どうも、たきじです。
今回は映画『RENT/レント』の解説&感想です!表現者達のエネルギーに満ちたミュージカルの映画化作品です。2020年3月には来日公演が上演されます。
作品情報
タイトル:RENT/レント
原題 :Rent
製作年 :2005年
製作国 :アメリカ
監督 :クリス・コロンバス
出演 :アダム・パスカル
アンソニー・ラップ
ロザリオ・ドーソン
ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア
トレイシー・トムズ
ジェシー・L・マーティン
イディナ・メンゼル
テイ・ディグス
上映時間:135分
解説&感想(ネタバレあり)
"多様性"を先取りした青春ミュージカル
舞台は1989年のニューヨーク。ミュージシャンのロジャー(アダム・パスカル)と、ルームメイトの映像作家マーク(アンソニー・ラップ)を中心に、ダンサーのミミ(ロザリオ・ドーソン)、大学講師のコリンズ(ジェシー・L・マーティン)、ストリートドラマーのエンジェル(ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア)、パフォーマーのモーリーン(イディナ・メンゼル)、弁護士のジョアンヌ(トレイシー・トムズ)達が、貧困や病と闘いながら生きる1年間を、ポップなミュージカルナンバーに乗せて描く、青春ミュージカル映画です。
プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』を下敷きとしながらも、舞台をニューヨークに移し、主要キャラクターにユダヤ系、アフリカ系、ヒスパニック系を配したり、LGBTやドラッグ中毒者、HIV感染者を配したりと、独自の世界観を築いています。近年のハリウッド映画が大好きな"多様性"に溢れた作品ですが、原作のミュージカルの初演は1996年ですから、時代を先取りした作品とも言えます。
魅力的なミュージカルナンバー
本作の魅力はやはり魅力的な曲の数々でしょう。ロックにタンゴにゴスペルに、ジャンルも多様で楽しいです。
まずオープニングの"Seasons of Love"はゴスペル調の名曲です。本編のストーリーには乗らない曲で、舞台版では第2幕の初めにキャスト全員で歌われる曲ですが、映画では冒頭にメインキャスト8人によって歌われます。
525,600分(=1年)という時間を何で計るか?愛で計るのはどうか?という曲ですが、過去や未来にとらわれず今のこの瞬間を大切に生きようという、作品のテーマに通じた曲だと思います。
本作の予告編は、この曲に乗せて映画中のシーンを繋いだだけのシンプルなもので、それだけ見てもどういう内容の映画なのかさっぱり分かりませんでしたが、私を劇場に行かせるだけの力がありました。
本編最初の曲"Rent"では、寒さに耐えかねたロジャーとマークが自分達のポスターや脚本を燃やしながら、「家賃なんて絶対払わない!」と歌い上げます。つかみとしてバッチリのアゲアゲのロック・ナンバー。通り全体をダイナミックに使った演出は映画ならではでした。
"Tango: Maureen"はモーリーンの元カレのマークと今カノのジョアンヌが歌って踊るタンゴです。気まずくぎこちないやりとりに始まり、次第にモーリーンに対する愚痴で共感していく2人のユーモラスな掛け合いが楽しく、これぞミュージカルの醍醐味という曲になっています。
"Out Tonight"はミミの独壇場の一曲。ブロードウェイで舞台版を見た時は、この曲のイントロが流れてミミが登場するシーンで大歓声が起こったのが印象的でした。Rentheads(レントヘッズ)と呼ばれる本作の熱狂的なファン達の間で、ミミは大人気のキャラクターです。
ミミが部屋にこもったロジャーを誘う曲ですが、サビの歌詞"out tonight"の"out"の部分を"ア〜ウ〜〜"と歌うのが、さかった猫を表現しているようでうまいですね。細かいことを言えば、猫というより犬っぽいですけど。
"I'll Cover You"はエンジェルとコリンズの2人の掛け合いの明るいラブソング。エンジェルの死後にコリンズがエモーショナルに歌い上げるリプライズも含め、大好きな曲です。
ボヘミアンを讃える"La Vie Boheme"は歌とダンスで最高に盛り上がり、前半のクライマックスにふさわしい名曲。最高のテンションの中で繰り広げられる激しいダンスに加え、テンポのよい単語の羅列とライミングが心地いいです。
"Fenale"では「未来なんてない。過去なんてない。あるのは今日という日だけ」と、作品のテーマが歌い上げられます。今日という日をしっかりと生きる人々の姿を収めたマークのフィルムが壁に映し出される中での合唱です。"Without You"や"Seasons of Love"のメロディがかぶさり、まさにフィナーレにふさわしい盛り上がり。エンジェルの微笑みがフェードアウトするラストカットもいいです。
ジョナサン・ラーソンとキャストについて
本作の原作ミュージカルは、ジョナサン・ラーソンが作詞、作曲、脚本を手掛け、言わば彼が作り上げた作品です。プレビュー公演を翌日に控え、35歳の若さで急逝したこともあり、半ば伝説と化している人物です。
本作の多様なジャンルのミュージカルナンバーの作曲、そしてライミングを多用した作詞の素晴らしさには頭が下がるばかりです。
そして、彼が書いた名曲を歌い上げるキャスト。本作では、メインキャスト8人のうち、ミミ役とジョアンヌ役を除く6人のオリジナルキャストが集まっています。
初演から10年近く経過しての映画化のため、キャストが高齢化していることは、仕方ないとはいえやや残念なところ。30代のいい大人が群れてボヘミアンな生活をして、「家賃なんて払うもんか!」というのは、少しツッコミを入れたくなります(笑)
とはいえ、ほぼオリジナルキャストで映画化できたことは素晴らしいこと。主演とも言えるマーク役のアンソニー・ラップとロジャー役のアダム・パスカルが映画にも出演したのはうれしいことです。
舞台版ではトニー賞の助演男優賞を受賞した、エンジェル役のウィルソン・ジェレマイン・ヘレディアは、映画版でも特にいいですね。登場シーンの曲"Today 4 U"での躍動感から、映画を締めくくる笑顔まで、強く印象に残ります。
モーリーン役のイディナ・メンゼルは"Wicked"でトニー賞の主演女優賞を受賞した、実力派の舞台女優です。モーリーンのような突き抜けたキャラクターを演じるのがうまいですね。日本では名前を聞いてもピンとこない人が多いと思いますが、声は誰もが聞いたことがあるでしょう。彼女は『アナと雪の女王』のエルサ役、つまり、英語版で"LET IT GO〜♪"と歌っているのは彼女だということです。
ミミ役は、オリジナルキャストのダフネ・ルービン=ヴェガが妊娠により降板したことから、ロザリオ・ドーソンが出演。結果的に、映画女優でありリアルに20代の彼女がいることで、作品がいくぶん華やいだ印象です。
最後に
ジョナサン・ラーソンと、そこに集ったキャスト達が作り上げた、エネルギーに満ちたミュージカルだと思います。3月の来日公演も楽しみに待ちたいと思います。
突然歌い出す感じたっぷりのミュージカルなので、そういうのが苦手なタイプの人にはおすすめできませんが、大丈夫な人にはぜひおすすめしたい映画です。そういうのが苦手な人は『シカゴ』を見てください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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