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映画『プライベート・ライアン』解説&感想 壮絶な戦闘シーンで見せる戦争のリアル

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どうも、たきじです。


今回は1998年公開のアメリカ映画『プライベート・ライアン』の解説&感想です。アカデミー賞では11部門にノミネートされ、監督賞、編集賞、撮影賞、音響賞、音響編集賞の5部門を受賞しています。



作品情報

タイトル:プライベート・ライアン

原題  :Saving Private Ryan

製作年 :1998年

製作国 :アメリカ

監督  :スティーヴン・スピルバーグ

出演  :トム・ハンクス
     マット・デイモン
     トム・サイズモア
     エドワード・バーンズ
     バリー・ペッパー
     アダム・ゴールドバーグ
     ヴィン・ディーゼル
     ジョヴァンニ・リビシ
     ジェレミー・デイビス

 上映時間:170分


解説&感想(ネタバレあり)

ライアン二等兵の救出

第二次世界大戦における西部戦線の転機となったノルマンディー上陸作戦。作戦を成功させた連合軍でしたが損害は決して小さくありませんでした。


作戦の終了後、アメリカ陸軍参謀総長ジョージ・マーシャルの元にライアン家の4人兄弟のうちの3人が戦死したとの報が届きます。事態を重く見たマーシャルは、敵地に空挺降下し行方の分かっていない末弟のジェームズ・ライアン(マット・デイモン)を本国に帰還させるよう命令を下します。


命令を受けたミラー大尉(トム・ハンクス)ら8名は、ライアンを発見すべく、敵地を進んでいきます。


本作の原題は"Saving Private Ryan"(ライアン二等兵の救出)。邦題だと単に"ライアン二等兵"という意味になります。原題通りが正しい邦題とは言いませんが、この邦題はいかがなものか?"Private"は「兵卒」や階級の「二等兵」の意味がありますが、日本で「プライベート」と聞いてその意味を思い浮かべる人はいませんよね…。


壮絶な戦闘シーン

本作を観た多くの人の脳裏に焼きつくのは壮絶な戦闘シーンでしょう。その映像は、私達を戦場へといざない、その恐怖をダイレクトに伝えます。


とりわけ、冒頭のノルマンディー上陸作戦のシークエンスは壮絶です。まるでそこにいる兵士の視点であるかのように、カメラは揺れに揺れます。激しい銃声や爆音と共に、画面には血が飛散し、爆風で舞う砂と共に手足が吹き飛びます。辺りには体を欠損した兵士が倒れ、怒号と悲鳴が響き渡ります。


映画の公開から20年以上が経過した今観ても、何ら違和感のない映像。凄まじい臨場感。このシークエンスは、本作以前の映画にはなかった表現によって、戦争映画の歴史を塗り替えた20分間と言えます。


壮絶なのはクライマックスの戦いも同様です。ミラー達は、合流したわずかな部隊と共に、戦車を擁するドイツ軍の部隊を迎え撃つことになります。


この戦いでは、アパム(ジェレミー・デイビス)というキャラクターが、映画における極めて重要な役割を担います。フランス語とドイツ語の通訳としてミラー達に同行したアパムは言わば事務方の兵士で、実戦経験がありません。つまり、戦場で勇敢に戦った経験などない我々一般人に最も近い存在です。


激しい戦闘の中で、怖気付いて何もできないアパム。このシークエンスで、我々はアパムの怯えや無力感を通じて、戦場の恐怖をより身近なものとして体験することになるのです。


私は本作を観て、他の映画では味わったことのない感覚を覚えました。壮絶な戦闘シーンに没入し恐怖に震える最中、ふと我に帰った時、自分は安全なところから映画を観ているに過ぎないことに気づき安堵する、そんな感覚です。


それはもちろん、本作の映像があまりに壮絶だから。そしてもう一つ、本作が描いているのが現実の戦争、それも近代の戦争であることも要因でしょう。SF映画やファンタジー映画で描かれた戦争、あるいは戦国時代のような何世紀も前の戦争よりも、感覚的に身近な戦争ですからね。


私が感じた恐怖と安堵。これは、本作で戦争の壮絶さを身をもって感じたことで、今の自分が享受する平和を再認識させられたに他なりません。


ミラー大尉の言葉の意味

クライマックスの戦いで命を落としたミラー。死の直前、彼はライアンに言葉を遺します。戸田奈津子氏による字幕では「無駄にするな。しっかり生きろ」と訳されています。この台詞は、原語では「earn this. earn it」と、やや抽象的な言い回しがされています。


「earn」は、「(お金を)稼ぐ」とか「(名声などを)勝ち取る」の意味が一般的ですが、ここでは「報いる」というニュアンスで理解するのが適切でしょう。


ラストシーンで老人になったライアンの下記の台詞が、ミラーの台詞へのアンサーとなりますが、ここでもearnが使われています。この台詞の一文からも、ミラーの台詞のearnは「報いる」というニュアンスであることがわかると思います。


I hope that, at least in your eyes, I've earned what all of you have done for me.

[日本語字幕]あなたがして下さったこと。私がそれに報いていたら幸せです。


カパーゾを失った際、ミラーは語ります。部下を失うたびに、それは10人の部下を救うためだったと自分に言い聞かせている、と。しかし、今回の任務は1人の兵士のため。ライアンはその価値のある奴だろうかと、ミラーは自問自答します。


「earn this. earn it」という台詞は、これを受けてのもの。ここでの「this」や「it」は、ライアンを守るために息絶えようとしている自分や、任務で命を落とした他の者達の犠牲を指すものでしょう。


つまりこの言葉は、自分たちの犠牲を価値あるものとするために、これに報いよという激励の言葉であると理解できます。まさに、日本語字幕の通り「無駄にするな。しっかり生きろ」なわけです。やや単純化しすぎにも思える日本語字幕ではありますが、原語のニュアンスを日本語字幕で100%表現することなど不可能。これが最適な表現なのかもしれません。


さて、このミラーの言葉はライアンに向けて発せられたものですが、ラストカットの星条旗を見ていると、アメリカという国に向けられた言葉にも聞こえてきます。さらに言えば、映画を見る我々に向けた言葉とも。私達の生活は、過去の様々な人々の犠牲(戦争での犠牲に限らず)の上に成り立っているのは間違いないでしょうから。


メッセージ性と娯楽性

これまで述べてきたことからも分かるように、本作は非常にメッセージ性の高い作品と言えます。戦争の残酷さを描くと共に、戦争で犠牲になった方々への敬意を示し、私達の生活が彼らの犠牲の上に成り立っていることに目を向けさせます。


そんな中で、決してお堅くなりすぎることはなく、絶妙な娯楽性を兼ね備えているのも本作の魅力でしょう。


ミラー達が、ライアンを探して手がかりを求めて敵地を進み、行く先々で戦闘するというのは、まるでロールプレイングゲームのよう。もちろんゲームとは違って、敵にやられて死んだ者は決して生き返らないし、リセットボタンを押すこともできないのですが。


また、"フーバー"や、ミラーの出身地の話など、映画を通じて話題となる要素も、物語の味付けとしてうまく効いています。


そして既に述べた戦闘シーン。その臨場感溢れる映像は、戦争の悲惨さを伝えると同時に、娯楽性も兼ね備えていると言えるでしょう。すでに述べたノルマンディー上陸作戦やクライマックスのみならず、要所要所での戦闘シーンはいずれも高い緊張感で描かれ、観客の感情を揺さぶります。


また、上述のアパムや、信心深いスナイパーのジャクソン(バリー・ペッパー)のように、ストーリーを直接動かすわけではないところにも魅力的なキャラクターが配されていることも、本作の娯楽性を高めています。


こうした絶妙な娯楽性は、やはりスティーヴン・スピルバーグ監督の手腕によるところが大きいでしょう。そのバランス感覚に、改めてスピルバーグ監督の映画センスの良さを感じました。


最後に

今回は映画『プライベート・ライアン』の解説&感想でした。戦争の悲惨さをダイレクトに伝える、脳裏に焼きつくような壮絶な戦闘シーン。メッセージ性と娯楽性の絶妙なバランス。スティーヴン・スピルバーグ監督の映画センスが存分に感じられる力作でした。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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