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映画『ゴッドファーザー』解説&感想 映画史に残る大傑作を長文レビュー

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どうも、たきじです。

 

今回は1972年公開のアメリカ映画『ゴッドファーザー』の解説&感想です。映画のオールタイムベストに挙げられることも少なくない、映画史に残る傑作です。

 

 

作品情報

タイトル:ゴッドファーザー

原題  :The Godfather

製作年 :1972年

製作国 :アメリカ

監督  :フランシス・フォード・コッポラ

出演  :マーロン・ブランド
     アル・パチーノ
     ジェームズ・カーン
     ロバート・デュヴァル
     ジョン・カザール
     ダイアン・キートン
     タリア・シャイア
     スターリング・ヘイドン

上映時間:177分

 

解説&感想(ネタバレあり)

マフィアのファミリーを描く壮大な叙事詩

本作は、映画史に残る不朽の名作であり、時代を超えて評価される大傑作です。私にとっても、何度も繰り返し観てきた作品の一つであり、見るたびに新たな感動を覚えます。

 

物語は、ニューヨークの五大ファミリーの一つ、コルレオーネ・ファミリーを中心に展開します。ファミリーを率いるヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)の末の息子マイケル(アル・パチーノ)は、マフィア稼業を嫌い、裏社会から距離を置いています。カタギの道を歩んでいたマイケルでしたが、運命のイタズラか、やがて裏社会に足を踏み入れ、ついには父の跡を継いでコルレオーネ・ファミリーのドンとなります。

 

序盤ではヴィトーを中心に物語が進行しますが、やがてマイケルに焦点が移り、彼の変化が作品の軸となります。ビッグ・ネームであるマーロン・ブランドが演じるヴィトーが主役と見られがちですが、本作はアル・パチーノ(当時は無名)演じるマイケルと合わせた2人が主役と見るべきでしょう(3部作としては完全にマイケルの物語)。

 

ただし、この第1作では、まだマイケルの内面にある苦悩に大きく踏み込むことはありません。むしろ、冷静な視点でマイケルがどのようにしてファミリーのドンへと昇りつめるか、そのプロセスが淡々と、しかし重厚に描かれています。

 

マフィアの抗争や派手なアクションに焦点を当てた映画ではありませんから、観ていて熱くなるとか、主人公に感情移入して応援してしまうようなタイプの映画とは異なります。

 

マイケルが踏み込んでいくマフィア稼業、その背景にあるファミリーのドラマ。映画を観る我々は、この顛末にただただ引き込まれ、のめり込んでいきます。それはやはり、映画を構成する要素——脚本、演出、撮影、演技、編集、音楽それぞれが一級品で、かっちりと噛み合っているからこそ成し得ることでしょう。

 

至極のオープニング

オープニングひとつとっても、それは現れています。

 

パラマウントのロゴに重なるように流れ出すワルツ。陰影に富んだ映像が映し出す男の顔。"I believe in America."に始まる長台詞。ゆっくりとカメラが引き、やがてフレームに現れるヴィトーの後ろ姿。何度見てもこの冒頭のシークエンスからすっかり映画に引き込まれます。

 

ブラインドが下ろされて暗くひっそりとした書斎と、屋外のにぎやかな結婚パーティーのコントラスト。そして、コルレオーネ・ファミリーが続々と登場する中、短い描写で的確に人間模様や物語の背景を説明しつつ、キャラクターを描写します。

 

物語に大きな動きがあるわけでもないのに、このオープニングから目を離せなくなります。

 

マフィア稼業に踏み込んでいくマイケル

物語が動き出すのは麻薬密売人のソロッツォがヴィトーに接触するシーンから。ソロッツォはヴィトーに麻薬取引を持ちかけますが、ヴィトーは拒否。ソロッツォとその背後にいるタッタリアは、ヴィトーを暗殺しようとしますが、ヴィトーは一命を取り留めます。

 

そしてこの事件が、マイケルがマフィア稼業に足を踏み入れるきっかけとなります。ヴィトーの見舞いに行った病院で、見張りが帰されていることに気付いたマイケルは、ヴィトーのベッドを別の部屋に移したり、病院の入口で刺客を追い払ったりと、機転を効かせて父を救います。マイケルがこの時点でファミリーの未来を担う存在であることが暗示されているかのようです。

 

そして、兄ソニーらが冷静さを失う中、マイケルは冷静にソロッツォ殺害の作戦を披露。自らその大役をこなしてみせます。これを期にマイケルはカタギではなくなり、やがてはドンを継承していくことになるわけです。

 

マフィア稼業を嫌っていたマイケルがヴィトーの跡を継ぐという皮肉。マフィアとしての優秀さ、強さゆえに、やがては家族や仲間を失い、破滅に向かっていきます(ただし、本作ではそれを予感させるまで)。

 

驚異的なクライマックス

ヴィトーが亡き後、マイケルが邪魔者と裏切り者を一掃するクライマックスは驚異的な出来栄えです。妹コニーの子の洗礼式にゴッドファーザー(名付け親)として立ち会うマイケル。これと並行して、五大ファミリーの暗殺を描くクロスカッティングは、映画の教科書に載るような名場面です。

 

神聖な儀式と冷酷な殺戮のコントラスト。複数の暗殺シーンを、準備段階から描いて高められる緊張感。思わず前のめりで見てしまいます。オルガンの音色、赤ん坊の鳴き声、司祭の問いとマイケルの「I do.」という返答も効果的に決まっています。

 

洗礼式の後は、ファミリーを裏切った仲間の粛清。ヴィトーの古くからの仲間であるテシオ、妹コニーの夫カルロを容赦なく殺害するマイケル。ゴッドファーザーとして洗礼式に立ち会って間もなく、その子の父親であるカルロを殺害するという行為に、マイケルの非情さが溢れています。男達に囲まれてすべてを悟ったテシオの「仕方なかった」という言葉には悲哀が満ちています。

 

そしてラストシーン。カルロを殺したことを察し、怒りを露わにしてマイケルを非難するコニー。それを聞いてマイケルに疑念を抱き問い詰める妻ケイ。殺していないというマイケル偽りの答えを聞いて、わずかな安堵を得るケイでしたが、クレメンザ達がマイケルの手の甲にキスし、改めて忠誠を誓う様子を見て複雑な表情を浮かべます。そして、ケイの視線をさえぎるように扉が閉められ、映画は幕を閉じます。

 

奥行きの深い画面の構図。そしてケイとマイケルをの間を遮る扉。何とも象徴的な痺れるラストです。邪魔者を一掃し、ファミリーの地位を固めたマイケル。それはマフィアとして正しい行動。しかし、それと引き換えに古い仲間を失い、身近な2人の女性の心も離れていく。マイケルの行く末を示唆するような結末です。

 

メソッド俳優の競演

ロシアの演出家コンスタンチン・スタニスラフスキーが提唱した理論を元にアメリカのリー・ストラスバーグらによって確立されたメソッド演技法。従来の外面的な演技ではなく、自分の経験や想像力によってキャラクターの内面に入り込み、キャラクターの感情を内から表現するアプローチの演技法です。ごく簡単に言えば「役になりきる」演技法と言えるでしょうか。

 

本作のマーロン・ブランドやアル・パチーノはストラスバーグが演技指導者を務めたアクターズ・スタジオで学んだ俳優の代表格。そのリアルな演技は他の俳優にも伝播し、俳優が演じていることを忘てしまうほどにリアルな空気感が醸成されています。

 

マーロン・ブランドはやはり格が違いますね。まるで、歴史上の人物が動いているのを見るような、あるいは目の前で有名人を見ているような、特別なものを見ている感覚になります。マーロン・ブランドを本作でしか見たことのない人のために一応言っておくと、普段のマーロン・ブランドはヴィトーのような外見や声ではありません。彼はヴィトーというキャラクターを見事に作り上げ、それになりきって演じています。

 

中でも印象的なシーンを2つ。いずれもソニーがタッタリアによって殺害されるシーンの後のシーンです。

 

まずは、トムがヴィトーにソニーの死を告げるシーン。このシーンの2人の演技には魔法がかかっているかのようですね。トムにとっては兄弟同然のソニーを失った悲しみの中で、ヴィトーにもそれを告げなければならないという二重の苦しみ。何かあったことに気付き、それを話すように促すヴィトー。このシーンでの2人の表情。至極の演技です。このシーンはマーロン・ブランドのみならず、ロバート・デュヴァルも素晴らしいです。

 

もう一つは、五大ファミリーが集う会合のシーン。ヴィトーは、他のファミリーに対し、復讐はしないと誓います。その上で、「マイケルが帰国して、もし事故にあったり、警官に撃たれたり、首をつったり、雷にうたれようとも、この中のだれかを恨み、決して許さない」と付け加えます。やや遠まわしな言い方で他のファミリーを威嚇するヴィトー。静かな迫力と張り詰めた緊張感を感じるシーンです。

 

そして、アル・パチーノ。当時はまだ駆け出しの俳優ながら、マイケルという大役を見事にこなしています。

 

何より素晴らしいのは、やはりソロッツォとマクラスキー警部を射殺するシーンでしょう。トイレに仕込んだ銃を手に席に戻り、タイミングを計るマイケル。長く続くマイケルのクローズアップ。電車の音が鳴り響く中、一点を見つめ、されど小刻みに震える目。そしてすっと立ち上がり、2人を確実に仕留めます。

 

このシーンの演技は神懸かっていますね。微妙な動きや表情から、マイケルの葛藤や決意が伝わってきます。まだ駆け出しだったアル・パチーノをマイケル役から降ろそうとしていた映画会社の幹部が、このシーンの撮影を見てから何も言わなくなったという話も納得です。

 

ニーノ・ロータ渾身の音楽

本作の音楽を担当したのはイタリアを代表する作曲家、ニーノ・ロータ。『道』や『太陽がいっぱい』のテーマ曲も有名ですが、やはり本作の「愛のテーマ」が最も有名でしょう。シチリアのシークエンスで流れるこの曲は、タイトルにある"愛"のみならず、同シークエンスに見られる"犠牲"や"裏切り"といった悲劇的なイメージも孕んでおり、本作と見事に調和しています。

 

『ゴッドファーザー』と言えば「愛のテーマ」というくらいに、この曲は有名になっていますが、この曲が流れるのはシチリアのシークエンスのみ。メインテーマとして使われているのは、オープニングやエンディングで流れる「ゴッドファーザー・ワルツ」です。私としては『ゴッドファーザー』と聞くとこの曲が頭の中に流れ出します(笑)。

 

「愛のテーマ」にしても「ワルツ」にしても、本作のニーノ・ロータの仕事は非の付け所がなく、間違いなく彼のベストワークと言えるでしょう。

 

印象的な台詞の数々

本作は印象的な台詞が多いですね。ただ原語の独特の言い回しが字幕だと表現されていないのがほとんど(文字数制限があるのである程度仕方ない)。ここでは原語と併せていくつか取り上げます。

 

"断れない提案"

I’m gonna make him an offer he can’t refuse.

奴が断れない提案をしよう。

 

プロデューサーが映画の役がくれないというジョニー・フォンテーンからの相談に対するヴィトーの台詞。ヴィトーはトムを遣わし、プロデューサーのベッドに愛馬の首を入れて脅しをかけます。マフィアの恐ろしさを象徴するシークエンスです。

 

この"断れない提案"という言い回しはこのシーン以外でも繰り返し用いられており、本作を象徴する台詞です。本作の製作の舞台裏を描いた2022年のドラマ『ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男』(The Offer)もこの言い回しにちなんだものですね。

 

DVDの字幕だと、この象徴的な台詞が出てこないのは惜しいところです。

 

"契約書に載るのは…"

Luca Brasi, held a gun to his head, and my father assured him, that either his brain or his signature would be on the contract.

ルカ・ブラージが奴の頭に銃を突きつけ、父は奴に、「契約書に載るのはお前の脳みそかお前の署名のどちらかだ」と告げた。

 

マイケルがケイに"断れない提案"のエピソードとして話す台詞です。こちらもDVDの字幕では表現されていませんが、マフィアの恐ろしさを現しつつ、なんともウィットに富んだ表現です。

 

"カノーリを持て"

Leave the gun. Take the cannoli.

銃を捨てろ。カノーリを持て。

 

クレメンザがロッコに裏切り者のポーリを殺害させた後、クレメンザがロッコに対して言う台詞です。カノーリ("カンノーリ"や"カンノーロ"とも)はシチリア発祥のお菓子。クレメンザが妻から頼まれて買ったものです。

 

射殺に使われた"銃"と、「家庭」、「日常」、「平穏」を意識させる"カノーリ"が並んで放たれるというのが面白い台詞です。ブラックユーモアが効いていますよね。この台詞は映画『ユー・ガット・メール』でも取り上げられていました。

 

"Take the cannoli."は、DVDの字幕では「ケーキを(持て)」と訳されていました。日本でカノーリの認知度が低いからでしょうね。最近はアニメ『おさるのジョージ』でもカノーリが登場するなど、日本でも認知度が上がっているかもしれません。

 

"マットレスに向かう"

You give 'em one message. I want Sollozzo. If not, it's all-out war, we go to the mattresses.

奴らにただこう伝えろ。ソロッツォをよこせ。それができないなら、全面戦争だ。こっちはマットレスに向かう。

 

こちらも"go to the mattresses"という表現が『ユー・ガット・メール』で取り上げられているので、ここでも取り上げてみました。

 

これは直訳すると「マットレスに向かう」ですが、マフィアの隠語で「戦闘態勢に入る」ということを意味します。マフィアの抗争が激化すると、長期戦に備えて隠れ家にマットレスを持ち込み、そこで寝泊まりしながら戦ったことから来た表現だとか。

 

通常は意訳されるので、『ユー・ガット・メール』を見た時に、『ゴッドファーザー』にそんな台詞あったっけ?と思う日本人が大半でしょうね。おそらく英語圏では有名な言い回しなのでしょう。

 

最後に

今回は映画『ゴッドファーザー』の解説&感想でした。映画を構成する要素のそれぞれが一級品で、かっちりと噛み合った奇跡。映画史に残る大傑作です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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