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映画『モダン・タイムス』解説&感想 チャップリンのサイレント作品の集大成!

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どうも、たきじです。

 

今回は映画『モダン・タイムス』の解説&感想です。社会風刺、前向きなメッセージ、そして濃縮された笑いで魅せる、チャップリンのサイレント作品の集大成です。

 

作品情報

タイトル:モダン・タイムス

原題  :Modern Times

製作年 :1936年

製作国 :アメリカ

監督  :チャールズ・チャップリン

出演  :チャールズ・チャップリン

     ポーレット・ゴダード

     ヘンリー・バーグマン

     チェスター・コンクリン

 上映時間:87分

 

解説&感想(ネタバレあり)

笑いの中に鋭い社会風刺

機械文明の中で、人々から人間性が失われていく社会を笑いの中に風刺した作品…。84年前に公開され、これまでに評論され尽くしてきた本作について、今更こんな風に書き出すのも少し照れてしまいます。


冒頭、羊の群れの映像が労働者の群れにクロスフェードします。白い羊の群れの中には黒い羊が一匹。冒頭から意味深なシーンですね。羊のように飼い慣らされた労働者。その中には集団の中に溶け込めない存在があります。チャップリン演じる主人公ののように、社会から取り残された存在を暗示しているのでしょう。


続く工場でのシーンでは、機械化された工場の中で、労働者が歯車の如く扱われる様が描かれます。経営者は生産を増やすためにどんどんと稼働スピードを早め、労働者が怠けないようにトイレまでも監視し、やがてランチまでも機械化して効率化しようとします。労働者達は疲弊し、男はやがて精神を病みます。


サイレント映画である本作では、レコードやラジオの音声と歌唱シーンを除いて登場人物は声を発しませんが、唯一この経営者だけが声を発します。労働者は声を持たず、搾取する側の経営者が声を持つというのも意味深です。


その後も、男はデモ隊のリーダーと間違われて逮捕されたり、手にした仕事もクビになったりと、何もかもうまく行きません。チャップリンは、このような一見悲劇的な状況を俯瞰して描くことで、風刺を込めた笑いに変えて見せます。これは、チャップリンの中長編作品の多くに見られる特徴です。

 

 

笑顔を失わない紳士

こうした鋭い社会風刺は、チャップリン映画の大きな魅力の一つですが、私がこうした要素よりも強く感じる本作の魅力は、作品に溢れる"前向きさ"です。


チャップリン演じる男は、精神を病み、失業しても、逮捕されても、常に前向きさを失いません。やがて出会った(ポーレット・ゴダード)と共に、いつか家を持つぞと意気込みます。


何より素晴らしいのはラストシーンです。映画終盤で、二人とも職を得て、すべてがうまくいく兆しが見えます。しかし、女の過去の微罪のために警察に追われ、街を出ることになります。そんな時に、涙する女の隣で男は何食わぬ顔をしています。そして男は女を励まし、気を持ち直した女と共に力強く歩き出します。


このラストシーンで、男は女にジェスチャーで笑顔を促します。それに女は満面の笑みで応えます。二人の表情の素晴らしいこと!どんなにつらい時でも常に笑顔を絶やさず前向きに生きていこうとする2人の姿には深く感動しました。


このシーンなどで流れる曲は、後に歌詞が付けられて"Smile"としてナット・キング・コールによって歌われました。この曲も、作品のテーマがよく表れていて素晴らしい曲です。


濃縮された笑い

チャップリンは1910年代に短編のコメディを量産し、1918年の『犬の生活』あたりから、笑いの中に風刺やヒューマニズムを含んだ中長編へと、徐々に移行していきました。この時代は、映画の黎明期。チャップリン、バスター・キートンのような"喜劇王"と呼ばれた男達が、舞台ではできなかった映像作品ならではの笑いを追及していた時代です。


彼らは、短編作品の様々なシチュエーションの中で、実験的に笑いを掘り起こし、集大成的に長編作品に盛り込むことが多い印象です。私はチャップリンの初期の短編を10本程度しか鑑賞していませんが、それだけでも本作の笑いの元ネタのいくつかを目にしました。本作におけるレストランでのドタバタやローラースケートを使った笑いは『チャップリンのスケート』、エスカレーターを使った笑いは『チャップリンのエスカレーター』で見ることができます。

 

短編の中には正直つまらないものも少なくないですが、そんな中から面白いものを抽出して、新ネタと合わせて本作に盛り込まれているわけですから、映画全体に笑いが濃縮されているのも頷けます。


本作を代表するシーンが、チャップリン演じる男が、ランチを自動化する装置の実験台にされるシーン。自動で食べ物を口に送ってくる装置に、必死に合わせて食べるチャップリンの様子が滑稽です。やがて装置が暴走し、猛スピードで回転するトウモロコシを顔で必死に押さえつける表情!そして合間合間でいちいち口を丁寧に拭きに来る機械がなんとも言えない脱力感で面白いです。そして最後にはこの口拭きの機械も大暴走し、男が何度も顔を叩かれるところでは大爆笑でした。個人の尊厳を無視してひたすら効率を追い求める経営者を風刺するシーンであることも相まって、本作の名シーンの一つとなっています。


それから、さほど語られるシーンではないと思いますが、個人的に好きなのは男がマイホームでの生活を空想するシーン。貧しくて家を持たない男が思い描くマイホームでの幸せな生活のズレっぷりが可笑しいです。カーテンで手を拭いたり、乳牛を飼い慣らして搾りたての牛乳を飲んだり、大皿に乗ったステーキに女と2人で必死にナイフを入れたりする様子は笑ってしまいます。


その後、男は閉店中のデパートの警備の仕事を得て、そこに女を連れて行きます。女が売り物のローブを羽織り、売り物のベッドで眠る様子は、マイホーム生活の空想の続きのようにも見えて面白いです。


このデパートで、男がローラースケートで滑るシーンも有名です。本作の影響が見られる映画『ジョーカー』でもこのシーンが引用されていました。このシーンに代表されるように、チャップリンの運動神経を生かした笑いも多いです。男が水浴びをしようと川に飛び込んだら、水深がとても浅くて頭を打ってしまうというシーンがありますが、これなんか、まあまあなスタントですよ。サイレント映画はどうしても動きで笑いを取ることが多いですから、この時代の喜劇役者は、バスター・キートンにしてもハロルド・ロイドにしても、運動神経は抜群ですね。

 

 

最後に

本作は、チャップリンの代名詞である"小さな放浪者"(パーマ、ちょび髭、山高帽、小さな上着、ぶかぶかのズボンと靴、ステッキのスタイル)が登場する最後の作品となりました。トーキーが普及してサイレントの時代が終わりに向かう中で、このスタイルの笑いもやりきったというところでしょうか。終盤、『ティティナ』を歌うシーンでチャップリンは初めて作中で肉声を発します。


いつもラストシーンで一人だったチャップリンですが、本作は二人で去っていきます。この哀愁を含みつつも前向きなハッピーエンドは、チャップリン映画の一つの節目として、相応しいラストシーンだと思います。

 

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