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映画『地上の星たち』解説&感想 すべての子は特別

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どうも、たきじです。

 

今回は2007年公開のインド映画『地上の星たち』の解説&感想です。

 

 

作品情報

タイトル:地上の星たち

原題  :Taare Zameen Par

製作年 :2007年

製作国 :インド

監督  :アーミル・カーン

出演  :ダルシール・サファリ
     アーミル・カーン
     ティスカー・チョープラー
     ビピン・シャルマ
     タナイ・チェーダ

上映時間:164分

 

解説&感想(ネタバレあり)

仕事で後輩を指導していると、なぜこんなことができないのかと、ついつい怒ってしまいそうなことがあります。そんな時、自分も最初はできなかったことを思い出すことで、自分を抑えることができます。


ところが子育てとなると難しくなります。「自分も最初はできなかった」という記憶がなかったり、子供特有の心理はもはや理解しづらくなっているためです。そうすると、やはりついつい怒ってしまいそうになりますが、「子供はできなくて当然」と自分に言い聞かせることで、自分を抑えることができます。


難しいのは比較対象が存在する時。他の子はできているとなれば、"できなくて当然"とは言えなくなってしまいます。その結果、「なぜお前はできないんだ」となってしまいます。そしてその言葉は、子供を追い詰めることになります。


本作のイシャーンもそう。厳格な父からは、成績優秀な兄と比較されて怒鳴られ、学校の先生からは、他の生徒たちと比較されて落ちこぼれの烙印を押されます。イシャーンは、寄宿学校に入れられてしまいますが、そこでも状況は変わらず。やがてイシャーンは心を閉ざし、大好きだった絵も描かなくなってしまいます。


映画前半は、そうした苦しい時間がたっぷり描かれます。怒られて辛いとか、家族と離れて辛いというよりも、もはや鬱状態になっているイシャーンの姿は、見ていていたたまれない気持ちになります。

 


そんな中で登場するのが美術教師のニクンブです。ニクンブは、かつての自分と同じくイシャーンが失読症であることを見抜き、それを踏まえた指導を行い、やがてイシャーンの才能を開花させます。


演じるアーミル・カーンは『きっと、うまくいく』で日本でもよく知られたインド映画の大スター。上映開始から1時間以上経ってやっと登場するというのは少し驚きでした。しかし、そのインパクトは絶大。それまでの陰鬱な空気を吹き飛ばすように、陽気なミュージカルシーンでの登場は観る者の目を釘付けにします。


インド映画というと、登場人物が歌って踊るミュージカル・シーンのイメージが強いですが、本作はこのシーンが唯一のミュージカル・シーン(ただし、このシーンはストーリー上、本当に歌って踊っているとも取れるので、純粋なミュージカル・シーンではないとも言える)。その他のシーンで流れる音楽は、登場人物ではない第三者が歌い、時にイシャーンの心情を代弁し、時に客観的視点で物語の情景を歌い上げます。


そうした音楽は、映画をよりエモーショナルなものにしている一方で、少々説明的になり過ぎてしまう欠点もあるように感じます。特に本作は、もともとかなり時間をとって繰り返しイシャーンの内面にアプローチしているので、歌の歌詞による説明がさらに入ると、少々くどく感じてしまったのが正直なところです。その意味で、脚本はもっとスリムにできたのではないかと感じてしまいました。

 


さて、アーミル・カーン演じるニクンブが登場してからは、やはり彼が物語を引っ張ります。彼が授業でイシャーンを勇気付けるシーンは印象に残ります。


ある男の子の話として語り始めるニクンブ。その子は文字が苦手。目の前で文字が踊る。自分のことを言われていると思って萎縮するイシャーン。ところが、それはアインシュタインのことでした。あるいは、レオナルド・ダ・ヴィンチであり、トーマス・エジソンでした。そして、最後にはニクンブ自身もそうであったと付け加えられます。


大成した数々の偉人もまた、読み書きが苦手だった。この話がどれだけイシャーンを勇気づけたでしょう。


イシャーンが立ち直るきっかけとなるこのシーンや、ラストシーンで屈託のない笑顔で兄と遊ぶイシャーンの姿には、思わず涙腺が緩んでしまいました。


ちなみに、本作は黒澤明の小学生時代のエピソードから着想が得られたといいます。黒澤もまた小学生時代は成績が悪くいじめられっ子でしたが、担任の先生との出会いが彼を変えたそうです。先生は黒澤の自由な発想を大切にし、図画の時間に自由に絵を描かせ、回りが笑ってもそれを褒めたのだとか。黒澤は絵を描くのが好きになり、それと共に成績も良くなったそうです。まさに本作のイシャーンとと同じですね。


さて、本作は、イシャーンが特別な子であることを描いていますが、それは物語として彼にスポットを当てたに過ぎません。本作が描くのは、イシャーンを含め、どの子も特別であるということ。本作のタイトルは『地上の星たち』。イシャーンを含むすべての子供達を指す言葉でしょう。タイトルバックでは、タイトルと併記する形で、「EVERY CHILD IS SPECIAL」と記載されています。


本作はニクンブを演じたアーミル・カーンの監督デビュー作でもあります。「すべての子は特別」。子供達に対するアーミル・カーンの温かい眼差しが見事に投影された作品でした。

 

最後に

今回は映画『地上の星たち』の解説&感想でした。冒頭述べたように、他の子はできていることができていない子を見ると、「なぜお前はできないんだ」となってしまいがち。そんな時「いつ花開くかは子によって違う」、「何が得意かは子によって違う」、そんな風におおらかに、温かい眼差しで見てあげられたら。そんな風に考えさせられる作品でした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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