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映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』解説&感想 繊細な心理描写のドラマ

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どうも、たきじです。

 

今回は1998年公開のアメリカ映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の解説&感想です。アカデミー賞では、ロビン・ウィリアムズが助演男優賞、マット・デイモンとベン・アフレックが脚本賞を受賞しています。

 

 

 

作品情報

タイトル:グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち

原題  :Good Will Hunting

製作年 :1997年

製作国 :アメリカ

監督  :ガス・ヴァン・サント

出演  :ロビン・ウィリアムズ

     マット・デイモン

     ベン・アフレック

     ステラン・スカルスガルド

     ミニー・ドライヴァー

 上映時間:127分

 

解説&感想(ネタバレあり)

繊細に心理描写した脚本

本作の脚本は、無名時代のマット・デイモンが、ハーバード大在学中に授業で書いた脚本を元に、幼馴染のベン・アフレックと共に映画脚本として仕上げたもの。20代の若き2人はアカデミー賞を受賞。自ら出演も果たし、俳優としてもステップアップ。今や2人揃って大スターです。なんて夢のある話でしょう。


本作でマット・デイモンが演じたウィル・ハンティングは、天才的な頭脳の持ち主。フィールズ賞を受賞したマサチューセッツ工科大学のランボー教授(ステラン・スカルスガルド)でさえ嫉妬する才能です。しかし、清掃員のような単純労働に明け暮れ、仲間と無駄に時間を過ごし、喧嘩をしては鑑別所入りを繰り返す有様です。


ウィルを更生させ、彼の才能を活かしたいランボーは、大学の同窓生で心理学者のショーン(ロビン・ウィリアムズ)にカウンセリングを頼みます。ウィルが幼い頃に親から虐待を受け、心に傷を負っていることを考え、じっくりと彼の心を癒すことを優先するショーン。対して、いち早く彼の才能を活かそうと、結果を急ぐランボー。そこに見え隠れする2人の確執。


一方、心に傷を負うウィルは、自分の才能を活かした仕事に就くことも、恋人のスカイラー(ミニー・ドライヴァー)との関係も、一歩踏み出すことができません。


本作は、そんなウィルや、彼の周りの人々の内面をしっかりと描いた、繊細な心理描写のドラマとなっています。

 

ウィルとショーンの心の交流

とりわけウィルとショーンの心の交流、2人のドラマはしっかり描かれます。


ウィルに自分自身と向き合わせ、心の傷を癒そうとするショーンに、徐々に心を開いていくウィル。ショーンもまた抱える心の傷。やがて心を通わせる2人。この過程が丁寧に描かれているわけですが、極めて印象深いシーンが3つあります。台詞と共に見ていきましょう。


"君自身のことを語るんだ"

1つ目は公園のベンチで行われる2度目のカウンセリングのシーン。


最初のカウンセリングの際には、ウィルはショーンの描いた絵を見てショーンの心理分析をして彼をからかい、それに対しショーンは怒りを露わにします。ショーンは愛する妻を数年前に亡くしており、そのことを知らないウィルが、妻を侮辱するようなことを言ったからです。


ショーンがウィルに言われたことで悩み抜いた末の2度目のカウンセリングがこのシーンです。


ここでショーンは、ウィルがいくら天才的な頭脳を持っていようと、膨大な知識を持っていようと、しょせん経験のない若造なのだと言います。


彼は、自分が妻をどれだけ愛していたか、そして彼女が癌に倒れてもどんな風に愛し続けたかを語ります。そして、自分への愛よりも深い愛で誰かを愛した時にだけに感じる深い喪失感を、君に理解できるはずがないと言います。絵を見たくらいで分かった気になるなと。


さらにショーンは続けます。

 

You're an orphan right?

君は孤児だね?


You think I know the first thing about how hard your life has been, how you feel, who you are, because I read Oliver Twist? Does that encapsulate you?

『オリバー・ツイスト』を読めば、君の苦しみや君の感情、君が何者であるかが分かるのか?そこにすべて書いてあると?


Personally... I don't give a shit about all that, because you know what, I can't learn anything from you, I can't read in some fuckin' book.

私にはそんなものはどうでもいい。君から学ぶことは何もないし、本の受け売りを聞く気もない。


Unless you want to talk about you, who you are. Then I'm fascinated. I'm in.

君が君自身のことを語るなら話は別だ。それなら私は喜んで耳を傾けよう。


But you don't want to do that do you sport? You're terrified of what you might say. Your move, chief.

だが、君はそれが嫌なんだろ?話すのが怖いんだ。君次第だ。


これより前のシーンで、本の受け売りの知識でマウントを取ってきたハーバード大の学生に対し、ウィルがそれを上回る知識で言い負かすシーンがあります。自分の考えはないのか、と。しかし、ウィルもまた、圧倒的な知識を武器に人を攻撃する一方で、自分のことを話すことはなく、自分と向き合うことを避けてきました。それをショーンからすばり言われてしまったわけです。


ウィルに今の自分を顧みさせるきっかけとなる、極めて重要なこのシーン。4分半にわたるショーンのモノローグは素晴らしく心に刺さるシーンになっています。


このシーンはボストン・パブリック・ガーデンのベンチで撮影されましたが、ロビン・ウィリアムズが亡くなった際には、ここに多くのファンが献花に訪れました。それほど、このシーンは多くの心に残るシーンなのです。

 


"後悔はない"

2つ目は、ショーンが妻との出会いを語るシーン。


ボストン・レッドソックスが出場した1975年のワールドシリーズ第6戦。徹夜で並んでチケットを取った伝説の試合の名場面を身振り手振りを交えて語るショーン。興奮しながら話を聞くウィル。しかし、ショーンはその時、球場にいなかったと言います。後に妻となる女性と出会い、友達には「ごめん、俺は彼女を選ぶ」と告げて、バーで飲んでいたからです。


そしてショーンは、そのことを後悔していないと語ります。結婚も、看病のための休職も、辛い最期の日々でさえ、後悔していないと言うのです。


ショーンが語る妻との思い出。そして、"後悔はない"という力強い言葉は、ラストでのウィルの選択にもつながるように、ウィルの心に響くものになっています。


"君は悪くない"

そして、最後の3つ目は、里親から虐待を受けたウィルの過去について2人が話すシーン。


ショーンはウィルに言います。

 

It's not your fault.

君は悪くない


ウィルに近づきながら、何度も何度も言葉を繰り返すショーン。やがてウィルは涙し、ウィルの謝罪の言葉と共に2人は抱き合うのです。


映画を通して、少しずつショーンに心を開いてきたウィルの感情が溢れる、極めてエモーショナルなシーンになっています。このシーンはマット・デイモンの演技も素晴らしく、見ているこちらも毎回心を揺さぶられます。


このように、ウィルとショーンの心の交流が丁寧に描かれているからこそ、ウィルが少しずつ変わっていき、最後に大きな決断をすることに大きな説得力が生まれています。本当に素晴らしい脚本だと思います。

 

ウィルの選択

ウィルは映画終盤で、自分の才能を活かせる一流企業への就職を決意します。彼がこの決断に至ったのには、ショーンとのカウンセリングを通して自分と向き合ったことだけでなく、親友のチャッキー(ベン・アフレック)の言葉の影響も大きいでしょう。


チャッキーはウィルに言います。

 

Cuz tomorrow I'm gonna wake up and I'll be 50, and I'll still be doin' this shit. And that's all right. That's fine.

明日目覚めたら50歳になってても、俺はまだこんなことしてるだろうが、俺はそれで構わない。


I mean, you're sittin' on a winnin' lottery ticket. And you're too much of a pussy to cash it in, and that's bullshit.

だがお前は当たりくじを持ってるのに、ビビって換金しないままだ。そんなの馬鹿げてる。


'Cause I'd do fuckin' anything to have what you got. So would any of these fuckin' guys.

お前のような才能を手に入れられるなら何だってする。みんなそうさ。

 

It'd be an insult to us if you're still here in 20 years. Hangin' around here is a fuckin' waste of your time.

20年後もここにいるのはおれたちへの侮辱だ。ここでぶらついてるのはお前の時間の無駄だ。


普段はふざけ合うばかりの関係であるチャッキーの真摯な言葉に、ウィルは心を動かされたと推測できます。


しかし、ウィルは最終的に、就職の話を反故にし、別れたスカイラーのいるカリフォルニアに向かいます。


私は10代の頃に本作を初めて見た時、"才能を活かす"ことよりも"女"を選ぶというウィルの選択にモヤモヤしてしまいました。結局は、チャッキーが嫌った"当たりくじを換金しない"という選択をしたようにも見えたからです。でも今思えば、私が本作を全く理解できていなかっただけだと気付かされます。


ウィルはそれまで、仕事も女性との関係も一歩踏み出せませんでした。就職で踏み出した一歩を反故にしたのは事実ですが、ウィルはそれよりもさらに大きな一歩を踏み出したわけです。スタイラーとの関係を進めること、仲間に囲まれた気楽な環境から巣立つこと、これはとても大きな一歩です。


これこそ、ウィルが本質的に成長した証であって、祝福すべき結末なのです。今回は就職を反故にしましたが、ウィルはきっといつか"当たりくじを換金する"ことが容易に想像できます。


チャッキーがいつものようにウィルを迎えに来てドアをノックすると、ウィルは出て来ず、部屋はもぬけの殻になっています。この時のチャッキーの笑顔は、それを全て悟ったからこその笑顔でしょう。


そして、ウィルがショーンへ残した手紙がまたいいんですよね。

 

Sean, if the Professor calls about that job, just tell him, sorry, I have to go see about a girl.

ショーン、就職の件で教授に聞かれたら伝言を頼むよ。ごめん、おれは彼女を選ぶ。


ショーンが妻と出会った時の台詞を引用したこの手紙に、

 

Son of a bitch... He stole my line.

あいつ…私の台詞をパクりやがった。


とつぶやくショーン。そして、ウィルの成長を見届けた上で、ショーンもまた新たな一歩を踏み出すという晴れやかな結末です。


上述の通り、初見時はモヤモヤした結末でしたが、今となってはこの結末しかないと思えるほどに完璧な結末だと思います。


また、ウィルは類まれな天才であり、孤児で、里親から虐待を受けて育った男。一見、本作は特殊な男の物語に見えます。しかし、本作が本質的に描くのは、なかなか一歩踏み出すことのできない男の物語であり、その点では、誰もが共感できる物語なのだと気付かされます。

 

最後に

今回は映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の解説&感想でした。素晴らしい脚本と演技によって、繊細な心理描写のドラマに仕上がった名作です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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