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映画『続・夕陽のガンマン』解説&感想 マカロニ・ウェスタンの最高峰

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どうも、たきじです。

 

今回は1966年公開の映画『続・夕陽のガンマン』の解説&感想です。

 

 

作品情報

タイトル:続・夕陽のガンマン

原題  :Il buono, il brutto, il cattivo

製作年 :1966年

製作国 :イタリア、西ドイツ、スペイン、アメリカ

監督  :セルジオ・レオーネ

出演  :クリント・イーストウッド 
     リー・ヴァン・クリーフ
     イーライ・ウォラック

上映時間:130分

 

解説&感想(ネタバレあり)

"三部作"の第3作

映画『続・夕陽のガンマン』は、『荒野の用心棒』、『夕陽のガンマン』と合わせて、監督セルジオ・レオーネ×主演クリント・イーストウッドによるドル箱三部作(dollars Trilogy)の第3作であり、マカロニ・ウェスタンを代表する作品の一つです。この三部作は、ストーリーのつながりは無いものの、イーストウッド演じる主人公は、3作品とも同一人物と思われます(いずれの作品でも「名無しの男」ですが、本作では「ブロンディ」と呼ばれている)。


※マカロニ・ウェスタンやドル箱三部作についての解説は『荒野の用心棒』の記事を参照

 

邦題から続編と誤解されがちですが、本作は『夕陽のガンマン』の直接の続編ではなく、上述の通り、ストーリーのつながりはありません。それに、夕陽も出てきません(笑)。これは『夕陽のガンマン』のヒットにあやかった邦題と言えるでしょう。

 

原題の『 Il buono, il brutto, il cattivo』、英題の『The Good, the Bad and the Ugly』は同様の意味(ただし、2番目と3番目が逆)で、英題の順番で言えば、「善玉、悪玉、卑劣漢」となります。劇中で明示されるように、それぞれブロンディ、エンジェル・アイズ、トゥーコを指しています。

 

個性豊かな3人のキャラクター

タイトルの通り、この個性豊かな3人のキャラクターが、本作の何よりの魅力でしょう。それぞれ、登場シーンから強烈な印象を残します。

 

映画冒頭、画面に登場するのは誰とも分からぬ3人の男。荒野を捉えたワイドショットと、むさくるしい男たちの極端なクローズアップが繰り返されます。このようなショットは過去の作品でも見られるレオーネ演出ですが、本作でさらに大胆さを増し、独自の演出として確立した感があります。

 

男たちは黙って歩み寄り、やがて銃を構えて建物の中に飛び入ります。激しい銃声の後、窓を破って飛び出してくるのが"卑劣漢"トゥーコです。

 

場面は変わって別の荒野。一家の暮らす家に現れるのが"悪玉"エンジェル・アイズ。不穏な空気を察し、家長の男を残して去る家族。男は食事を始め、エンジェル・アイズも向き合って座り、それに加わります。

 

トゥーコのシーンを含め、映画が始まってここまで10分以上、いっさい台詞なく運ぶ物語。この緊迫感がたまりません。エンジェル・アイズが男をずっと見据えたまま、視線を外さずに食事を器に盛り、食べるという演出もいいです。やがて男を無慈悲に撃ち殺すエンジェル・アイズ。悪玉ぶりが鮮烈に描かれます。

 

そして場面はまた別の荒野。賞金首のトゥーコを狙う3人の賞金稼ぎ。そこに颯爽と現れ、3人を早撃ちで仕留めるのが"善玉"ブロンディ。トゥーコを助けたかに見えましたが、そのままトゥーコを連行し、賞金を受け取ります。

 

しかし、いざトゥーコが縛り首の刑に処されようという時に、彼の首にかかった縄を銃で撃ち抜き、彼を助けます。そして2人は賞金を山分けするのでした。善玉とは言え、賞金首と結託して詐欺的に稼ぎ、やがてはトゥーコを荒野に置き去りにするというアンチヒーローです。

 

こうして3人のキャラクターの紹介が終わる時点で、映画が始まってから30分経過。時間をたっぷり使ってキャラクターを描きます。また、各キャラクターの紹介時に画面が静止し(いわゆるフリーズフレーム)、エンニオ・モリコーネによるテーマ曲の一節とともに、それぞれ"the ugly"、"the bad"、"the good"と表示される演出も決まっています。

 

その後も物語を通じてキャラクターが描き込まれ、それぞれの個性を際立たせています。

 

ブロンディとトゥーコの凸凹コンビ

こうして描き込まれた3人ですが、特に面白いのはブロンディとトゥーコの凸凹コンビ。協力関係にあった2人がブロンディの裏切りにより仲違いし、今度はトゥーコがブロンディに復讐を試みるなど、関係はこじれていきます。

 

それが、20万ドルの金貨をきっかけに変化します。金貨が隠された墓地の名前を聞いたトゥーコと、墓標の名前を聞いたブロンディ。互いの情報がないと金貨は手に入らない。協力をせざるを得ないこの状況設定が見事です。

 

やがてエンジェル・アイズとの対立においても2人の利害は一致します。2人が共闘してエンジェル・アイズの手下たちに立ち向かう場面は、これがクライマックスなのかと錯覚するくらいに、物語の大きな盛り上がりです。

 

建物の影から敵が迫るじりじりとした緊張感、時折り炸裂する大砲、巻き起こる砂煙、素早い銃撃。演出も見事に決まっています。

 

レオーネ演出極まるクライマックス

しかし、本作の本当のクライマックスはこんなものではありません。ラスト15分の盛り上がりは、半端ではありません。

 

墓地を見つけて喜ぶトゥーコの前に、現れるブロンディ。ポンチョを羽織った姿が過去2作と繋がります。そして、エンジェル・アイズも現れ、状況が整います。最高の流れで、三つ巴の決闘が始まるのです。

 

エンニオ・モリコーネによる音楽が高らかに流れる中、じりじりと動きながら距離をとる3人。それぞれの顔や手元のクローズアップ。カメラは次第に目のクローズアップまで寄りに寄り、カッティングもテンポアップ。そして、一瞬で決着。レオーネ演出がここに極まります。

 

3人が戦闘態勢に入って、何と約5分もの睨み合い。高まる緊張感、そしてあまりのかっこよさに圧倒されて、初見時は思わず笑ってしまうほどでした。

 

そして映画はエピローグへ。


「人間には2種類ある。弾の入った銃を持つ奴と地面を掘る奴だ。」作中、トゥーコが繰り返し用いた言い回しで、ブロンディがトゥーコに地面を掘らせます。

 

縄に首を掛けさせられるトゥーコ。トゥーコを放置して去ったブロンディでしたが、遠くから銃弾で縄を切ります。序盤と同じ構図が再現される快感。ここで序盤と同じフリーズフレームで映し出される"the good"、"the bad"、"the ugly"。モリコーネによるテーマ曲。ワイドショットの映像と、去っていくブロンディ。

 

なんと見事なラストシーンでしょう!

 

ストーリー運びのぎこちなさ

さて、そんな素晴らしい本作ですが、ストーリー運びにはぎこちなさを感じる部分も少なくないのが玉に瑕です。

 

例えば、ブロンディとトゥーコの2人が偶然立ち寄ることになった伝道所にトゥーコの兄がいるとか、2人が北軍の捕虜になって入れられた収容所に軍曹としてエンジェル・アイズがいるとか、あまりに唐突な展開には苦笑いです。

 

また、終盤の橋の破壊シーンでは、激しい砲撃の中で2人がうずくまっていたら、次のシーンでは周囲から人が消えている、という流れもよく分かりません(笑)。そもそも、この橋の破壊の場面自体、結構間延びしています。スケールはすごいんですけど。

 

間延びということで言えば、トゥーコが墓地に辿り着いて走り回るシーンはあまりに長すぎです。クライマックスの決闘シーンのような緊張感があれば別ですが、ただ走り回るだけで約3分というのは、モリコーネの音楽を聞かせるシーンだと考えても冗長と言わざるをえません。

 

最後に

今回は映画『続・夕陽のガンマン』の解説&感想でした。ストーリー運びにはぎこちなさを感じるものの、本作は間違いなくマカロニ・ウェスタンの最高峰に位置する作品です。個性的なキャラクター、エンニオ・モリコーネの名曲、そしてセルジオ・レオーネ監督の卓越した演出が融合し、唯一無二の西部劇に仕上がっています。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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