どうも、たきじです。
今回は映画『ジュラシック・パーク』の解説&感想です。1993年公開のアメリカ映画で、日本の興行収入記録としては、当時『E.T.』に次ぐ大ヒットとなった作品です。
作品情報
タイトル:ジュラシック・パーク
原題 :Jurassic Park
製作年 :1993年
製作国 :アメリカ
監督 :スティーヴン・スピルバーグ
出演 :サム・ニール
ローラ・ダーン
ジェフ・ゴールドブラム
リチャード・アッテンボロー
アリアナ・リチャーズ
ジョゼフ・マゼロ
サミュエル・L・ジャクソン
上映時間:127分
解説&感想(ネタバレあり)
当時の最先端の映像技術
琥珀の中の蚊に残された恐竜の血液のDNAによって、恐竜を現代に蘇らせる。このアイデアがまず素晴らしい。当時科学大好き少年だった私にとって、この設定だけでワクワクでした。
それを、脂の乗り切ったスティーヴン・スピルバーグ監督が、当時の映像技術を駆使して描くわけですから、当時の観客の本作への期待は想像に難くないと思います。
その映像技術とは、すなわち、CGとアニマトロニクスです。
90年代の映像技術については『ターミネーター2 』の記事でも詳しく述べましたが、当時はCGを始めとする映像技術が日進月歩の時代でした。これまでは見たことのないような視覚効果が話題となる映画が数年ごとに公開されていました。
本作も『ターミネーター2 』と同じく、CGはILM、アニマトロニクスはスタン・ウィンストンが手がけています。アニマトロニクスというのはロボットを使って撮影する映像技術。本作では、恐竜が走るシーンなど、恐竜の全身が映るシーンではCGを使い、頭部のアップなどのシーンではアニマトロニクスが使われています。
この使い分けが重要なところで、最先端のCGを使いつつも、当時のCG技術では表現し切れない細部にはアニマトロニクスを使うことで、驚くほど自然な映像で動く恐竜を再現しているのです。
当時はこのように自然に動く恐竜をスクリーンで見ることが無かったわけです。それ故に、多くの人にとって、恐竜が出てくる一つ一つのシーンがもうワクワクだったのです。
特に、グラント博士達が生きている恐竜を目の当たりにするシーンでは、博士達と一緒に、スクリーンを見つめる観客も感動していたと思います。
ここで流れるジョン・ウィリアムズによるテーマ曲が、この感動を盛り上げてくれるのは言うまでもありません。
スピルバーグの恐怖演出
本作が今見てもこんなに面白いのは、色褪せない魅力を放つスピルバーグ演出の賜物でしょう。映画ファンなら"スピルバーグっぽい演出"ってなんとなくイメージできると思うのですが、そのイメージは本作の演出から来ているものも少なくないと思います。
例えばティラノサウルスが現れるシーン。ギリギリまでティラノサウルスの姿は見せない。コップの振動、響き渡る重低音、ヤギがいない!の畳み掛け。
ティラノサウルスが現れてからも、それはとどまることを知らず。グラント博士達はティラノサウルスに気づかれまいと息を潜める。レックスが懐中電灯を照らしてしまい、車が狙われる(光を浴びた瞬間だけ瞳孔が閉じてる!)。車が横転させられる。泥水が流れ込んでくる。ティムが足を挟まれて動けない。グラント博士とレックスは息を潜めてやり過ごそうとする。車ごと崖っぷちに追いやられる。この畳み掛けです。
息を潜めるという"静"と、まさにティラノサウルスの攻撃を受ける"動"。この静と動の緊張感による緩急もまた素晴らしいところです。
他にもスピルバーグっぽさを強く感じるのは、エリーが電力を復旧させる場面です。いつ恐竜に襲われるか分からない緊張感の中、電力復旧を急ぐエリー。ちょうどその頃、電源が切れた高電圧フェンスによじ登っているグラント博士と子供達。2つの場所をカットバックで交互に描きます。
エリーの立場では、早く電力を復旧して安全な場所へ戻りたい。しかし映画を見る我々は、今電力が復旧されるとグラント博士達が危ないことを知っています。この状況が緊張感を生み出しています。
電力復旧の手順がやたら複雑になっているのは、今見ると少し滑稽にも見えますが、この点は現実性よりも映画としての演出を優先しているのでしょう。この複雑な手順を踏んだ電力復旧が、このシーンのサスペンスを盛り上げていることは確かです。
ヴェロキラプトルの恐怖
そして、スピルバーグの恐怖演出が極まるのが、なんと言っても子供達がヴェロキラプトルに襲われるクライマックスでしょう。
ラプトルのヤバさは、冒頭から繰り返し印象付けられています。グラント博士が生意気な子供をビビらせるように解説するシーンや、牛一頭を餌として与えるシーンです。
インパクト的にティラノサウルスがラスボスの立ち位置かと思いきや、マジでやばい真のラスボスは、小回りの良さとコンビネーションで襲ってくるラプトルというわけです。エリーやパークのスタッフを襲うことで、その姿を現すわけですが、クライマックスで子供達を襲うのです。
ゼリーを持つレックス手が震え、ラプトルの絵にラプトルの影が重なるという登場シーンから決まっています。
厨房に逃げ込む2人を追って厨房のドアの窓から顔を覗かせるラプトル。ギョロリとした目。鼻息で曇る窓。この演出がたまりません!
厨房という閉鎖された空間をたっぷり使った2対2の追いかけっこ。おたま、棚の扉、ステンレスの反射、冷凍庫と、そこにあるものを使い切るかのような演出の畳み掛けに痺れます。
最後にはティラノサウルスに助けられるというまさかの結末。ここでもジョン・ウィリアムズの旋律が勇壮に流れ、ティラノサウルスが雄叫びを上げます。そこへ、"WHEN DINOSAURS RULED THE EARTH"(恐竜が地球を支配した時)と書かれた横断幕がひらひらと落ちてきます。
もう最高!この狙い過ぎの横断幕に少しニンマリしつつ、大興奮の自分がいます。
ちなみにこの"WHEN DINOSAURS RULED THE EARTH"というのは、1970年公開のイギリス映画『恐竜時代』の原題。さほど評価の高い映画でもないようですが、恐竜映画の先駆に対するスピルバーグなりのオマージュかもしれませんね。
余談ですが、ラプトルから逃れるためにグラント博士達が天井裏に逃げ込むシーンがありますが、ここでラプトルの身体にアルファベットが羅列された細かい影が映ります。このアルファベットはA・T・G・Cで構成されていて、DNAの塩基配列になっています。DNA操作で生まれた恐竜に、ここでDNAを投影するとは、演出が細かいですね。
いや、私は高校で生物を選択しなかったので、本当のところ「塩基配列ってなんぞや?」という感じです(笑)。ただ、同じくDNAが関わる映画『ガタカ』(GATTACA)のタイトルがDNAの塩基配列で構成されているのを聞いて感心した記憶があったので、今回初めてこの演出に気付きました。思わず巻き戻して興奮してしまいましたよ(笑)
最後に
今回は映画『ジュラシック・パーク』の解説&感想でした。例え現代の映像技術には劣ろうとも、時代を作った映画だけあって古さをほとんど感じさせませんし、スピルバーグ演出がさえ渡った名作です。その後、続編が作られていますが、間違いなく本作が最高の出来ですので、未見の方は本作だけでも鑑賞をおすすめします。
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