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映画『オールド・ボーイ』解説&感想 複雑な感情を掻き立てる復讐劇

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どうも、たきじです。

 

今回は2003年公開の韓国映画『オールド・ボーイ』の解説&感想です。

 

 

作品情報

タイトル:オールド・ボーイ

原題  :올드 보이

製作年 :2003年

製作国 :韓国

監督  :パク・チャヌク

出演  :チェ・ミンシク
     ユ・ジテ
     カン・ヘジョン
     チ・デハン

上映時間:120分

 

解説&感想(ネタバレあり)

日本の漫画をベースとして再構築

韓国映画『オールド・ボーイ』は、理由も分からぬまま15年間監禁された男・オ・デスが、解放後にその真実へ迫っていく物語です。原作は日本の漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』ですが、映画は復讐と禁忌をめぐる独自の解釈で再構築され、全く新しい衝撃を与える作品となっています。

 

軽妙なモノローグと張り巡らされた謎が観る者を前のめりにさせ、冒頭から一気に映画に引き込みます。脚本は緻密に練られており、真実が徐々に明らかになっていくにつれてさらに引き込まれていきます。

 

本作の魅力は大きく2つあると私は考えています。ひとつは、やがて明らかになる真実の妙。もうひとつは、悪役ウジンの感情にまで光を当て、単なる憎悪の対象に留めなかった点です。

 

衝撃の真実とオイディプス的構造

物語の核心は、やがて明らかになる衝撃の真実にあります。ウジンはかつて実の姉と愛し合っていましたが、オ・デスが軽率に口外したことをきっかけに、姉は命を絶ちました。ウジンはその復讐としてオ・デスを15年間監禁し、彼を娘ミドと引き合わせ、互いの関係を知らずに愛し合うように仕向けました。そして無情にも、ミドがオ・デスの実の娘であることを告げるのです。

 

痛快な復讐劇かと思いきや、実は主人公もまた復讐の標的だったという逆転。そして、オ・デスがミドと親子関係であったという真実。この展開の衝撃は、強く記憶に残るものでした。

 

しばしば指摘されるように、本作の物語構造はギリシャ悲劇『オイディプス王』を思わせます。オイディプスは国を救うため父の死の真相を追ううち、「父殺し」と「母との結婚」という自らの罪に辿り着きます。真実を追求した結果「自分自身が元凶だった」と知るとともに、血縁者と肉体関係を持ってしまったことを知る構造は本作に重なります。さらに、「オ・デス(Oh Dae-su)」という名前も「オイディプス(Oedipus)」を想起させます。

 

そして、オイディプス王が真実を知ったのち自らの目を潰すという自己処罰に至るのに対し、本作では、オ・デスは舌を切り落とすことで贖罪を示します。舌を切り落とすという行動は、最初はやや唐突にも感じられましたが、オイディプス王になぞらえたということなら合点がいきます。

 

本作は明らかな悲劇であるにも関わらず、後味の悪さよりもどこか心地よいと感じるのは、オイディプス王からの流れを汲む古典的構造ゆえでしょう。

 

悪役ウジンの深い感情描写

本作のもうひとつの魅力は、復讐者ウジンの感情を丁寧に描いた点にあります。

 

印象的なのは、ウジンが亡き姉をアバズレ呼ばわりしたジュファンを殺害した後のシーン。音楽を聴きながら身体を反らすヨガのようなポーズを取り、涙を流す姿がクローズアップで映し出されます。

 

映画を観る者にとって、この時点ではまだ全貌は分からない段階ですが、このシーンだけで彼が単なる悪役ではなく、深い痛みを抱えた存在であることが強烈に伝わってきます。ここで流れるのはアラム・ハチャトゥリアンの組曲『仮面舞踏会』の「ワルツ」。気品ある旋律が、ウジンの孤独と悲しみをより際立たせています。

 

そしてクライマックス。オ・デスが許しを乞いながら地にひれ伏す姿を前に、ウジンは復讐をやり遂げた達成感と空虚を抱え、「これから何を生きがいにすればいい?」と耳元で囁きます。

 

俺たちはすべてを知って愛し合った。お前たちはどうだ

 

そう告げて去り、姉との別れを涙とともに回想しながら自分に向けて引き金を引く――。誰も幸せにならない結末でありながら、圧倒的な映画的カタルシスが訪れる瞬間です。

 

ウジンの感情が各シーンで丁寧に描かれていることで、ウジンは単なる憎悪の対象ではない複雑な悪役になっています。それは、主人公と悪役を入れ替えても映画として成立するのではないかと思わされるほどでした。

 

演出によって際立つ魅力

本作において、上述の2つの魅力を際立たせているのは、パク・チャヌク監督の演出力でしょう。

 

まず、上述の「ワルツ」に限らず、本作の音楽使い方は絶妙。オ・デスが拷問を受けるシーンで流れるアントニオ・ヴィヴァルディの『四季』の「冬」第1楽章や、繰り返し流れるチョ・ヨンウクによるオリジナルスコアなど、それぞれが観るものの感情を掻き立てています。

 

また、オ・デスが母校を訪れて記憶を辿るシーンでは、高校時代の風景と現在のオ・デスを同じ空間に重ねる演出が決まっています。オ・デスが真実に迫る過程を臨場感をもってスリリングに描いています。

 

そして、個人的に忘れがたいのは、クライマックスでオ・デスとウジンが対峙するシーン。ウジンがオ・デスに真実を語るのと並行して、シャワー後の裸のウジンがドレスアップしていく様子を描く演出です。

 

意気揚々と乗り込んできたオ・デスが真実に打ちのめされていくのに対し、丸裸の状態から完成された装いへと変貌していくウジン。立場の逆転を可視化するような見事な演出です。ウジンの美しい装いと、血と禁忌にまみれた彼らの醜い争いとのコントラストも鋭く決まっています。そして、完璧な装いになったところでウジンの復讐劇が完成するという心地よさ。

 

この見事な演出が、クライマックスにおいて、上述の「映画的カタルシス」を盛り上げていることは言うまでもありません。

 

最後に

今回は映画『オールド・ボーイ』の解説&感想でした。衝撃の真実と古典悲劇を思わせる構造、そして悪役ウジンの感情表現によって、単なる復讐映画に終わらない深みのある作品となっています。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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