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映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』解説&感想 スリリングな政治ドラマ

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どうも、たきじです。

 

今回は2017年公開の映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』の解説&感想です。

 

ゲイリー・オールドマンが、辻一弘氏による特殊メイクでウィンストン・チャーチルを演じ、アカデミー賞では、両名がそれぞれ主演男優賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しています。

 

 

作品情報

タイトル:ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

原題  :Darkest Hour

製作年 :2017年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ジョー・ライト

出演  :ゲイリー・オールドマン
     クリスティン・スコット・トーマス
     リリー・ジェームズ
     スティーヴン・ディレイン
     ロナルド・ピックアップ
     ベン・メンデルソーン

上映時間:125分

 

解説&感想(ネタバレあり)

英国の危機に首相に就任したチャーチル

アドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツが、猛烈な勢いで欧州を侵攻し、イギリスにも脅威が迫る1940年5月。ネヴィル・チェンバレンは首相を辞任し、後任としてウィンストン・チャーチルが首相に就任します。


チャーチルはドイツに対し徹底抗戦の構えで臨みますが、戦況は劣勢を極め、フランスのダンケルクで30万の兵士がドイツ軍に包囲される事態が発生します。英国陸軍の壊滅の危機に瀕し、本土決戦の恐れも高まる中で、閣内にはドイツとの和平交渉を図る動きも生まれ、チャーチルは重大な決断を迫られます。


原題の"Darkest Hour"は直訳すると"最も暗い時間"。欧州がナチス・ドイツの激しい攻勢にさらされた1940〜41年頃が"The Darkest Hour"と呼ばれたことにちなみます。この言葉はチャーチルの言葉として知られていますが、実際のところ、定かではないようです。

 


歴史の転換点を描くスリリングな政治ドラマ 

第二次世界大戦に至るまでのイギリスの対ドイツの宥和政策の是非にしても、本作におけるドイツとの和平交渉の是非にしても、私たちは歴史を知っているからこそ何が正しくて何が間違いかが分かります。しかし、当時の人々はそんなことは知る由もなく、それ故にチャーチルは数々の難しい決断を迫られます。


とてつもない速さで欧州を侵攻するドイツ軍を前に徹底抗戦するのか、和平交渉を図るのか。ダンケルクに追い込まれた軍隊を救うために、別の軍隊を犠牲にするのか。


結果として、その一つ一つが、現在に至るまでの歴史の大きな転換点になるわけですから、映画を観る我々もそのスリリングな政治ドラマに釘付けになります。

 


ダンケルクからの撤退

チャーチルが秘書のレイトンにダンケルクの戦況を話すシーン。地図に刺さった英国軍を示す青いピンはドイツ軍を示す赤いピンに完全に包囲されています。絶望的な状況に衝撃を受け、青いピンに触れるレイトンの指が小刻みに震えるという演出は極めて説得力があり、胸に迫るものがありました。


ダンケルクからの撤退については、ちょうど本作と同年に公開されたクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』で描かれています。同作では、ダンケルクにいる当事者の主観で描かれていますが、司令部側を描いた本作と併せて観ることで、より理解が深まり楽しめることは間違い無いでしょう。


ダンケルクからの撤退作戦には、"ダイナモ作戦"という作戦名が付けられています。本作ではチャーチルがラムゼー海軍中将に電話をした時に「この作戦に名前が必要だ」と言い、ラムゼー中将が発電機(ダイナモ)に目をやるシーンがあります。"ダイナモ作戦"を知らなければ意味の分からないシーンですが、知っていればエキサイティングなシーンですね。

 


地下鉄のシーンは…

ドイツ軍の攻勢を前にして、和平交渉を図るか否かで悩むチャーチルでしたが、最終的に徹底抗戦の意思を固めます。ここに至るきっかけとなるのは、チャーチルが閣議に向かう途中で車を降りて地下鉄に乗り、ドイツに対して屈することのない市民たちの声を聞くというくだり。


このくだりはかなり映画的なハッタリが利いたシーンですね。実際、このような史実はありません。このシーンだけ妙に嘘っぽくて軽いシーンになっている印象です。クライマックスに向けてチャーチルが決意を固めるきっかけになるシーンだけに、この点はかなり惜しいです。

 


チャーチルの名演説

チャーチルは数々の名演説を残しています。本作でも2つの有名な演説が取り上げられ、ゲイリー・オールドマンの迫力ある演技によって見事に再現されています。


首相就任時の演説は、"Blood, toil, tears and sweat(血と労苦と涙と汗)"の演説として知られています。


この演説の下記の一節は、チャーチルの肖像が描かれた5ポンド紙幣にも記載されています。

 

I have nothing to offer but blood, toil, tears and sweat.

私が差し出せるのは、血と労苦と涙と汗だけだ。


この演説のシーンでは、チャーチルがこの演説を検討している場面を描いた短いショットをフラッシュバックで挿入する構成になっており、これも見事に決まっています。


また、この演説は、"Victory(勝利)"を反復的に用いた下記の一節も有名です。

 

You ask, what is our aim? I can answer in one word: Victory. Victory at all costs—Victory in spite of all terror—Victory, however long and hard the road may be, for without victory there is no survival.

我々の目的は何か?と問われれば、一言で答えられる。勝利だ。どんな犠牲を払おうと勝利すること、どんな恐怖を味わおうと勝利すること、どれだけ長く険しい道でも勝利すること。勝利なくして生き残る道はない。


そしてクライマックスの演説。この演説は、"We shall fight on the beaches(我々は海岸で戦う)"の演説として知られています。実際には、ダンケルクからの撤退が成功した後に行われた演説です。

 

We shall fight on the beaches, we shall fight on the landing grounds, we shall fight in the fields and in the streets, we shall fight in the hills; we shall never surrender.

我々は海岸で戦う。我々は上陸地点で戦う。我々は野原で、街頭で戦う。我々は丘で戦う。我々は決して降伏はしない。


ロシアのウクライナ侵攻に際し、ウクライナのゼレンスキー大統領がイギリスの下院で演説した際にも、チャーチルのこの演説のフレーズを引用して話題になりましたね。


この演説によって、チャーチルは最初の演説の時の政策が変わっていないことを高らかに表明します。ドイツ軍の猛攻を前にしても、徹底抗戦の意思を明確に示すものであり、最初の演説と対比的に議会の大喝采を浴び、映画のラストシーンを飾っています。

 


裏方の技術の功績

ここまで、主にストーリーについて述べましたが、最後に技術面についても述べておきましょう。


本作で特筆すべきは、やはりチャーチルをスクリーンに甦らせたということ。その点は、やはりアカデミー賞を受賞したゲイリー・オールドマンの演技に加え、辻一弘氏による特殊メイクの功績も大きいでしょう。


この特殊メイクは、チャーチルそっくりのマスクを貼り付けるようなものではなく、あくまでもゲイリー・オールドマンの顔をベースにしてチャーチルのような肉付きのよい顔付きに仕上げたもの。そのため、表情豊かなゲイリー・オールドマンの演技をまったく邪魔することがありません。特殊メイクということを言われなければ気づかない、全く違和感のない仕上がりは見事なものです。


ちなみに、本作でゲイリー・オールドマンが着用しているスーツは、実際にチャーチルが利用していたサヴィル・ロウのテーラー、ヘンリー・プールが仕立てたものだとか。

 

ヘンリー・プールは歴史ある老舗のテーラーです。(2019年11月撮影)

 

↓サヴィル・ロウについてはこちらの記事で

 

また、本作は撮影も素敵。特に画面に極端な陰影を作り出し、光と影のコントラストを効かせたライティング。議会の場面に代表されるように窓から差し込む光は印象的です。


主演のゲイリー・オールドマンの熱演のみならず、こうした裏方の技術にも支えられ、本作は見応えのある作品になっているわけですね。

 

最後に

今回は映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』の解説&感想でした。歴史の転換点を描いたスリリングな政治ドラマであり、非常に見応えのある作品でした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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