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映画『千と千尋の神隠し』解説&感想 イマジネーション溢れるアニメーションで綴られた自分探しの物語

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どうも、たきじです。

 

今回は、スタジオジブリのアニメ映画『千と千尋の神隠し』の解説&感想です。スタジオジブリ設立後の宮崎駿監督作品としては、『もののけ姫』に続く6作目となります。20年近くも破られない、とんでもない興行収入記録を樹立した作品でもあります。

 

その他の宮崎駿監督作品の解説&感想はこちらから(各作品へのリンクあり)

作品情報

タイトル:千と千尋の神隠し

製作年 :2001年

製作国 :日本

監督  :宮崎駿

声の出演:柊瑠美

     入野自由

     夏木マリ

     中村彰男

     玉井夕海

     神木隆之介

     内藤剛志

     沢口靖子

     菅原文太

上映時間:125分

 

解説&感想(ネタバレあり)

アニメーションと音楽

まず素晴らしいのが、イマジネーション溢れるアニメーションと心に沁みる音楽。


千尋達の前に突如現れる不思議な世界、湯屋、そこに集う八百万の神々、巨大な赤ん坊、頭だけで動く三体、湯婆婆の顔を持つ人面鳥、水の上を走る電車。奇想天外で、おもちゃ箱をひっくり返したようなデザインとアニメーション表現の洪水です。溢れんばかりのイマジネーションには本当に感服します。赤ん坊と人面鳥が姿を変えられたネズミと鳥の愛くるしい感じも、宮崎駿監督作品らしい良い味付けです。


そして、各シーンでがらりと様相を変えながら、確実に映画を盛り上げ、心に沁みるのは久石譲の音楽。この音楽があるのとないのとでは、別の映画になるのではないかと思わされるほどです。

 


自分探しの物語

本作は、自分の居場所や存在意義を見つける物語、少し陳腐な表現を使えば、"自分探し"の物語であると、私は解釈しています。


千尋はこれまでに暮らした町を出て、友達と離れ離れになり、自分の居場所を失った存在。また、親に依存し、自分では何もできない存在です。自分という存在を表すシンボルである名前すらも湯婆婆に奪われ、失ってしまいます。


そんな千尋が、リンにしつけられ、仕事を教わりながら、湯屋で働くようになります。仕事を持たない者は動物に変えられるという湯婆婆による支配は、裏を返せば"労働"="湯屋での存在意義"。千尋は一つ、自分の居場所と存在意義を見つけたことになります。


そして、やがては"ハクを助ける"という目的から、千尋は主体的に行動するようになります。これこそが千尋の大きな成長であり、"自分を見つけた"ということに他なりません。


そして、ハクもまた、自分の名前を忘れ、自分を失った存在です。後に明らかになるように、ハクは"コハク川"という川の神であり、川が埋め立てられて無くなったことでハクは居場所を失っています。ハクは湯婆婆に弟子入りし、湯屋で一定の地位につくことで自分の存在意義を持っていましたが、怪我を負って湯婆婆に見捨てられたことでそれも失います。


しかし、千尋が名前を思い出させてくれたことで、希望を取り戻し、自分も元の世界に戻るつもりだと、前向きに歩んでいく意志を示します。

 

カオナシの重要性

このように本作を"自分探し"の物語と解釈すると、本作においてカオナシも極めて重要な存在だと理解できます。


カオナシは自分の意志を示すための"言葉"を持ちません。カオナシ(顔無し)という名も、自分を持たない存在ということを象徴しています。言葉を持たず、モノで人を釣ることしかできず、拒絶されたら欲望を満たそうと暴れ回り周囲を混乱に陥れる。そんな悲しい化け物なのです。


千尋やハクは自分を失ってもがくわけですが、そうした"自分を持たない存在"の究極形がカオナシというわけです。


そんなカオナシも銭婆のもとで役割(存在意義)を与えられたことは、"価値のない存在なんていない"という優しい結末に思えます。


以上述べたように、本作は単に独創的で楽しい物語というだけでなく、"自分探し"というテーマ性でまとまっています。


このように作品を理解すると、千尋がコハク川のことを思い出し、ハクが自分の名前を思い出すクライマックスの感動がより増すのではないでしょうか。私はこのシーンで涙してしまいました。

 


成長過程の描写は物足りない

さて、こうしたテーマ性でうまく物語がまとめられている一方で、千尋が成長していく描写は少し物足りません。序盤、何もできない少女だった千尋が成長する過程の描写は表面的でとんとん拍子な印象を受けますし、心理描写も甘いです。


例えば本作と同様に少女の成長を描いた『魔女の宅急便』では、極めて繊細な心理描写で主人公キキの内面が描かれていたので、成長していく過程にも説得力がありました。一方で本作は、そのような繊細な心理描写はあまり見られません。もちろん主となるテーマが違う以上、そこにかけられる時間が違うことはあるのですけどね。

 

最後に

今回は映画『千と千尋の神隠し』の解説&感想でした。千尋の自分探しの物語を、イマジネーション溢れるアニメーションと心に沁みる音楽で綴った名作です。

 

なお、本作は2022年には舞台化され、こちらも好評を博しています。

 

 

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