どうも、たきじです。
今回は2015年公開のアメリカ映画『ヘイトフル・エイト』の解説&感想です。
作品情報
タイトル:ヘイトフル・エイト
原題 :The Hateful Eight
製作年 :2015年
製作国 :アメリカ
監督 :クエンティン・タランティーノ
出演 :サミュエル・L・ジャクソン
カート・ラッセル
ジェニファー・ジェイソン・リー
ウォルトン・ゴギンズ
デミアン・ビチル
ティム・ロス
マイケル・マドセン
ブルース・ダーン
ジェームズ・パークス
ゾーイ・ベル
チャニング・テイタム
上映時間:167分
解説&感想(ネタバレあり)
西部開拓時代、吹雪で一軒の家屋で身動きが取れなくなった8人を中心に繰り広げられるバイオレンス映画。魅力的なキャラクター、緊張感あふれるストーリー、センスあふれる会話。タランティーノ脚本の魅力がたっぷり現れた作品です。
まずはキャラクター。南北戦争では北軍兵として活躍した黒人の賞金稼ぎウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)、賞金首を必ず生きたまま引き渡し絞首刑にかける"首吊り人"と呼ばれる賞金稼ぎルース(カート・ラッセル)、1万ドルもの賞金のかかった賞金首デイジー(ジェニファー・ジェイソン・リー)、有名な略奪団の団長の末っ子で新任の保安官だというマニックス(ウォルトン・ゴギンズ)、死刑執行人だというイギリス英語を話す紳士モブレー(ティム・ロス)…。次々に登場する人物それぞれが絶妙なキャラ付けです。
ストーリーも素晴らしいです。馬車の乗員が1人、2人と増えていきますが、その度に醸し出される緊張感。ミニーの紳士服飾店に着いてからも、人物の間の因縁が渦巻き、疑心暗鬼の中で物語が展開していきます。
やがてルースが毒殺され、犯人探しからの撃ち合いによりメチャクチャに。物語が大きく動いたところで、その日の朝早くに時間が遡り、事の顛末が明かされる。この構成は見事でした。
最後にはさらに血みどろのメチャクチャに。登場人物それぞれの思惑の交錯。激しいバイオレンス。結果的に、本作に登場した人物は全員死亡(生きている者も死にゆくことが示唆)。昔からのタランティーノ映画の雰囲気が溢れる作品ですね。
登場人物が他の人物に対して疑心暗鬼に陥る中で、やがて撃ち合いになるという展開は、タランティーノのデビュー作の『レザボア・ドッグス』を想起させますね。また、雪に囲まれて身動きが取れない状況を含め、ラストシーンの雰囲気は『遊星からの物体X』(本作でルースを演じたカート・ラッセル主演)を想起させます(こちらはタランティーノ作品ではありません。念のため)。
さて、タランティーノ監督の脚本は、ストーリーのみならず、やはりちょっとした味付けが絶妙です。
例えば、ミニーの紳士服飾店の入り口のドアを誰かが開けるたびに、中にいる人物が閉めろと叫ぶくだりの反復。これは笑ってしまいます。
また、ウォーレンの南軍時代のエピソードだったり、ミニーの紳士服飾店が「メキシコ人お断り」だったエピソードだったり、物語や人物描写の味付けとなるエピソードの語り口も素晴らしいです。これはもうタランティーノ監督の十八番ですね。
「リンカーンの手紙」という小道具が、ストーリーでしっかり生かされているのもさすがです。デイジーを吊るした後、マニックスが手紙を読むことで締めるラストシーンは見事と言うほかありませんね。
さて、本作のオープニングは他のタランティーノ監督作品と趣が違いますね。ワイドショットで長回しの撮影。雪深い平原を映し出した映像に、やがて馬車がフレームインしてきます。たっぷり時間を使って描かれるオープニングで、エンニオ・モリコーネの音楽をじっくり聞かせてくれます。
ワイドショット、長回し、モリコーネで構成されるオープニングは、『夕陽のガンマン』も想起させますね。タランティーノ監督はマカロニ・ウェスタンが大好きで、モリコーネの曲は過去作でも使用していますが、本作では念願叶って音楽にモリコーネを起用。作中の音楽を既存曲でうまくまとめ上げるのが常のタランティーノ監督ですが、本作では初めて全編オリジナルスコアとなっています。
ちなみに私が最も敬愛する作曲家もモリコーネ。数々の名曲を書いてきたモリコーネですが、アカデミー作曲賞の受賞は本作のみです(名誉賞は2006年に受賞)。モリコーネの仕事の中で本作が特別優れているわけではないものの、これまで運悪く受賞できていなかったモリコーネへの最大限の敬意の現れが、本作での受賞ということでしょうね。
最後に
今回は映画『ヘイトフル・エイト』の解説&感想でした。魅力的なキャラクター、緊張感あふれるストーリー、センスあふれる会話。タランティーノ脚本の魅力がたっぷり現れた作品でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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