人生をもっと楽しく

人生を楽しむ多趣味サラリーマンが楽しいことを発信するブログ

映画『ゲット・アウト』解説&感想 世相を映す社会派ホラー

【スポンサーリンク】

どうも、Takijiです。

 

今回は映画『ゲット・アウト』の解説&感想です。人種問題をテーマとし、世相を映す社会派ホラーです。

 

作品情報

タイトル:ゲット・アウト

原題  :Get Out

製作年 :2017年

製作国 :アメリカ

監督  :ジョーダン・ピール

出演  :ダニエル・カルーヤ

     アリソン・ウィリアムズ

     キャサリン・キーナー

     ブラッドリー・ウィットフォード

     リル・レル・ハウリー

     ベティ・ガブリエル

     マーカス・ヘンダーソン

 上映時間:103分

 

『ゲット・アウト』の鑑賞は見放題作品数No.1のU-NEXTで!

あらすじ

クリス(ダニエル・カルーヤ)は白人の恋人のローズ(アリソン・ウィリアムズ)の両親に挨拶するため、ローズの実家のアーミテージ家に行くことになります。ローズはクリスが黒人であることを両親に伝えていないので、クリスはローズの両親に受け入れられるか不安に感じます。


ローズと共にアーミテージ家を訪れたクリスは、ローズの父ディーン(ブラッドリー・ウィットフォード)と母ミッシー(キャサリン・キーナー)に温かく迎えられます。その夜、タバコを吸おうと外に出たクリスはアーミテージ家の使用人である2人の黒人、ジョージナ(ベティ・ガブリエル)とウォルター(マーカス・ヘンダーソン)の奇行を目撃し…。

 

解説&感想(ネタバレあり)

衝撃の真実

本作は上に記載したあらすじからは想像できない予想外の展開を見せ、やがて衝撃の真実が明らかになります。巧みな伏線をもって描かれる真実をまずは整理したいと思います。


まず軸となる大きな真実は以下の2つです。


・アーミテージ家は黒人を拉致して、その体を別人に提供する(その人の脳を移植することで体を乗っとる)ことを生業としていた。

 

・クリスは盲目の画商ハドソンに競り落とされ、ハドソンの脳を移植されることになった。


この真実によって、それまで描かれていたこともすべて伏線になっていたことが分かり、各登場人物の隠された真実が見えてきます。


①ローズ

ローズの運転する車が鹿をはねて警官が来る序盤シーンでは、警官は運転していないクリスにまで身分証の提示を求めます。ここでローズは気丈に振る舞い、それを静止します。黒人と偏見なく接し、黒人が受ける理不尽な仕打ちにも立ち向かうリベラルな女性としてキャラクタライズされた彼女ですが、全てはビジネスのためだったと分かります。


このシーンでクリスに身分証を出させなかったのも、この後失踪予定のクリスがローズといたことの記録を残させないためと考えられます。


②ローズの家族

ローズの両親はクリスに禁煙を勧めます。これは、クリスの体を気遣って、あるいはタバコに対する嫌悪と考えるのが自然ですが、これもクリスの"商品"としての価値を考えてのことだったと分かります。


ローズの弟ジェレミーがクリスに運動能力の話を聞いていたのも、クリス個人への興味というよりも商品としての興味、すなわち品定めであったということでしょう。


③親睦会の人々

アーミテージ家に友人が集って行われた親睦会は、今回の"商品"であるクリスの品評会であったと分かります。彼らはクリスが黒人であることを意識した会話ばかりで、クリスは"異物"としての居心地の悪さを感じていました。しかし、ここでの彼らの態度もまた、"商品"に対する興味から来たものであり、黒人に対して"偏見"ではなく"憧れ"を持っていたことが分かります。


④他の黒人達

クリスがアーミテージ家で出会う黒人達、すなわち、使用人のジョージナ、ウォルター、親睦会に訪れたローガンは、皆どことなく怪しい雰囲気を醸し出しています。これも、彼らが"施術済み"であったからだと分かります。


ジョージナはローズの祖母、ウォルターはローズの祖父がその体を乗っ取っています。ウォルターが夜中に全速力で走っていたのも、祖父が元陸上選手だったことが伏線になっています。


ローガンはクリスの知人のアンドレ(映画冒頭で拉致された黒人)の体を乗っ取っています。クリスのスマホのフラッシュを浴びた後に"Get out!"と叫んだのは、取り乱してクリスに「出て行け!」と怒りをぶつけたように見えました。これも、真実を知った上で見ると、自我が戻ったアンドレが、クリスに「逃げろ!」と忠告した、あるいは、自分の体を乗っ取ったローガンに対する「出て行け!」であると考えられます。


人種問題へのアプローチ

黒人が白人の彼女の両親に挨拶に行く話と聞くと、スペンサー・トレイシー、シドニー・ポワチエ、キャサリン・ヘプバーンが豪華共演した映画『招かれざる客』(1967年)が思い浮かびます。『招かれざる客』と同じく、本作は冒頭から社会派ドラマの趣があります。事故現場での警官とのやりとりにしても、アーミテージ家の人々とのやりとりにしも、黒人に対する潜在的な偏見がリアルに描かれています。


ここ数年、BLM運動に代表されるように、黒人に対する不平等への反発が日本でもよく報じられていますし、昨今の多様性が重視される風潮も相まって、現在の世相との適合が強く感じられる導入でした。半世紀を経てアップデートされた、21世紀版『招かれざる客』が始まりそうな気配の中で、上述の予想外の真実が明らかになっていくのですから、それはもう衝撃です。


アーミテージ家の人々や、親睦会に訪れた人々の態度には、偏見や差別意識が隠れているように見えて、それはむしろ、黒人の身体能力に対する憧れであったというのが、何とも驚きの展開でした。


一方で、体を乗っ取ってしまうというという彼らの行動は、常軌を逸しています。そこに「黒人の体などどう扱ってもいい」という気持ちがあるのだとすれば、それはやはり根深い差別意識であり、これは形を変えた奴隷制度であると見ることもできるかもしれません。

 

ホラー映画としての凄み

本作は社会派ドラマ然としつつも、ジャンルとしてはホラーにカテゴライズされます。ホラーといっても、怖い映像で直接的に怖がらせるようなホラーではなく、ストーリーや雰囲気の不気味さや不穏さで怖がらせるホラーです。


クリスが、ローズの母に催眠療法を受けさせられるシーンでは、ひき逃げされた母に何もできなかった過去のトラウマを掘り起こされ、クリスは"沈んだ池"に突き落とされます。このシーンでのダニエル・カルーヤの演技は素晴らしく、急にスイッチが入ったように狼狽し涙を流す姿が、見るものの不安を掻き立てます。


映画序盤で、車に跳ねられて死んでしまった鹿をクリスが呆然と見つめるシーンがありましたが、これも母のひき逃げのことを思い出していたと分かります。この伏線もしっかり効いています。


"施術済み"の黒人3人の表情や態度の不気味さもひとしお。ここでもそれぞれの演技が素晴らしいです。なんとなく会話の噛み合わない感じや、どこか違和感のある表情が不穏な雰囲気を作り上げています。


親睦会のシークエンスでは、クリスが2階に上がった後に人々が揃って上を見上げるシーンだったり、クリスの写真を飾ってオークションをしているシーンだったり、ぞっとする描写がホラー映画としての凄みを利かせます。


極め付きは、クリスがローズの過去の写真を見つけるシーン。このシーンで、ローズがこれまでに何人もの黒人を咥え込んでいたことが分かります。そして、そこには使用人の2人の姿も。クリスにとっては、ローズもグルだったという絶望的なシーンになるわけですが、見ているこちらも本当にぞっとしました。


一方で、クリスがアーミテージ家の人々を殺しながら逃げ出すクライマックスは意外とあっさり。それまでの"雰囲気あるホラー"はなりを潜めてしまったのはやや残念でした。


そうそう、クリスが脱出に際して、催眠から逃れるために綿を耳に詰めるというのはうまいですね。かつてのアメリカの黒人奴隷はプランテーションで綿摘みの労働に使われていたわけで、その綿によって難を逃れるというのは象徴的です。

 

コメディ・リリーフ

ぞっとするホラー描写の多い本作ですが、コメディ要素も多分に含んでいます。本作でコメディ・リリーフを一手に引き受けるのはクリスの親友ロッド(リル・レル・ハウリー)。


クリスと何度も電話で連絡を取り合う彼のユーモア溢れる台詞が、緊張感の高い本作において一時の安心感を与えてくれます。でもこれは評価が分かれるところかもしれません。恐怖描写の間に笑いが挿入することで、緊張と緩和のメリハリが生まれますが、悪く言えば緊張の糸が途切れてしまいます。


私としては、あんまりおっかないのは苦手なので、ロッドが出てくるたびに「助かった!」という気持ちでした(笑)。ただ、安心する一方で、これが無い方がもっと怖い映画になったのにと感じる自分もいました。


ちなみに、本作はアカデミー賞の前哨戦とも言われるゴールデン・グローブ賞において、ドラマ部門ではなくミュージカル・コメディ部門にノミネートされたことが物議をかもしました。本作がミュージカル・コメディ部門に出品されたのは、ドラマ部門よりもライバルが手薄だっためと思われますが、普通に考えれば、ドラマ部門の方がしっくり来ます。

 

最後に

今回は映画『ゲット・アウト』の解説&感想でした。予備知識をあまり入れずに見たのでなかなか衝撃的で、期待を上回る面白さでした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

 

↓ 他の映画の解説&感想もぜひご覧ください!

 

----この映画が好きな人におすすめ----

↓ジョーダン・ピール監督の次作

↓不穏な空気で怖がらせるホラー映画の傑作

『ゲット・アウト』の鑑賞は見放題作品数No.1のU-NEXTで!