映画『荒武者キートン』解説&感想 凝ったストーリーとロケーションで見せる長編第二作

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どうも、Takijiです。

 

今回は映画『荒武者キートン』の解説&感想です。映画黎明期の喜劇王バスター・キートンが監督・主演を務めた長編作品として第二作にあたる作品です。

 


※作品の著作権保護期間は終了し、パブリックドメインとなっています。

 

作品情報

タイトル:荒武者キートン

     キートンの激流危機一髪!(別題)

原題  :Our Hospitality

製作年 :1923年

製作国 :アメリカ

監督  :バスター・キートン

     ジョン・G・ブリストーン

出演  :バスター・キートン

     ジョー・ロバーツ

     ウォーレス・ビアリー

 上映時間:65分

 

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あらすじ

舞台は19世紀初頭のアメリカ、ロックビル。敵対するキャンフィールド家とマッケイ家は何世代にも渡って争いを重ね、殺し合ってきました。ある夜、マッケイ家の生き残りジョン・マッケイはジム・キャンフィールドに襲撃され、相討ちで息を引き取ります。


ジョンの妻は、唯一の跡取りであるウィリーが争いを知らずに育つようにとニューヨークの姉の元に送ります。一方、息子の1人を殺されたジョセフ・キャンフィールド(ジョー・ロバーツ)は、幼い2人の息子にいつかマッケイ家への復讐をさせることを誓います。


それから20年後、成長したウィリー・マッケイ(バスター・キートン)の元に、ジョンの相続人として遺産を引き取るようにとの手紙が来ます。ウィリーは、伯母から両家の争いのことを聞かされた上で、ロックビルへの長距離列車に乗り込みます。ウィリーはトラブルだらけの列車の旅を通して、同じ列車に乗り合わせた(ナタリー・タルマッジ)と仲を深めます。


やがてロックビルに到着したウィリーですが、マッケイ家への道を尋ねた相手がジョセフ・キャンフィールドの息子であったことから、キャンフィールド家のジョセフと2人の息子から命を狙われることになります。ウィリーは列車の娘からディナーに誘われて、娘の邸宅を訪れますが、実は娘はキャンフィールド家の末娘。何も知らないウィリーは、自らの命を狙う男達の待つ家へと乗り込んで行き…。

 

解説&感想(ネタバレあり)

ストーリー展開が生む笑い

本作はバスター・キートンの監督・主演作品としては2作目の長編作品です。前作『キートンの恋愛三代記』は構成こそ凝っていましたが、ストーリー自体は平凡なものでした。そこへきて本作は、上のあらすじからも分かるように、なかなか凝ったストーリーが展開されます。


まず冒頭は、コメディ映画であることを忘れるほどのシリアスな描写が続きます。敵対する家の男女が恋仲になるというとウィリアム・シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』が思い浮かびますが、本作の設定のモチーフはモンタギュー家とキャピュレット家ではありません。


キャンフィールド家とマッケイ家というネーミングからも分かるように、実際に19世紀のアメリカで起こったハットフィールド家とマッコイ家の争いが本作のモチーフになっています。この両家の争いは10年以上続き、多数の死者を出しており、全米に知られるものとなったようです。本作の他、多数の文学や映像作品の元ネタにされています。


さて、こうした両家の因縁の中で、ウィリーは自らの命を狙う男達の待つ家へと乗り込むことになります。このストーリー展開が生む笑いこそ本作の肝です。


自分がいるのがキャンフィールド家だと気づいてからのウィリーの慌てっぷりは最高です。ディナーの席でナイフを研ぐジョセフの隣でビビりながら、そっと襟を正す微妙な笑い。キャンフィールド達が「家の中で殺すのはまずい」と話していたのを聞いたものだから、帰りたくなくて皆と握手を繰り返したり、帽子を何度も投げ捨てて失くしたふりをしたりといったスラップスティックな笑い。見事なものです。


キャンフィールド家の3人が揃って長身なのに対し、ウィリーが小柄なのが、これまたいい感じです。


ちなみに本作の原題"Our Hospitality"は"私達のおもてなし"という意味になります。列車で会った素敵な方をディナーに招きたいという娘に対してジョセフが言う"He’ll never forget our hospitality"にちなみます。直訳すると"彼は私達のおもてなしを決して忘れないだろう"、意訳すると"最高のおもてなしをしよう"といった感じですね。銃を手に睨みつける"おもてなし"になってしまうのが皮肉です。


それにしても『荒武者キートン』とは、なんという邦題でしょう。本作が日本で公開された1925年という時代を考慮してもセンスを疑います!一応、他の作品と同様に改題があり、『キートンの激流危機一髪!』という別題もあるようですが、なぜか本作は旧題の方がよく使われているようです。


大規模なロケーションで見せる笑いとアクション

本作は大規模なロケーションも見どころ。まず目を見張るのは前半の列車のシーン。本作に出てくる列車は、19世紀の列車と聞いて思い浮かぶ蒸気機関車と比べてかなりちゃちな代物で、客車は4人乗りの小さな車両を連結した形です。とは言え、撮影のために実際に動く列車を作ったというのだから驚きです。


この列車が、凸凹道をガタガタと揺れながら走ったり、線路に乗り出したロバを迂回するように曲げた線路を走ったり、脱線したまま走り続けたり、脱輪したり、ポイント切り替えで先頭車両と客車が分離してしまったり、あるいはトンネル通過で乗客がススを浴びて真っ黒になってしまったりと、キートンはとにかくこのシチュエーションで遊び尽くしています。


製作当時はまだこのような蒸気機関車の時代から遠くないですから、着眼点もリアルですね。現代の映画ではあまり描かれなさそうな笑いが多くて新鮮でした。こうした列車ネタは、キートンの後の傑作『キートンの大列車追跡』へと繋がっていきます。


続いては、終盤の逃走劇。家を出たら殺されることから、宿泊までしてしまったウィリーでしたが、女装することでキャンフィールド達の目を盗んで遂に逃げ出します(馬のお尻に衣装を付けてカムフラージュするのが面白い)。


ここから、大自然のロケーションでのダイナミックなアクションが始まります。馬で駆け、林を抜け、崖を降り、列車に飛び乗り、川に落ち…。こうしてクライマックスの川下りに至ります。川下りはまさに命懸けの撮影。実際、キートンは川で溺れて死にかけたと言います。


最後には、川に流されて滝から落ちるキャンフィールドの娘を、ウィリーがロープでスイングしてキャッチします。このシーンはさすがにスタジオに組んだセットで撮影したようですが、それにしたって危険なアクロバットです。まるでサーカスのようなシーンでした。崖を降りるシーンで登場したロープが最後まで活躍するのがまた心地いいです。


そして笑いに帰結

夜になり、ウィリー探しを打ち切ったキャンフィールド達3人が家に戻ると、そこには熱いキスを交わすウィリーと娘の姿。銃を手に近づく3人でしたが、そこには牧師の姿があり、2人はもう結婚しています。ジョセフの目に入るのは"自分を愛するように隣人を愛せよ"の文字(これは冒頭からの伏線)。ジョセフはウィリーと握手し、銃を置き、2人の息子もこれに続きます。


これに続いてキートンも隠し持っていた銃を置きますが、ここが傑作。腰元から次から次へと銃が出てきます。そして娘と抱き合うウィリーですが、思い出したように靴の中からも小さな銃を取り出します。思わず顔を見合わせるキャンフィールド達、そして抱き合うウィリーと娘の姿がフェードアウトし、映画は幕を閉じます。前作もそうでしたが、これまたしゃれの効いた綺麗なラストでした。


笑いに笑いを重ね、クライマックスをアクションで盛り上げ、また笑いに帰結する。そんなキートンのスタイルが見事に決まっています。


キートンゆかりのキャスト陣

本作はキートンにゆかりのある人物が多数出演しています。キャンフィールド家の娘を演じたナタリー・タルマッジはキートンの最初の妻で、撮影時2人目の子供を妊娠中。1人目の子供バスター・キートンJr.は1歳の頃のウィリーを演じています。


さらに、機関車技師の役でキートンの父、ジョー・キートンが出演しています。端役とは言え、本作はキートン家3代が共演しているということになります。ちなみにキートンの両親は舞台芸人で、キートン自身も幼少期から舞台に上がっていたので、このような家族共演は日常のことだったと思われます。


そして忘れてはならないのがジョセフ・キャンフィールドを演じたジョー・ロバーツ。彼は多数のキートン作品に出演しています。彼は本作の撮影中に脳卒中で倒れました。回復後に撮影に戻り、作品を完成させましたが、その後、脳卒中が再発し、本作が遺作となりました。

 

最後に

今回は映画『荒武者キートン』の解説&感想でした。バスター・キートンの作品としては語られることはさほど多くない作品ですが、前作よりもさらに完成度が上がっていて、見どころの多い作品でした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

 

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