どうも、Takijiです。
今回は映画『ロード・トゥ・パーディション』の解説&感想です。美しい映像で魅せる父子のドラマであり、豪華俳優陣の競演も見どころのマフィア映画です。
作品情報
タイトル:ロード・トゥ・パーディション
原題 :Road to Perdition
製作年 :2002年
製作国 :アメリカ
監督 :サム・メンデス
出演 :トム・ハンクス
タイラー・ホークリン
ポール・ニューマン
ジュード・ロウ
ダニエル・クレイグ
上映時間:119分
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あらすじ
妻と二人の息子と暮らすサリヴァン(トム・ハンクス)は、マフィアのボスのルーニー(ポール・ニューマン)の有能な部下で、ルーニーから息子同然に可愛がられています。一方、ルーニーの実の息子であるコナー(ダニエル・クレイグ)は、仕事ぶりにも性格にも難があり、ルーニーのコナーに対する扱いも冷ややかです。
ある日、コナーは、自分の不正を暴露しようとした仲間を射殺しますが、それをサリヴァンの長男マイケル(タイラー・ホークリン)が目撃してしまいます。コナーは、サリヴァンの留守を狙い、口封じのためにサリヴァンの妻と次男を殺害しますが、マイケルは学校に居残りしていたため難を逃れます。
ルーニーはコナーを激しく叱責しますが、悩んだ末に殺し屋のマグワイア(ジュード・ロウ)を雇い、コナーへの復讐を誓ったサリヴァンの殺害を命じます。サリヴァンはマイケルを連れて逃げながら、コナーへの復讐の機会をうかがいます。
解説&感想(ネタバレあり)
3つの父子の物語
この物語は、紛れもなく父と子の関係がテーマになっています。サリヴァンと息子のマイケル、ルーニーと息子のコナー、そして疑似的な父子ではありますが、ルーニーとサリヴァンの関係です。
ルーニーは、コナーがやったことを知り、彼を激しく叱責するものの、最後には抱きしめます。優秀で息子同然のサリヴァンではなく、足りない男でも血の繋がったコナーを選ぶのです。
とはいっても息子同然の男に殺し屋を差し向けなくてはならない苦しみをルーニーは背負います。映画終盤、襲撃を受け護衛を全員殺されたルーニーがゆっくりと振り返ると、銃を構えて立つサリヴァンの姿があります。「お前で良かった」とだけつぶやくルーニーと、憂いを帯びた表情でルーニーを撃つサリヴァン。父子関係の悲しい最期です。
そして、ストーリーの軸となるのはサリヴァンとマイケルの父子です。最初は離れていた2人の距離が、旅を通して徐々に縮まっていきます。序盤、マイケルが帰宅した父を呼びに行くシーンでは、奥行きのある映像と短い台詞のやりとりで、2人の距離感を簡潔に表現しています。
マイケルは、父は弟を可愛がっていて、自分は愛されていないと感じていました。旅の最中に父子が語り合う中で、サリヴァンは、2人の息子を同じように愛していたこと、マイケルは素直な弟とは違って自分に似てるということを伝えます。さらに、自分に似てほしくなかったとも伝えます。
映画のラスト、マグワイアに撃たれて瀕死のサリヴァンを前に、マイケルはマグワイアに向けて銃を構えます。が、マグワイアに詰め寄られても撃つことができず、結局、サリヴァンが力を振り絞ってマグワイアを撃ちます。撃てなかったことを詫びるマイケルの前で、サリヴァンは息を引き取ります。
サリヴァンは望んでマフィアの道に入ったわけではなく、身寄りのない自分を育ててくれたルーニーに報いるために働いていたのだと思います。自分に似たマイケルに同じ道を歩んで欲しくないと思っていたことを考えると、マイケルが引き金を引けなかったことは、サリヴァンにとって望むべき結果だったと思います。
映画は、マイケルがサリヴァンについて語る言葉で締めくくられます。サリヴァンは良い男だったかどうか。彼の答えは、
「彼は私の父でした」
センスとこだわりに満ちた撮影
本作は、アカデミー賞を受賞していることからも分かるように、とにかく撮影が素晴らしい作品です。"撮影が素晴らしい"というと、『プライベート・ライアン』や『ロード・オブ・ザ・リング』のような大迫力の激しい戦闘シーンのある作品や、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』や『レジェンド・オブ・フォール』のような大自然を美しく描写した作品、いずれにせよダイナミックな映像で見せる作品が思い浮かびます。
本作はそうした作品とは違って激しい戦闘も大自然もないにも関わらず、素人ながらに撮影の素晴らしさに惚れ込みました。照明やカメラワーク、構図の工夫でここまで美しい映像がとれるものかと衝撃を受けたのです。
30年代を再現したシカゴの街並みや建築は、まるで絵画のような美しい構図で映し出されます。上にも挙げた、サリヴァンがルーニーを襲撃するシーンは、激しい雨と夜の闇を纏った映像があまりにも美しく映し出されます。
アカデミー賞三度受賞の撮影コンラッド・L・ホールが素晴らしいのは言うまでもないですが、サム・メンデス監督の映像センスやこだわりによるところも大きいでしょう。コンラッド・L・ホールが最初にアカデミー賞を受賞してから30年ぶりに受賞したのが『アメリカン・ビューティー』で、そのわずか3年後にまた受賞したのが本作。『アメリカン・ビューティー』と本作の監督がどちらもサム・メンデスであることは偶然ではないでしょう。
ちなみにコンラッド・L・ホールは本作が遺作となりました。サム・メンデス監督は、その後、ロジャー・ディーキンスを撮影監督として映画を撮っていますが、2019年の『1917 命をかけた伝令』でもアカデミー撮影賞の受賞に導いています。
サム・メンデス監督の映画によく見られるのが、対象物をガラスや鏡に映した映像です。本作でも、何度か見られますが、特に印象的なシーンが2つありました。
まずは、サリヴァンとマイケルが追手から逃れてシカゴを訪れる場面。カメラはサリヴァンの運転する車でぼんやりと外を眺めるマイケルの姿を、車の外から捉えています。やがて車の窓ガラスにはシカゴの街並みが映り込み、マイケルは次第に目を奪われ、摩天楼を見上げます。カメラは止まって走り去る車を後方から捉え、やがてシカゴの街並み全体が映ります。恐らく初めて訪れるであろう大都会シカゴに見入るマイケルの目を通して、画面を見つめる私達に30年代のシカゴをお披露目するという、なかなか素敵なシーンです。
次に、マイケルがコナーを射殺する場面。カメラはコナーのいるホテルのバスルームに入ったサリヴァンが銃を撃つシーンを遠目から映し出します。サリヴァンが立ち去る時に触れたバスルームのドアがゆっくりと閉まり、ドアに付いた鏡が、バスタブの中で息絶えたコナーの姿を映し出します。サリヴァンの"最後の仕事"の様子を捉えた流れるようなカットの最後を、とても刺激的な表現で締めくくっています。
実力派俳優の競演
本作は確かな実力を持った豪華俳優陣の競演も見どころです。
トム・ハンクスはどちらかというとコミカルな役柄や優しい役柄が多いイメージですが、本作では厳格なマフィアを演じています。息子マイケルの目を通してサリヴァンの人物像が描かれるがゆえに、序盤は特に厳しさを強調し、終盤になるにつれて、その中に見える優しさを表現しています。相変わらずどんな役柄でも見事に演じ分けています。
ポール・ニューマンはとにかく渋く格好良く、マフィアのボスを好演しています。トム・ハンクスもポール・ニューマンも好きな私としては、2人が並んでピアノを弾くシーンではよだれが出そうでしたよ(笑)
ジュード・ロウは、マグワイアという、やや漫画チックなぶっ飛んだキャラクターを見事に演じています。髪の毛を抜いて頭を薄くしての体当たり演技です。今は普通に頭が薄くなっていますね。それでも格好良いのがジュード・ロウです。
本作の公開当時は、ポール・ニューマン、トム・ハンクス、ジュード・ロウという3世代の名優の共演が見ものだったと思いますが、今見ると注目すべきはコナーを演じたダニエル・クレイグでしょう。彼は2006年公開の『007/カジノ・ロワイヤル』で6代目ジェームズ・ボンドに就任しました。
金髪で、これまでのボンドとは違う雰囲気の彼は、就任当初、一部からバッシングを受けていました。私も、彼に対しては本作のコナー役のイメージしか持っていなかったので、「あの悪役顔の役者がボンド?」という感じでした。
それが蓋を開けてみれば映画は絶賛され、ダニエル・クレイグもめちゃめちゃ格好良く、新しいボンド像を構築していました。小物感たっぷりの悪役から、超一流エージェントまで、実に振れ幅が大きい役者です。
ちなみに『007 スカイフォール』(2012年)と『007 スペクター』(2015年)では、サム・メンデスが監督を務めています。『ロード・トゥ・パーディション』が好きな私としては感慨深いものがあります。特に前者は傑作。個人的には007シリーズで最もよくできた作品だと思います。
いつの間にか007の話になっていますね(笑)これくらいにしておきます。
余談ですが、本作でマイケルを演じた子役のタイラー・ホークリンは、現在はテレビシリーズでスーパーマンを演じています。
最後に
今回は、映画『ロード・トゥ・パーディション』の解説&感想でした。さほどメジャーな作品ではないと思いますが、とても見どころの多い名作です。機会があればぜひご覧下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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