どうも、たきじです。
今回は、映画『ルパン三世 カリオストロの城』の解説&感想です。
本作は宮崎駿監督の映画監督デビュー作。映画の監督としては初めてになりますが、それまでにも多数のTVアニメや映画の製作に関わっていますし、本作では共同脚本を務めており、今日私達が思い浮かべる"宮崎駿らしさ"は随所に感じられます。本作は『ルパン三世』のフォーマットと宮崎アニメが融合した稀有な作品と言えるでしょう。
作品情報
タイトル:ルパン三世 カリオストロの城
製作年 :1979年
製作国 :日本
監督 :宮崎駿
声の出演:山田康雄
小林清志
井上真樹夫
増山江威子
納谷悟朗
島本須美
石田太郎
上映時間:100分
解説&感想(ネタバレあり)
すっきりまとまったストーリー
本作のストーリーは、教科書的に起承転結がすっきりまとまっています。
「起」となる冒頭では、ルパンと次元がカジノから現金を強奪、それがカリオストロ公国で作られていると噂の精巧な偽札であったことから、彼らはカリオストロ公国へ向かいます。このスムーズな導入。車で男達から逃げるクラリスを助けるカーチェイスで冒頭から盛り上げます。
次元「どっちにつく?」
ルパン「おんな〜♪」
次元「だろうな」
困難な状況も楽しむ彼らのキャラクターも光る軽快なオープニングです。
「承」は、クラリスのいる城への潜入と脱出。銭形警部率いる国際警察や城の衛兵を欺いて城に潜入する様子を、時にコミカルに、時にスリリングに描きつつ、クラリスとの再会シーンをロマンティックに描きます。城からの脱出では、銭形との一時休戦、共闘で盛り上げます。
「転」では、怪我を負い寝込むルパン、偽札作りを暴くも国際警察に相手にされない銭形が描かれます。ここではルパンの回想を通じて、ルパンとクラリスの出会いが描かれ、クラリスの元で庭師をしていた老人とクラリスの飼犬だったカールが登場します。
そして「結」では、ルパンの復活から、結婚式への乱入に始まる熱いクライマックスが描かれます。悪は倒され、偽札作りの悪行も暴かれ、クラリスは自由になるという気持ちのいい結末です。庭師とカールの存在が、このハッピーエンドによく効いています。
「あなたの心です」という銭形の有名な台詞はクサすぎる気がします。むしろ、庭師の「なんと気持ちのいい連中だろう」の方が印象的。万事解決させて、銭形と相変わらずドタバタしながら去っていくルパン達のことを言い得て妙です。
独自の世界観の構築
本作の舞台はカリオストロ公国というヨーロッパの架空の国。日本人がイメージする異国情緒あふれるヨーロッパの雰囲気を醸し出しています。宮崎アニメで言えば、『魔女の宅急便』の舞台の海辺の街なんかもその類ですが、カリオストロの場合はファンタジーに出てきそうな雰囲気が、より刺激的に感じます。
そもそもお城に囚われたお姫様を助けるという設定自体が、ファンタジーの古典的な設定。この設定はシンプルに楽しいのです。城の仕掛けや地下の牢獄、水道橋からの潜入などといったファクターも、ワクワクを掻き立てます。
そんな異世界の雰囲気の中に、きつねうどんのカップ麺を積み込んだ男達がのりこんできたかと思えば、十手を携えた警察が埼玉ナンバーのパトカーで現れるというシュールさよ!ルパンを警戒して待機する機動隊がカップ麺をすする姿は、浅間山荘事件のパロディのようで面白いです。
キャラクター造形
純真無垢な少女クラリスのキャラクター造形は、宮崎アニメらしさを色濃く感じます。これに引っ張られてか、ルパンも他作品よりも善人に見えますし、不二子もお色気控えめ。良くも悪くもファミリー向けルパンになっています。
特筆すべきは敵のキャラクター。悪役面の伯爵もさることながら、いかにも怪しい執事!なんとも言えない顔の色がいい味出しています。一目で悪いやつと分かる見事な造形です。
そして極め付きは暗殺集団。黒ずくめで長い腕を垂らした様子や、鉤爪に怪しい目。もうほんと気持ち悪いです(笑)
アニメーションと演出
上に述べた冒頭のカーチェイスを始めとして、アクションシーンにおけるアニメーションの躍動感は素晴らしいものがあります。
クライマックスでは、結婚式にルパン達が乱入してアクションが始まります。厳かな結婚式の"静"と、ルパンが仕込んだ花火が打ち上がる中で始まるアクションの"動"。メリハリの効いた演出も見事です。時計台の歯車というギミックをたっぷり使ったアクションも非常に面白い画作りです。
あと本作で印象的なのは、"落下"のシーンが多いこと。冒頭のクラリス救出では、ルパンとクラリスが崖から落下します。クラリスのいる塔へと飛ぼうとしたルパンは足を滑らせて屋根から落ちそうになります。銭形警部とルパンはそれぞれ落とし穴から地下へ落下します。そしてクライマックスでは時計台からクラリスとルパンが落下します。
このような落下シーンは、スリルを演出するとともに、高さ方向の移動をたっぷり見せることで、スクリーンの中を暴れ回るルパンの躍動感も強調されています。
古さを感じるところも
本作は1979年公開ですから、さすがに古く感じる部分もあります。今の感覚で言うと、オープニングなんかはテーマ曲でバチッと決めて欲しいところですが、ゆったりとした主題歌が流れます。
あとは次元、五ェ門といった"助演"のキャラクターの見せ場は現代の映画に比べて少なめな印象。現代の映画なら、クライマックスの闘いでは、ルパンと伯爵の闘いに次元や五ェ門、銭形、不二子の活躍をクロスカッティングで織り交ぜて描きそうなところですが、本作では、ほぼルパンと伯爵の闘いのみにフォーカスされます。
こうしたアクションシーンでクロスカッティングを効果的に用いる映画というとスター・ウォーズ・シリーズが思い浮かびますが、第一作の『スター・ウォーズ』の公開が1977年ですから、こうした教科書的な編集は、まだ確立されていなかったのでしょうね。
最後に
今回は『ルパン三世 カリオストロの城』の解説&感想でした。総じてレベルの高い作品で、アニメ映画の歴史の1ページとして重要な作品だと思います。未だに数年ごとに地上波で放送されるのも頷けますね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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