィニー
     パディ・コンシダイン
上映時間:115分

 

解説&感想(ネタバレあり)

"さらにさらに"凄みを増したアクション

ボーン・アイデンティティー』から本作に至るシリーズ3作は、作品を重ねるほどに完成度が増しているように思います。


前作から監督がポール・グリーングラスに変わり、アクションの凄みがさらに増した印象でしたが、本作はさらにその上を行きます。


特筆すべきはモロッコのタンジールのシークエンスでしょう。タンジールの特徴的な街並みをたっぷり使ったチェイスには興奮させられます。殺し屋から逃げるニッキー、警察から逃げながら殺し屋を追うボーン。この緊迫感も素晴らしいです。


そして何より印象的だったのは、ボーンと殺し屋の格闘シーン。1対1のシンプルな肉弾戦で、ここまで興奮したのは初めてじゃないかと思うほどでした。様々な角度からの撮影と、素早いカッティングが為せる業でしょう。


また、クライマックスのカーチェイスは、前作のモスクワでのカーチェイスに勝るとも劣りません。本作ではニューヨークの市街を舞台にド派手なカーチェイスを見せており、ボーンが真実に対峙するラストに向けて物語をぐっと盛り上げています。

 

シリーズで群を抜く魅力

本シリーズの大きな魅力の一つが、ボーンがその鋭い判断力と腕っぷしの強さを活かしてCIAを出し抜く面白さ。この点でも本作はシリーズで群を抜いています。


序盤のロンドンのシークエンスなんて、凄すぎて笑ってしまいましたよ。CIAによる通信傍受をかわし、記者にリアルタイムで指示し、誘導するその鮮やかさ。漂う緊張感とテンポの良さ、撮影と編集、音楽が噛み合い、素晴らしいシークエンスになっています。


クライマックスにつながるニューヨークのシークエンスも然り。このシークエンスで、物語が前作のラストシーンとつながります。と言っても、前作のラストは映画の余韻を残すためのワンシーンとして描かれたようなシーンでした。あのシーンがまさか、こんなに緊張感のある状況だったとは。前作製作時から考えられていたのか、後付けで考えたのか知りませんが、この構成は見事でした。


前作のラストでランディは、ボーンへの感謝や謝罪の意味を込めて、ボーンの本名と併せてボーンの誕生日を教えたかに見えました。が、実は盗聴されているのを想定した上で研究所の住所をボーンに伝えていたわけです。この機転はボーン顔負けですね。


ボーンはボーンで、同じく盗聴は承知の上で、ランディに会おうと伝えます。ボーンを確保するため、CIAの面々は総出でランディを尾行します。彼らを率いるヴォーゼンにかかってくるボーンからの電話。今オフィスにいると嘘をつくヴォーゼンに対し、ボーンは告げます。「オフィスにいるなら向き合ってるはずだ」。ボーンはCIAを見事に誘導してランディを尾行させ、空っぽになったオフィスで資料を手に入れます。


このシーンは本シリーズの醍醐味ともいえる痛快さですね。実際には、自分の居場所をバラすようなことは言わない方がいいでしょうし、CIAが間抜けすぎにも見えますが、現実性よりも映画的演出を優先したのが見事にハマった良い例です。

 

物語の結末

ボーンシリーズは本作の後にも、ジェイソン・ボーンが登場しないスピンオフ的な『ボーン・レガシー』(2012年)、再びボーンを主人公に据えた『ジェイソン・ボーン』(2016年)と、続編が作られています。が、ボーンが失った記憶を辿る物語としては本作で一旦の結末を迎えます。


本作でボーンは、自分がいかにしてデビッド・ウェッブから殺人兵器ジェイソン・ボーンになったか、その記憶を取り戻します。そして、その過去を理解した上で、デビッド・ウェッブに戻るのです。


そして、追いかけてきた殺し屋がボーンに銃口を向けます。ボーンは前のシーンで殺し屋を追い詰めながらとどめを刺しませんでした。殺し屋はなぜ自分を生かしたかとボーンに問います。対してボーンは「君はなぜ俺を殺す?」と問います。「自分を見ろ。人間と言えるか?」と。


殺し屋が問いに答えることも引き金を引くこともできぬうち、ヴォーゼンが現れてボーンを撃ちます。ボーンはそれと同時に、ビルのはるか下の川に飛び込みます。


殺人兵器であった自分。そうなってしまった経緯の記憶を取り戻した上で、元の自分に戻る——。本作は、ボーンが自分と向き合いながら、そうしてアイデンティティを取り戻す物語。上記のような問答の末に、殺し屋がボーンを撃つことができないという展開は、普通の映画でやられると興醒めですが、このようなテーマを持った本作だからこそ活きるものです。


高所から川に落ちたボーン。意識を失って海上を漂っていた第1作のオープニングと同様に、ボーンは微動だにせず水中を漂います。ラストシーンでは、このシーンの間に、後日ニッキーがテレビのニュースを見るシーンがクロスカッティングで挿入されます。


ニュースでは、ヴォーゼンら、ボーンを生み出した「ブラックブライアー作戦」の責任者達が逮捕されたことを報じられます。そしてそれに続き、ボーンの遺体が見つかっていないことが報じられます。


このニュースに、ニッキーはボーンの生存を確信しニヤリ。恒例の「エクストリーム・ウェイズ」のイントロが流れ出す。そして、ボーンが水中を漂うシーンに戻り、ボーンが泳ぎ出す——。最高に痺れるラストシーンでした。

 

最後に

今回は映画『ボーン・アルティメイタム』の解説&感想でした。アクションを始めとしたシリーズの魅力それぞれが際立ち、シリーズの最高傑作と言える作品に仕上がっています。『ボーン・アイデンティティー』から本作に至る三部作は、自信を持っておすすめできるので、未見の人は是非とも見ていただきたいところです。

 

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↓ 凄腕の元CIAエージェントが活躍

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映画『ボーン・スプレマシー』解説&感想 さらに凄みを増したアクション

どうも、たきじです。

 

今回は2004年公開のアメリカ映画『ボーン・スプレマシー』の解説&感想です。『ボーン・アイデンティティー』に続く、ボーンシリーズの第2作です。

 

↓ 過去作はこちら

 

 

作品情報

タイトル:ボーン・スプレマシー

原題  :The Bourne Supremacy

製作年 :2004年

製作国 :アメリカ

監督  :ポール・グリーングラス

出演  :マット・デイモン
     フランカ・ポテンテ
     ジョアン・アレン
     カール・アーバン
     クリス・クーパー
     ブライアン・コックス
     ジュリア・スタイルズ
     トーマス・アラナ
     ガブリエル・マン

上映時間:108分

 

解説&感想(ネタバレあり)

追われながら追う

ボーン・アイデンティティー』から本作、そして『ボーン・アルティメイタム』に至る3作は、作品を重ねるほどに完成度が増しているように思います。


ストーリーの骨格は、「追われながら追う」というサスペンスの王道。ボーンは殺し屋やCIAに追われながら、"自分の過去"を追います。登場人物が複雑に絡み合いながら徐々に真実を明らかにしていくストーリー構成はよくできています。前作のようなロマンスが描かれない分、ストーリーの軸も明確になった印象です。


前作でボーンがたどり着いたのは、失敗したミッションの記憶でした。標的のウォンボシを暗殺しようとしたその時、ウォンボシの子供と目が合って引き金を引くことができず、逆にボーンが撃たれてしまったのでした。


そして、本作でボーンがたどり着くのは、彼の最初のミッションの記憶。標的のネスキーをホテルで待ち伏せして殺そうとしますが、標的の妻の姿もあったことから、2人とも殺害し、妻による無理心中に見せかけたのでした。そしてボーンはそこにあった写真から見て2人には娘がいることを知ります。


幼い少女の両親を殺してしまったというある種のトラウマ。これが、ウォンボシ暗殺ミッションの失敗に繋がったと考えられます。ボーンがたどり着いた"過去"が、前作でたどり着いた"過去"の理由付けにもなっているのが非常にうまいですね。

 


凄みを増したアクション

前作でも素晴らしかったアクションシーンは、ダグ・リーマンから監督を引き継いだポール・グリーングラス監督によってさらに凄みを増しています。


手持ちカメラの撮影でブレる映像、そして短いショットを目まぐるしく切り替える鋭いカッティング。これによって臨場感とテンポの良さが際立っています。


格闘シーンも素晴らしいですが、やはりカーチェイスシーンが強い印象を残します。映画冒頭の挨拶がわりのカーチェイスもさることながら、究極なのはモスクワでのクライマックスのカーチェイスでしょう。ここでは、現地警察と殺し屋の双方に追われる展開に加え、ボーン自身が銃撃による怪我を負っていることでさらに緊張感を増しています。


そして、様々なアングルからの撮影と鋭いカッティング、そしてゾクゾクするような音楽によって、大興奮のシーンになっています。カーチェイスを撮る人は皆、本作のカーチェイスシーンを教科書にして勉強すべきだと感じるほどです。

 


CIAより一枚上手のボーン

ボーンが現地の警察や彼を追うCIAの面々を出し抜いていく面白さは、前作の大きな魅力の一つでしたが、その点は本作でさらに磨きがかかっています。


トースターを使って部屋を爆破し追手をまいたり、2つの電話をうまく使ってランディの部屋番号を知ったりと、その巧みなやり口にワクワクさせられます。


個人的に好きなのは、ボーンがCIAの事務所をライフルのスコープで覗きながら、ランディと通話するシーン。指定の場所にニッキーを来させるよう要求するボーンに対し、ランディは時間稼ぎのために、「彼女を捜さないと」と言います。それに対し、ボーンは「簡単だ、君の隣にいる」と返し、CIAを慌てさせます。このシーンは、CIAより一枚上手のボーンの振る舞いが痛快に決まっていますね。


ラストシーンも、これに重ねるが如く、ボーンはランディの事務所が見える場所でランディと通話します。最後に一言。「少し休め。顔が疲れてる。」振り返るランディ。ここでも見事に決まります。


シリーズ通してのエンディング曲であるモービーの「エクストリーム・ウェイズ」が絶妙なタイミングで流れ出します。このイントロがまたかっこいいんですよ。


そしてこのラストシーン、次作ではこの前後が描かれるのです。

 

最後に

今回は映画『ボーン・スプレマシー』の解説&感想でした。「追われながら追う」というサスペンスの王道をいくストーリーに、ポール・グリーングラス監督によって凄みを増したアクションが加わって、前作を上回る大興奮の作品に仕上がっています。そして、次作『ボーン・アルティメイタム』へ。まさか本作をさらに上回ってくるとは…。

 

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映画『ボーン・アイデンティティー』解説&感想 骨太なスパイアクションシリーズの第1作

どうも、たきじです。

 

今回は2002年公開のアメリカ映画『ボーン・アイデンティティー』の解説&感想です。ボーンシリーズの第1作にあたります。

 

 

作品情報

タイトル:ボーン・アイデンティティー

原題  :The Bourne Identity

製作年 :2002年

製作国 :アメリカ

監督  : ダグ・リーマン

出演  :マット・デイモン
     フランカ・ポテンテ
     クリス・クーパー
     ブライアン・コックス
     アドウェール・アキノエ=アグバエ
     クライヴ・オーウェン
     ジュリア・スタイルズ
     ガブリエル・マン

 上映時間:119分

 

解説&感想(ネタバレあり)

意識のない状態で海上を漂っていたところを漁船に引き上げられた男。記憶を失っており、皮膚の下に埋め込まれていたのはスイスの銀行の貸金庫番号。複数の言語で会話できる上に、あっという間に2人の警官を倒してしまうほどの身体能力を備えており、常人とは違う"何者か"であることがうかがえます。


やがて、男は自分がジェイソン・ボーンという名で、特別な訓練を受けたCIAのエージェントであることを知ります。この真実は、映画を観ている我々にも最初は提示されません。それ故に、ボーンの正体や、彼が記憶を失った経緯が徐々に明らかになっていくことが、本作の面白さの一つとなっています


そして何より、本作の大きな魅力は、ボーンが現地の警察や彼を追うCIAの面々を出し抜いていく面白さでしょう。とにかく強く、機転の効くボーンが、幾度も危機を切り抜けていく様は非常に痛快です。


そして、アクション。格闘シーンではCGやワイヤーアクション等とは違った生身の重さを感じる骨太アクションを見せてくれます。また、カーチェイスシーンでは、パリ市街の石畳の上をミニが激走するという興奮のチェイスを見せてくれます。いずれも目まぐるしいカッティングも効いて見応えたっぷり。音楽も緊張感と興奮を盛り上げています。アクション映画としての見どころも十分と言えるでしょう。


さて、CIAがボーン殺害のために送り込んだ3人のエージェントのうち2人をボーンが倒して迎えるクライマックス。残る1人のエージェントであるマンハイムが撃ったのはボーンではなくコンクリン(クリス・クーパー)でした。この展開自体は意外性のある結末であり悪くありません。一方で、最後にボーンがマンハイムと戦うのがクライマックスになると期待していただけに、それがないままに終わってしまったことに物足りなさを感じてしまいました。


映画序盤でCIAが3人のエージェントを送り込む様子が描写されることで、ボーンにとっての敵キャラが明確にされていました。これによって先の展開に期待を高めることに成功していた一方で、これがクライマックスの物足りなさに繋がってしまったのは惜しいところです。

 

最後に

今回は映画『ボーン・アイデンティティー』の解説&感想でした。ボーンの正体が明らかになっていく面白さ、ボーンが敵を出し抜く痛快さ、そして骨太なアクション、それぞれが素晴らしい作品でした。個人的には続編の『ボーン・スプレマシー』、『ボーン・アルティメイタム』には及ばない出来だと思っていますが、続編の素晴らしさによって本作の価値が高められているようにも感じます。

 

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映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』感想 見どころはあるが古さは否めない

どうも、たきじです。

 

今回は、1978年公開のアニメ映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』の感想です。アニメ『ルパン三世』の劇場版第1作です。

 

 

作品情報

タイトル:ルパン三世 ルパンVS複製人間
     [別題]ルパン三世

製作年 :1978年

製作国 :日本

監督  :吉川惣司

声の出演:山田康雄
     増山江威子
     小林清志
     井上真樹夫
     納谷悟朗
     西村晃
     三波春夫
     赤塚不二夫
     梶原一騎

上映時間:102分

感想(ネタバレあり)

冒頭述べた通り、本作は『ルパン三世』の劇場版第1作。タイトルバックを見ると分かるように、公開当時のタイトルは単に『ルパン三世』で、「ルパンVS複製人間」という副題は後の劇場版との区別のために後で付けられました。


当時は映画オリジナルのストーリーのアニメ劇場版というのは珍しかったということですが、映画版らしいスケールの大きい物語は、すでに板についているようにも思えます。


とは言え、時代を考慮しても個人的にはそこまでクオリティの高い脚本とは思えませんでした。クローン人間というテーマは当時としては目新しかったのかもしれませんが、物語としては平凡に感じられましたね。


クライマックスあたりの展開は悪くないです。折れた刀の伏線回収から、燃え上がるマモーの体、そして巨大な脳みそが迫り上がってくる画はインパクトたっぷり。そして、銭形登場からのミサイル攻撃のドタバタで終了。これはいいエンディングです。

 


次作『カリオストロの城』とは違ってアダルトでハードボイルドな空気感もなかなか良いです。ルパンや次元の台詞もいちいちキザですよね。もちろんいい意味で。


ただ、アニメーションは古さが否めないです。五右ェ門とフリンチの闘いのシーンの画作りはなかなか良いですけどね。激しい波飛沫の中の決闘。頭を三分割されたフリンチの視点で、画面も三分割されてずれる演出は素敵でした。


さて、本作ですごく気になったのは、特別出演の御三方。エジプトの警察署長が三波春夫、アメリカ大統領が赤塚不二夫、ソ連の書記長が梶原一騎。三波春夫はいいものの、あとのお二人はひどい棒読み(笑)。この時代からこの手のゲスト声優ってあったんですね…。

 

最後に

今回は映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』の感想でした。見どころはそれなりにあるものの、脚本もアニメーションも古さは否めない作品でした。

 

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