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10のテーマで紹介するラーメンズ・小林賢太郎のおすすめコント

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どうも、たきじです。

 

先日、ラーメンズの小林賢太郎が2020年11月16日をもって芸能界を引退していたことが明らかになりました。ラーメンズの公演、舞台演劇のプロデュース公演、ソロ公演など、彼の公演を追いかけてきた私としてはショッキングなニュースでした。どうやら引退したのは"パフォーマーとして"であって、執筆活動は続けるようなのはひとまず安心ではありますが、パフォーマーとしても一流であっただけに本当に惜しいことです。


小林賢太郎の作品は、多くがYouTubeで公式に公開されていますので、これからも多くの人に楽しんでもらいたいものです。ということで、今回は、小林賢太郎の描くコントの魅力を10のテーマで紹介したいと思います。

 

※2020年12月14日現在、公演としては、ラーメンズの第5回~第17回公演のコント計100本、プロデュース公演4本、ソロ公演58本、コント公演・カジャラ11本が公開されています。以下でリンクを貼っているものはすべて公式動画です。

 

小林賢太郎について

小林賢太郎は、現在は俳優としても活躍する片桐仁と共に、1996年にラーメンズを結成。ネタ見せのお笑い番組『爆笑オンエアバトル』などに出演し人気を博しましたが、バラエティ番組にはほとんど出演せず、その後は主に舞台を中心に活躍しました。また、2002年からは舞台演劇のプロデュース公演を、2005年からはソロ公演Potsunenシリーズを、2016年からはコント公演・カジャラを開始し、多様な笑いを世の中に提供してきました。多くがチケット入手困難で、抽選結果に一喜一憂した方も多いと思います。


その他にも、漫画絵本を出版するなど、その才能は劇場にとどまらず、2019年には、東京パラリンピックの閉会式のステージ演出を行うことが発表されました(コロナの影響がどうなるか分からない状況ですが)。


そして2020年12月。11月16日をもって、パフォーマーとしては引退したことが発表されました。

 

10のテーマで紹介する小林賢太郎の世界

1. 非日常の中の日常

「日常の中の非日常ではなく、非日常の中の日常を描く。一見すると異常な世界観だけどその世界の住人たちにとってはいつもの出来事」


これは「アトムより」の中で小林賢太郎演じる映画監督の作品について述べた台詞(5:42〜)ですが、これは小林賢太郎の描くコントを形容した言葉でもあります。


毎年、季節になると空から"初男"が降ってくる世界(「初男」)、重力が斜めになる"斜めの日"が訪れる世界(「斜めの日」)、寿命と引き換えに時間を戻すことができる世界(「お時間様」)など、私たちが知っている世界とは違う世界の日常が描かれます。そこには、日本的な"お笑い"に付き物のボケとツッコミは必ずしも存在せず、"非日常の中の日常"を面白おかしく描きます。それが、演劇に近いお笑いと言われる所以でしょう。


こうした"非日常"の世界観を、説明的な台詞ではなく、コントの中の台詞のやりとりで徐々に明らかにしていくのが小林賢太郎です。


そんなラーメンズの初期の代表作に日本語学校シリーズがあります。テレビのネタ見せ番組でもよくやっていたのでご存知の方も多いと思います。日本語学校シリーズは、ラーメンズという認識なくFlashを見たことがある方も多いかもしれません。


日本語学校シリーズの集大成とも言えるのが「不思議の国のニポン」。47都道府県で日本語を学ぶヘンテコな日本語学校での、講師と生徒のやりとりを描きます。ともすると47の並列なネタの羅列になってしまいそうなところを、それらを縦に貫く伏線や畳み掛けが全体をまとめ、完成度の高いコントになっています。

 

もう一つ紹介したいのが「イモムシ」。人間とイモムシがペアで何やら競技に参加する世界のコントです。これだけ聞いても意味不明ですね(笑)。黒衣によるイモムシの表現、"ムシ"にちなんだ言葉遊びを散りばめた台詞、キュンとするロマンス、"競技"で連発されるギャグなど、見どころの多いコントです。

 

他にも、「私の言葉が見えますか」、「QA」、「高橋」もよくできたコントです。

 

2. 日常を切り取る着眼点

"非日常の中の日常"が小林賢太郎の描くコントの大きな特徴ですが、中には私達にとっての日常の世界観のコントもあります。ただし、そんなコントも、独特の着眼点で日常を切り取るのが、小林賢太郎の一筋縄ではいかないところです。


本人不在」はテレビの受信料の取立ての攻防を描き、「プレオープン」はテーマパークのアトラクションのプレオープンを描きます。


ここで特に紹介したいのが「音遊」。デパートのイベントの企画書を作る男(小林)と、そのそばで彼の仕事が終わるのを待ちながらチャチャを入れる男(片桐)のやりとりを描きます。どうやったらこんな設定のコントを思いつくのでしょう。何気ないやりとりの中で話が展開しつつ要所に笑いが散りばめられた、演劇性の高いコントです。


他にも、大学で"金部"という2人だけの部活動をしている2人が交通量調査のバイトをしながら語らう「金部」もよく出来たコントです。

 

 

3. 実験的な表現への挑戦

小林賢太郎のコントは、常に新しい表現を探究し、実験的な表現に挑戦していることも魅力の一つです。


上に挙げた「イモムシ」でも、黒衣として小林賢太郎がイモムシを操作するという表現が独特です。


また、「新噺」では、落語をモチーフにカオスな2人芝居を演じ、ソロコントの「ヤギさん郵便」でも、落語を新たな表現で演じて見せました。

 

さらに、コント公演・カジャラの「山小屋における同ポジ多重コント」では、同じ場所で起こった2つの出来事を同時に進行させるという、極めて実験的な表現に挑戦しています。


ここで、特に紹介したいのが「レストランそれぞれ」。クルッと回って別の人物に変わるという表現で、2人で何役も演じています。演者が足りないからこのような表現をしているわけではなく、この表現だからこその笑いが多分に盛り込まれているあたりはさすがです。


後にも紹介しますが、「50 on 5」もこの表現を用いたコントになっています。

 

4. 言葉遊びを極める

様々な表現を探求しつつも、やはり"言葉"は表現の中心となります。小林賢太郎の書く脚本には、巧みな言葉遊びが軸となることも少なくありません。


ドラマチックカウント」では、"あいうえお…"に始まる50音を順番に読み上げるだけで成り立つストーリーを作ってしまいます。「風と桶に関する幾つかの考察」では、"風が吹けば桶屋が儲かる"のことわざの成り立ちをコントにして見せます。


そんな言葉遊びを極めているのが、ラーメンズの第16回公演『TEXT』。ラーメンズの最高傑作だと思います。この公演は、タイトルから連想されるように、言葉がテーマとなったコントで構成されています。


50 on 5」では、50音ポスターを作る男達を描き、50音で遊び尽くします。「同音異義の交錯」では、同音異義語を巧みに織り交ぜて、2つの物語を並行して見せます。「銀河鉄道の夜のような夜」では、しりとりにちょっとした仕掛けを施して見せます。(『TEXT』はコント同士に繋がりがあるので、通して見ることをおすすめします)


そんな中で、ここで紹介したいのは、小林賢太郎のソロコントから、"アナグラムの穴"シリーズの一本。言葉の並べ替えで遊び尽くすコントです。ソロコントPotsunenで何度も披露されたシリーズですが、こちらは『Drop』において披露されたものです


その他、「うるうびと」も最後にアナグラムが登場する秀逸なコントです。

 

 

5. あっと驚く仕掛け

よく練られた脚本の最後に、あっと驚く仕掛けが用意されていると、満足度はさらに高まります。


あんまりネタバレすると良くないですが、「count」や「片桐教習所」(「たかしと父さん」を見てから見るべきネタです)では、マジック的な仕掛けで観客を驚かせます。また、上でも挙げた「斜めの日」は、これがやりたくてこのコントを書いたのかなと思わせる仕掛けで、最後にあっと言わせます。


舞台演劇のプロデュース公演で言えば、『good day house』の第3幕は、アーティスティックな仕掛けがありますし、私がプロデュース公演の最高傑作と考えている『ロールシャッハ』では、作品全体にある仕掛けが施されています。


こういうのを見ると、パラリンピックの閉会式のステージ演出も、何かやってくれるんじゃないかと期待が膨らんでしまうんですよね。


ここで紹介しておくのは、ソロコントPotsunen『THE SPOT』の最後を締めくくる「大きなお土産」。『THE SPOT』のコントに出てきたキーアイテムを集めたまとめの内容なので、『THE SPOT』を通して見ないと意味が分からないと思いますが、あっと驚く仕掛けという点では、小林賢太郎作品を代表する作品なのでここに挙げておきます。できれば『THE SPOT』を最初から見ることをおすすめします。

 

6. コントを跨いだ伏線

1つの公演にテーマ性があり、コントを跨いだ伏線によって、大きな笑いを生むと同時に公演全体に統一感を持たせる。それも小林賢太郎のうまいところです。


すべてのコントが"帝王閣ホテル"を舞台にしているラーメンズ第13回公演『CLASSIC』はもちろん、ソロコントPotsunenの各公演などもコントを跨いだ伏線が効果的に用いられています。


そんな中で特に紹介したいのは、やはり上でも述べたラーメンズの最高傑作『TEXT』。この公演の中の「条例」は、初めて見た時には腹を抱えて笑ってしまいました。これは絶対にその一つ前のコント「不透明な会話」から続けて見るべきコントです。あれが伏線になっていたのかと気づいた瞬間に、この後への期待がぐっと膨らむ、そんなコントになっています。

 

 

7. ドラマ性

小林賢太郎がプロデュースした舞台演劇の公演は全部で10作ありますが、第5作の『TAKEOFF 〜ライト三兄弟〜』から、ぐっと完成度が上がった印象があります。登場人物を掘り下げて、内面に切り込んで描くことでドラマ性が増し、コメディでありつつ深みを持った作品に仕上がっています。その後、『TRIUMPH』、『ロールシャッハ』と続く3作は、個人的にかなりお気に入りです。


約2時間のプロデュース公演に対し、ラーメンズのコントは長いものでも20数分ですが、そんな中でも登場人物を描き込み、人物の背景が見えてくるようなドラマ性を持ったものもあります。


ここで紹介したいのは、ファンの間でも人気の高い「採集」です。東京から田舎に帰省した男(小林)が、田舎で暮らす旧友(片桐)と、真夜中の体育館で語らう話です。登場人物を掘り下げながら、ドキッとする展開へと転じていくドラマチックなコントです。小林賢太郎の歌ありラップあり(笑)の一人芝居パートも見どころです。

 

他に、「器用で不器用な男と不器用で器用な男の話」もおすすめです。

 

8. ギャグもの

その緻密さゆえに、時に"頭の良過ぎるコント"などと言われたりもする小林賢太郎のコントですが、ひたすらギャグを連発するようなふざけたコントもあります。


「タカシと父さん」、"怪傑ギリジン"シリーズ3作、「スーパージョッキー」は、いずれも小林賢太郎はほぼ台詞を喋らず、片桐仁がひたすらふざけ倒すコントです。バニー部」では、珍しくその役柄が入れ替わり、小林賢太郎がふざけ倒す側に回っています。


最初に見るなら「タカシと父さん」がおすすめですが、こちらは公式での公開がないため、ここでは「怪傑ギリジン」を紹介します。コント中の歌はネット上ではちょっと有名です。


一方にしか台詞がないコントというものでは「現代片桐概論」も面白いです。こちらは"ふざけ倒す"というものではないですが、"非日常の中の日常"を描いた、小林賢太郎らしいコントです。

 

 

9. キャラもの

意外にも(?)小林賢太郎はキャラもののコントも書いています。ここでは「ホコサキ」を紹介します。自分を疑う誰か(第三者)に対して自己弁護する男(片桐)と、片桐の台詞に出てきた物のネーミングに対してツッコミを入れるホコサキさん(小林)のコントです。このコントも言葉遊びの要素が満載です。


他に「ドーデスと言う男」、「ネイノーさん」などもキャラもののコントです。

 

10. パフォーマンス

さて、最後になりましたが、小林賢太郎のパフォーマーとしての表現力について書いておきましょう。小林賢太郎は、様々なキャラクターを演じ分ける、芝居としての表現力もさることながら、時に歌やモノマネ、パントマイムなどを使った多彩な表現で観客を笑わせます。


歌ネタは上に挙げた「採集」や「条例」の他、「男女の気持ち」やソロコントPotsunen『ポツネン』の「アナグラムの穴①」などで見ることができます。


モノマネは「ネイノーさん」、「男女の気持ち」、「不思議の国のニポン」で見ることができます。


ここで紹介したいのは上でも触れた「風と桶に関する幾つかの考察」。"風が吹けば桶屋が儲かる"ということわざの成り立ちは、「風が吹くと土ぼこりがたって目に入り盲人が増え、盲人は三味線を弾くから三味線を作るのに使う猫の皮が必要になって猫が減り、ねずみが増えて桶をかじるから、桶を買う人が増えて桶屋が儲かる」というもの。これをモチーフに、これとは違った論理立てを展開するのがこのコントです。あらゆるパターンの論理立てを出し尽くしたかのような秀逸な脚本も素晴らしいですが、パントマイムを見せたり、キャラクターによって様々な台詞回しを見せたり、小林賢太郎の芸達者ぶりが詰まったコントになっています。


この他、ソロコントPotsunen『ポツネン』における「Hand mime」で見せたハンドマイム(手を人間に見立てたマイム)も、らしさ溢れるパフォーマンスになっています。


こうしたパフォーマーとしての小林賢太郎をもう見られないと思うと、やはり寂しいですね。

 

 

最後に

バラエティ番組には出演せず、他に類を見ないコントを追求してきたその経歴ゆえに、ラーメンズはお笑いコンビではなくコントユニットと呼ばれ、小林賢太郎は芸人ではなくパフォーマーやアーティストなどと呼ばれました(自称していたといった方が正しいのかも)。


ただ、本来の"芸人"という言葉の意味を考えると、彼こそが本物の"芸人"だったんじゃないか、今改めてそう思いますそんな、芸人・小林賢太郎が届けてくれたこれまでの笑いに感謝すると共に、これからは劇作家、演出家・小林賢太郎に期待していきたいと思います。

 

この記事がきっかけで小林賢太郎の世界にハマる同志が一人でも増えれば幸いです。

 

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