どうも、たきじです。
今回は2011年公開のアメリカ映画『SUPER8/スーパーエイト』の解説&感想です。
作品情報
タイトル:SUPER8/スーパーエイト
原題 :Super 8
製作年 :2011年
製作国 :アメリカ
監督 :J・J・エイブラムス
出演 :ジョエル・コートニー
エル・ファニング
ライリー・グリフィス
ライアン・リー
ガブリエル・バッソ
ザック・ミルズ
カイル・チャンドラー
ロン・エルダード
上映時間:112分
解説&感想(ネタバレあり)
スピルバーグ作品へのオマージュ
J・J・エイブラムス監督による映画『SUPER8/スーパーエイト』は、スティーヴン・スピルバーグ監督の映画が好きな人、もっと言えば映画好きの人にとって、深く刺さる作品です。本作は、1970〜80年代のスピルバーグ作品を彷彿とさせるストーリーや演出が魅力的な作品になっています。製作にはスピルバーグ自身が名を連ねており、セルフオマージュ的な側面もあるのが面白いところです。
物語は、事故で母親を亡くした少年ジョーを中心に展開します。ジョーと友人たちは、8mmカメラでゾンビ映画を撮影していた最中、列車の大事故に遭遇します。その日から、町では住民の失踪や不可解な停電など、異常な現象が次々と起こり始めます。
このあたりのミステリアスな展開にはぐいぐい引き込まれていきますし、やがて映画がモンスターパニック映画の様相を呈していくと、さらに前のめりになって見てしまいます。宇宙人がなかなか姿を見せないのは、観るものの想像を掻き立てる、いかにもスピルバーグ的な演出です。
興味深いのは、本作は一見、モンスターパニック映画のようでいて、実はそうではないということです。宇宙人が人間を襲っていたのは、いわば自衛のためであり、宇宙人の目的は、故郷に帰ること。人類と宇宙人は、本質的には敵対関係にはなく、やがては通じ合います。
スピルバーグ作品で言えば、最初は『ジョーズ』、『ジュラシック・パーク』、『宇宙戦争』のような恐怖を感じさせる類の映画に見えますが、実は『未知との遭遇』や『E.T.』のような"宇宙人との交流"を描いた映画なのです。宇宙人が地球を飛び去る様子や、子供目線の物語であることも両作を想起させました。
少年の喪失と再生
本作の大きな魅力は、主人公ジョーの感情にフォーカスし、彼の喪失と再生を丁寧に描いている点です。
オープニングから、観客は、母親を亡くして心に深い傷を負ったジョーに一気に感情移入させられます。簡潔な描写で無駄なく観客に状況を把握させるのは見事なもの。工場の無事故記録がリセットされる様子で事故があったことを示し、ジョーの母親の通夜のシーンが続くことで、被害者が彼女であったことが示されます。
そして、工場の事故の悲惨さや、保安官補である父親とジョーの距離感が、登場人物たちの自然な会話(説明的な台詞ではなく)を通じて、描写されます。さらに、ロケットペンダントを見つめながら1人佇むジョーの姿が、彼の喪失感をありありと映し出すのです。
ジョーは、友人たちと映画制作に取り組む中で、アリスと心を通わせていきます。同じように家族との問題を抱えるアリスと感情を共有することが、ジョーの再生の第一歩となるのです。ジョーの母親の死を巡って2人の父親同士に確執があるという複雑な関係も物語にさらなる深みを与えています。
そんなジョーが、やがて宇宙人と出会うシーンは特に印象的です。宇宙人と意識がつながり、その内面を理解したジョーは語りかけます。
Bad things happen. But you can still live.
つらいことは起こる。それでも生きていける。
これはジョーが自分自身に言い聞かせる言葉でもあるでしょう。アリスや宇宙人との感情の分かち合いを通じて、立ち直ろうとするジョーの決意が感じられ、胸に響きます。そしてこの言葉は、「喪失」(=つらいことは起こる)と「再生」(=それでも生きていける)という本作の核心を象徴する言葉にも感じられました。
感動が込み上げるラストシーン
そして、ジョーの喪失からの再生がはっきりと感じられるのがラストシーン。地球を飛び立とうとする宇宙船に周辺の金属が引き寄せられていく中で、ジョーのペンダントもその力に引き寄せられていきます。慌ててペンダントを掴んだジョーですが、やがて自分の意思でその手を離します。そしてその手はアリスの手を握るのです。母親の死を受け入れ、ジョーが前を向いて歩き出したことを示す象徴的な瞬間です。
このシーン、周辺の金属を引き寄せた後で、最後にジョーのペンダントだけが改めて引き寄せられています。「つらいことは起こる。それでも生きていける。」というジョーから受けた言葉を、宇宙人がジョーにアンサーとして返しているようにも、私には感じられました。
また、このシーンで特に素晴らしいのは、ペンダントに収められた写真が、このラストシーンで初めて画面に映し出されること。優しく微笑む母親と赤ん坊のジョー。この瞬間に、母親の愛情、それを失ったジョーの喪失感、そしてそれを乗り越えたジョーの成長が一気に押し寄せ、言いようのない感動が込み上げてきます。
映画全体を通して、ジョーがペンダントに触れる姿や、母親の墓を訪れる姿などで、ジョーの感情を深掘りしつつ、ジョーが見つめる写真は見せない。ここでもスピルバーグ的な「見せない演出」が見事に機能し、最後の瞬間に感動を凝縮しています。本当に拍手したくなるほど素晴らしいラストシーンです。
子役たちの好演
本作において、ジョーやアリスを始めとした子供たちを演じた子役たちの演技も素晴らしいものでした。アリスを演じたのは、ダコタ・ファニングの妹のエル・ファニングですが、すごく大人っぽくて、撮影時12歳というのは驚きです。
エンドロールでは、子供たちが劇中で撮影していた映画が流れます。それ自体はユーモラスで面白いのですが、残念なことに映画の方に目が行ってしまって、クレジットに目が行きません。これだけの演技を見せてくれた子供たちを讃える意味でも、映画を流すのはメインキャストのクレジットが終わってからにして欲しかったところです。
最後に
今回は映画『SUPER8/スーパーエイト』の解説&感想でした。スピルバーグ作品へのオマージュが溢れるストーリーや演出もさることながら、繊細な少年の感情にフォーカスした喪失と再生のドラマに魅せられる作品でした。
個人的には、新宿ミラノ座で観た最後の映画ということでも思い出深い作品です(閉館したのは本作公開から3年後ですけど…)。1000席以上の大箱での鑑賞も、自由席での鑑賞もこれが最後かな。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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