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映画『キートンの大学生』解説&感想 興奮と感動のクライマックス

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どうも、たきじです。

 

今回は映画『キートンの大学生』の解説&感想です。映画黎明期の喜劇王バスター・キートンが監督・主演を務めた長編作品として第九作にあたる作品です。

 

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※作品の著作権保護期間は終了し、パブリックドメインとなっています。

 

作品情報

タイトル:キートンの大学生

     キートンのカレッジ・ライフ(別題)

原題  :College

製作年 :1927年

製作国 :アメリカ

監督  :ジェームズ・W・ホートン

     バスター・キートン

出演  :バスター・キートン

     アン・コーンウォール

     ハロルド・グッドウィン

     スニッツ・エドワーズ

上映時間:66分

 

解説&感想(ネタバレあり)

運動音痴を演じるキートン

当時30過ぎのバスター・キートンですが、本作で演じるのは高校を卒業して大学に進学するロナルド


ロナルドは高校で優秀な成績を残しましたが、運動の方は大の苦手。恋するメアリー(アン・コーンウォール)と同じ大学に進学し、彼女の気を引こうと苦手な運動に挑戦します。また、ロナルドは貧しい家庭に育ったことから、学費捻出のためにアルバイトをしながら大学に通います。


本作は、そんなロナルドが、メアリーを手に入れるために、運動に、アルバイトにと奮闘するドタバタ喜劇です。


笑いどころの中心は、ロナルドが野球や陸上競技に挑戦し、ことごとく失敗するシークエンスでしょう。別の学生による模範的なパフォーマンスの後にロナルドが失敗するという繰り返しで描かれます。ひとつひとつがめちゃくちゃ面白いというわけではないですが、それでも「次はどんな失敗を見せてくれるのか」と前のめりになってしまいます。


テレ朝のバラエティ番組『アメトーーク!』の「運動神経悪い芸人」という人気企画がありましたが、これに通じるものがありますね。この番組の場合は、(おそらく)運動神経のそこそこ悪い芸人が、誇張して運動音痴を演じています。そのわざとらしさがやや興醒めで、実はあまり好きではありません。


本作の場合は、『キートンのラスト・ラウンド』でもそうだったように、運動神経抜群のキートンが運動音痴を演じるからこそ、その表現も洗練されています。走高跳で頭から地面に突き刺さったり、走幅跳で綺麗にお尻から着地したり、アレン・ジョンソンばりにハードルを倒しながら走ったり、容易には真似できない運動音痴を演じてみせます。ハンマー投げで、ハンマーを回しながらフラフラと動いて、周囲の人達が大慌てで逃げていく様子には吹き出してしまいました。

 


興奮と感動のクライマックス

クライマックスでは、ロナルドの恋敵のジェフ(ハロルド・グッドウィン)によって軟禁されたメアリーが、電話でロナルドに助けを求めます。これを聞いたロナルドは一目散にメアリーの元へ向かいます。

 

ここからのロナルドのパフォーマンス!愛するメアリーのため、華麗なフットワークで人混みを掻き分け、ハードルや走幅跳のように生垣や水場を飛び越え、棒高跳のように2階のメアリーの部屋に飛び込みます。さらには、円盤投げや槍投げの如く、部屋にあるものをジェフに投げつけて攻撃します。


あのコメディパートが、全てクライマックスへの伏線になっているとは、完全に予想外でした。こんな風に運動能力が急に覚醒するなんてことは、もちろん現実的にはあり得ないですが、愛するメアリーのために力を発揮するという映画の魔法です。


運動音痴が最後に力を発揮するという点では、上に挙げた『ラスト・ラウンド』も同じですが、こちらは急にチャンピオンと闘うことになることや急に力を発揮することの理由付けが曖昧で、ちょっと感情移入しにくいシーンになっていました。一方の本作には、明確に悪い奴がいて、愛する人に卑劣な行為をするわけですから、ロナルドが奮起する真っ当な理由があり、火事場の馬鹿力的に覚醒する様子にも、すんなり感情移入して興奮することができ、感動すら覚えるシーンになっています。

 


新しい笑いの探究

常に新しい笑いを探究するキートンならではの表現の面白さも、本作では多数見られます。


卒業式のスピーチのシーンでは、ロナルドは体を右に左にと傾斜させながら喋り、それに釣られて後ろの教員達も左右に体が傾くというギャグが描かれます。これ自体は何の脈絡もなくて、大して笑えないですが、この表現は面白いです。というか、これマイケル・ジャクソンの"ゼログラビティ"と呼ばれるパフォーマンスと同じですね。マイケルは映画『オズの魔法使』のブリキ男のダンスに着想を得たとも言われていますが、『オズの魔法使』よりも早く、キートンがやっていたとは!


ロナルドがいじめっ子達によって何度も投げ上げられるシーンでは、傘によってゆっくり落ちる様子をスローモーションで表現しているのが面白いです。まあ、こちらも笑いという意味ではさして面白くはないですけど。その後、2階のおばさんもろとも落ちてしまうシーンは声を出して笑ってしまいましたが(笑)


ロナルドがレストランでアルバイトするシーンでは、ウェイターが出入りする用の、"IN"と"OUT"が分かれた扉が登場します。これを使ったドタバタはチャップリンが『チャップリンのスケート』(1916年)や『モダン・タイムス』(1936年)でやっていて、本作ではキートンバージョンが見れるかとワクワクしましたが、さほどこの扉で遊んではいませんでした。


このシーンでキートンらしいのは、別のウェイターが開けたドアに弾き飛ばされて後転しつつも、右手に乗せたスープをこぼさないというアクション。こういうアクロバティックな芸こそキートンの十八番です。


一方で、このシーンでは、ロナルドが黒塗りメイクで黒人に成りすましてアルバイトにありつくという、現代では炎上案件となりそうな笑いで構成されています。時代が時代なので、この手の笑いはキートン映画には珍しくありません。


さて、映画のラストでは、2人は結婚し、やがて3人の子供を持ち、共に年老いて、並んで墓に入るというモンタージュで幕を閉じます。「2人はいつまでも幸せに暮らしました。めでたしめでたし。」をこんな風に表現するなんて。キートン、尖ってますね(笑)

 

 

最後に

今回は映画『キートンの大学生』の解説&感想でした。全体としてはやや単調ではありますが、クライマックスの約2分間の盛り上がりは文句なしに素晴らしい作品でした。

 

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