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映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』解説&感想 フィルムノワールのバットマン

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どうも、たきじです。

 

今回は2022年公開のアメリカ映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の解説&感想です。マット・リーヴス監督によりリブートされたバットマンシリーズの第1作です。

 

 

作品情報

タイトル:THE BATMAN-ザ・バットマン-

原題  :The Batman

製作年 :2022年

製作国 :アメリカ

監督  :マット・リーヴス

出演  :ロバート・パティンソン
     ゾーイ・クラヴィッツ
     ポール・ダノ
     ジェフリー・ライト
     ジョン・タトゥーロ
     ピーター・サースガード
     アンディ・サーキス
     コリン・ファレル

 上映時間:176分

 

解説&感想(ネタバレあり)

4度目の長編映画シリーズ

バットマンがコミックスで初登場したのは1939年と古く、今では日本でもトップクラスに有名なアメコミのスーパーヒーローの一人となっています。何度も実写化されており、長編映画のシリーズとしては、本作で4度目となります。


最初は、1966年の『バットマン』。同年に始まったテレビシリーズの映画版です。こちらの作品は、パッケージからも想像できるように、ファミリー向けのコミカルタッチの作品です。


次が、1989年公開のティム・バートン監督による『バットマン』に始まるシリーズ。こちらはティム・バートンらしいダーク&ファンタジーな世界観で描かれた作品です。途中でジョエル・シュマッカーに監督を交代して4作品が製作されました。


次が、2005年公開のクリストファー・ノーラン監督による『バットマン ビギンズ』に始まる三部作(ダークナイト・トリロジー)ダーク&リアリズムな世界観で描かれた、現実的でヘヴィーなストーリー。アメコミ映画の歴史を変えたと言っても過言ではない、大傑作でした(特に第2作『ダークナイト』)。


そして、2022年公開の本作。マット・リーヴス監督による新シリーズの第1作となります。ダーク&リアリズムな世界観はダークナイト・トリロジーと共通しますが、本作は"ダーク"がより強調されている印象を受けます。

 


フィルムノワールのバットマン

本作は物語が暗い。画面も暗い。バットマン=ブルース・ウェインも暗い。序盤と終盤で流れるニルヴァーナの"Something In The Way"も暗い。黒地に赤のタイトルバックやエンドロールも暗い。この暗さ、製作陣は本作をフィルムノワールとして描いていますね。それは物語を見ても明らかです。


本作では、ゴッサムという大都市を舞台に、バットマンは私立探偵のような立ち位置でシリアルキラーに対します。そこには政治、警察、司法の腐敗、裏社会の顔役の姿も見え隠れします。バットマンは、ナイトクラブで働くセリーナと出会い、彼女とも協力しながら真相を追います。物語はバットマンのモノローグに始まり、モノローグで終わります。バットマンは自らの心の傷に向き合いながら、生き方を模索していきます——。


フィルムノワールの定義があいまいですが、上に挙げた物語の要素はいずれもフィルムノワールの特徴に当てはまるものです。そして、本作の面白さもここにあります。


前半はリドラーによる連続殺人とバットマンに当てたなぞなぞによるミステリーで観客を惹きつけます。そして、終盤にかけてブルースの両親の死を取り巻く事実によってバットマンの心を揺さぶりドラマ性を深め、大きなうねりをもってクライマックスへとストーリーが展開していく構成は見事です。


個人的には、クライマックスはもう一盛り上がり欲しかったですが。

 

物語を通じたバットマンの変化

さて、印象的なのは、本作はシリーズがリブートされた第1作にもかかわらず、ブルースの出自やバットマン誕生の経緯の描写がかなり省略されていること。背景知識がない人だと物語に入りづらいかもしれませんが、一方で、本作の物語にしっかりと時間を割いて描くことができるのは利点でしょう。


本作ではまだブルースが実業家や慈善活動家として活動する前の若かりし時代とあって、ブルース・ウェインとしての描写はかなり少なく、もっぱらバットマンとしての姿が描写されます。


治安の悪さが深刻なゴッサムにおいて、両親を殺されたブルースは悪を憎み、バットマンとして自警活動を行っています。「I'm vengeance.(俺は復讐だ)」と名乗り、容赦なく悪党を打ちのめす姿はコウモリというよりも鬼のよう。


しかし映画終盤、バットマンはリドラーの仲間が同じ言葉を発するのを聞くとになります。リドラーが行ってきたこともまた復讐。社会の腐敗を憎み復讐する。それ自体はバットマンもリドラーも同じでした。図らずもバットマンはリドラーに影響を与えていたのです(こうしたモラル的曖昧さもフィルムノワール的です)。


やがてバットマンのモノローグでも語られるように、バットマンは復讐では過去を変えられないこと、ゴッサムに必要なのは希望であることを悟ります。発煙筒で光(闇との対比)を灯し、市民を助けるバットマンの姿からも、その変化が読み取れます。


復讐の男が、別の生き方に踏み出したことが示唆されたこの結末は、次作がどのように描かれるのか期待の持てる結末でした。この変化を踏まえれば、フィルムノワール的であった本作の作風も、次作では変化するかもしれませんね。

 


アクションはまずまず

さて、本作のアクションはどうでしょうか。復讐に燃えるバットマンのパワフルなアクションはなかなか見応えがありました。殺しこそしませんが、腰の入った打撃で悪党を容赦なく打ちのめす様子がいいですね。


個人的に一番良かったのはペンギンとのカーチェイス。激しいカーチェイスはとてもエキサイティング。そして何より、ペンギンの車を転覆させて追い詰めたバットマンが、炎上するトレーラーの炎をバックに詰め寄るショットの見事なこと!本作のアンチヒーローとしてのバットマンを象徴するようなショットでした。


ちなみにここでバットマンが運転するバットモービルは随分と簡素な造りでした。本作のブルースは、まだバットマンとして活動2年目ということで、装備類も仕上がっていないというところでしょうか。このあたりの変化も次作以降で楽しみなところです。

 


世界観にマッチしたキャラクター描写

さて、本作のメインヴィランはリドラー。1995年の映画『バットマン フォーエヴァー』ではジム・キャリーが演じた、バットマンの主要なヴィランの一人です。原色の緑にクエスチョンマークを散りばめたユニタードやスーツを着た姿のイメージが強いですが、本作ではトーンを落としたオリーブカラーのフィールドジャケットとマスクの姿。シリアス路線の本作の世界観に馴染んでいます。


クエスチョンマークの周りにデザインをあしらったモチーフもワンポイントで入れられていますね。このモチーフは殺人現場にも残されていて、彼のトレードマークとして使われています。リドラーが逮捕された時にラテアートのようにクエスチョンマークが描かれていたのもニクい演出でした。


リドラーを演じたのはポール・ダノ。高い知能とサイコっぷりが同居し、オタクっぽくもありつつカリスマ性を備えたリドラーをソツなく演じていました。


また、本作ではペンギンも登場。ペンギンもバットマンの主要なヴィランの一人で、1992年の『バットマン リターンズ』ではダニー・デヴィートが演じていました。本作ではコリン・ファレルが演じていますが、特殊メイクで顔変えての登場。コリン・ファレルだと思ってみても、頭の中で彼の顔とつながらないほどの変貌ぶりでした。


一方、アンディ・サーキスは執事のアルフレッド役で素顔で登場(笑)。『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムを始め、キング・コングやゴジラなど、モーション・キャプチャーで非人間のキャラクターを演じることの多いアンディ・サーキスですが、本作では落ち着いた演技で"人間"を好演しています。


キャットウーマンは本作ではヴィランではなくヒロインとしての登場。ライダースーツにニットの目出し帽を被っていて、目出し帽のカドがわずかに立って猫の耳のように見えるようなスタイルです。こちらも本作のシリアス路線に合わせて猫のコスプレ感が出ないような衣装になっていますね。


これはダークナイト・トリロジーの第3作『ダークナイト ライジング』でアン・ハサウェイが演じたキャットウーマンも同様でした。こちらはナイトビジョンゴーグルが猫の耳のように見えるようなスタイルでした。


そして、映画終盤。リドラーが収容されている監獄の隣には謎の囚人の姿が。彼自身のことは何も語られませんが、このシルエットと高笑いは明らかにジョーカー。バットマンの最大のライバルに位置付けられるジョーカーが次作のメインヴィランとなるのか、この点も次作が楽しみなところです。


もちろん、ジョーカーをメインヴィランとした作品としては、『ダークナイト』という大傑作があるので、それを超える脚本を仕上げるのは並大抵のことではないですけどね。

 

最後に

今回は映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の解説&感想でした。個人的には、今のところはダークナイト・トリロジーには及ばないと感じるものの、十分に満足できる内容でした。次作以降も期待したいところです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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