人生をもっと楽しく

人生を楽しむ多趣味サラリーマンが楽しいことを発信するブログ

映画『ロイドの要心無用』解説&感想 サイレント喜劇の傑作!

【スポンサーリンク】

どうも、たきじです。

 

今回は映画『ロイドの要心無用』の解説&感想です。チャールズ・チャップリンやバスター・キートンと並び称される、サイレント期の喜劇王ハロルド・ロイドによる傑作コメディです。

 

※作品自体の著作権保護期間は終了し、パブリックドメインとなっています。

 

作品情報

タイトル:ロイドの要心無用

原題  :Safety Last!

製作年 :1923年

製作国 :アメリカ

監督  :フレッド・C・ニューメイヤー

     サム・テイラー

出演  :ハロルド・ロイド

     ミルドレッド・デイヴィス

     ビル・ストローザー

     ノア・ヤング

     ウェストコット・クラーク

 上映時間:73分

 

解説&感想(ネタバレあり)

ハロルド・ロイドの笑い

本作の主演のハロルド・ロイドは1920年代当時の喜劇王の一人。チャールズ・チャップリンバスター・キートンといった喜劇王と同時代に活躍しました。

 

チャップリンは"小さな放浪者"によるコメディを量産し、やがては笑いの中にヒューマニズムや社会風刺を盛り込み、単なるコメディにとどまらない名作を世に送り出しました。キートンは命懸けのダイナミックなスタントで魅せるコメディを量産しました。


そんな彼らに比べてロイドは少し影が薄い印象でしたが、本作を初めて観た時には、その素晴らしさに感銘を受けました。各シチュエーションでの笑いの畳み掛けや、クライマックスのビル登りへと帰結していくストーリーは見事なものです。


サイレントであるが故に、体を張った笑いが多いのは、チャップリンやキートンとも共通します。一方で、ロイドの笑いが彼らと大きく異なるのは、そのキャラクターでしょう。


キートンはとにかく無表情でドタバタ喜劇を演じ、それを笑いに変えていました。チャップリンはドラマパートこそ表情がありますが、コメディパートでは無表情であることが多いです。これに対しロイドは常に表情豊かな青年です。チャップリンやキートンが演じてきたような現実離れした風変わりなキャラクターではなく、(少し間抜けな)普通の好青年風のキャラクターがドジをやる姿に、ロイド独自の笑いがあります。

 


スマートなオープニング

冒頭では、ロイドが鉄格子を挟んで恋人(ミルドレッド・デイヴィス)との別れを惜しんでいるシーンから始まります。ロイドの背後には首吊縄のような輪っかが見えています。そこへ看守のような男と牧師が現れ…、と、これからロイドが絞首刑になるかのように見せかけますが、これはフェイク。ここは処刑場ではなく駅で、ロイドはこれから街を出るため別れを惜しんでいたというわけ。看守のような男は出発の時間を知らせに来た駅員で、牧師も単なる見送りです。例の輪っかも運転士への連絡用の道具のようです(カットが変わるとロープの形状が少し変わるのはご愛嬌)。


その後、列車が出発してしまったのを見て慌てて列車を追いかけるロイドですが、自分のカバンと間違えて赤ん坊の座ったカバン(ベビーカー的な?)を持って行ってしまいます。母親が追いかけてきたので、なんとかカバンを取り替えますが、今度は列車と間違えて馬車の荷台に乗ってしまいます。それにも気付いて、なんとか列車に飛び乗ります。


間違えて乗った馬車から陽気に手を振る姿や、間違いに気付いて大慌てで走る姿は滑稽です。少しドジだけど明るい彼の性格が絶妙に表現されています。チャップリンやキートンが演じるキャラクターとはまた違う親しみやすいキャラクターが、センスのいい笑いの中で描写された、スマートなオープニングでした。

 


完成度の高い笑いの連続

その後も小気味いいテンポでストーリーが展開していきます。同居人との貧乏暮らしのシーン、職場に遅刻しまいと奮闘するシーン、職場で口うるさい上司や押し寄せる客を相手に奮闘するシーン、恋人が職場を訪ねてくるシーンなど、よく練られたシチュエーションの中で完成度の高い笑いが連続して描かれます。


同居人との貧乏暮らしのシーンでは、家賃滞納で取り立てに怯える2人が、ノックの音に反応して隠れるのが面白いです。壁にかけたコートの中に隠れる予想外の隠れ方に不意をつかれ、初見時には大爆笑でした。


職場に遅刻しまいと奮闘するシーンはとにかく笑いが畳み掛けられます。文字通りの超満員(東南アジアの映像で見るような)の路面電車で奮闘したり、通りがかりの車に飛び乗ったり、救急車をうまく利用したり、マネキンになりすましたりと、あの手この手で必死なロイドが面白いです。時間に焦っているシチュエーションであることや、場所が目まぐるしく変わることもあって、とてもスピード感のあるシーンになっています。


職場(デパートの生地売り場)でのシーンでは、現場を仕切るスタブス氏(ウェストコット・クラーク)がいいキャラをしています。背筋をピンと伸ばして部下に睨みを効かせる、口うるさい上司です。身を隠そうと地を這うように歩いていたロイドが急に飛び上がったことに驚いてエレベーターに追いやられてしまったり(ロイド自身は何も気づいていないのが面白い)、上着の後裾のベント(切り込み)を生地と間違えてロイドに裂かれてしまったりと、真面目で嫌味なキャラクターが辱められる姿に、どうしても笑ってしまいます。


恋人が職場を訪ねてくるシーンも笑いの連続。ロイドは職場の下っ端で、貧乏暮らしにも関わらず、まるで仕事に成功してお金を持っているかのように、恋人に見栄を張っています。突然訪ねてきた恋人に嘘がばれないように、急に同僚に威張り散らしたり、マネージャーのオフィスで自分のオフィスかのように振る舞ったりと、臨機応変にハッタリをかますのがとにかく面白いです。


このシーンでは、嘘がバレてしまうのではないかという緊張感と緩い笑いが同居しています。そしてそれは、この後のクライマックスで極まります。

 


映画史に残るビル登り

ロイドは、いったん解雇を言い渡されますが、デパートに客を呼ぶための宣伝として、ビルの壁を屋上までよじ登る見世物を提案し、これが採用されます。ロイドがビルの壁を登っていくのが、本作の有名なクライマックスです。


ここに至るまでの流れも秀逸です。もともとは鳶職をやっているロイドの友人(ビル・ストローザー)がこれを行うはずでしたが、友人は警官(ノア・ヤング)に追われて逃げてしまい、1階まではロイドが登って、途中の窓で入れ替わろうということになります。友人が警官に追われることになるのは、ロイドの勘違いによって、友人が警官をからかってしまったことが原因というのもうまいです。結局、友人は警官を撒くことができず、ロイドはもう1階、さらにもう1階と、友人と入れ替われないままずっと登り続けることになるのです。


こうした展開の面白さに加え、ロイドの体を張った笑いが最高です。足を踏み外しながらぎこちなく登っていく仕草なんて、まさに一流コメディアンのそれです。1階登るごとに現れる障害(鳩、犬、ネズミと、動物達もいい演技を見せる)を乗り越えていく中で、高い緊張感の中に笑いが畳み掛けられています。


中でも有名なのは時計の針に掴まってぶら下がるシーン!これはもはや伝説ですね。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』やジャッキー・チェンの『プロジェクトA』でもこのシーンへのオマージュがありますが、「時計の針にぶら下がる」というモチーフは完全にハロルド・ロイドのものです。


その後の、ロープで引っ張り上げられながら何度も何度も頭をぶつけるシーンにしても、風速計に頭をぶつけてフラフラとビルの淵を歩くシーンにしても、動きと表情だけでなんと面白いことでしょう!


最後には、ロイドは恋人の待つ屋上に到達し、二人は抱き合います。遠くの建物の屋根の上には、未だに警官から逃げ続けている友人が小さく見えます。ロイドと恋人は手を取り合い、見つめ合いながら歩いて行きます。屋上の地面に撒かれた塗料(?)の上を歩いたものだから、ロイドの靴が地面にくっついて脱げてしまいますが、二人の世界に入っているロイドは気づかずに歩いて行きます…。


いや、なんてセンスのいいラストシーン!

 

最後に

今回は映画『ロイドの要心無用』の解説&感想でした。73分があっという間に過ぎ、「お見事!」と叫んでしまいそうな、素晴らしいコメディ映画です。サイレント期の喜劇王というとチャップリンしか知らないという人にも、是非見て欲しいです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
多趣味を活かしていろいろ発信しておりますので、興味のあるカテゴリーがございましたら他の記事ものぞいていただけると嬉しいです!
はてなブログの方は、読者登録もお願いします!

 

----この映画が好きな人におすすめ----

↓ 同時代の喜劇王チャールズ・チャップリンの代表作

↓ 同時代の喜劇王バスター・キートンの代表作