どうも、たきじです。
今回は映画『トッツィー』の解説&感想です。
今となっては少し古いランキングですが、AFI(アメリカン・フィルム・インスティチュート)が1998年に選出したアメリカ映画ベスト100で62位、2000年に選出したアメリカ喜劇映画ベスト100では2位に選出されるなど、アメリカで評価の高いコメディ映画です。
アカデミー賞では、コメディ映画ながら作品賞を含む9部門10ノミネートされ、ジェシカ・ラングが助演女優賞を受賞しています。
また、2018年にはミュージカル化されています。トニー賞では10部門でノミネートされ、ミュージカル主演男優賞(サンティノ・フォンタナ)とミュージカル脚本賞を受賞しています。
作品情報
タイトル:トッツィー
原題 :Tootsie
製作年 :1982年
製作国 :アメリカ
監督 :シドニー・ポラック
出演 :ダスティン・ホフマン
ジェシカ・ラング
テリー・ガー
ダブニー・コールマン
チャールズ・ダーニング
ビル・マーレイ
シドニー・ポラック
ジョージ・ゲインズ
ジーナ・デイヴィス
上映時間:113分
あらすじ
完璧主義の性格が災いして、どこからも役をもらえない俳優のマイケル・ドーシー(ダスティン・ホフマン)。彼は、女装して"ドロシー・マイケルズ"と名乗って昼メロのオーディションに臨み、エミリー役を手に入れます。
マイケルは、元の脚本とは異なる威勢のいいフェミニスト的なキャラクターとして、アドリブ満載でエミリーを演じます。そして、これがたちまち人気となっていきます。
傲慢な演出家のロン(ダブニー・コールマン)やセクハラじみた共演者のジョン(ジョージ・ゲインズ)を相手にも一歩も引かないドロシーに対し、共演者のジュリー(ジェシカ・ラング)は憧れを抱きます。そして、ドロシーとジュリーは仲を深めていきます。
マイケルはジュリーに惹かれますが、ドロシーの正体を打ち明けられずにいます。そんな中、ジュリーの父親レス(チャールズ・ダーニング)がドロシー想いを寄せるようになり…。
解説&感想(ネタバレあり)
洗練された脚本が魅力のコメディ映画
"女性"であることを経験し、ジュリーとの仲を深める中で、この社会で女性が自分らしく生きることの難しさを知るマイケル。ドロシーに影響されて精神的に自立していくジュリー。本作は、"女性の生き方"を見つめながら、2人の成長を描きます。
なんて、本作のドラマ性や社会風刺的な側面にも触れてみましたが、本作の魅力はやはりコメディとしての面白さです。冒頭述べたように、本作はAFIの喜劇映画ベスト100で2位に選出されるなど評価の高いコメディ映画です。
同ランキングで1位に輝いたのはビリー・ワイルダー監督の『お熱いのがお好き』。こちらも主人公2人が女装してギャングから姿をくらますコメディ映画。女装映画がワンツーを決めたということになります。
女装映画という以外にも『お熱いのがお好き』と共通する本作の魅力が、洗練された脚本にあります。失業役者のマイケルが女装して昼メロに出演し人気者になるというメインプロット、随所に散りばめられたユーモア、テンポよい台詞の掛け合いなど、どこをとっても一級品です。
センスの良い台詞の掛け合い
洗練された脚本の中でも、センスのいい台詞の数々は特に印象に残ります。
撮影中のドロシーの映像を見て、
プロデューサー: アラが隠せるまでカメラを引いて
カメラマン: クリーブランドまで?
とか、
素晴らしい演技を決めたドロシーの映像を見ながら、
ロン: 1カメ、アップだ。
(間髪入れずに)
ロン: 近すぎる!
とか、厚化粧でごまかしたマイケル=ドロシーの顔面いじりに笑っちゃいました。
本作の台詞の良さは、そうした"笑いの台詞"だけに留まりません。
例えば、ジュリーとドロシーがベッドで会話するシーン。ジュリーが語る、今は亡き母親と、この部屋の壁紙を一緒に選んだというエピソードは、台詞を通してキャラクターのバックグラウンドや心情を自然にあぶり出します。
コメディの中にこのような優しいエピソードをさらりと挟めるところも本作の脚本すばらしさ。この後、ドロシーがジュリーの頭をそっとなでて「お休み」とつぶやいて寝返りを打ったところでカツラがずれます。しんみりしたシーンの最後をきっちり笑いで締めるところがまたいいのです。
他にも、ジュリーの父がドロシーにプロポーズする時の台詞、「自分が写った写真は高校の卒業式と結婚式の2枚だけ、どちらも隣には妻がいる」。こちらも、ちょっとした台詞からキャラクターの性格やバックグラウンドを肉付けする素晴らしい台詞でした。
最高のクライマックス
映画後半、クライマックスにかけての流れは、プロットのうまさを感じます。
終盤、マイケル=ドロシーにとって最悪の1日が訪れます。想いを寄せるジュリーからはレズビアンと思われて距離を置かれ、ジュリーの父親レスからはプロポーズされ、共演者のジョンからは無理やり手込めにされかけた上に同居人のジェフ(ビル・マーレイ)が恋人であると思われ、一度肉体関係を持ったサンディ(テリー・ガー)に気持ちがないことを告げると大騒ぎされた挙句にゲイと思われるという始末。
この畳み掛けが、クライマックスに向けてストーリーを盛り上げていきます。
そして訪れるクライマックス。ドロシーはドラマの生放送でメイクを取り、自分が男であることを明かします。
これを見たロンの「私を嫌うわけだ!」という晴れやかな顔。そして、ジョンの「ジェフは知ってるのか?」という心配そうな顔。これには最高に笑わせてもらいました。
これってジュリーの立場で考えたら、すごく気持ち悪いことだと思うんですよ。すっかり心を許して、家に招いて食事したり、実家にも招いて同じベッドで寝たり、父親との関係を応援したり、子供を預けたりした友人が、おじさんだったわけですからね(笑)。腹パンかますくらいじゃ収まらないですよ、普通。
でもこれは映画。絶対にバレない女装も含め、ある意味ファンタジーなのです。
ラストシーンで、ジュリーに声をかけるマイケル。無視しようとするジュリーを制止し、関係を続けようと説き伏せます。
ジュリーが言います。
「あの黄色い服貸してくれる?」
主題歌が流れ、2人は楽しげに語らいながら雑踏に紛れていきます。
これでいいのです。
素晴らしいキャスト達
本作はキャスト達がそれぞれの役をとても魅力的に演じています。
マイケル=ドロシーを演じたダスティン・ホフマンは演技派の名優ですが、本作でも見事なものです。そもそも演技をする演技というだけで難易度が高いと思うのですが、本作では"女になりきって演技をする男"という役ですからね。その芸達者ぶりが色濃く現れています。
この頃はシリアスな作品が多かったダスティン・ホフマンですが、慣れないコメディ演技でも安定感があります。
ドロシーの声ではタクシーが止められず、たまらずにマイケルのドスの効いた声でタクシーを止める演技とか、大好きです(笑)
ジュリーを演じアカデミー助演女優賞を受賞したジェシカ・ラングが素晴らしいのは言うまでもないですね。周りの役者がコメディする中で、彼女はシリアスな"受け"の演技。自立していくシングルマザーの女優をしっかりと演じています。
サンディを演じたテリー・ガーはいかにもコメディエンヌという感じのオーバーアクトで、マイケルに振られるサンディを好演。マイケルから「好きな女性ができた」と告げられた時の発狂ぶりには笑わせてもらいました。
マイケルの女装にすっかり騙されるジュリーの父親レスを演じたチャールズ・ダーニングは、かなり可哀想な役を好演。チャールズ・ダーニングと言えば『スティング』のスナイダー刑事のイメージが強いですね。そう言えば『スティング』でも…。
マイケルの同居人の脚本家を演じたビル・マーレイは、脇役ながら出てくるたびに面白くて、終始クスクスさせられました。ローテンションでふざけた感じが絶妙ですね。ドロシーがジョンに手込めにされかけたところに帰宅して鉢合わせるシーンは最高でした。ジョンの「念のため言っておくが、今夜は何もなかった」に対する「ありがとう」。本当に力の抜けた表情が可笑しくて可笑しくて(笑)
彼は本作の2年後の『ゴースト・バスターズ』のヒットで日本でもポピュラーになりましたが、アメリカでは人気バラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ』に出演してすでに人気者でした。
本作ではちょい役ながら、後にブレイクするジーナ・デイヴィスも出演しています(本作で映画デビュー)。下着のモデルをやっていたのがシドニー・ポラック監督の目に止まって抜擢されたと聞きますが、本作でも、登場シーンがほぼ下着姿というのが面白いところです(笑)
最後に
今回は映画『トッツィー』の解説&感想でした。洗練された脚本と、キャスト達の見事な演技で魅せる、コメディ映画の名作です。
最後に少し触れておくと、本作の主題歌の『It Might Be You』(邦題『君に想いを』)はとても素敵なラブソング。運命の人に巡り合った気持ちを歌いあげた優しい曲です。この曲が、映画を見終わった後に深い余韻を残してくれているのは間違いありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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