人生をもっと楽しく

人生を楽しむ多趣味サラリーマンが楽しいことを発信するブログ

映画『ゴッドファーザー PART II』解説&感想 映画史に残る大傑作を長文レビュー②

【スポンサーリンク】

どうも、たきじです。

 

今回は1974年公開のアメリカ映画『ゴッドファーザー PART II』の解説&感想です。『ゴッドファーザー』に続くシリーズ第2作。続編としてアカデミー作品賞を受賞した史上唯一の作品です。

 

 

↓ 前作の解説&感想はこちら

 

作品情報

タイトル:ゴッドファーザー PART II

原題  :The Godfather Part II

製作年 :1974年

製作国 :アメリカ

監督  :フランシス・フォード・コッポラ

出演  :アル・パチーノ
     ロバート・デュヴァル
     ダイアン・キートン
     ロバート・デ・ニーロ
     ジョン・カザール
     タリア・シャイア
     リー・ストラスバーグ
     マイケル・V・ガッツォ
     ジェームズ・カーン

上映時間:200分

 

解説&感想(ネタバレあり)

さらに深みを増したマイケルの物語

映画史に残る大傑作とも名高い前作『ゴッドファーザー』。その続編というプレッシャーを跳ね除けて、本作も素晴らしい傑作、史上最高の続編映画と言っても過言ではない作品になっています。

 

暗くひっそりとした書斎と、屋外の賑やかなパーティのコントラストの効いた冒頭。複数の"粛清"を並行して見せるクライマックス。前作の印象的な要素はそのままに、より深みを増したドラマに釘付けになります。

 

ドラマが深みを増した要因は大きく分けて2つあるでしょう。前作はヴィトーからマイケルへのドンの継承を含めた、コルレオーネ・ファミリーのドラマだったのに対し、本作では前作以上にマイケルに焦点が絞られ、彼の孤独や苦悩が強調されています。これが1つ目。

 

そしてもう1つは、マイケルの物語とヴィトーの若き日の物語が並行して描かれる構成にあります。

 

ヴィトーの物語との対比

マイケルの物語とヴィトーの物語が並行して描かれるというと、両者は対等であるかのように感じます。しかし、本作はあくまでもマイケルの物語が主軸であり、ヴィトーの物語はそれとの対比として挿入されているという理解が正しいでしょう。

 

ファミリーを背負い、非情になるマイケル。邪魔者を消すと同時に、近しい人物の心も離れていき、周囲から孤立していきます。妻の流産の知らせには、ただ苛立ちを現し、彼女の感情に寄り添うことはありません。また、有能で、裏切る素振りもない旧知のトムにさえ冷たくあたります。

 

一方のヴィトー。家族を殺され、自らも命を狙われる中、身一つでシチリアからアメリカへ。貧しい暮らしの中でも常に家族や仲間を思いやります。やがて裏社会に足を踏み入れても、その信頼と愛情によって周囲の支持を集め、ドンとして確固たる地位を築いていきます。

 

アメリカ的な個人主義、資本主義の中で、マフィアのドンとして確かに優秀なマイケルですが、それが仇となって孤立していきます。シチリア的な、ファミリーの結びつきを土台に上っていくヴィトーとは対照的です。

 

生まれた時代や生い立ち、器量の違い、そして二代目としての難しさ。それによってもがくマイケルの悲劇性が残酷なまでに炙り出されています。

 

魅力溢れるヴィトーのパート

上述の通り、本作の主軸はマイケルの物語ですが、ヴィトーのパートが圧倒的に素晴らしいことは誰もが感じるところでしょう。

 

まず何と言っても、若きヴィトーを演じたロバート・デ・ニーロが素晴らし過ぎます(アカデミー助演男優賞受賞)。佇まいと台詞回しは前作のマーロン・ブランドの演技を意識しつつ、自身の個性も存分に発揮し、物真似に終わらない凄まじい魅力を放っています。 

 

ファヌッチの圧力で理不尽に仕事をクビになりながら、店主に文句一つ言わずに感謝し、家に帰って愚痴もこぼさずそっとテーブルに果物を置く様子、肺炎で泣く赤ん坊のフレドを心配そうに見つめる様子など、妻や子供達に対する温かい眼差しが特に印象に残ります。

 

ファヌッチ殺害のシークエンスでは、演出が冴え渡ります。リトル・イタリーで行われているカトリックの祭りの喧騒を背景として描かれる殺し。屋上を渡り歩きながら、ファヌッチを追うヴィトー。ファヌッチの家のドアの前で待ち伏せ。電球を緩めて闇に隠れるのも、ファヌッチが電球を指で弾くたびに少し電球が灯りヴィトーの姿が浮かび上がるのも、発砲と共に腕に巻いた布に火がつくのも、どれもたまらない演出です。

 

また、ヴィトーのパートでは、当時のリトル・イタリーを再現した美術や、ニーノ・ロータによるメロディアスな旋律も見事に雰囲気を作り出しています。

 

もう一つ加えるなら、ヴィトーのパートの役者のキャスティング。ヴィトー、テシオ、クレメンザと、前作の登場人物の若き日が描かれるわけですが、よく雰囲気の似た役者を集めたなと驚かされます。シチリアのトマシーノなんて激似じゃないですか。

 

クライマックスで描かれる3つの死
①フランクの死

前作と同様にすべてのシーンが素晴らしいと言っても過言ではない本作ですが、特にラスト30分は見せ場の連続です。クライマックスでは、3つの死を巧みな編集で見せます。


1つ目の死はフランク。フランクが呼びかけに答えないのを不審に思い、FBIの連中が扉を破ると、そこには浴槽に浸かって手首を切ったフランクの姿。ショッキングかつドラマチックなシーンです。

 

この死につながるトムとフランクの会話シーンもいいですね。皇帝に謀反を企てた者でも、自決すれば家族は守られたというローマ帝国の逸話について2人で話すことで、遠回しにフランクに自決を促すトム。「コルレオーネはローマ帝国だった」と昔を懐かしむ2人。ファミリーに長年仕えてきた2人の哀愁が感じられるシーンです。

 

フランクを演じたマイケル・V・ガッツォは本作以外に大した実績がないのが不思議なくらい素晴らしい演技でした(アカデミー助演男優賞ノミネート。受賞はデ・ニーロ)。登場シーンから存在感たっぷりで、フランクというキャラクターを魅力的に造形しています。

 

②ロスの死

2つ目の死はハイマン・ロス。病気で死期が近いロスですが、マイケルはそんな彼を殺害することに執着します。それに疑問を投げかけるトムに対して冷たい言葉を投げかけるマイケル。

 

そして、

 

If anything in this life is certain, if history has taught us anything, it’s that you can kill anyone.

この世の中で確かなこと、歴史が教えてくれることがあるとすれば、「人は殺せる」ということだ。

 

と言い放ちます。

 

結果、警備が厳重な空港で、公衆の面前でロッコがロスを射殺しますが、ロッコも警備の者に射殺されます。長年ファミリーに仕えてきたロッコを捨て駒にしてまでロス殺しに執着するマイケルの非情さが際立ちます。

 

本作でロスを演じたリー・ストラスバーグは貫禄の演技(こちらもアカデミー助演男優賞ノミネート)。メソッド演技法を確立し、マーロン・ブランドやアル・パチーノを輩出したアクターズ・スタジオで演技指導者を務めただけのことはあります。

 

③フレドの死

そして3つ目の死はフレド。3つの中でも中心として描かれます。結果的にファミリーを裏切た形になり、マイケルを危険に晒してしまったフレド。実の兄でさえ冷徹に殺害するマイケルの非情さが、ここでも際立ちます。一度和解したようにフレドと抱き合いながら、ネリに目で合図するマイケル。たまらず目を逸らすネリの表情も印象的です。そんなことは知らず、ただ強くマイケルを抱きしめるフレドの様子に胸が締め付けられます。

 

フレドはファミリーを裏切るつもりなどありませんでした。もっと尊敬されたかった。そんな浅はかさをロスにまんま利用されてしまったというのが、なんとも悲劇的です。フレドと仲良くしていたマイケルの息子アンソニーの立場で考えると、なお悲しくなりますね。

 

フレドを演じたジョン・カザールは、素晴らしい演技でした。中でも、マイケルに胸の内をぶつけるシーンは印象的です。このシーンでは、フレドが抱える弱さ、嫉妬や劣等感、そこから来る苛立ちが一気に溢れ出します。カザールの繊細な演技は、フレドの心の痛みや複雑さを見事に表現しています。

 

カザールの出演作はすべて観ていますが、弱さを内包したキャラクターを魅力的に演じるのが本当に上手い役者さんです。42歳という若さで亡くなったのは本当に惜しいことです。

 

フレドをめぐるドラマでは、フレドとマイケルの妹コニーも重要な役割を果たします。前作で夫のカルロがマイケルに粛清され、マイケルを憎んでいたコニー。自分を傷つけることでマイケルを傷つけようとしたと打ち明け、コニーはマイケルと和解します。そして涙ながらにフレドへの許しを請います。

 

このシーンはコニーを演じたタリア・シャイアの演技が見事で、胸に迫ります。このシーンでアカデミー助演女優賞にノミネートされたと言っても過言ではないでしょう。

 

その後のマイケルを象徴するラスト

上でも述べた通り、マフィアのドンとしては正しい行動を冷徹に遂行した挙句に、マイケルは孤立していきます。ファミリーを周囲から守ろうとした結果として、そのファミリーが内部から崩れかけるというのは皮肉なものです。

 

ラストシーンでは、マイケルの学生時代に遡ります。兄弟達とテーブルについたマイケルは、軍に志願したことを告げ、周囲を唖然とさせます(フレドだけが「偉いよ」と手を差し伸べるのがまた沁みます)。そして、帰宅したヴィトーを迎えるため皆が部屋を出る中、マイケルだけが1人部屋に残ります。その後のマイケルを象徴するかのようなラストシーンです。

 

この頃はファミリーのマフィア稼業を嫌悪していたマイケル。その後マフィア稼業を継ぐことになっても、根底にあるマイケルの個人主義的な部分はこの頃から一貫しているように感じさせられます。イタリア由来の名前を授かった兄弟達の中にあって、マイケルだけが英語圏の名前であることもそれを示唆しています。

 

さて、マイケルを演じたアル・パチーノ。前作に続いて素晴らしいです。感情や葛藤を表に出さず、されど孤独や苦悩を内面に秘めているのを感じさせる、繊細で複雑な演技。上でも触れたメソッド演技法の凄みが凝縮されたような演技でした。これでアカデミー賞を取れなかったのは不思議でなりません。

 

最後に

今回は映画『ゴッドファーザー PART II』の解説&感想でした。前作同様、映画を構成する要素のそれぞれが一級品で、かっちりと噛み合った作品。前作の要素を継承しつつ、さらに深みと複雑さを増した大傑作です。史上最高の映画の続編は、史上最高の続編映画でした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

多趣味を活かしていろいろ発信しておりますので、興味のあるカテゴリーがございましたら他の記事ものぞいていただけると嬉しいです!

はてなブログの方は、読者登録もお願いします!

 

↓ MCU次作の解説&感想はこちら

↓ 他の映画の解説&感想もぜひご覧ください!

 

----この映画が好きな人におすすめ----