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映画『荒野の用心棒』解説&感想 3つの才能が集結したマカロニ・ウェスタンの草分け

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どうも、たきじです。

 

今回は映画『荒野の用心棒』の解説&感想です。監督セルジオ・レオーネ×主演クリント・イーストウッドのドル箱三部作(dollars Trilogy)と括られる3作品の第1作で、マカロニ・ウェスタンの草分けと言える作品です。

 

 

作品情報

タイトル:荒野の用心棒

原題  :Per un pugno di dollari

製作年 :1964年

製作国 :イタリア、西ドイツ、スペイン

監督  :セルジオ・レオーネ

出演  :クリント・イーストウッド

     マリアンネ・コッホ

     ジャン・マリア・ヴォロンテ

 上映時間:96分

 

解説&感想(ネタバレあり)

マカロニ・ウェスタンの草分け

アメリカの西部開拓時代を描いた映画は、"西部劇(ウェスタン)"とジャンル分けされます。その中でも、本国アメリカ製ではなく、イタリア製の西部劇は"マカロニ・ウェスタン"と呼ばれます(海外ではスパゲッティ・ウェスタンと呼ばれるのが一般的)。もっとも、撮影はスペインで行われることが多かったようですが。


本作はその草分けの作品。アメリカン・ニューシネマの波が起こる前夜のアメリカ映画にはない暴力的な表現や激しい銃撃戦、エンニオ・モリコーネによる革新的な音楽が彩る決闘。そうした要素が後のイタリア製西部劇にも引き継がれ、いつしかマカロニ・ウェスタンというジャンルとなりました。


セルジオ・レオーネ監督は、本作に続く『夕陽のガンマン』、『続・夕陽のガンマン』でもクリント・イーストウッド主演で映画を撮っており(音楽はいずれもエンニオ・モリコーネ)、いずれもマカロニ・ウェスタンを代表する作品となっています。


3作品にストーリーのつながりはありませんが、クリント・イーストウッド演じる"名無しの男"(作品ごとに異なるニックネームで呼ばれており、本作ではジョー)は性格や服装から同一人物とみなすことができ、本作と合わせてドル箱三部作(dollars Trilogy)と呼ばれています。

 

用心棒の非公式リメイク

本作は黒澤明監督の『用心棒』を西部劇に置き換えたもので、ストーリーはほぼ同じ。これは著作権者の東宝に無許可での非公式リメイクであり、裁判沙汰になって東宝が勝訴しています。


『用心棒』で三船敏郎が演じた桑畑三十郎も偽名(姓は桑畑を見ながら適当に名乗ったもので、名も年齢に基づく偽名と示唆されている)で、名無し男というのも共通していますね。ストーリー的な繋がりはないけれど同じキャラクターが主人公という点も、『用心棒』と『椿三十郎』の関係と同じです。

 


3つの才能の集結

上述の通り、本作は言ってしまえば盗作なのですが、盗作映画として切り捨てるにはもったいないくらいによくできています。元の脚本がいいのでストーリーが面白いのは当然として、確実に本作独自の魅力を持っています。


それはやはり、後に世界的な名声を手に入れる監督セルジオ・レオーネ、俳優クリント・イーストウッド、作曲家エンニオ・モリコーネという才能が集結していることが大きいでしょう。いずれも本作の製作当時は30代で、まだまだ駆け出し。それでもそれぞれの仕事が、本作に魅力を生み出しています。


例えば"つかみ"のシーン。イーストウッド演じるジョーが、ロホスに雇ってもらうために、ロホスと敵対する保安官バクスターの一味を相手に銃の腕前を見せつけるシーンです。


『用心棒』でこれに相当するシーンの素晴らしさは、『用心棒』の記事で詳しく述べた通り。さりげなさと荒々しさを兼ね備えたリアリズムで、抜群にかっこいいシーンになっていました。


一方の本作はどうでしょう。


馬を撃たれたことについて話をつけにいく形でバクスターの一味に歩み寄り、謝罪を迫るジョー。静かに怒りを示しながら一味を煽ります。男達のクローズアップ、緊張感を高める音楽、一瞬で4人を仕留める早撃ち。縛り首にしてやると言うバクスターに対し、ジョーは「後片付け頼むぜ」と言って立ち去ります。そして歩きながらまっすぐ前を見据えたまま、棺桶屋に対し「(棺桶)4つだ」と告げます。


『用心棒』とはある意味で対照的に、バリバリに仰々しくかっこつけたシーンになっています。

 

とことん魅せるクライマックス

クライマックスも然り。


用心棒』では、風に舞う激しい砂煙の中、三十郎が登場。抑えた音楽で緊張感を盛り上げ、無言のまま激しい殺陣が始まる、痺れるシーンでした。


本作ではジョー自らが爆発させたダイナマイトによる砂煙の中からジョーが現れます。モリコーネのメロディアスな音楽が仰々しく鳴り響き、むさ苦しい男達の顔がクローズアップで映し出されます。音楽が終わり、台詞と共に決闘が始まります。


これまた『用心棒』とは対照的ですが、いかにもレオーネらしい演出が濃縮された素晴らしいシーンになっていました。


ポンチョの中に鉄板を仕込むという策は、ジョーがラモンの腕を認めているが故の策というのも良いですね。ここでラモン以外を早撃ちで一気に仕留めた後、ラモンとの一騎打ちになるというもう一展開もたまりません。


ジョーは「ライフル相手に拳銃では勝てる見込みはない」と言っていたライフル使いのラモンに拳銃で挑みます。弾込めからの早撃ち対決という形で、ライフルを制し、銃口を向けるジョー。2人の男にさらに極端にクローズアップするカメラ。そして銃弾が放たれます。


いやー、魅せますねー。


ちなみにポンチョの中に鉄板を仕込むというネタは、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』でも引用されています。日本の時代劇がイタリアで西部劇になり、西部劇の本国アメリカでパロディにされる。こうしたグローバルな系譜も映画という芸術の面白いところです。

 

最後に

今回は映画『荒野の用心棒』の解説&感想でした。『用心棒』の非公式リメイクながら、監督セルジオ・レオーネ、俳優クリント・イーストウッド、作曲家エンニオ・モリコーネという才能が集結し、素晴らしい作品に仕上がったマカロニ・ウェスタンの草分けの作品です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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