どうも、たきじです。
今回は映画『雨に唄えば』の解説&感想です。
『雨に唄えば』は1952年公開の、ミュージカル映画を代表する作品です。AFI(アメリカン・フィルム・インスティチュート)が2006年に選出した、アメリカの歴代のミュージカル映画のランキングで1位に選出されるなど、史上最高のミュージカル映画と称されることも多い作品です。
意外と知られていないことですが、本作で使われている楽曲はほとんどが既存の曲。『ハリウッド・レヴィユー』(1929年)で歌われたタイトル曲を含め、過去のMGM作品で使われた曲が集められています。
作品情報
タイトル:雨に唄えば
原題 :Singin' in the Rain
製作年 :1952年
製作国 :アメリカ
監督 :ジーン・ケリー
スタンリー・ドーネン
出演 :ジーン・ケリー
デビー・レイノルズ
ドナルド・オコナー
上映時間:103分
解説&感想(ネタバレあり)
とにかくポジティブなミュージカルシーン
本作は、とにかくポジティブな空気感に満たされていることが魅力です。
それが画面から目いっぱい溢れ出てくるのが、やはりタイトル曲"Singin' in the Rain"のシーンでしょう。このシーンのポジティブな空気感は、他のどの映画のどのシーンにも負けることはないと言えます。
歌自体がとてもいいこともありますが、ドンを演じるジーン・ケリーのパフォーマンス無しには、ここまで素晴らしいシーンにはならなかったでしょう。このシーン、一体何テイク撮影したんでしょうね。歌、ダンス、表情、すべてが完璧に見えます。
雨というのは困難や逆境の象徴であって、その中で笑顔で歌うということはそれに立ち向かう前向きさ。本作を初めて見た後の感動は尾を引いて、しばらくは急な雨に降られてもそれを楽しむ自分がいました。
本作で、個人的に一番好きなのはコズモを演じるドナルド・オコナーによる"Make 'Em Laugh"のパフォーマンス。本当に楽しくて、人間離れした動きに圧倒されて、何度も何度も見てしまいます。落ち込んだ時に元気にしてくれる曲です。
この曲は本作のオリジナル曲ですが、『踊る海賊』(1948年)で歌われる"Be a Clown"にそっくり。パクったわけではなく意図的にアレンジしたものでしょうね。『踊る海賊』も本作と同じMGM映画ですし、"Be a Clown"を歌っているのはジーン・ケリーですから。こちらもすごいパフォーマンスを見せてくれますので、"Make 'Em Laugh"が好きな方にはおすすめです。
あとは、"Singin' in the Rain"の前に歌われる"Good Morning"。ドン、コズモ、キャシー(デビー・レイノルズ)の3人が、撮影中の映画『闘う騎士』をミュージカル映画に作り替える妙案を思いついて盛り上がります。気づけば日付は変わり、時刻は深夜1時半。外は雨ながらも、「なんて清々しい朝!」と楽しく歌い始めます。この曲もポジティブさが全面に出ていますし、ハイテンションで歌って踊る3人を堪能できる贅沢な曲です。
その後ドンを見送り戸口に立つキャシーが、「今夜は夜露が重いようだから」と言ってます。
"今夜"って言っちゃってますね(笑)
劇中劇はちょっと退屈
さて、このように、既存の名曲をストーリーにうまく乗せることで、ぐっと映画に引き込まれるわけですが、劇中劇のシーンはどうしてもストーリーとは切り離されるのでやや退屈に感じてしまいます。
特にシド・チャリシーが登場する『ブロードウェイ・メロディー』のくだりは長すぎです。このシークエンスはなんと13分もあります。映画本編のストーリー進行が13分も止まるわけですから、どうしてもじれったく感じてしまいます。
いや、それぞれのシーン自体は素晴らしいんですよ。でも、ストーリー抜きに素晴らしいミュージカルのパフォーマンスを見るなら、『ザッツ・エンタテインメント』(MGMミュージカルのアンソロジー映画)に勝るものはありません。
サイレントからトーキーへ
本作は、映画がサイレントからトーキーへと移っていった1920年代が舞台。そんな時代背景ならではのユーモアが満載なのも楽しいところです。
サイレント映画は声は録音されませんから、役者同士が表情で演技をしつつ口では喧嘩していたり、技術スタッフが録音という慣れない作業に四苦八苦したりと、そんな様子には笑ってしまいます。
演者の顔の向きによって音がマイクでうまく拾えないとか、衣装の擦れによって雑音が入るとか、音と映像がズレるとか、当時のあるあるネタかもしれませんね。試写会での「Yes, yes, yes!」「No, no, no!」のところは傑作でした。
それから、興味深かったのは、序盤でのドンとキャシーの会話。キャシーは、舞台役者と違って映画俳優は声を出さないことを取り上げてドンを煽ります。
今では舞台と映画の違いというのはメディアの違い(およびそれに起因する演出の違い)に過ぎないですが、当時は声の有無という明確な表現の違いがあったんですよね。当たり前のことですが、少しハッとしました。
映像のみの映画、声のみのラジオ、すべてをありのままに届ける舞台演劇。当時はそうだったわけで、トーキーの出現が当時の舞台演劇にとって大きな脅威だったことが想像できます。
最後に
今回は映画『雨に唄えば』の解説&感想でした。
とにかくポジティブな空気感が魅力の、素晴らしいミュージカル映画です。個人的には一番好きなミュージカル映画でこそないですが、世間的に史上最高のミュージカル映画と言われても異論はない、そんな作品です。
ひたすらポジティブな本作にあって少し引っかかるのは、本作で悪役の立ち位置のリナ(ジーン・ヘイゲン)がラストで容赦なく辱められることですかね。嫌な女ではあるけれど、あの声に愛嬌があるせいか、ちょっと可哀想になってしまうんですよね(笑)
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