どうも、たきじです。
今回は2020年公開の映画『ファーザー』の解説&感想です。
作品情報
タイトル:ファーザー
原題 :The Father
製作年 :2020年
製作国 :イギリス、フランス、アメリカ
監督 :フローリアン・ゼレール
出演 :アンソニー・ホプキンス
オリヴィア・コールマン
マーク・ゲイティス
イモージェン・プーツ
上映時間:97分
解説&感想(ネタバレあり)
認知症の疑似体験
本作のテーマは認知症。認知症の病状が進行していく主人公のアンソニー(アンソニー・ホプキンス)の視点で、彼と家族の生活を描きます。
映画を見るうち、我々もまた、認知症の感覚を疑似体験することになります。
目の前に突然現れた男が誰か分からない。先ほどとは別の女性が"娘"として現れる。いま8時、って午前なのか午後なのか。しまいには娘夫婦の会話がループする——。
今起こっていることが夢か現実か、そんなことも分からなくなるほどに混乱してしまいます。現実には何もサスペンスフルな出来事は起こっていないにも関わらず、映画には常に不穏な空気が流れ、ミステリーに満ちています。
アンソニーが腕時計と家(フラット)に執着しているのは、それぞれ"時間"と"場所"を象徴するものだからでしょう。いま何時か?ここはどこか?それが分からなくなることに対する不安が潜在意識の中にあり、それが執着となって現れているように感じます。
認知症が周囲に与える影響
映画を観る我々は、映画が終われば認知機能を取り戻します。しかし、当事者はこの感覚がずっと残るのだと思うとゾッとしてしまいました。クリストファー・ノーラン監督の『メメント』も、記憶が10分ほどしかもたない主人公の感覚を擬似体験させる作品でしたが、本作の場合は、認知症という誰もが直面しうる疾患を扱っている分、『メメント』と違って、単に面白い映画体験だったと片付けにくいところがあります。
認知症になった当人、悲しむ娘、苛立つ娘の夫、困惑する周囲の人々。本作に描かれた様々な立場からの視点で思いを巡らしてしまいます。
私自身、100歳まで生きた曽祖母が晩年は認知症でした。私のことを分からなくなり、父の名前で呼ぶようになった時には何とも言えない悲しみが込み上げてきました。一方で、やがて息を引き取った時の悲しみはそれほど大きくはなかったのを覚えています。それはやはり、私の記憶を失ってしまった時点で、私にとって曽祖母はすでに第一の死を迎えていたからなんだと思います。
それくらい、認知機能を失うということは周りの人間にとっても、もちろん本人にとっても悲しいことだよな、と本作を見て改めて思いました。
素晴らしい脚本と演技
本作はフランスの劇作家フローリアン・ゼレールによる舞台『Le Père 父』を、ゼレール自らが映画用にリライトし、監督も務めた作品です。ゼレールは、もちろん認知症の感覚を経験したことはないでしょうに、よくもまあこんな脚本が書けますね。
特に、既視感のあるやりとりが繰り返されたり、会話がループして戻ったりといった表現には驚かされました。時系列をばらして描くような作品は数あれど、この不思議な感覚は初めてでしたね。
そして素晴らしいアンソニー・ホプキンス。彼の演技力は誰もが認めるところだと思いますが、やっぱりすごいですね。アンソニーの認知症が進行する様子にしても、それに直面して困惑する様子にしても、ホプキンスじゃなければここまでは表現できていないのだろうなと思わされる演技でした。
本作はアカデミー賞で脚色賞と主演男優賞を受賞していますが、取るべき賞をしっかり取ったという感じですね。
最後に
今回は映画『ファーザー』の解説&感想でした。認知症を疑似体験させられると共に、認知症が周囲に与える影響についつも考えさせられる作品でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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