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映画『プロデューサーズ』解説&感想 思いっきり笑えるミュージカル・コメディ

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どうも、たきじです。

 

今回は映画『プロデューサーズ』の解説&感想です。

 

オリジナルはメル・ブルックス監督・脚本で1968年に公開された同名映画。その後、メル・ブルックス自身の作詞・作曲で2001年にミュージカルとして舞台化されました。本作は、そのミュージカル版を2005年に映画化した作品です。


監督は舞台版で演出を務めたスーザン・ストローマン。主役のマックスとレオを演じたネイサン・レインとマシュー・ブロデリックを始め、ロジャー役のゲイリー・ビーチ、カルメン役のロジャー・バートが、舞台版オリジナルキャストとして本作にも出演しています。

 

作品情報

タイトル:プロデューサーズ

原題  :The Producers

製作年 :2005年

製作国 :アメリカ

監督  :スーザン・ストローマン

出演  :ネイサン・レイン

     マシュー・ブロデリック

     ユマ・サーマン

     ウィル・フェレル

     ゲイリー・ビーチ

     ロジャー・バート

 上映時間:134分

 

解説&感想(ネタバレあり)

センスのいい笑いがいっぱい

本作の大きな魅力は、やはり"笑い"にあります。


ネイサン・レインとマシュー・ブロデリックの息の合った掛け合いにも見られるスラップスティックな笑いもさることながら、さりげなくさらっと入れられるユーモアも面白いです。


例えば、ナチスかぶれのフランツに合わせて鉤十字の腕章を付けたマックスとレオが、腕章を外し忘れたまま次の訪問先に行っちゃってるとか。あるいは、マックスの計画に乗ることを決意してレオがマックスのところに戻ってくると、別れた時と同じポーズでマックスが待っているとか。個人的に結構ツボ。


ちなみに後者のシーンのロケ地はセントラル・パークのベセスダの噴水ですね。オリジナル版もこのシーンは噴水で撮られていて印象的なシーンでしたが、しっかりオマージュしています。


他にも、マックスの"弁護"のためにレオが法廷に現れると、なぜかみんながサンバを踊り出すというナンセンスな笑い。かと思えば、レオがマックスへの想いを込めたミュージカル・ナンバー"'Til Him"を歌い上げたのに対し、マックスが「歌上手いんだね」と返す高度な(?)笑い。ミュージカルの暗黙の了解を逆手に取った笑いに思わず吹き出してしまいます。


いや、ほんと全体的に笑いのセンスがいいと思いますね。公開当時、本作を劇場で見ましたが、日本の劇場にしては珍しいくらい笑い声が上がっていました。


ちなみに、舞台版もブロードウェーで見たことがあるのですが(オリジナル・キャストではない)、言うまでもなく大爆笑の連続でした。


ただ一方で、ポリコレ全盛の今見ると、受け入れられにくそうな部分も多い印象です。変なドイツ人、変なゲイ、お馬鹿なブロンドのスウェーデン人、アイルランド訛りいじりとか、今だとプチ炎上案件かも…

 

楽しく演じるキャスト達

上でも述べた、ネイサン・レインとマシュー・ブロデリックの息の合った掛け合いに代表されるように、本作は舞台版から集まったキャスト達が楽しく演じているのが画面から伝わってきます。


ネイサン・レインははじけた演技が最高に可笑しく、表情、台詞、歌、ダンスでたっぷり楽しませてくれます。もっと評価されていい役者だと思いますね。独房の中でこれまでのストーリーを一人でおさらいするシーンはもう最高!


マシュー・ブロデリックには、青いハンカチを取られた時のヒステリー演技に笑わされました。ただ、これはオリジナル版でレオを演じたジーン・ワイルダーの演技の再現ですね。


ゲイリー・ビーチ(ロジャー)とロジャー・バート(カルメン)もそれぞれが小慣れた演技で笑わせてくれます。


セクシーな女優ウーラとナチスかぶれの脚本家フランツはそれぞれユマ・サーマンウィル・フェレルが演じています。こちらは舞台版とキャストが変わりましたが、映画俳優としてネームバリューのある2人が加わることで、画面がいくらか華やいでいます。


ちなみにウーラは、当初ニコール・キッドマンが演じる予定でしたが、スケジュールの都合で降板したんですよね。個人的にはニコール・キッドマンで見たかったのが正直なところです。

 


ミュージカルシーンの良し悪し

この頃のミュージカル映画では、カメラワークやカッティングによる目まぐるしい映像表現がよく用いられていた印象です。一方で、本作のミュージカルシーンでは、そうした表現はあまり用いられていません。ロングショットであまりカットを割らない映像表現が目立ち、どちらかと言えば往年のMGMミュージカル風です。


これ自体は決して悪くないですが、このように撮られると、ついつい往時のジーン・ケリーやフレッド・アステアを想起してしまいます。そして、超一流の彼らと比べてしまうと、どうしても物足りなく感じてしまうのです。


また、本作は舞台の演出そのままというのが多くて、映画ならではの演出が少なめ。上述の映像表現も相まって、舞台を見ているような感覚になることもしばしば。


舞台版はトニー賞を12部門も受賞するほどの評価であったにも関わらず、映画化された本作はあまり評価されず、興行成績も振るわなかった要因はそこにあるでしょう。例えば『シカゴ』がそうであったように、映画ならではの演出がもっと欲しかったというのが正直なところです。


ただ、本作を見ると舞台版がすごく見たくなることは間違いないので、舞台版のプロモーションとしてはいいかもしれません。実は私もブロードウェーで舞台版を見たのは、本作を見てからのことになります。


さて、悪い点ばかり述べていますが、良い点も。レオが歌う"I Wanna Be a Producer"のシーンは個人的にかなり好き。


会計事務所のキャビネットが、ステージの階段になるところから、別次元の華やかな舞台の世界に入っていく、この演出に関しては映画ならではと言えるでしょう。


また、この曲の場面の興味深いところは、ミュージカルシーンとして三層構造になっているところ。まずは、会計士達が"Unhappy…"と歌う会計事務所でのシーンから、別次元のステージに移り、最後はまた現実の会計事務所に戻るという具合に、この曲自体が二層構造。さらにはそれを、"We Can Do It"で挟み込むという三層構造です。


これが、この序盤の一連のミュージカルシーンにまとまりを生むと共に、レオがマックスと組んで演劇を作ることを決意するという、物語の大きな動きを、より劇的に盛り上げています。


そして本作のハイライトはやはり"Springtime for Hitler"のシーンでしょう。ヒトラーを礼賛して作品を打ち切りにするはずが、痛烈な風刺として受け取られて絶賛されてしまうという、物語の転機となる曲です。劇中劇として演じられるものですので、ミュージカルではないオリジナル版から存在しています。


曲自体もいいですし、ヒトラーとドイツへの礼賛が行き過ぎてコメディになるという面白さ!頭にプレッツェルやらソーセージを乗せた美女ダンサーには笑ってしまいます。

 

鉤十字の形に並んで行進する演出も面白いです。映画の中でもそうしていましたが、舞台ではステージの背景に設けた大きな鏡を客席側に傾けることで、客席から鉤十字の形が見えるようにしています。


ちなみに、私がブロードウェーで見た時は、作品の人気も落ちて来た頃であったことに加え、平日の昼の回だったので、客席は結構ガラガラでした。そのため、大きな鏡が出てきた瞬間に、ガラガラの客席が映って少し萎えてしまいました(笑)


とは言え、やはり生の舞台の感動は大きいです。映画版で新たに書き下ろされたエンディング曲"There's Nothing Like A Show On Broadway"は、完全にブロードウェー賛歌。とても共感しますし、すぐにでも劇場に向かいたくなる曲です。


映画のエンディングなのに、映画に否定的なことを言って(もちろんユーモアを込めて)、ブロードウェーの素晴らしさを歌い上げるなんて、やはり本作、舞台版のプロモーションですね(笑)

 

 

最後に

今回は映画『プロデューサーズ』の解説&感想でした。

 

映画化作品として成功とは言えないものの、元の舞台の素晴らしさをしっかり映像に残した作品になっています。オリジナル版の監督・脚本を務め、ミュージカル曲の作詞・作曲をも務めたメル・ブルックスは本当にいい仕事をしましたね!(本作でもエンドロール後のラストカットで顔を出しています)


ちなみにメル・ブルックスは、エミー賞、グラミー賞、オスカー(アカデミー賞)、トニー賞をすべて受賞(頭文字を取ってEGOTと呼ばれます)し、ショービズ界のグランドスラムを達成した史上16人の中の1人です。偉大なクリエイターですね。

 

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