どうも、Takijiです。
今回は映画『ラ・ラ・ランド』の解説&感想です。古き良きミュージカル映画のエッセンスを多分に含みつつ、それを新時代のミュージカル映画にアップデートしたような作品です。
作品情報
タイトル:ラ・ラ・ランド
原題 :La La Land
製作年 :2016年
製作国 :アメリカ
監督 :デイミアン・チャゼル
出演 :ライアン・ゴズリング
エマ・ストーン
ジョン・レジェンド
ローズマリー・デウィット
J・K・シモンズ
上映時間:128分
解説&感想(ネタバレあり)
芸術家の焦燥とロマンス
主人公のセブ(ライアン・ゴズリング)とミア(エマ・ストーン)は共に芸術家。セブは古き良きジャズを愛するピアニストで、いつか自分の店を持つことが夢。ミアはハリウッドで活動する女優の卵で、オーディションに挑むも落選の日々。本作は、夢に向かって進む2人の焦燥とロマンスを描くミュージカル映画です。
2人は出会い、やがて恋に落ちます。お互い惹かれ合いながらも、仕事がうまく行かない焦燥に駆られる中ですれ違いが生まれてきます。
セブは旧友のキース(演じるのはR&Bシンガーのジョン・レジェンド!)に誘われたバンドに参加し成功しますが、その音楽性は、セブの愛する古き良きジャズとは大違いのクロスオーバー・ジャズ。生活と、夢のために受け入れますが、本意ではありません。
ミアはオーディションでは落選続き。奮起して自ら一人芝居の脚本を書き上げて、舞台に立ちますが、客入りも悪く、演技も酷評されます。
こうした芸術家の焦燥は、私には想像の域を出ませんが、芸術の道を歩んでいる人、あるいはかつてそれを志した人なら、もっと感じ入るのでしょうね。
自分の理想を抑え、お金のために多少の妥協をしたセブの選択は、ミアが言うように、それも大人になるということなのかもしれません。彼は後に素晴らしいお店を開くわけですから。そしてミアもまた、夢を諦めかけた時に舞い込んだオーディションで夢を掴み、後にスター女優になります。
これだけ見るととてもハッピーですが、2人のロマンスは成就しません。それぞれの夢に向かって自分の道に邁進するため、彼らは愛し合っていながらも別れてしまいます。
5年後、スター女優になったミアがたまたまセブの店を訪れますが、別の男の妻になり、子供も儲けています。それぞれの道に邁進する中で、それぞれの幸せを見つければいいので、ミアを責めるのは筋違いですが、それでも2人のロマンスを2時間見ていた我々には、少し寂しいですね。自分の経験を重ね合わせちゃったりもして、切ない余韻が残りました。
まあ、ハリウッドのスター俳優って、ほとんどと言っていいくらい離婚しますから、まだセブにはチャンスがありそうですね(笑)
古き良きミュージカルへのオマージュ
本作のミュージカルシーンは、50年代頃のフレッド・アステアやジーン・ケリーのMGMミュージカルを思い起こさせます。
素晴らしいオープニング・ナンバー"Another Day of Sun"や、マジックアワーにセブとミアが歌って踊る"A Lovely Night"を始めとして、ワンカット撮影やタップダンスなど、近年の流行りとは違った、古き良きミュージカルへのオマージュが感じられます。これは滅びかけた古き良きジャズを守りたいセブの考えと通じるところがあります。
誤解がないように書いておくと、本作は単に古き良きミュージカルを真似た懐古主義の映画ではありません。現代の技術による表現も巧みに織り交ぜながら全く新しいミュージカル映画にアップデートされています。
同じワンカットの撮影でも、"Another Day of Sun"のようなダイナミックなロケーション撮影や、当時はできないようなカメラワークで魅せます。セブとミアがグリフィス天文台で踊るシーンでは、2人が宙を舞い、雲の上に立ちます。
ハリウッド最大手の映画会社だったMGM(ライオンが吠えるオープニングロゴで有名)のミュージカル映画で構成したアンソロジー映画『ザッツ・エンタテイメント』なんかを見ればフレッド・アステアやジーン・ケリーがいかにミュージカルシーンの表現を練りに練っていたかがよく分かります。彼らが今の時代に活躍していたら、本作のような表現もやっていただろうななんて思ったりしました。
また、本作は歌って踊るミュージカルシーン以外にもセブのピアノ演奏を始めとして音楽シーンが豊富です。こうしたシーンはミュージカルシーンとは異なり、ストーリー上実際に演奏されているものですが、演奏するセブや聞いているミアだけにスポットライト当てる演出で映画を観ている我々の感情を揺さぶります。こうした表現はミュージカル映画だからこそできる表現です。
最後に
今回は映画『ラ・ラ・ランド』の解説&感想でした。芸術家達の焦燥とロマンスを描いた楽しく切ないミュージカル映画でした。とはいえ、本作が日本で結構話題になったのは意外です。分かりやすいハッピーエンドではないし、逆にお涙頂戴の悲恋でもないし。万人受けするタイプの映画ではないと思いますけどねぇ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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