どうも、たきじです。
今回は、1986年公開のスタジオジブリ映画『天空の城ラピュタ』の解説&感想です。
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作品情報
タイトル:天空の城ラピュタ
製作年 :1986年
製作国 :日本
監督 :宮崎駿
声の出演:田中真弓
横沢啓子
寺田農
初井言榮
常田富士男
永井一郎
神山卓三
安原義人
亀山助清
槐柳二
糸博
鷲尾真知子
TARAKO
上映時間:124分
解説&感想(ネタバレあり)
観客を引き込むオープニング
本作は宮崎駿監督作品の中でも最も娯楽に振り切ったアクションアドベンチャーと言えるでしょう。公開から40年が経とうとしているにもかかわらず、今なお2年に1回くらいのペースでテレビ放送され、高視聴率を記録しており、幅広い世代に愛され続けています。個人的にも、監督の作品の中でトップクラスに好きな作品です。
改めて再鑑賞してみても、オープニングから一気に引き込まれてしまいます。大型の飛行戦艦に小型のオーニソプター(はばたき飛行機)が迫り、繰り広げられるアクション。冒頭から宮崎駿監督の飛行機愛が溢れ出ています。
そして、タイトルバック。手書きの温かみを感じる絵と、久石譲による音楽。主題歌『君をのせて』がインストゥルメンタルで流れるわけですが、これがもう名曲すぎて、冒頭から感動的。
本作は公開当時は大きなヒットはしておらず、監督の作品の中でも最低レベルの興行収入だったわけですが、鑑賞した人の満足度は高かったでしょうね。このオープニングをリアルタイムで体験した人の興奮はいかほどだったでしょうか?
独創的な世界観とデザイン
本作の大きな魅力の一つは、独創的な世界観やデザインです。
本作の時代背景や舞台となる国は明示されていませんが、作中の描写からは産業革命期のヨーロッパを思わせます。ただし、蒸気機関や飛行船など産業革命期を思わせる技術が目につく中で、冒頭にも触れた航空技術(飛行戦艦やオーニソプター)は現代よりも進歩しています。
蒸気機関をベースとした未来的メカニズムはスチームパンクの要素ですが、本作はそこにラピュタの古代文明の神秘性も交錯させ、独自のファンタジー世界を構築しています。そしてそれが、観客の冒険心やロマンを見事に掻き立てるのです。
さらには、「雲に囲まれてカムフラージュされた、天空に浮かぶ遺跡」というラピュタのモチーフ。その素晴らしいデザインは宮崎駿監督の卓越したイマジネーションの賜物であり、誰にも真似できません。
パズーの暮らす渓谷の鉱山都市の造形もいいですね。断崖絶壁、深い竪穴、蒸気機関車といった構成要素がそれぞれ映えていて、映画の舞台として非常に魅力的な都市を形成しています。
息をのむアクションシーン
このように世界観やデザインが秀逸で、映画の舞台が整っているからこそ、アクションシーンも余計にエキサイティングなものになります。
鉱山都市を舞台にしたチェイスもその一つ。オートモービルで追いかけてくるドーラたちと、蒸気機関車で逃げるパズーとシータ。オートモービルが蒸気機関車の線路を派手に破壊しながら進む大袈裟な演出が楽しいです。このシーンでは、映画の歴史上、古くから描かれてきた列車上でのアクションにも挑戦。息をのむ攻防が描かれています。
やがて三つ巴の戦いに展開していくアクション。断崖絶壁の舞台を活かし、高低差を意識させるアクション設計が巧みです。
個人的に、アクションシーンで最も興奮するのは要塞でのシータ奪還のシーン。ロボット兵に対する激しい攻撃と、それによる要塞の炎上という混乱。この状況がバックグラウンドで緊張感を高める中での救出劇に、目が釘付けになります。
総じて素晴らしい脚本
『ハウルの動く城』や『崖の上のポニョ』など後年の宮崎駿監督作品は個人的に脚本に納得がいかないものが多いです。詳しくは各作品の記事で述べましたが、物語を紡ぐ上で、明らかに説明不足で分かりにくいところが多く、ストーリーテリングがぎこちないのです。
翻って本作。ストーリーテリングは極めてスムーズです。余計な説明なく始まるオープニングで観客を引き込みつつ、その後の台詞や映像を通じて、物語の背景や設定を簡潔に描写します。上に挙げた作品とは異なり、すっと映画に入り込むことができます。
キャラクターの描き込みもいいですね。例えば、シータからラピュタの調査はやめて帰るように言われたパズーが帰路に着くシーン。途中、パズーはムスカから渡された手切れ金の金貨を投げ捨てようとしますが、それをできずにうつむきます。怒りと失意、やるせなさ。キャラクターの複雑な感情を巧みに描写しています。
もう一つ、印象的なのがパズーとシータが飛行船の見張り台で会話するシーン。夜の空の静けさ、2人だけの空間、密着した体、そんなシチュエーションの中で、パーソナルな話を打ち明けるシータと、彼女を励ますパズー。シータの秘密を明らかにすると同時に2人の人間性を描き出し、2人が信頼関係を深める様子をロマンティックに描写しています。2人の会話を盗み聞きするドーラや他のクルーの反応を含め、何ともいいシーンに仕上がっています。
加えて言えば、脇を張るドーラのキャラクターは抜群にいいですね。本作で最も魅力的に描きこまれたキャラクターと言っても過言ではないでしょう。空中海賊を率いるカリスマ性。厳しく、口が悪いが、その裏に垣間見える優しさや人情。強く、人間味溢れる魅力的なキャラクターです。最初は敵のように現れますが、やがてパズーたちと共闘していく流れもいいですよね。
このように、スムーズなストーリーテリングと描き込まれたキャラクターの魅力など、脚本は総じて素晴らしく、本作の面白さを支えています。
声優陣の好演
宮崎駿監督は後年になるほど主要キャラクターに本職の声優を起用せず、俳優や歌手など、声優の素人を起用することが増えましたが、本作ではパズーとシータを本職の声優が演じています。
私はやっぱり本職の声優がメインを張る方が好きですね。やっぱり変に気が散らないですから。パズーの田中真弓さんも、シータの横沢啓子さんも安定感があります。
そんな中で、ムスカを演じる寺田農さんは、本職は俳優さんですよね。でもこれが実に上手いんですよ。悪役の威厳と、知性、冷徹さを持ち、時に狂気じみたこのキャラクターを声色と抑揚で見事に表現しています。"バルス"後の、一転して「目が〜」って情けない感じもいいんですよ(笑)。
ムスカがアイコニックなキャラクターになったのは間違いなく寺田さんの功績でしょう。これくらい上手ければ、本職の声優じゃなくても文句ないです。
最後に
今回は、映画『天空の城ラピュタ』の解説&感想でした。独創的な世界観とデザイン、息をのむアクションシーン、総じて素晴らしい脚本、声優陣の好演、感動を盛り上げる音楽と、すべての要素が優れた娯楽アニメーションの金字塔です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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