どうも、たきじです。
今回は、2023年公開のアニメ映画『ロボット・ドリームズ』の解説&感想です。
作品情報
タイトル:ロボット・ドリームズ
原題 :Robot Dreams
製作年 :2023年
製作国 :スペイン、フランス
監督 :パブロ・ベルヘル
上映時間:102分
解説&感想(ネタバレあり)
ポップな絵とパンフォーカス的視覚
舞台は1980年代のニューヨーク——と言っても、人間ではなく擬人化された動物たちが暮らす世界です。『ロボット・ドリームズ』は、そんな世界を舞台に、孤独な犬とロボットの友情を描いたアニメーション映画です。
本作には台詞がありません。観客に与えられるのは「映像」と「音楽」だけ。本作はそのそれぞれが際立っています。
まず映像表現。太い輪郭線とベタ塗りで描かれたポップな絵面は、近年主流のCGや3Dレンダリングとは対照的です。陰影による奥行きよりも、画面全体を均質に描き込むことでパンフォーカスのような効果を生み出し、観客は視線を特定の一点に縛られることなく隅々まで画を楽しめます。これは、80年代ニューヨークの雑多な雰囲気を思い起こさせるスタイルでもあります。
音楽が牽引する物語
そして、音楽。台詞がない分、本作では音楽が重要な役割を果たします。駅や公園のストリートミュージシャンの奏でる音楽は単なるBGMにとどまらず、ニューヨークという街の息づかいを映し出すとともに、犬とロボットの交流を彩ります。『オズの魔法使』を引用した夢の中でのミュージカル的演出や、鳥たちの歌など、音楽的な彩りはとても豊かです。
特に印象的なのは、アース・ウィンド&ファイアーの名曲「セプテンバー」の使い方でしょう。ニューヨークの名所を巡る2人の交流を描くモンタージュで使われた後、この曲は2人の思い出のテーマとして反復的に使用されます。ラストシーンの感動は、この楽曲の存在なしには成立しないと言っても過言ではありません。
台詞なしに物語を紡ぐというのは、映画黎明期のサイレント映画で当たり前に行われてきたことです(技術的制約によって)。ただし、当時のサイレント映画は上映時に任意の曲が生演奏されることが多く、オリジナルスコアが書き下ろされた一部の作品においても、あくまでもBGMとしての役割に過ぎませんでした。それに対し、本作は音楽が核となって、台詞のない物語を牽引するという点で、これまでにない作品であると言えるでしょう。
ロマンス映画のような余韻
本作は友情の物語でありながら、ラストシーンはロマンス映画のような余韻を残します。
離れ離れとなった犬とロボットは、それぞれ新しいパートナーを得ます。ラストシーンでロボットは犬の姿を発見します。ロボットは犬を追いかけ、犬と再会を果たして抱き合う——というのはロボットの空想で、現実ではロボットは犬から姿を隠します。
そしてロボットは、思い出の「セプテンバー」を流して踊り、その音楽を聞いた犬も踊り出します。別々の場所で踊る2人が音楽で繋がり、映像も、踊る2人を2分割画面で繋ぎ合わせます。やがて2人は、それぞれの新しいパートナーとともに楽しく踊ります。
前のパートナーとの思い出を胸に、新しいパートナーと進んでいく2人。「再会してめでたしめでたし」という結末ではないものの、それぞれに新しい幸せを見つけたこの結末はハッピーエンドと見ることもできます。それでも、切ないロマンスを見ているような余韻を残すラストシーンでした。
「犬の孤独」と「ロボットの夢」
このラストシーンがこれだけ胸に迫るものであったのは、台詞がない中でも、「犬の孤独」と「ロボットの夢」の描写を通して、2人の感情が繊細に描かれているからでしょう。
「犬の孤独」は冒頭から繰り返し描写されます。隣人の幸せな姿との対比、ロボットを恋しがるハロウィン、スキー旅行での疎外感…。都市の喧騒の中で人と繋がれない孤独は、舞台である80年代だけでなく現代を生きる私たちにも共通するテーマでしょう。
また、タイトルが示すように「ロボットの夢」は本作の中核となるモチーフです。犬と再会するロボットの夢や空想が、ロボットの中にある潜在意識を映し出すとともに、現実の残酷さを際立たせます。さらに、「機械が夢を見る」という逆説も物語に独自の深みを与えています。
ツインタワーという象徴
本作では、2001年の同時多発テロにより失われたワールドトレードセンターのツインタワーが繰り返し画面に登場します。最初は時代背景を示すための描写に思えますが、観ているうちに、意図的なモチーフであることに気づかされます。
「2つで1つ」という存在であり、同時に「もう戻らない過去」となったツインタワーは、犬とロボットの関係性と重なって見えてきます。 台詞を使わず映像で語る本作にふさわしい、強力なメタファーですね。
最後に
今回は、映画『ロボット・ドリームズ』の解説&感想でした。ポップな絵柄からは想像できないほど、映像と音楽で徹底的に物語を描き切った稀有なアニメーション映画。アニメーションの可能性を再発見させてくれる一作であり、映画好きにも音楽好きにもおすすめしたい作品です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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