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映画『西部戦線異状なし』解説&感想 じっくりと描かれる戦争の闇

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どうも、たきじです。

 

今回は、2022年公開の映画『西部戦線異状なし』の解説&感想です。1929年に発表された同名小説が原作で、1930年の同名映画(アカデミー作品賞受賞)に次いで2度目の映画化です。

 

 

作品情報

タイトル:西部戦線異状なし

原題  :Im Westen nichts Neues

製作年 :2022年

製作国 :アメリカ、ドイツ

監督  :エドワード・ベルガー

出演  :フェリックス・カマラー
     アルブレヒト・シュッフ
     ダニエル・ブリュール
     ゼバスティアン・フールク

上映時間:147分

解説&感想(ネタバレあり)

1930年版を観たのはもう10年以上前になります。後の映画で描かれてきたような戦争の闇を、この時代にしてすでに描ききっていることに衝撃を受けたのを覚えています。過酷な最前線、食料の不足、友の死、負傷でいつ死ぬか分からぬという恐怖、一時の帰郷時の疎外感や現実の戦争を知らない人との行き違い等々です。


リメイクに当たる本作も同様に、戦争の闇をしっかりと描いています。若者が戦争の犠牲になっていく悲惨さは何度見ても理不尽で腹立たしいものです。


1930年版と異なり、本作では主人公のパウルの体験と並行して、連合国との間の休戦交渉の様子や、休戦に反対するフリードリヒ将軍の動向が描かれています。


休戦が決まった後にも、休戦時間までのわずかな時間に最後の突撃を命じるフリードリヒ将軍。無駄に命を失う両軍の兵士達。


このオリジナル要素によって、上層部の無謀な命令によって若者が命を落とす理不尽がより強調されています。一方で、パウルの主観で描かれる物語の軸がブレてしまうのは惜しいところ。1930年版にはあった帰郷時のエピソードがカットされたことも相まって、パウルの心の傷の描き込みは甘くなってしまったように思います。

 


1930年版に対して圧倒的に優れているのは映像面。100年近い時が流れていますから当然ですね。第一次世界大戦の塹壕戦が描かれた映画は数あれど、これほどまでに生々しく描いたのは本作をおいて他にないのではないでしょうか?


とても印象的だったのは、パウルが両軍の塹壕の間の無人地帯で敵兵を刺すシーン。瀕死の状態で苦しむ敵兵を前にどうしていいか分からず取り乱し、やがて彼を手当てしようとします。自分が手にかけた敵兵を助けようとする矛盾。このシーンに戦争のカオスを感じて胸を締め付けられました。


また、本作は"食"の描写も印象に残ります。食料不足への恐怖が1930年版に比べてことさらに強調されるわけではありませんが、例えば、リスクを冒してガチョウを盗んで食べるシーンや、敵の塹壕で食料を貪るシーン、食料の配給に兵士達がごった返すシーンなど、食を印象的に描写しています。


彼らが常に死と隣り合わせの環境に身を置く中で、生を象徴する食の描写。あるいは、前線の兵士達とは対照的な、上層部の者達の豪華な食事の描写。こうした食の描写によるコントラストが、彼らの置かれた環境をより強調して見せます。この辺りはなかなか面白いところでした。


ただ映画終盤で、再びガチョウを盗みに入るくだりは疑問です。休戦が決まった状況の中で、どう考えてもここでリスクを冒す必要性がありません。結果的にこの行動がカットの死につながるわけですが、この結末ありきの強引な展開に見えてしまいました。

 

最後に

今回は、映画『西部戦線異状なし』の解説&感想でした。1930年版と比べて不満に感じる部分がありつつも、若者が戦争の犠牲になっていく悲惨さをしっかりと描いた力作でした。原作が書かれたのは1929年。それ以降も、二度目の世界大戦を含め、戦争が無くならないこの世界が残念でなりません。平和とは、二つの戦争の間に介在するだまし合いの時期である、とはよく言ったものです(アンブローズ・ビアス著『悪魔の辞典』より)。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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