どうも、たきじです。
今回は2017年公開のアメリカ映画『スパイダーマン:ホームカミング』の解説&感想です。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)版スパイダーマン・シリーズの第1作にして、MCU作品としては『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』に続く第16作にあたります。
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作品情報
タイトル:スパイダーマン:ホームカミング
原題 :Spider-Man: Homecoming
製作年 :2017年
製作国 :アメリカ
監督 :ジョン・ワッツ
出演 :トム・ホランド
マイケル・キートン
ジョン・ファヴロー
ジェイコブ・バタロン
ローラ・ハリアー
ゼンデイヤ
トニー・レヴォロリ
マーティン・スター
ケネス・チョイ
ボキーム・ウッドバイン
マイケル・チャーナス
ローガン・マーシャル=グリーン
マイケル・マンド
ドナルド・グローヴァー
タイン・デイリー
マリサ・トメイ
ジェニファー・コネリー
ロバート・ダウニー・Jr
上映時間:133分
解説&感想(ネタバレあり)
実写映画として3度目のシリーズ化
1962年にマーベル・コミックスに登場して以来、テレビ、映画、アニメと、様々なメディアで人気を博してきたスパイダーマン。実写での映像化としては、アメリカの「The Amazing Spider-Man」(1977〜1979年)や、日本の「スパイダーマン」(1978〜1979年)といったTVシリーズを経て、2002年にサム・ライミ監督によって待望の映画化がなされました(1977〜1981年に公開されたアメリカ映画は前述のTVシリーズの一部の回を劇場公開したもの)。
サム・ライミ監督による『スパイダーマン』3部作(2002〜2007年)の後、マーク・ウェブ監督の『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ2作(2012〜2014年)が公開。本作はそれに続く形で、実写映画として3度目のシリーズ化ということになります。
マーベル・コミックの顔とも言えるスパイダーマンですが、映画化権を保有しているのは過去のシリーズを製作したソニー・ピクチャーズ。そのため、MCU作品にスパイダーマンを登場させることは容易ではありませんでしたが、マーベルとソニーが契約を結んだことで2016年に『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で、ようやくスパイダーマンが登場。そして本作で単独作品の公開に至ったわけです。スパイダーマンが大好きな私としてもこれは嬉しい限りでした。
ピーターの友人のネッドが、レゴでデス・スターを作ろうと言うように、『スパイダーマン』の中で『スター・ウォーズ』のネタが登場するというのもちょっと感慨深いですね(マーベルも『スター・ウォーズ』のルーカス・フィルムもディズニー傘下)。
ポップで軽快なMCU版スパイダーマン
主人公のピーター・パーカー/スパイダーマンが、アベンジャーズのメンバーとしてトニー・スタークに認められたくて奮闘するのが物語の中心ですから、完全にMCU作品の流れの中の一作となっています。スタークのハイテクスーツをフル活用するのも独自性があって面白いところですね。過去シリーズにはないガジェットの数々が新鮮です。
また、こうした設定やストーリーの独自性のみならず、本作は作風という面でも過去シリーズと差別化されています。悩めるピーターの内面に切り込んだサム・ライミ版、ややシリアスでダークなトーンのマーク・ウェブ版に対し、本作はポップで軽快です。
劇中とエンディングでラモーンズを使っているのもこの軽快さを強く印象づけます。ラモーンズはニューヨークのバンドですし、1995年には「スパイダーマンのテーマ」をカバーするなど、スパイダーマンと親和性の強いバンドです。本作で使用された「Blitzkrieg Bop」はラモーンズのデビュー曲。若くエネルギッシュなイメージが本作のピーターともマッチしていて、素晴らしい選曲だと思います。
少し惜しい点も
一方で、本作は上記のようなストーリーや作風なので、「大いなる力には大いなる責任が伴う」というスパイダーマンのテーマが薄いのは惜しいところです。それに、メンターとしてのアイアンマンの存在が大きすぎてスパイダーマンの存在感は少し薄れてしまっています。そもそもアベンジャーズのサポートメンバーみたいな立ち位置を前提としたストーリーなので、「ニューヨークのヒーロー」としての輝きも、過去シリーズに比べてどうしても小さくなってしまいます。
単独作品の第1作ながら、スパイダーマン誕生の経緯が描かれないのも少し物足りなくもあります。本作で初めてスパイダーマンに触れる観客にはやや不親切かもしれませんね。ただし、誕生の経緯は過去の2シリーズで繰り返し描かれていることを考えれば、まあ妥当な判断かもしれません。
本作のヒロイン
恋愛要素もスパイダーマンには付き物です。本作でヒロインとなるのは、メリー・ジェーン・ワトソン(MJ)でもグウェン・ステイシーでもベティ・ブラントでもなく、リズという同級生。ピーターの憧れの存在であり、やがて両想いとなりつつも、スパイダーマンとしての活動や複雑な人間関係から成就しないのが、スパイダーマンらしいですね。
ゼンデイヤが演じる、やたらキャラの濃い同級生の名前が、ミシェル・ジョーンズで、彼女がMJだと、最後の最後で明らかになるのはニヤリとさせられます。この手のリメイク系の作品で、最後にキャラクターの名前が明らかになって、「実は旧作のあのキャラだった」みたいなのって割とよくありますけどね。『007/スカイフォール』とか、『シン・仮面ライダー』とか。
本作のメインヴィラン
本作のメインヴィランは、翼の生えたスーツを着て飛び回るバルチャー。演じるのはマイケル・キートンです。キートンと言えば、1989年公開のティム・バートン版『バットマン』でバットマンを演じた俳優。2014年には、"バットマン後"に低迷した自身の俳優人生とオーバーラップするような『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で、かつて「バードマン」というヒーローを演じた俳優を演じ、ゴールデングローブ賞の主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞しています。
こうして翼を持ったヒーローを演じてきたキートンを、翼を持ったヴィラン役に起用したのは意図的なキャスティングでしょうか。バルチャーの正体であるトゥームスは根っからの悪人というわけではありません。ヒーローのイメージを持つキートンが演じることで、このキャラクターの持つ複雑さが一層強調されるようにも感じます。
トゥームスがリズの父親であったという終盤の展開はまったく予期していなかったので、ピーターと一緒に驚いてしまいました。ホームカミングへ向かう車の中で、トゥームスがピーターの正体を察する場面は緊張感が溢れていました。キートンの上手さがよく現れたシーンでした。
「ホームカミング」とは
副題にある「ホームカミング」は、ピーターがリズをパートナーに誘ったイベント。アメリカの高校のイベントで、生徒や卒業生が集まって、アメフトの試合やダンスパーティーが行われるのだとか(卒業生が母校に帰ってくるので「ホームカミング」)。私はアメリカ文化をそれなりに理解していると思っていましたが、恥ずかしながら本作を見るまで存じあげませんでした。
似たようなイベントに「プロム」がありますが、こちらは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『キャリー』など、様々な映画で印象的に登場しますね。プロムは卒業を祝うダンスパーティー。ホームカミングに比べて、より特別なイベントですから、クライマックスにしやすいのでしょう。
また、本作でピーターは最終的にアベンジャーズへの加入を断り、元の学生生活に戻ります。「ホームカミング」という副題は、この結末を示唆するものと捉えることもできます。
加えて言えば、「これまでソニーが映画化してきたスパイダーマンが、本来の居場所であるマーベルの世界に戻ってきた」というメタ的な意味も込められているのかもしれません。
最後に
今回は映画『スパイダーマン:ホームカミング』の解説&感想でした。MCUの流れの中で、ポップで軽快に描かれたスパイダーマン作品。スパイダーマンの単独映画としてはパンチに欠ける部分もあるものの、アクション、青春、ユーモアのバランスがよく、楽しめる作品でした。良くも悪くもMCUのスパイダーマンという感じですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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