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映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』解説&感想 大人のためのクレヨンしんちゃん

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どうも、たきじです。

 

今回は、2001年公開のアニメ映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』の解説&感想です。アニメ『クレヨンしんちゃん』の劇場版としては第9作にあたります。

 

 

作品情報

タイトル:クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲

製作年 :2001年

製作国 :日本

監督  :原恵一

声の出演:矢島晶子
     ならはしみき
     藤原啓治
     こおろぎさとみ
     真柴摩利
     林玉緒
     一龍斎貞友
     佐藤智恵
     津嘉山正種
     小林愛
     関根勤
     小堺一機

上映時間:89分

解説&感想(ネタバレあり)

良い映画というのは、観終わった後にもいろんなシーンを思い返して咀嚼するので、記憶にもしっかり残りがちです。本作も例に漏れません。私が本作を鑑賞したのは、本作が公開されて間もない頃にテレビ放送されて以来なので、約20年ぶりということになりましょうか。驚かされるのは、見覚えのないシーンがほとんどないということです。


冒頭、野原一家は1970年の大阪万博の会場にいます。やがて暴れ出す怪獣。ひろしは、ウルトラマンのような姿の巨大ヒーロー"ひろしSUN"に変身して怪獣と戦います。


実は野原一家は20世紀博というテーマパークを訪れていて、そこで自分達が主演する特撮を撮影していたという設定。映画冒頭から、舞台設定の説明なしで繰り広げられるアクションは、プレタイトル・シークエンスとして見事な導入です。


ここで注目したいのは、とあるひろしの台詞。怪獣によって破壊されたソ連のパビリオンを見て、「ソ連館が崩壊したー!」と叫びます。大阪万博から21年後の1991年にソ連は崩壊することになるわけで、それを意識したユーモアですね。子供には分からないネタを放り込んできたこの台詞で、本作が大人にも向けて作られていることを確信させられます。

 

それは本編のストーリーからも明らか。ケンとチャコは、現実の21世紀に失望し、人々が心を持って生きていた20世紀を取り戻そうと企てています。ケンが率いる組織はイエスタデイ・ワンスモア。直訳すると「昨日よ、もう一度」となる組織名は彼らの理念と合致しますし、1973年にリリースされたカーペンターズの大ヒット曲のタイトルというのがまた絶妙です。


彼らは、20世紀博を入口として大人達を洗脳し、20世紀の郷愁に浸って生き続けようとしています。このようなストーリー設定もさることながら、全編にわたる昭和のノスタルジックな描写の数々は、公開当時の父母世代の心を掴むものになっていますね。私自身はこの世代よりも20年ほど後の世代ですが、ケンによって作られた永遠に夕焼けの世界には不思議なノスタルジーを感じます。今夜はカレーだという母の声、蕎麦屋の出前、酒屋の配達、オート三輪——。運転するひろしの目から自然と涙が溢れる演出もぐっときました。


大人の心を締め付ける描写の多い本作において、その最たるものは、ひろしの半生を描いたモンタージュでしょう。初恋、失恋、就職、妻との出会い、子の誕生、マイホームの購入、そして仕事でへとへとになって帰宅する自分を出迎えてくれる家族との何気ない日常の幸せ——。


このシーンは公開当時もかなり話題になりました。若い頃に見ても感動しましたが、やはりこのシーンは家庭を持った今見ると余計に刺さる刺さる。「父ちゃん、オラが分かる?」と聞くしんのすけに対し、絞り出すように「ああ」と答え、泣きながら黙って抱きしめるひろしの姿には、どうしても涙腺が緩んでしまいます。

 

そして、ケン達の企みを阻止しようと、野原一家が鉄塔を登るクライマックス。「つまらん人生だったな」と吐き捨てるケンに対し、ひろしは食い下がり、「俺の人生はつまらなくなんかない。家族がいる幸せをあんた達にも分けてあげたいくらいだぜ!」と言います。これは上記のモンタージュを受けた台詞として見事に決まっています。


最後に塔を登りきったしんのすけは、家族と一緒にいたい、大人になりたい、綺麗なお姉さんとお付き合いしたい、と「未来を生きたい」気持ちを叫びます。


20世紀に閉じこもろうとするケンとチャコに対し、野原一家の目は未来に向いています。昔夢見たような21世紀ではなかったとしても、ここまで築きあげてきた何気ない日常の幸せを守りながら、自分達で未来を作っていこう——。そんな想いが感じられました。


しんのすけによって計画を阻止されたケンとチャコは、鉄塔から飛び降りようとします。しかし、彼らの足元にあった巣から飛び出してきた鳩に威嚇され、それをきっかけにチャコに迷いが生まれ、彼女は「死にたくない」と座り込むのです。


野原一家に続き、またも未来のために必死に生きる家族(鳩)が、彼らの計画を阻止するというのは良い結末でした。「また家族に邪魔された」というケンの台詞が無くても、それは十分に伝わるので、個人的にはこの台詞は不要だったと思いますが。

 

と、こうして見ていると、本作は"大人も"楽しめる作品というより、"大人が"楽しめる作品という気がします。子供にとっては、中盤のバスのチェイスシーンのような楽しいシーンが続く方が楽しめるでしょうからね(逆に大人目線で見ると、このシーンは少々だれる)。


子供向けアニメの劇場版で、ここまで大人向けに振り切った作品にするとは、製作陣はなかなか肝が据わっていますね。原恵一監督は、次作『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』と併せて、「クレヨンしんちゃんの映画は感動的」というイメージを作りあげました。

 

さて、公開当時に父母世代の心を掴んだ本作ですが、現代の父母世代には響きにくくなっているという話も聞きます。ひろしは、30代半ばで2人の子に恵まれ、春日部にマイホーム、マイカーを持ち、東京の商社の係長。公開当時は、日本の平均的な一家の主に見えたひろしですが、現代の日本ではハイスペックに見えてしまう。ひろしが享受する"何気ない日常の幸せ"は、"勝ち組のぜいたくな幸せ"に見えてしまう、と。


この20年でOECD各国の平均賃金が20%程度上昇しているのに対し、日本は横ばい。相対的に日本人は貧しくなっています。商社の係長のような収入なんてない、結婚したくてもできない、マイホームやマイカーが欲しくても買えない、という人は増えているでしょう(それ自体を望まない人も増えていますが)。


こんな風に、社会の変化によって過去の作品の見え方が変わってくるというのは、なかなか興味深いことです。本作が大好きな私としては残念なことではあるのですが…。

 

最後に

今回は、映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』の解説&感想でした。時代が変わって受け手の印象に多少の変化はあれど、大人に向けられたストーリーやノスタルジックな描写に心を掴まれる作品です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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