どうも、たきじです。
今回は2018年公開のアメリカ映画『グリーンブック』の解説&感想です。アカデミー賞では、作品賞の他、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、脚本賞の3部門を受賞しています。
作品情報
タイトル:グリーンブック
原題 :Green Book
製作年 :2018年
製作国 :アメリカ
監督 :ピーター・ファレリー
出演 :ヴィゴ・モーテンセン
マハーシャラ・アリ
リンダ・カーデリーニ
上映時間:130分
あらすじとタイトル解説
本作の舞台は1962年のアメリカ。黒人が白人と同じ公共施設を利用することを禁じるような人種差別的な法律がまかり通っていた時代です。ニューヨークのナイトクラブで用心棒を務めるイタリア系アメリカ人のトニー(ヴィゴ・モーテンセン)は、中西部から南部にかけてコンサートツアーを行う黒人のピアニスト、シャーリー(マハーシャラ・アリ)の運転手を務めることになります。
性格や価値観の違いから時にぶつかり合う2人。人種差別意識の強い南部にかけて、激しい差別に直面しながら旅を続けるうち、やがて2人はお互いを尊重し合い、友情が芽生えていきます。
タイトルの『グリーンブック』は、1936年から1966年まで毎年発行されていた旅行ガイド本『The Negro Motorist Green Book(黒人ドライバーのためのグリーン・ブック)』にちなみます。著者のヴィクター・H・グリーンにちなむこの本は、黒人でも利用可能な公共施設についてレビューされたものです。この本の存在そのものが、本作で描かれている当時の異常な社会を象徴しています。
感想(ネタバレあり)
程度の差こそあれ、いまだにアメリカ社会に影を落とす人種差別問題。本作は、この根深い社会問題の歴史の1ページを描きながら、トニーとシャーリーが分かり合う過程を笑いを交えて描いた作品です。
黒人の労働者が口をつけたグラスをゴミ箱に捨てたり、黒人を差別的な表現で呼んだりと、黒人に対して極めて差別的な思想を持っていたトニーが、次第に黒人であるシャーリーに理解を示すようになっていきます。
それは、トニーがシャーリーの才能に触れたこともあるでしょうが、やはり自身が守るべきクライアントであるシャーリーが、ひどく差別される様子を目の当たりにしたことが大きいでしょう。
バーに入っただけで集団で暴行されたり、演奏会の招待主から屋外の粗末なトイレで用を足すように強要されたりといった様子は、現代の感覚では信じられないような差別です。
演奏会に招いておきながら、シャーリーに対し非人間的な扱いをする招待主。彼らは教養人と思われたくて私の演奏を聴くのだというシャーリーの叫びは心に響きます。
南部にかけての旅を通して、トニーとシャーリーは分かり合います。最後にはシャーリーがレストランへの入場を拒否されたのを機に、トニーとシャーリーは演奏会を拒否して黒人の集まるバーに赴きます。シャーリーはウェイトレスに促され、粗末なピアノで演奏を披露します。
But not everyone can play Chopin. Not like I can.
だが誰もがショパンを弾けるわけではないんだ。私のようにはね。
シャーリーがショパンの"練習曲作品25第11番"を披露することで、中盤の台詞の伏線が回収されます。そしてバンドの演奏に合わせてシャーリーはアドリブで演奏。盛り上がる客。このシーンは映画のハイライトと言って良いでしょう。
また、トニーが盗んだ翡翠や、トニーが妻ドロレス(リンダ・カーデリーニ)に宛てた手紙などの小道具も映画を通して味付けとしてうまく機能しています。
ラストシーンでは、ドロレスがシャーリーとハグして彼に囁きます。
Thank you for helping him with the letters.
彼の手紙を手伝ってくれてありがとう。
トニーの手紙に感動しつつも、シャーリーが助けていたことは全てお見通しだったという、思わずニンマリしてしまう素敵なラストシーンでした。
本作でアカデミー助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリは素晴らしかったですが、個人的にはトニーを演じたヴィゴ・モーテンセンの演技の方が印象に残りました。そこまで演技派のイメージはありませんでしたが、本作では、外見の役作りと芝居の良さで、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。
荒っぽくありながらも憎めない男。シャーリーや黒人への見方が次第に変化していく複雑なキャラクターを見事に演じています。『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役しか知らない人には驚きだったのではないでしょうか。
ところで、本作はアカデミー作品賞も受賞しています。本作が同賞を受賞できたのは、人種差別問題を扱った本作が、近年の多様性重視の流れにうまくはまったこともあるでしょう。この年は、黒人のヒーローを描いた『ブラックパンサー』がヒーロー映画として初めてノミネート(大傑作『ダークナイト』でさえノミネートされなかった)されたり、非英語作品の『ROMA/ローマ』がノミネートされたりと、多様性重視の流れが加速した年でしたからね。翌年にはこちらも非英語作品である韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を受賞しています。
本作は良作であることは間違いないですが、個人的には賞レースの中心になるほどの作品とは思いませんでした。筋書きは至ってシンプルですし、予告編を見て想像される通りの作品で、特別な感動はありませんでした。期待の上も下も行かない感じでしたね。
最後に
今回は映画『グリーンブック』の解説&感想でした。期待の上も下も行かない作品ということは、ある意味期待通りだったということ。予告編を見て良さそうと思った人は、裏切られることはないと思いますので、ぜひご覧ください。
そういえば本作の前年に公開された『ゲット・アウト』も黒人青年が主人公で、人種をテーマにした作品でした(こちらはホラー映画ながらアカデミー作品賞にノミネートされていました)。『グリーンブック』を見てアメリカの人種差別問題を頭に入れた上で見ると、さらに楽しめる作品なので、こちらもおすすめです。
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