今回は、西武池袋線の東長崎駅から徒歩数分のところにある鰻屋、その名も「鰻家」さんを訪問しました。
店舗情報
レビュー
昭和44年創業で、この地で半世紀以上にわたって営業されているということです。本田宗一郎氏が通った店ということも有名なようです。
事前に予約しておくと、来店時間に合わせて鰻重を仕上げてくれるということで、平日の13時に予約して伺いました。注文したのは特上(¥6,500)。上や特上といったランクは、鰻の量(半尾とか1尾とか)の違いであることが一般的ですが、こちらのお店では特上だとモノが違うのだとか。
お店は東長崎駅から徒歩数分のところにあります。
鰻家という直球の屋号です。
予約の5分ほど前に入店。店内はこじんまりしていて、厨房前にカウンターが4席、反対側に座敷が2卓。私達でちょうど満席になりましたが、2階にも席があるみたいです。
有名人の来店も多いようですが、サインや写真を並べるような類の店ではないようです。
案内されたのはカウンターの左側2席。後で大将に伺いましたが、一番左の席が本田宗一郎氏がいつも座っていた席なんだとか。これはちょっと嬉しい(笑)
お茶とおしぼりが提供され、すでに注文済みの鰻重の出来上がりを待ちます。
大将は厨房で椅子に腰掛け、腕を組んで目を閉じています。蒸しが終わり、鰻が焼き台にセットされると大将が立ち上がり、年季の入った団扇で仰ぎ始めます。おお、職人ぽくて格好いい!やっぱり焼きの工程が一番腕がいるということでしょうか?
やがて、「もうすぐ出ます」と告げられ、箸と漬物と吸物が供されます。あとはただただ主役の登場を待つのみという、このワクワク!鰻屋さんとかとんかつ屋さんの醍醐味ですね。
箸が供されて、あとは鰻重を待つのみです。
そして満を持して、主役の鰻重が登場。蓋を開けると食欲をそそる香りが漂います。タレと脂の照りと、こんがりと付いた焼き色がさらに食欲をそそります。
見たことがないくらい肉厚で大きな鰻はご飯を覆い隠し、お重に入り切らず折れ曲がっています。これが特上か!
見てください、このボリューム感!
鰻を口に入れると、肉厚な鰻がとろけていきます。あまりに使い古された表現ですが、この表現は避けられません(笑)。そして、咀嚼することで、とろけた鰻の身と、皮目の香ばしさとゼラチンの旨み、ご飯の甘みが絶妙に絡み合います。甘みと塩味がちょうど良いタレも、さらに鰻を引き立てます。
鰻重というのは、シンプルながら究極にバランスのとれた料理だということをつくづく思い知らされます。そして今回いただいた鰻重は、そのすべての要素が最上級なのです。
こういう美味しい料理を食べると、幸福感を味わいつつも、食べ進めるごとに残りが減っていくことの悲しさを感じることも少なくありません。ただ、今回は不思議なことに、そのような悲しさはなく、常に幸福感に包まれていました。あまりに美味しすぎたことに加えて、量も十分に多いですからね。物足りなさなど一切ありませんでした。
この世界にこれ以上の美味しい料理があることを、私は期待しません。これが天井。それで満足です。
退店時に大将のご好意で、桶にいる鰻を見せていただきました。井戸から水を引いているそうです。
大将が蓋を開けて鰻を見せてくれました。
なお、退店時にはお客さんは2組でした。少なくとも平日なら予約困難店というわけではなさそうです。昼から夜まで通し営業なので使い勝手もいいです。ぜひまた訪れたいと思います。なんなら、今生最後の食事はここで食べたいですね。
鰻好きの皆さんにもぜひおすすめしたいお店です。値は張りますが特上をいただくべきです。美味しかったかなんて聞きませんよ。これ以上の愚問はないですから。