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映画『サマーウォーズ』解説&感想 ノスタルジーと映画的熱狂

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どうも、たきじです。

 

今回は2009年公開のアニメ映画『サマーウォーズ』の解説&感想です。細田守監督としては初の長編オリジナル作品です。

 

作品情報

タイトル:サマーウォーズ

製作年 :2009年

製作国 :日本

監督  :細田守

声の出演:神木隆之介

     桜庭ななみ

     谷村美月

     富司純子

     佐々木睦

     谷川清美

     信澤三惠子

上映時間:115分

解説&感想(ネタバレあり)

ノスタルジーを掻き立てる日本の夏

本作公開当時、『時をかける少女』も未見で、細田守監督のことも存じ上げていなかったのですが、大変評判の良い作品だったので劇場に足を運んだことを思い出します。


結果、期待以上に素晴らしい作品だったわけですが、私にとって本作の魅力は、ノスタルジーと映画的熱狂、この2つを存分に感じさせてくれる点にあります。


田舎育ちの私にとって、本作の舞台である陣内家の、いかにも日本の原風景みたいな描写は、それだけでノスタルジーを誘います。加えて、本家に親戚が集う様子や、夏休み、青春時代といった、もう取り戻すことのできない時間に、ノスタルジーを掻き立てられるのです。


そうしたノスタルジックな映画というと、ゆったりと時間の流れるほのぼのとした映画を思い浮かべがちですが、本作は違います。本作は、ノスタルジーとは一見相容れないようにも思える映画的熱狂へと、私達を導いてくれるのです。


原風景とサイバー空間のコントラスト

本作は、現実世界と仮想世界を舞台に、エンターテインメントとしてあらゆる要素を盛り込み、見事にまとめ上げています。現実世界と仮想世界を織り交ぜた映画というと、『攻殻機動隊』だったり、同作に影響を受けた『マトリックス』だったり、前例は多数存在します。つまり、本作公開の時点ですでに珍しいものではありませんでした。


では、本作のどこが、そうした前例とは違うか?それは、上述のような原風景が、現実世界の舞台に設定されているところです。素朴な原風景と、おおよそ似つかわしくないサイバー空間。このコントラストの効いた舞台を行き来する面白さです。


田舎でほのぼの花札していたかと思えば、サイバー空間でアバター同士が殴り合っているのです。しかもそれが世界の命運を賭けた闘いというのが熱いじゃないですか。田舎の大家族が世界を救う的なね。そこに映画的熱狂があります。

 


人間の力でデジタルの敵と戦う

各キャラクターに見せ場が振り分けられていて、それぞれが持ち味を生かして戦うというのもいいのです。健二は数学で、夏希は花札で、カズマは格闘ゲームで、その他にも、自衛官、電気屋、漁師などといったそれぞれの職業を生かしてラブマシーンと戦います。時にハイテクなデジタル技術を駆使しつつも、人脈、頭脳、諦めない気持ちといった、アナログな人間の力でデジタルの敵と戦うのが熱いのです。


ラブマシーンによる混乱に対処するため、ばあちゃんが関係各所に電話するシーンなどは、それを象徴するシーンになっています。「あんたならできるよ」という言葉が胸に響きます。


ばあちゃんの声をあてた女優の富司純子さん(寺島しのぶや尾上菊之助の母堂)の演技が素晴らしいので余計に響きます。ばあちゃんが遺した手紙のシーンもいいですね。

 

もし辛い時や苦しい時があっても
いつもと変わらず

家族みんな揃ってご飯を食べること

一番いけないことは
お腹がすいていることと
一人でいることだから


これは刺さります。


一見ごちゃ混ぜのエンターテインメントのようでいて、「大家族がそれぞれの持ち味(人間の力)を駆使して強大な敵と戦う」という一貫性がまとまりを生んでいます。だからこそ、クライマックスにかけて、手紙のシーンも、決戦前の食事のシーンも、花札のシーンも、格闘のシーンも、暗号解読のシーンも、すべてが映画的熱狂を生むのです。

 


『金曜ロードショー』での残念なカット

以上書いてきたことを踏まえると、『金曜ロードショー』で本作が放送される時に、毎回、了平のシーンが全カットされているのは残念でなりません。了平というのは、陣内家の高校生で、上田高校野球部のエースとして、甲子園出場をかけて長野県大会を戦っています。


本編のストーリーと直接関係がないので、カットしやすいことは重々承知です。しかし、彼のシーンは本作においてはとても重要なシーンだと思うのです。


まず、高校野球は、日本の夏の風物詩の一つであるということ。テレビで流れている彼の試合というのは、上述のノスタルジーを形成する要素の一つになっています。対戦相手が佐久長聖や松商学園といった甲子園常連校なのも効果的です。


また、各キャラクターがそれぞれの持ち味を生かして戦うのが本作の魅力であると述べました。その意味でも、例えラブマシーンとの戦いに関係がなくとも、大一番を必死に戦う彼の姿は、本作においてなくてはならない味付けだと思うのです。


真田氏をモチーフとした陣内家

さて、本作の陣内家は、戦国大名の真田氏の家系をモチーフにしているのも面白いところです。真田氏というのは本作の舞台である上田を拠点とした大名で、徳川の軍勢を二度にわたって退けた知将・真田昌幸や、昌幸の子で大坂夏の陣で徳川家康をあと一歩のところまで追い詰めた真田信繁(幸村として知られる)らが有名です。


作中でも、ご先祖様が戦った戦として上田合戦や大坂夏の陣に言及される他、陣内家の家紋として、真田氏の家紋である六文銭や結び雁金をモチーフにした家紋を見ることができます。

 

最後に

今回は映画『サマーウォーズ』の解説&感想でした。ノスタルジーと映画的熱狂を存分に感じさせてくれる、大好きな作品です。

 

余談ですが、本作公開時、一つのアカウントで様々なサービスを跨ぐプラットフォームであるOZの設定について理解できない(ついてこれない)人もいるんじゃないかと少し心配でした。当時はまだLINEも普及していない時期でしたからね。この記事を書いている2022年には、LINEをはじめとして、そうしたプラットフォームは当たり前になっていますから、今の人達は容易に映画に入り込めるでしょうね。


一方で、上述のようなプラットフォームの普及のみならず、メタバース関連の開発が急速に動き出した昨今の情勢を考えると、本作が持っているある種の革新性は失われ、陳腐化して見えてこないか、大好きな映画だけに少し心配してしまいます。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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