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映画『ミッション: 8ミニッツ』解説&感想 ループ型謎解きサスペンス

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どうも、たきじです。

 

今回は映画『ミッション: 8ミニッツ』の解説&感想です。SF全開の設定が面白い、スリリングなループ型の謎解きサスペンス映画です。

 

作品情報

タイトル:ミッション: 8ミニッツ

原題  :Source Code

製作年 :2011年

製作国 :アメリカ、フランス

監督  :ダンカン・ジョーンズ

出演  :ジェイク・ジレンホール

     ミシェル・モナハン

     ヴェラ・ファーミガ

     ジェフリー・ライト

 上映時間:93分

 

解説&感想(ネタバレあり)

ループ型の謎解きサスペンス

脳には死の直前の8分間の活動が記録されており、死後も一時的に神経回路が活動している…。アメリカ陸軍のスティーヴンス大尉(ジェイク・ジレンホール)は、列車爆破テロの被害者ショーン・フェントレスの脳の神経回路と8分間の記憶を一体化したプログラム"Source Code"に繋がれ、ショーンの体を借りて列車爆破までの8分間を繰り返し体験しながら、列車にいる犯人を探します。そんなトンデモ設定のSF映画ですが、そこさえ受け入れれば、とても面白いスリリングな作品です。


本作のように同じ時間を繰り返し体験して何らかの解決を探るループ型の映画は、ロマンティック・コメディの傑作『恋はデジャ・ブ』や、日本の漫画原作のSFアクション『オール・ユー・ニード・イズ・キル』など様々ありますが、こうした作品はテレビゲーム的な面白さがあります。すなわち、敵や周りのキャラクターの行動パターンを覚えるにつれて攻略に近づいていく楽しさです。


本作は、謎解きサスペンスの要素が中心になっていることが、上に挙げた二作とは異なります。また、二作が現実世界でループしているのに対し、本作はあくまでも過去の仮想世界の中をループするのであって現実世界ではないということも異なっています。

 

様々な解釈ができる結末

本作のラストには、様々な解釈ができる結末が用意されています。まず、終盤のストーリーをざっと説明すると以下の通りです。


スティーヴンスは、実際にはアフガンでの戦闘により身体の大部分を損傷し、生命維持装置で辛うじて生かされている状態であることが明らかになります。列車爆破テロの被害者ショーンと適合性の高かった彼の脳をプログラムにつなぐことで、言わばプログラムの中だけで生きられるような状態です。


スティーヴンスが仮想世界のループの中で犯人を突き止めたことで、現実世界では犯人逮捕に至り、次のテロを阻止することに成功します。スティーヴンスは、プログラムの中が仮想世界であることを理解しながらも、もう一度プログラムの中に戻り、列車爆破テロから乗客を救いたいと懇願します。また、転送から8分後に生命維持装置を止めて欲しいと願います。安らかな死を望んだのです。


プログラムの責任者のラトレッジ博士(ジェフリー・ライト)は、スティーヴンスを今後も利用するため、記憶を消すように担当者のグッドウィン(ヴェラ・ファーミガ)に指示します。しかし、グッドウィンはラトレッジ博士の目を盗み、スティーヴンスを仮想世界に転送します。


スティーヴンスは8分間で、"やるべき事"を実行していきます。まず爆弾の起爆装置を解除し、犯人を拘束して警察に連絡し、テロを防ぎます。次に、グッドウィンにメールを送信します。そして、スティーヴンスの友人として父に電話し、最後に会った時にひどいことを言ったことを悔む気持ちを伝えます。


そして、列車にいたコメディアンを誘い、乗客達を笑わせられたら126ドルやると賭けをします。最後に、仮想世界に来るといつも目の前にいるショーンの友人クリスティーナ(ミシェル・モナハン)に問います。


「あと1分の命だったら、君ならどうする?」


「最後の1秒まで大事にするわ」

 

コメディアンのジョークで列車内が温かい笑いに包まれる中、2人はキスをします。ちょうどここで8分が経過します。


現実世界では、転送からちょうど8分で、グッドウィンがスティーヴンスの生命維持装置を停止し、スティーヴンスは息を引き取ります。


これで終わったかに見えましたが、仮想世界は消えずに続きます。スティーヴンスとクリスティーナは無事にシカゴに到着し、列車を降ります。


仮想世界のグッドウィンはスティーヴンスが列車から送ったメールを目にします。そこにはこう書かれています。


At some point today, you're gonna hear about a failed terrorist attack on a commuter train near Chicago. You and I kept that bomb from going off.

今日のいつか、君はシカゴ近郊で通勤列車を狙った爆破テロが失敗したことを知る。俺と君が阻止したんだ。


If you're reading this e-mail, then Source Code works even better than you and Dr. Rutledge imagined. You thought you were creating 8 minutes of a past event, but you're not. You've created a whole new world.

君がもしこのメールを読んでいるなら、あのプログラムは君やラトレッジ博士が思っている以上の力を持っている。創り出すのは過去の8分間の出来事じゃない。まったく新しい世界だったんだ。


Goodwin, if I'm right, somewhere at the Source Code facility, you have a Capt. Colter Stevens waiting to send on a mission. Promise me you'll help him. And when you do, do me a favor: tell him everything is gonna be okay.

グッドウィン、その施設のどこかにミッションを待つスティーヴンス大尉がいるはずだ。彼の力になってくれ。そして伝えてほしい。すべてうまくいくと。

 


結末の考察

この結末についてシンプルに考えると、プログラム"Source Code"によって転送された先は、単にスティーヴンスが体験する過去の8分間の仮想世界ではなく、新しい世界線ができたと見るのが自然なのかもしれません。


しかし私はこの説には疑問があります。現実世界で生命維持装置を停止されたスティーヴンスは死亡したのに、仮想世界(新しい世界線)で生き続けるというのは、冒頭で述べたSF設定では説明しきれない、あまりにファンタジーな結末に感じるからです。


それを踏まえ、私の説はこうです。


私は、仮想世界でスティーヴンス(=ショーン)とクリスティーナがシカゴに到着した時、現実世界のスティーヴンスはまだ生きていたと考えます。生命維持装置を停止したのに生きていたということではありません。生命維持装置の隣にあった機械に表示された脳波(?)は停止していました。私の考えは、現実世界と仮想世界とでは、時間の進み方が違うのではないかというものです(映画『インセプション』の夢の中の世界と同じです)。


つまり、現実世界と仮想世界の8分間をカットバックで同時進行しているようになっていたのはフェイクで、仮想世界で8分経った時(スティーヴンスがクリスティーナにキスした時)、現実世界はまだ8分経過していないということです。


だとすると、これまでの転送で、スティーヴンスが列車の爆発によって仮想世界で死亡した際も、現実世界では8分経過していないことになります。これは別に矛盾が生じる話ではありません。スティーヴンスはもともと意識がなく、グッドウィン達によって強制的に脳に話しかけられている状態にあります。現実世界で8分経過する前に転送を終えていたとしても、8分経過後にグッドウィンに話しかけられるまでは眠っているだけです。


時間の進み方がどの程度違うのかは分かりません。10倍だとすると、現実世界の8分が仮想世界では80分となります。100倍なら13時間、1000倍なら5日半です。脳の情報処理スピードを考えるとせいぜい10倍が限度でしょうか。そうすると、シカゴに降り立って、これから"新バージョン"のショーンとして生きていこうしているスティーヴンスは、あとわずかで仮想世界もろとも消えてしまうことになりますが…。


この説について、確固たる根拠はありませんが、矛盾も特にないかと思います。


異なる時制を、まるで同時進行であるかのように編集するのは映画では珍しくない表現ですし、仮想世界で8分経過時に世界が一旦静止したのも、8分経過を観客に知らせる演出に過ぎないと捉えることができます。


仮想世界でスティーヴンスが喋っている時に、現実世界のスティーヴンスの口も少し動いているので、現実世界と仮想世界はやはり同時進行なのかとも思いました。しかし、ラストカットで映るスティーヴンス(転送されていない状態)も口を動かしているので、これは転送されているかどうかに関係のない動作であると見ることができます。


私は、この説が制作者が意図したものだとは思っていません。どちらかというと、1つ目の説が制作者の意図したものだと思います。しかし上にも述べたように、私はファンタジーな結末に納得がいかなかったで、別の説を提唱したまでです。映画のみならず、あらゆる芸術作品は、制作者がどういう意図で作ったかではなく、鑑賞者がどう感じるかがすべてだと思います。いくら制作者が、「この映画にはこんな深いメッセージがこもっているんだ!」と叫んだところで、それが作品に表現されていなければそれまでですからね。

 


結末の是非

長々と真面目に考察しておいて言うのもなんですが、本作の場合、このように様々な解釈ができるのは、しっかりとディテールを描けていない脚本の落ち度だと思います。他人の脳の記憶に入り込むという、肝となる部分について科学的な説明が一切ないので、どうにでも解釈できるように"なってしまっている"という印象です。


正直言って、仮想世界で8分が経過したところであのまま仮想世界が終わってしまった方が、よっぽどきれいで感動的な結末になったと思います。現実ではないと理解しながらも、乗客をテロから救い、父に気持ちを伝え、クリスティーナにキスをして、乗客の笑顔に包まれて、満足して死んでいく。これで良かったのに。8分経過時に時間が止まる演出(少し前に流行ったマネキン・チャレンジの走り?)も素晴らしかっただけに、また時間が動き出した時にはがっかりしてしまいました。

 

最後に

今回は映画『ミッション: 8ミニッツ』の解説&感想でした。結末こそ残念でしたが、それを差し引いても十分に面白い作品でした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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