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映画『竜とそばかすの姫』解説&感想 終盤の雑な展開だけが惜しい

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どうも、たきじです。

 

今回は、2021年公開のアニメ映画『竜とそばかすの姫』の解説&感想です。

 

 

作品情報

タイトル:竜とそばかすの姫

製作年 :2021年

製作国 :日本

監督  :細田守

声の出演:中村佳穂
     成田凌
     染谷将太
     玉城ティナ
     幾田りら
     森川智之
     津田健次郎
     小山茉美
     宮本充
     牛山茂
     多田野曜平
     宮野真守
     森山良子
     清水ミチコ
     坂本冬美
     岩崎良美
     中尾幸世
     役所広司
     石黒賢
     佐藤健

上映時間:121分

解説&感想(ネタバレあり)

メタバースの『美女と野獣』

本作はインターネット上の仮想空間、いわゆるメタバースを題材としています。2021年10月にFacebook社が「Meta」に社名を変更し、メタバースを事業の核に据えていくことを打ち出したのをきっかけに産業界にメタバースブームが巻き起こりました。本作はそれよりも3ヶ月早い2021年7月の公開ということで、ブームを先取りしていましたね(メタバースのブームはすぐに生成AIに取って代わられましたが)。


もっとも、細田守監督は2009年の『サマーウォーズ』で、すでにメタバースを題材にしていました。当時はまだLINEも普及していない時代。この時代に、今の言葉で言えば「スーパーアプリ×メタバース」のプラットフォームを舞台にした物語は、非常に革新的に映りました。『サマーウォーズ』にしても、本作にしても、細田守監督のIT技術に対する感度とそれを題材にして物語を創るセンスには感心させられます。


また、本作のベルと竜の関係や、「ベル」という名前から、本作が『美女の野獣』を意識していることは明白です。音楽的要素も含めると、特にディズニー版が想起されますね。それが何か特別な効果を生んでいるとは思いませんが、メタバースで『美女と野獣』をやるという試みはなかなか面白いところです。

 

現実世界での人との繋がり

サマーウォーズ』は、「家族」や「人と人との繋がり」といった要素をテーマに盛り込みつつも、てんこ盛りのエンターテイメントという印象の作品でしたが、同作に比べると本作はより繊細な内容になっています。


よその子供を助けて水難事故に遭った母の死、ネット上の心無い言葉、父との間にできた溝、大好きだった歌も歌えない——。物語は、主人公のすず(中村佳穂)の内面にぐっと迫るものになっています。すずの飼い犬の欠損した脚や、すずのコップに入ったヒビも、作品のセンシティブな空気感を掻き立てています。


仮想空間Uの世界で、すずは「ベル」として人気を集めていきます。そして、心を閉ざした(佐藤健)と出会います。ベルのコンサートを台無しにした竜に怒る人々やUの自警団達は竜の現実世界での姿を暴こうとします。Uはもう1人の自分になれる新しい人生とは言いつつも、結局は現実世界が意識されるというのは皮肉ですね。


本作も『サマーウォーズ』と同様、仮想空間が全盛の時代にあって、現実世界での人との繋がりの重要性を説いているように感じます。すずはUでの経験を通して成長し、心の痛みを乗り越えていきます。そこには現実世界で彼女を守る存在、すなわち、しのぶ(成田凌)、ヒロちゃん(幾田りら)、合唱隊の皆、そして父親(役所広司)の存在があります。また、父親から虐待を受けているには兄の(竜)がいて、知は竜をヒーロー視しています。


そして何と言っても、恵と知を守るために、Uの中で現実の姿を晒したすず。すずは、なぜ母は自分と生きるより他人を助けることを選んだのかと悩んでいました。しかし、ここで彼女がやっていることは、母親と同じこと。自分を犠牲にして他者を助ける行為に他なりません。


すずが現実の姿で歌い出す瞬間は感動で震えました。母親が水難事故に遭うシーン、そして幼いしのぶがすずの手を握るシーンのフラッシュバックも効いています。

 

映画を彩る多様な楽曲

すずが現実の姿で歌うシーンが感動的なのは、ストーリー展開のみならず、音楽の素晴らしさあってのこと。このシーンのみならず、本作は多様な楽曲によって耳でも楽しませてくれます。


「ようこそ、Uの世界へ」の言葉と共にmillennium parade × Belle (中村佳穂)の楽曲「U」が流れ出すオープニングは最高です。曲を聴き込んでから本作を観ただけに、もう鳥肌もの。アニメーションと音楽のシンクロにも胸踊ります。


ただ、この曲は劇中のベルの雰囲気と少し合っていないせいか、このシークエンスの最後に映るベルが実際に歌っているように見えなかった(口パクのように感じられた)のは私だけでしょうか?

 

終盤の展開には唖然

さて、すずが現実の姿で歌うシーンまでは、なんといい映画かと感動して観ていたのですが、正直言って、終盤の展開には唖然としました。


あの状況で、すずが東京の恵と知の家に行くこともよく分からないし、当たり前のように送り出す周りの人々にも疑問が湧きます。そしてすずは、雨の中、外にいる恵と知にばったり。極め付けは、迫力だけで兄弟の父親を撃退するすず(笑)。暴力に屈しないすずの迫力に動揺するくらいなら分からなくもないですが、尻もちついて逃げ出すというのは…。


なんか終盤だけ急に脚本が雑になった感じがして、がっかりしました。


また、Uの内部のその後が描かれないのも不満が残ります。

 

素晴らしい声の出演者たち

宮崎駿監督なんかもそうですが、細田守監督は本職の声優ではない人を声の出演に起用することが多いですね。本職ではない人が声を演じると、聞くに堪えないことも少なくないですが、本作は総じて素晴らしかったです。


中村佳穂は歌のみならず、すずの声も堂々たるパフォーマンス。声優初挑戦というのが信じられません。YOASOBIのikuraこと幾田りらも同様です。『バケモノの子』でも素晴らしかった染谷将太役所広司は言わずもがな。俳優としても抜群に上手い2人ですが、声優としても素晴らしいです。


ただ、ルカの声だけは、人気者の女子高生というキャラクターのイメージとは違う声(演じ方を含め)で、少し違和感がありましたね。

 

最後に

今回は、映画『竜とそばかすの姫』の解説&感想でした。仮想空間が全盛の時代にあって、現実世界での人との繋がりの重要性を説くテーマ性や、音楽の素晴らしさには大満足だったのですが、終盤の雑な展開には大いに失望させられました。そこだけが惜しい作品です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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