どうも、たきじです。
今回は映画『桐島、部活やめるってよ』の解説&感想です。朝井リョウの同名の小説を原作とする青春群像劇です。
作品情報
タイトル:桐島、部活やめるってよ
製作年 :2012年
製作国 :日本
監督 :吉田大八
出演 :神木隆之介
橋本愛
東出昌大
清水くるみ
山本美月
松岡茉優
前野朋哉
太賀
大後寿々花
上映時間:103分
解説&感想(ネタバレあり)
誰もが共感できる群像劇
バレー部のキャプテンで県選抜にも選ばれた桐島が部活を辞める。そんな"事件"を背景にして、本作は、彼の同級生達の数日間を描きます。
桐島が何故部活を辞めるのか?桐島は今後どうするのか?それは本作では描かれませんし、劇中において、そもそも桐島は顔すら見せません。本作において桐島は、いわゆるマクガフィン。同級生達の置かれた状況や、彼らの心の動きを見せるためのきっかけに過ぎません。
本作では、登場人物のそれぞれが抱える苦悩や焦燥が描かれています。自分が当時体験したこと、しなかったことに関わらず、非常にリアルにそれらが炙り出されていると感じます。
学内のヒエラルキー(いわゆるスクールカースト)、一生懸命や真面目に対する嘲笑、グループを外されまいと相手の顔色を伺う偽物の自分、恋する人に気付いて欲しい気持ち、自分の才能の限界、将来への不安…
高校生活を経験した人なら、必ずどこかで共感を覚え、誰かに感情移入するのではないでしょうか。
登場人物の関係性がうまく絡み合う
登場人物が抱える苦悩や焦燥はそれぞれ異なるものの、彼らの関係性がうまく絡み合ってストーリーは進行します。
例えば、桐島がいなくなったことで試合に出られるようになったバレー部の風助(太賀)は、自分の才能の限界に苦しみます。バドミントン部の実果(清水くるみ)は、そんな風助にシンパシーを感じ、風助を笑う沙奈(松岡茉優)に反抗します。
また、吹奏楽部の沢島(大後寿々花)は、放課後にバスケで遊ぶ宏樹(東出昌大)に恋心を抱いています。彼女は彼に姿を見せるため、屋上でサックスを吹きますが、そこで撮影したい映画部と衝突します。
そうして絡み合う人間関係を、学校の屋上での乱闘劇に帰結させるのは見事なもの(ここで彼らを屋上に集めるのはマクガフィンたる桐島)。吹奏楽部の演奏に乗せて描かれるこのシーンは、間違いなく本作のハイライトです。
個人的には、映画部の前田(神木隆之介)に最も感情移入しながら見ていたので、彼がバレー部に立ち向かうこのシーンは熱くなります。
「ロメロだよ!それくらい見とけ!」
最高の台詞です(笑)
そして映画の最後を締めるのは桐島の親友の宏樹。いわゆるイケてるグループにいて、スポーツも万能。しかし何にも一生懸命になれない。
彼は、夏の大会が終わっても部活を続ける野球部のキャプテンや、映画監督にはなれないと分かっていても情熱的に映画部で活動する前田(神木隆之介)に触れ、今の自分を顧みて涙します。おそらく彼は、桐島というカリスマの側にいて、人と比較して感じる無力さを誰よりも感じていたのではないでしょうか。
苦悩と焦燥は続いていく
体育の授業の後、サッカーで決めた得点のことを話して盛り上がる同級生達に対し、映画部の武文(前野朋哉)はぼやきます。
「体育の授業で何点取ったってな、無意味。Jリーグ行くんだったら別だけど」
直接言えよと言われた武文は、
「言わない。好きなだけ不毛なことさせてやる」
と言い放ちます。この台詞にはやや痛快さを感じつつ笑いました。
この台詞には、ヒエラルキーの上層の人間への妬みも含まれているでしょう。彼らを否定する武文もまた、将来の仕事にするとも分からない映画に青春を捧げています。
学内のヒエラルキーの上層に立っていようと、狭い世界で威張っているだけの無知な高校生に過ぎず、社会的には何の意味もないことは事実です。
ただ、そうは言いつつも、彼らのような人間は社会でもうまくやっていくし、結局幸せになっていくのも事実であったりします(演じる東出氏にはいろいろありましたが…)。
映画部にシンパシーを抱きながら見ていた私としては、青春時代からずっと続いていくそうした苦悩や焦燥、やるせなさをくすぐられる作品でした。
乱闘劇の後の夕暮れの屋上で、映画部の俳優が前田に確認する台詞があります。
「俺たちはこの世界で生きていかなければならないのだ」
大事なことだから2回言ったんですよね。
最後に
今回は映画『桐島、部活やめるってよ』の解説&感想でした。単なる青春群像劇に終わらない、非常にセンスのある作品でした。
そうそう、エンディングに流れる高橋優の『陽はまた昇る』は、本作にぴったりハマった主題歌になっています。MVでは、神木隆之介が、前田のその後を演じていますので、貼っておきますね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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