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映画『乱』解説&感想 シェイクスピア×黒澤明の超大作

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どうも、たきじです。

 

今回は1985年公開の映画『乱』の解説&感想です。黒澤明監督が、前作『影武者』に続いて手掛けた時代劇です。

 

 

作品情報

タイトル:

製作年 :1985年

製作国 :日本、フランス

監督  :黒澤明

出演  :仲代達矢
     寺尾聰
     根津甚八
     隆大介
     原田美枝子
     井川比佐志
     ピーター
     植木等

 上映時間:162分

 

解説&感想(ネタバレあり)

黒澤明が描く『リア王』

主人公は一国の領主・一文字秀虎(仲代達矢)。突然、隠居して嫡男の太郎(寺尾聰)に家督を譲ることを発表します。そして、息子の太郎、次郎(根津甚八)、三郎(隆大介)に、3人で力を合わせて国を治めるように言います。


調子のいいことを言って秀虎の機嫌を取る太郎と次郎に対し、三郎は国の行末や秀虎の身を案じ、歯に衣着せぬ物言いで秀虎の決断に反対します。しかし、三郎はそれによって秀虎の怒りを買い、追放されてしまいます。


太郎に譲った一の城に身を寄せる秀虎でしたが、やがて太郎と衝突し、城を出ることに。次郎のいる二の城に向かうも、次郎にも拒絶されてしまいます。仕方なく三郎に譲るはずだった三の城に向かうも、あろうことか太郎と次郎の軍勢に攻め落とされます。そして、発狂した秀虎は荒野を彷徨います。


一方、隣国に婿として迎え入れられた三郎。やがて秀虎の状況を伝え聞き、父を救うために軍を動かしますが…。


本作はそんな物語。日本の戦国時代を舞台としていますが、ストーリーのベースはウィリアム・シェイクスピアの『リア王』。『ハムレット』、『マクベス』、『オセロ』と合わせて、シェイクスピアの四大悲劇と括られる作品です。黒澤明は1957年の『蜘蛛巣城』では『マクベス』を時代劇に翻案していますが、それに続くシェイクスピア映画ということになります。


欲望渦巻き殺し合いをやめぬ人の世を描く悲劇。原作が名作ですから、ストーリーの面白さは抜群です。


息子3人の名前が太郎、次郎、三郎で、それぞれの軍が黄、赤、青でしっかり色分けされ、3つの城は一の城、二の城、三の城。ちょっと分かりやすすぎてリアリティに欠ける気がしなくもないですが、基本はエンターテインメント映画だからまあいいか。

 

黒澤演出のダイナミズム

さて、そんな抜群に面白いストーリーに黒澤演出が加われば、つまらないわけがありません。


本作でもダイナミックな黒澤演出は健在。まずは、ロケーションの際立つスケールの大きなワイドショット。映画冒頭、巻狩のシーンの高原にしても、どんよりとした空の下、強風吹き荒れる中を秀虎が彷徨う荒野にしても、一文字家の領地の大自然のパノラマは圧巻です。


また、藤巻と綾部の軍勢が遠く離れた山の尾根に集結する様子や、夕日に照らされる中を秀虎と三郎の亡骸を運ぶ悲しき行軍の背後で、荒城の石垣の上に鶴丸が立ち尽くすラストシーンなど、遠景に人物を配した奥行きのあるショットもスケール感があります。


次に、大勢のエキストラの動員や望遠撮影によって生み出された迫力ある映像。これはやはり合戦シーンで際立ちます。中でも、太郎と次郎の軍勢が三の城を攻め落とすシーンは圧巻です。


台詞や効果音はオフで音楽に乗せて描かれる壮絶な合戦。大勢のエキストラによる数の迫力と、望遠撮影によるスピード感の迫力。飛び交う矢と銃弾、立ちこめる霧に舞い上がる砂煙、死体の山と流れる血。そうした演出も相まって、極めて見応えのあるシーンになっています。秀虎が燃え盛る天守から出てくるシーンの凄まじいこと。


次郎の軍勢と三郎の軍勢の合戦シーンや、綾部が一の城を攻め落とすシーンも同様。騎馬が突撃するシーンはやはり大迫力です。銃に撃たれた武者が落馬するスタントは素晴らしいですが、同じショットの使い回しかと思うほど似たようなショットが繰り返されるのには少々苦笑いでした。

 


俳優陣の演技

齢70の秀虎を演じた仲代達矢は、撮影時は49歳というから驚きです。老メイクを施しての鬼気迫る演技はさすがですね。


影武者』で織田信長を堂々と演じた隆大介が、本作では三郎を好演。つくづく晩年の失態が悔やまれます。


強い印象を残すのは、太郎の正室の楓の方を演じた原田美枝子。太郎亡き後、したたかに次郎に付け入る一連のシーンは見事。嘘泣きしながら蛾を捻り潰す演出は少々過剰にも感じられましたが、迫力のある演技でした。


道化の狂阿弥を演じたピーター(池畑慎之介)はまだ若さの残る演技ながら、重要な役どころを演じています。『リア王』の道化(Fool)同様、深い洞察と風刺の効いた台詞が印象的です。

 

狂った今の世で気が狂ったなら気は確かだ。

 

天と地がひっくり返った!前におれが狂ったこいつ(秀虎)を笑わせ、今はこいつが狂っておれを笑わせる。

 

人は泣き喚いて生まれ、泣くだけ泣いて死ぬんだ。

 

また本作では、次郎の正室の末の方を宮崎美子が演じています。クローズアップが一切ないので、その顔をはっきり拝むことはできないのは惜しいところ。


また、末の方の弟の鶴丸を野村武司(野村萬斎)が演じています。こちらも長い髪で顔が隠れてはっきり顔が見えません。まだ10代の頃ですが、狂言仕込みの安定した演技を見せています。

 

城跡でのロケーション撮影

さて、『影武者』と同様、本作でもいくつかの城跡でロケーション撮影が行われていますので、本作の撮影に使われた城跡について紹介しておきましょう。

 

①姫路城

言わずと知れた世界文化遺産・姫路城(兵庫県姫路市)。国宝の天守を始め、多くの櫓、門、塀、石垣などが現存していて、日本の城跡としては最も往時の姿を残す城跡と言えるでしょう。

 

『影武者』では安土城や野田城として撮影されましたが、本作では一の城として撮影されています。

 

国宝の天守を始め、多くの遺構が現存しています。(2015年4月撮影)

 

楓の方の行列と秀虎の側室が揉めるシーンでこの角度のショットが使われていました。(2015年4月撮影)


②熊本城

国の特別史跡に指定されている熊本城(熊本県熊本市)。天守は西南戦争の際に焼失したため、昭和時代に鉄筋コンクリートで再建されたものですが、多くの櫓、門、塀が現存しています。そして、何より素晴らしい勇壮な石垣によって形成された大規模な城郭が、しっかりとその姿を現在に残しています。


『影武者』では姫路城と併せて野田城として撮影されましたが、本作では二の城や、末の方の父の城の跡として撮影されています。

 

勇壮な素晴らしい石垣が現存しています。(2011年5月撮影)

 


③名護屋城

国の特別史跡に指定されている名護屋城(佐賀県唐津市)。


天下統一を果たした豊臣秀吉が、次に目指したのは大陸への進出。朝鮮への出兵にあたり、拠点として築城したのが名護屋城です。その城郭は、大坂城に次ぐ規模だったと云われます。全国から名だたる武将と彼らの抱える兵士達がこの城に集結したわけですから、人が人を呼び、城下町が発展し、当時の日本の経済の中心地であったとも云われます。


秀吉の死によって大陸への侵攻が中止された後には廃城となったことから、建築物はすべて破却されており、当時の面影を残すのは復元されたものも含めた石垣や堀のみとなっています。建築物、特に天守が残っていないので、一般の方には人気がないかもしれませんが、城好きにとっては人気の城跡。誰もいなかったところに城ができ、数年間、日本の中心になり、また誰もいなくなるーー。なんかロマンがあるじゃないですか。


本作においては、熊本城と併せて、末の方の父の城の跡として撮影されました。今は誰もいない、かつて栄えた城の跡として撮影されたわけです。これ以上ないロケ地ですね。

 

国の特別史跡に登録されている貴重な城跡です。(2016年5月撮影)


④その他

さて、一の城は姫路城、二の城は熊本城とくれば、三の城は?となりますよね。実は、三の城は御殿場にオープンセットを建てて撮影されており、城跡ではありません。


秀虎が旗を上げた根城という設定ですから、大規模な石垣がなく、城壁も板張り。戦国時代初期の簡素な造りの城になっています。城好きとしては、このような城に天守があるのはすごく違和感があります。三の城にあるような比較的大規模な多重の天守は、戦国時代後期の安土城が最初ですからね。


いや、それよりも、大手の枡形虎口を抜けた目の前に、堀も壁も何もなく、どかっと天守が建っているのが一番違和感がありますね。何と攻めやすい天守かと。案の定、あっさり落とされてるし。


まあ、もちろん、そんなリアリズムよりも映画としての演出を重視したのでしょうし、その選択は間違ってないでしょう。燃え盛る天守から出てきてフラフラと大手門を出ていく秀虎のシーンは、この設計あってのものですからね。

 

最後に

今回は映画『乱』の解説&感想でした。シェイクスピアが描いた抜群に面白いストーリーに、黒澤明のダイナミックな演出が加わって、何ともドラマチックに仕上がった作品でした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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