どうも、たきじです。
今回は1954年公開のアメリカ映画『裏窓』の解説&感想です。サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の代表作の一つです。
作品情報
タイトル:裏窓
原題 :Rear Window
製作年 :1954年
製作国 :アメリカ
監督 :アルフレッド・ヒッチコック
出演 :ジェームズ・ステュアート
グレース・ケリー
ウェンデル・コーリイ
セルマ・リッター
レイモンド・バー
上映時間:112分
解説&感想(ネタバレあり)
カメラマンのジェフ(ジェームズ・ステュアート)は事故に遭って車椅子生活中。外出もままならず、できることと言えば裏窓から向かいのアパートの住人たちを覗き見ることくらい。エアコンが普及していない時代、夏場はどの家も窓を開け放しているのです。
向かいのアパートの部屋の一つに暮らす夫婦は、セールスマンの男ソーワルドと寝たきりの妻。喧嘩の絶えない2人です。ある夜、ジェフは裏庭の方から女性の悲鳴を聞きます。そして、ソーワルドが真夜中に大きなトランクを持って何度も外出するのを目撃します。翌朝になっても妻の部屋はブラインドが下りたまま。やがて、ジェフは男が大きな刃物を片付けているのを目撃し…。
この設定、このあらすじを聞くだけでワクワクしますよね。しかもサスペンス映画を撮らせたら右に出る者がいないアルフレッド・ヒッチコック監督が演出するのですから。ヒッチコック監督の作品は数多く見ていますが、本作はその中でもトップクラスに好きな作品の一つです。
映画は、ジェフのいる部屋から窓枠越しに裏庭の風景を写したショットから始まります。視点は前方に進み、やがて窓枠がフレームアウト。そのまま裏庭に出るのかと思いきや、カメラは窓を出ずに止まります。
まるで、本作においてはカメラが窓の外に出ないという宣言のようですね。そうです。本作では、カメラはジェフのいる部屋から出ないのです。唯一の例外はクライマックスでジェフが窓の外に落とされるシーン。ジェフが外に出ればカメラは外に出るというわけですね。本作はジェフの主観で綴られる物語ですから。
冒頭、ジェフの部屋を映すカメラワークもいいんですよ。汗をかいて眠るジェフの姿、ギプスをはめた足、壊れたカメラ、クラッシュして画面に向かって飛んでくるレーシングカーの写真…。ジェフはカメラマンであり、カーレースの撮影で事故に巻き込まれて足を怪我したという映画の背景が、流れるようなカメラワークで映し出されます。もちろん後の会話がそれを補足するわけですが、このような映像による背景説明はとても映画的で好きです。
そして、向かいのアパートの人々の人間模様の描写。ここでも映像で簡潔に登場人物を紹介。ベランダで眠る夫婦、若いバレリーナ、作曲家の男、喧嘩の絶えない夫婦、新婚の夫婦、空想の恋人と酒を交わす"ミス・ロンリーハート"——。これらによって物語がうまく味付けされています。
序盤では、下着姿で踊るバレリーナやイチャつく新婚カップルなど、やや扇情的な描写が印象的。それらが、自由に身動きの取れないジェフの悶々とした感情を掻き立てるようで面白いところです。まあ、観客がジェフに抱くシンパシーは、圧倒的な魅力を放つグレース・ケリーがジェフの恋人リザとして登場することですべて吹き飛ぶわけですけど(笑)。
こうして、まだ何も起きていない映画冒頭からぐっと観客の心を掴むわけですが、"事件"が起きてからはさらに面白くなっていきます。上述のように、ソーワルドの部屋に起こる異変、ソーワルドの不可解な行動、それらを遠くから覗くという状況にはゾクゾクさせられます。死体や血といった直接的な描写を用いずとも、このサスペンスを演出するのはヒッチコックらしいところですね。
ソーワルドの妻殺しは、刑事のドイルから徹底的に否定され、一時はジェフ達の思い込みかのように展開してきます。そこから、向かいの夫婦の飼っている犬が殺されることで一気にストーリーが反転し、クライマックスに向けて加速していきます。
人々が犬の飼い主の悲鳴に反応して窓から顔を出す中、ソーワルドは真っ暗な部屋に篭ったまま、タバコの火だけが浮かび上がるなんて、見事な演出です。
クライマックスでは、ジェフが身動きを取れないという設定が最大限生かされています。
リザがソーワルドの部屋に忍び込むのはそれだけでもスリリングですが、そこにソーワルドが帰宅するという一展開。リザに危険が迫っていてもどうにもできないという状況が、サスペンスを盛り上げています。
警察を呼ぶことで何とか危機を脱しますが、リザがジェフに送ったジェスチャーによって、ジェフの存在がソーワルドにばれてしまいます。ソーワルドと目が合う瞬間は心底ドキッとしますね。ここまではジェフが一方的に人々を観察していたわけですが、ここで初めてジェフ(=我々観客)に視線が向けられるわけですからね。
そして最後にはジェフの部屋に乗り込んでくるソーワルド。ここまでの"静"の恐怖に対し、最後は"動"の恐怖でうまく物語を締めています。カメラのフラッシュで応戦する様子はやや間延びした印象はありましたけど。
さて、上述の通り、人々の人間模様の描写が本作の物語をうまく味付けしているわけですが、そうした人々が時にメインのストーリーに絡んでいくのもうまいところ。例えば、上述の犬もそうですし、リザがソーワルドと鉢合わせしてしまうシーンにおけるミス・ロンリーハートもそう(ジェフとステラはミス・ロンリーハートの様子に目を奪われたことでソーワルドの帰宅を見逃してしまう)。
また、人々の人間模様は、映画のエピローグでもうまく描かれています。作曲家の男は初めてのレコードが完成、傍にはミス・ロンリーハートの姿、犬を失った夫婦の元には新しい犬の姿、バレリーナの元には恋人と見られる男の姿。それぞれのその後が描かれ、映画にいい余韻を残します。
一方、ジェフの部屋にはのんびりくつろぐリザの姿があり、ジェフが彼女と別れることなく、関係を前に進めることが示唆されています。が、こちらは足のギプスが両足になっているというユーモアが勝るオチですね(笑)。
最後に
今回は映画『裏窓』の解説&感想でした。絶妙な設定とストーリーにヒッチコック演出が加わったサスペンス映画の傑作。何度見ても面白い作品です。
なお、ヒッチコック作品では、必ずと言っていいほどヒッチコック監督がカメオ出演します。本作では、作曲家の部屋で時計のネジを巻いているヒッチコックを見ることができます。
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