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映画『キートンのカメラマン』解説&感想 キートンとMGMが交わったシナジー

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どうも、たきじです。

 

今回は映画『キートンのカメラマン』の解説&感想です。映画黎明期の喜劇王バスター・キートンが監督・主演を務めた長編作品として第十一作にあたる作品です。

 

前作『キートンの蒸気船』を最後に、バスター・キートンは自身の撮影所を手放し、当時の最大手の映画会社の一つであるMGMと契約しました。本作は、キートンにとってMGMでの第一作ということになります。

 

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※作品の著作権保護期間は終了し、パブリックドメインとなっています。

 

作品情報

タイトル:キートンのカメラマン

原題  :The Cameraman

製作年 :1928年

製作国 :アメリカ

監督  :エドワード・セジウィック

     バスター・キートン

出演  :バスター・キートン

     マーセリン・デン

     ハロルド・グッドウィン

上映時間:70分

 

解説&感想(ネタバレあり)

新天地での第一作

キートンはMGMとの契約を機に、映画制作における主導権を奪われていき、やがてそれが彼の人気が衰退した一因になったとも聞きます。新天地での第一作となる本作では、キートンはエドワード・セジウィックと共同で監督を務めており(ノンクレジット)、まだ映画制作をコントロールできていたと考えられますが、製作においてはプロデューサーとの衝突もあったようです。


とは言え、少なくとも本作は、これまでのキートン映画の魅力は失われていませんでした。


本作でキートンが演じるのはカメラマン。路上で鉄板写真のポートレートを撮る静止画のカメラマンでしたが、ニュース映画会社(「MGM News Reel」)で働く女性サリー(マーセリン・デン)に恋をし、そこで雇ってもらうために、動画のカメラマンに転身します。


当時はテレビのない時代ですから、動画が見られるのは映画館だけ。長編映画と同時上映という形で、ニュース映画が流されました(『ニュー・シネマ・パラダイス』にも出てきますよね)。当時は映画黎明期ですから、こうした動画カメラマンは新しい花形職業の一つであったと推測されます。


本作は、そんな時代性のあるMGMらしい題材を採用しつつ、キートン映画の王道プロットで楽しませてくれる作品になっています。


王道プロットとはすなわち、

・少し足りないところのある小男のキートンが、

・女性に恋をし、

・女性の方もまんざらではなく、

・でも2人が結ばれるには困難(本作では恋敵や仕事での失敗)が立ちはだかり、

・最終的にドタバタありつつ困難を乗り越えハッピーエンド

というものです。


そんな作品ですから、新天地での第一作として、本作は期待を裏切らない作品になっています。公開当時も、本作は興行的にも批評的にも成功を収めています。

 

 

恋する男のドタバタ喜劇

本作は、サリーとの恋模様とカメラマンとしての悪戦苦闘の二軸で描かれ、そこに笑いがたっぷり織り交ぜられています。


貯金箱がなかなか割れず、代わりにベッドやら壁やらを壊してしまうというギャグも好きですが、個人的に特に笑ったのは、キートンがオフィスの入口の窓を割る"かぶせ"のギャグ。

 

①オフィスを出るときに三脚をぶつけて割ってしまう

②オフィスの外でカメラを担いだ時にカメラをぶつけて割ってしまう

③ぶつけないようにそぉーっとオフィスを出るも、強風でドアが激しく閉まった衝撃で割れてしまう

④ガラスが格子でがっちり補強されている

 

と、1シーンごとに笑いを発展させていくのがうまいです。


映画中盤では、サリーとのデートでキートンがひたすら失敗を繰り返すことで笑いを取ります。バスのシーンでの、キートンらしいアクロバティックな笑いは悪くないですが、正直言って、プールのくだりは少し退屈でした。


特に、1人用の狭い更衣室でおじさんと"相部屋"になって悪戦苦闘するシーンは、4分近くも続いて冗長な印象は否めません。


コメディ映画の傑作と名高い、マルクス兄弟の『オペラは踊る』(1935年)では、船室に大勢の人が入り込む有名なシーンがあります。このシーンは、キートンの発案とされていて、本作の更衣室のシーンを発展させたものと言えるでしょう。私はこれについても何がそんなに面白いのか理解できていません(笑)


私の場合、上に挙げたようなギャグに加えて、キートンのピュアな恋模様を微笑ましく見ていました。サリーからの電話を待ってソワソワする様子とか、共同住宅に一つだけの電話が鳴って猛ダッシュで電話に向かう様子とか、笑いつつ感情移入してしまいます。考え事をしながら階段を歩いていると、目的のフロアを通り越して上りすぎる(下りすぎる)なんていうのは、私にも何度か経験があるので共感して笑ってしまいました。

 

 

チャイナタウンでの決死の撮影

サリーからの情報提供を受け、キートンがチャイナタウンで勃発した犯罪組織の衝突のスクープを撮影するシーンは本作の見どころの一つ。劇中でTong Warsと呼ばれている抗争は、サンフランシスコを中心として各地のチャイナタウンで数十年に渡って繰り広げられた抗争で、実際にあったものです。

 

ここで、必死にやり合う両者の間を縫って、無表情でひたすらカメラを回すキートンの仕草は、それだけで滑稽に見えてきます。


三脚の脚2本が銃弾で折られてしまってバランスが悪いから、もう一本もわざと撃たせるとか、カメラを回す動作がガトリング砲を撃つ動作と間違えて狙われるとか、いかにもサイレント映画らしい"うまいギャグ"にはニンマリしてしまいます。


キートンが陰で密かに両者を争わせるように仕向けたり、揉み合う2人が落としたナイフを持たせたりといった行動は、今見るとメディアへの風刺っぽくも映りますが、当時は純粋なギャグとしてやっていそうですね。

 

気持ちのいいハッピーエンド

キートンがスクープを撮影し、会社に戻ってカメラを開けると、フィルムが入っていなかったというショッキングな展開。一眼レフを持ってきたけど、バッテリー忘れたとか、メモリーカード忘れたとか、実際よくある話であるだけに、よりシンパシーを感じてしまいます。


さらには、キートンは身を挺して海で溺れたサリーを救助したにも関わらず、その手柄を恋敵(ハロルド・グッドウィン)に横取りされてしまいます。キートンを残して去っていく恋敵とサリー。

 

キートン映画には珍しく、悲恋に終わるのか?

そういうのはチャップリンがやればいいんだよ!キートン!

 

と思ったその時、相棒の猿が必死にカメラを回す様子がフレームイン。この安心感!


スクープを収めたフィルムも無事に見つかり、救助の真実もすべて明らかになり、2人が結ばれる気持ちのいいハッピーエンドです。


こんな風に、ここまで落としてから持ち上げるハッピーエンドというのはこれまでのキートン映画ではあまりなかった印象。こういうのはMGMと交わったことによるシナジーかな、なんて思ったり。


でもこの後キートンは衰退していくんだよな…。

 

 

最後に

今回は映画『キートンのカメラマン』の解説&感想でした。個人的には、キートンにはアクロバティックな笑いを求めるので、そういう点ではやや物足りませんが、映画の出来はとてもいい作品でした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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