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映画『ソウルフル・ワールド』解説&感想 深みのあるドラマと驚異的な表現力

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どうも、たきじです。

 

今回は、2020年公開のピクサーのアニメ映画『ソウルフル・ワールド』の解説&感想です。

 

 

作品情報

タイトル:ソウルフル・ワールド

原題  :Soul

製作年 :2020年

製作国 :アメリカ

監督  :ピート・ドクター

声の出演:ジェイミー・フォックス
     ティナ・フェイ
     グラハム・ノートン
     レイチェル・ハウス
     アリシー・ブラガ
     リチャード・アイオアディ
     ウェス・ステュディ
     アンジェラ・バセット

上映時間:101分

解説&感想(ネタバレあり)

独創的な設定が魅力のソウルの世界

本作は、ピクサーが贈る独創的なストーリー豊かな映像表現が見事に融合した作品です。主人公はジャズ・ピアニストを夢見る音楽教師のジョー。ある日、ジョーは憧れのジャズ・シンガー、ドロシアと共にクラブで演奏するチャンスを得ますが、街でマンホールに落ちてしまい、ソウル(魂)の世界に迷い込んでしまいます。

 

そこは、人間として生まれる前のソウルが、自分だけの性格を与えられる場所。死者のソウルがメンターとなり、最後に一人ひとりの「きらめき」を見つけることでソウルたちは通行証を得て地上へと舞い降りるのでした。そこでジョーが出会ったのは、長い間きらめきを見つけられず、地上に行くことを拒み続けているソウル"22番"。ジョーは22番のメンターとなってきらめきを見つけ、22番の通行証で地上に戻ろうと考えるのでした。

 

まず、面白いのはソウルの世界に関する設定です。ソウルの世界で人間の性格があらかじめ決められ、最後のひとさじとして「きらめき」を加えて地上に送り出されるというのが面白いですね。また、地上で何かに熱中している時(いわゆる「ゾーンに入っている時」)、その人は一時的にソウルの世界に入っているという設定や、地上で人生を見失った時、ソウルは「迷える魂」としてソウルの世界を彷徨っているといった設定も秀逸です。それぞれ、とても納得感がある設定であると同時に、その設定が見事にストーリーを展開させています。

 

また、22番のこれまでのメンターが、リンカーンやマザー・テレサといった偉人たちであったというのもいい味付けです。

 

人生のきらめきを探して

物語は、ジョーと22番がそれぞれの「きらめき」を探す過程をドラマティックに描いていますが、そこに人生の素晴らしさを炙り出します。

 

22番はジョーの体を借りて地上の世界でさまざまな体験をし、空を見たり、歩いたりすることにきらめきを感じます。しかし、ジョーはそれを「ただの生活の一部」と切り捨ててしまいます。ジョーは「きらめき」とは「生きる意味」や「生きる目的」であると考えているからです。

 

そんなジョーは、無事にドロシアと演奏をやり遂げますが、大きな達成感よりも、意外にも冷静な感覚に動揺します。地下鉄での移動に象徴された"繰り返し"から抜け出して、憧れの舞台でジャズバンドのメンバーとして成功した。しかし、結局は新しい日常の繰り返しが始まる。ジョーはそこに戸惑うのです。

 

ジョーは家に帰り、22番が詰め込んだポケットの中身をピアノの上に並べ、それらを眺めながら演奏します。食べかけのピザやドーナツ、床屋で貰ったキャンディー、スーツを仕立ててくれた母の糸巻き、地下鉄の乗車カード、カエデの種子——。その一つ一つを想い音楽を奏でながら、頭の中を駆け巡る思い出たち。

 

このシーンで、ジョーは初めて22番が感じた日常のきらめきの価値に気づきます。ジョーにとって「ただの生活の一部」に過ぎなかったものたちが、実は人生を彩る大切な要素だったのです。

 

ドロシアがジョーに語る「若い魚」の話も、ジョーの気づきとリンクしています。海を探し求めていた若い魚は、いま自分がいるのが海だと知らされ、「これは海じゃなく水だ」と言います。この話が象徴するように、ジョーはきらめきが溢れる生活に気づかず、ジャズ・ピアニストとしての成功こそが自分のきらめき(生きる目的)だと思い込んでいたということでしょう。しかし、そうではなく、きらめきは生きる喜びのようなもの。それはいつも日常に溢れていたのです。22番はそれに気づいたからこそ、生きる準備ができたのでしょう。

 

ジョーがそれに気付くこのシーンは映画のハイライト。言葉ではなく映像と音楽によってジョーの内面を映し出す、とても美しいシーンでした。

 

ラストシーン、一度は死を受け入れながら、もう一度、生きることを許されたジョーは、「一瞬一瞬を大切に生きる」と言います。その言葉通り、ジョーは22番が見つけた日常のきらめきを胸に生きていくことでしょう。

 

驚異的な表現力で形成されたソウルの世界

上述の通り、本作のソウルの世界の設定は非常に面白いですが、それを形作る音楽やアニメーション表現も特筆すべきものです。もう驚異的といっていいくらいですね。

 

ソウルの世界の音楽の作曲は、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーとアッティカス・ロス。なんと表現すればいいでしょうか。この音楽は、私たちの暮らす世界とは違う、神秘的で哲学的な異世界の雰囲気を形成しています。ソウルの世界の効果音もまた同様で、エコーや反響音の効いた電子音が異世界の独特の感覚を際立たせます。

 

一方の地上の世界ではジョン・バティステによる即興的なジャズが響き渡ります。こちらは対照的に、人間の生き生きとしたエネルギーを感じさせます。これによって、ソウルの世界の異質な表現がさらに際立っています。それぞれ特徴の異なる音楽を、異なる作曲家に担当させるという試みが見事に決まっています。

 

そしてキャラクターのアニメーション表現。これから人間になるソウルたちは丸みを帯びた可愛らしいデザインで描かれていますが、管理者のジェリーやテリーは線で構成された平面的なキャラクターとして描かれ、異質な存在感を放っています。それでいて、こちらはこちらで親しみやすさも感じさせるのですから、絶妙なデザインですね。

 

特に面白いのは、テリーが地上に降りるシーンで、地上の"線"に沿って移動するという表現。物体からひょっこり顔を出す姿から、ファミコンゲーム『スーパーマリオブラザーズ3』のネッチー(通称: 餅)を思い出したのは私だけでしょうか(笑)。

 

最後に

今回は、映画『ソウルフル・ワールド』の解説&感想でした。人生のきらめきにスポットを当てた深みのあるドラマと、音楽やアニメーションの驚異的な表現力が光る作品です。余談ですが、本作は英語版と日本語版では主要キャラクターの声優の声質や演じ方が随分と違うので、作品本来の味わいを楽しみたければ、ぜひ英語版(字幕版)での鑑賞をおすすめします。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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