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映画『シン・ゴジラ』解説&感想 政治ドキュメンタリー風ゴジラ

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どうも、たきじです。

 

今回は2016年公開の日本映画『シン・ゴジラ』の解説&感想です。

 

 

作品情報

タイトル:シン・ゴジラ

製作年 :2016年

製作国 :日本

監督  :庵野秀明(総監督)
     樋口真嗣(監督・特技監督)

出演  :長谷川博己
     竹野内豊
     石原さとみ
     高良健吾
     市川実日子
     高橋一生
     津田寛治
     余貴美子
     國村隼
     平泉成
     柄本明
     大杉漣

 上映時間:119分

 

解説&感想(ネタバレあり)

政治ドキュメンタリー風の切り口

1954年の『ゴジラ』を第1作として、国内外で30を超える作品が製作されているゴジラシリーズですが、本作は日本映画のゴジラシリーズとしては第29作にあたります。第29作とは言っても、本作はどの過去作ともストーリーは繋がっていません。また、過去の大多数の作品のように、ゴジラが他の怪獣と戦うものではなく、人類とゴジラの戦いを描いています。


「未知の怪獣が日本に上陸し街を破壊する」という物語を描こうとした時に、その描き方は様々考えられます。逃げ惑う大衆(あるいはその中の個人)にフォーカスしたパニック映画、腕利きのパイロット達が戦闘機でゴジラと戦うアクション映画、あるいはゴジラの視点で、やたらと襲いかかってくる人間達を懲らしめる映画にすることもできるかもしれません(笑)。


本作の場合、主人公は内閣官房副長官の矢口(長谷川博己)。矢口を含め、登場人物はもっぱら政治家や官僚。本作は、人類が初めて目にする未知の怪獣に対処しようとする彼らの奮闘にフォーカスした、政治ドキュメンタリー風の切り口で描かれています。


序盤は小難しい肩書きの政治家が次々に登場し、小難しい話を早口でまくしたてます。未知の怪獣に直面した政治家達の混乱と決断が描かれます。


ゴジラが東京湾に姿を消し、さらに進化して再上陸する中盤では、災害対策本部に集った変わり者の官僚達の議論や、自衛隊や米軍によるゴジラへの攻撃が描かれます。


そして終盤では、多国籍軍による核攻撃の時が迫る中、矢口が策定したヤシオリ作戦によって、官民が力を合わせてゴジラに挑む姿が描かれます。


テンポよく、そしてしっかりと変化をつけながら展開するストーリーにはぐいぐい引き込まれますし、どこを切り取っても退屈しないものになっていました。


石原さとみ演じる米国大統領特使のパタースン(日系三世という設定)や、高橋一生や市川実日子らが演じる風変わりな官僚など、キャラの立った脇役達も飽きさせません。主人公の矢口が実直なキャラクターである分、彼らの存在がいい味付けになっています。

 

ゴジラと核

ゴジラ誕生の経緯は作品によって多少の変化がありますが、共通するのは核実験がきっかけになっているということ。1954年の初代『ゴジラ』は核実験によって安住の地を追われて出現したと作中で推測されています。また、本作を含む多くの作品では、核実験で放射線を浴びたことで変異したという設定です。ゴジラと核は切っても切れない関係にあると言えます。


初代『ゴジラ』では、ゴジラは空襲や原爆のメタファーとして描かれていました。同作では、戦後復興の最中の日本が、核によって出現した生物によって再び焼け野原にされるのです。そして、ゴジラを倒すためには核兵器に匹敵する新兵器を使わざるを得ないという皮肉が描かれました。


一方、本作では、ゴジラは自然災害のメタファーとして描かれています。とりわけ、原発事故を伴った東日本大震災が意識されていることは明白。ゴジラが通過した跡で放射線が観測されるということに対する恐怖感は、東日本大震災を経験した人には身近なものでしょう。


また、本作では、ゴジラを倒すために国連安保理によって核攻撃が実施されることが決定されます。これにより展開されるドラマは日本映画ならではの視点かもしれません。日本は唯一の被爆国であり、放射能の恐ろしさへの理解も諸外国に比べて高いですから。


アメリカ映画だと「核爆弾が爆発しちゃったけど、爆弾を遠ざけた(or みんな避難した)から爆発に巻き込まれた人はいなくて問題ナシ!」みたいな扱いの作品がたくさんあります(パッと思い浮かぶものだけでも4作品ほど)。「さっさと核攻撃してゴジラを倒せばいいのに」と思う人も多いのかもしれません。


でも日本人にとってはそうじゃない。日本にもう核爆発を落としたくないし、東京を放射能で汚染することもしたくない。この感情があるからこそ、ここからの展開に目が離せなくなります。


核攻撃までのわずかな時間に決行されるヤシオリ作戦。日本の民間企業がゴジラ凍結のための血液凝固剤の製造や車両の提供で協力し、ドイツはリスクを顧みずスパコンを提供し、フランスは核攻撃の延期に協力し、米軍は無人機によってゴジラを消耗させます。民間の力の結集や、関係各国の協力という展開に胸が熱くなります。一見頼りなく見えた総理臨時代理(平泉成)がフランスを説得し続けたことが功を奏するというのもいいですね。


核攻撃ではない手段でゴジラを倒すために皆が必死になる。これがアメリカ映画とは違う日本のゴジラ映画なのです。

 

ゴジラの表現

本作のゴジラの動きは野村萬斎がモーション・キャプチャーで演じたということで、狂言の様式が用いられています。また、本作のゴジラはこれまでの作品と比べて表情に乏しく、あまり感情を見せない印象を受けます。


これらが相まって本作のゴジラは生物を超越したような雰囲気、どこか畏怖の念を抱いてしまうような雰囲気があります。この点も、過去作にはない本作の魅力だと思います(だだ、最初に上陸する時の形態はちょっと嘘っぽい)。


一方で、変わらないのが音楽。本作でも、メインテーマを始めとして、過去作と同様の曲が多数使用されています。ゴジラを表現する上では欠かせないメインテーマはやはり素晴らしいですね。改めて伊福部昭氏の偉大さを感じました。

 

最後に

今回は映画『シン・ゴジラ』の解説&感想でした。初代『ゴジラ』からの反核のエッセンスはそのままに、政治ドキュメンタリー風の切り口で描き出された新しいゴジラでした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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