どうも、たきじです。
今回は、スタジオジブリのアニメ映画『ハウルの動く城』の感想です。スタジオジブリ設立後の宮崎駿監督作品としては、『千と千尋の神隠し』に続く7作目となります。
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作品情報
タイトル:ハウルの動く城
製作年 :2004年
製作国 :日本
監督 :宮崎駿
声の出演:倍賞千恵子
木村拓哉
美輪明宏
我修院達也
神木隆之介
大泉洋
原田大二郎
加藤治子
上映時間:119分
感想(ネタバレあり)
優れたデザインとアニメーション表現
本作は、『千と千尋の神隠し』の良いところと、『崖の上のポニョ』の悪いところを兼ね備えていて、まさに両作の間に製作された作品らしいなという印象でした。
『千と千尋の神隠し』では、イマジネーション溢れるデザインやアニメーション表現に感服させられましたが、その点は本作も同様。
原作がある物語とは言え、映画に登場するキャラクター、街、乗り物、建物等のデザインは、オリジナリティが溢れています。ガラクタを寄せ集めたようなハウルの城のデザインはその際たるものでしょう。そして蒸気を吹き出しながらのそのそと歩くようなその動きは、この映画のタイトルロールである城に命を吹き込む素晴らしいアニメーション表現と言えます。
また、宮崎駿監督作品では、しばしば目にするメカニカルな飛行機のデザインも目を惹きます。本作の飛行機は羽ばたき式の飛行機(いわゆるオーニソプター)。現実には実用化されていない方式の飛行機が飛び回ることで、ファンタジーな空気感が演出されています。
こうしたデザインやアニメーション表現が優れているので、何となく眺めているだけでもそこそこ楽しめる作品ではあるでしょう。ストーリーを理解できない子供も画面に釘付けにする力を持っています。
説明不足だらけのストーリー
一方で、ストーリーの方は全体的に説明不足で分かりにくいところが多いです。これは『崖の上のポニョ』も同様でした。
おそらくは、詳細な設定だったり、バックグラウンドのストーリーだったりが、宮崎監督の頭の中では作り込まれているのでしょう。しかし、それが映画では描写しきれていません。
説明し過ぎることが野暮なことは分かっています。時には行間を読ませたり、解釈の余地を残すことが効果を生むことも分かっています。しかし、本作の場合は、行間を読ませる"行"自体がなかったり、解釈のベースとなる事象の提示がなかったりと、明らかに説明不足なのです。
例えば、ソフィーにかけられた呪いに関して。老婆の姿になったソフィーの姿が時々若返るのはなぜ?荒地の魔女が魔力を失って呪いが弱まってるから?感情(恋心?)が高ぶった時に若返る?と推測はできますが、何も説明されません。寝ている時に若返っているのはどう説明できるでしょうか?
そもそも荒地の魔女がソフィーに呪いをかけたのはなぜ?ハウルに近づいた嫉妬心のようなもの?荒地の魔女がハウル(の心臓)に執着するのはなぜ?その辺も見えてきません。
主人公であるソフィーの内面もあまり読み取れません。老婆の姿にされて、ここにはいられないと街を出たはいいものの、ただ流れに身を任せるままにハウルの城に住み着いて暮らし、恋をする。この一連の彼女の行動の中に、彼女の感情に紐付く行動原理が見えないので説得力がありません。これでは感情移入はできません。宮崎駿監督は『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』なんかでは、あんなに丁寧に主人公の感情を描写していたのに…。
また、ロマンス要素は本作の一つの肝だと思うのですが、ソフィーがハウルに恋した理由さえもいまいちピンときません。サリマンに「ハウルに恋してるのね」なんて言わせて、肝心なところを台詞で説明してしまうのもどうなんでしょう。そういうところこそ、台詞で説明するのではなく物語の中で描写すべきところではないでしょうか(ハウルの「僕は本当は臆病者なんだ」も然り)。
まだまだあります。
ハウルは1人で戦場に出て、誰と何のために戦っているのか、よく分かりません。
ソフィーは「ここにいる限りハウルは戦うわ」とか言ってハウルの城を壊し、今度はまたカルシファーを城に入れて「ハウルのところに行きたいの。お城動かして」なんて言って城を建て直します。この行動も今一つよく分かりません。
その後、なぜあのドアは過去(ハウルとカルシファーの契約の場面)に繋がったのかもよく分かりません。
こうした点の一つひとつは何となく推測することができるかもしれませんが、劇中でそれらの示唆が不十分なので、いろんなことが釈然としないままストーリーが進んでいきます。結果として、ストーリーの大筋は理解できても、何となくモヤモヤしたまま映画が終わってしまう感覚でした。
ストーリーの背景の全てを映画の中で描けとは言いません。特に本作はソフィーの主観で描かれた物語ですから、分からないことがあるのは理解できます。しかし、それにしたって観客に向けて物語を紡ぐ以上は、それで楽しめるように、描くべきことを描かないとダメだと私は思います。
声の出演者たちの演技
さて、声の出演についても少しだけ。荒地の魔女を演じた美輪明宏さん、マルクルを演じた神木隆之介くんは抜群にうまいですね。本職の声優ではないにもかかわらず、まったく違和感のない、安定感抜群の演技でした。神木くんなんて公開当時10歳ですよ。
ハウルを演じた木村拓哉さんは、公開当時、アイドルがジブリ映画の主演ということで拒否反応を示す人が少なくなかった記憶がありますが、意外と悪くないと思います。彼が演じる必然性はない気がしますが。
ソフィーを演じた倍賞千恵子さんは公開当時62歳ですか。18歳のソフィーから老婆のソフィーまで1人で演じていますが、やはり18歳は無理がありますよ。これはキャスティングした人が悪い!
最後に
今回は映画『ハウルの動く城』の感想でした。デザインやアニメーション表現に感服させられた一方で、ストーリーは説明不足だらけで、モヤモヤしたまま映画が終わってしまうのが残念な作品でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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