どうも、たきじです。
今回は2023年公開のアメリカ映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』の解説&感想です。前作『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』に続く、大ヒットスパイアクションシリーズの第7作です。
↓ 前作の解説&感想はこちら
作品情報
タイトル:ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE
原題 :Mission: Impossible – Dead Reckoning Part One
製作年 :2023年
製作国 :アメリカ
監督 :クリストファー・マッカリー
出演 :トム・クルーズ
ヘイリー・アトウェル
ヴィング・レイムス
サイモン・ペッグ
レベッカ・ファーガソン
ヴァネッサ・カービー
イーサイ・モラレス
ポム・クレメンティエフ
ヘンリー・ツェニー
上映時間:163分
解説&感想(ネタバレあり)
AIの脅威と戦うイーサン・ハント
映画『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』は、『ミッション:インポッシブル』シリーズの第7作にあたります。本作でイーサン・ハントが対峙するのは、自我を持つAI「エンティティ」。デジタル空間に潜むこの脅威は、情報を自在に操り、世界中のシステムを支配できる能力を持っています。
本作の公開は、2022年のChatGPTのリリースをきっかけとしたAIブームと重なり、世相とマッチしたちょうどいいタイミングとなりました(もちろん本作の製作はChatGPTのリリースより前)。とはいえ、「AIの脅威」というテーマ自体はSFでは繰り返し描かれてきたことなので、今更な印象がなくもないです。空港での爆弾騒ぎにおけるベンジーとエンティティのやりとりなどは、特に陳腐な印象を受けました。
情報過多な序盤
序盤、ベンジーとルーサーによる遠隔でのサポートを受けながらの空港でのミッションは、シリーズらしい緊迫感が十分にあります。ミッション途中に想定外の邪魔が入り計画が崩れる展開がさらなるスリルを演出します。
が、この場面ではさすがに"邪魔"が多すぎではないでしょうか?
- 荷物に爆弾が入っている
- ターゲットの男がスリに鍵を取られる
- イーサンがCIAに追われる
- ターゲットの男が殺害される
- イーサンがガブリエルの幻影のようなものを見る
緊張感を高める意図は理解できますが、あまりに詰め込まれて情報過多になっていて、観客の混乱を招いている点は残念でした。
やや冗長なローマでの逃走劇
ローマを舞台にした逃走劇も、複数のキャラクターが交錯し、少々複雑です。グレース、ガブリエル、CIA、パリス、現地警察と入り乱れ、逃走劇は派手なカーチェイスに発展します。
このカーチェイスがやけに冗長に感じられたのは私だけでしょうか?キャラクターのだぶつきもあってテンポも悪いですし、グレースとのコミカルなやり取りも狙いすぎの感があります。手錠で繋がれているという使い古された状況設定も、そこまで活かしきれていない印象です。
一方、映画ファンの目を引くのは、スペイン階段のシーンでしょう。『ローマの休日』でオードリー・ヘプバーンがジェラートを食べる有名なシーンの舞台でもある場所ですが、特に目を引くのはベビーカーの登場です。
「階段×ベビーカー」という取り合わせは、1925年公開の『戦艦ポチョムキン』の映画史に残るシーンで用いられて以来、『アンタッチャブル』を始めとして数々の映画で引用されてきたモチーフ。さらにはこのシーンは、「カーチェイス×ベビーカー」という取り合わせでもあります。これは『フレンチ・コネクション』が元祖だと思いますが、『スピード』を始め、カーチェイスのスリルを高める演出としてたびたび引用されてきました。このシーンは、これら両方の引用になっているという欲張りな演出(笑)。思わずニヤけてしまいました。
全体的に"嘘っぽさ"か目立つ
このローマの場面で本格的に登場するパリス(ポム・クレメンティエフ)は、型破りでミステリアスな存在感を放っています。しかし、彼女だけコミックから飛び出してきたようなキャラクターなので賛否が分かれるところではないでしようか。途中のあの白塗りメイクはなんだったんでしょう?彼女の行動の動機もいまひとつ明確に描かれないため、つかみどころのないキャラクターのままで終わってしまった印象です。
上で触れたベンジーとエンティティの問答にしても、パリスのキャラクターにしても、本作は作り物のような嘘っぽさが目立つ印象があります。ヴェネツィアの橋の上でのガブリエルvsグレースの戦い、それに続く、ガブリエルvsイルサの戦いも予定調和な印象で、イルサの死を含めて少し冷めた目で見てしまいました。
興奮と緊張感あふれるクライマックス
ここまで、否定的なことばかり述べて来ましたが、私は本作を決して嫌いではありません。本作の真骨頂は、やはりクライマックスのアクションにあります。ここはしっかり盛り上げてくれますからね。
イーサンがバイクで崖からダイブしてパラシュート降下するシーンは圧巻。スクリーンで観る価値のあるシーンです。そして、ちょうどグレースのピンチを救う形で列車内に颯爽と登場する瞬間は、あまりに出来すぎていて、吹き出してしまいましたよ(笑)。このシーンは"作り物"で大いに結構。アクション映画として正しいハッタリです。ここはご都合主義でいいのです。これを見せる為の映画なんですから。
さて、列車での駆け引きやアクションをクライマックスに据えるのは、シリーズ第1作へのオマージュでしょうか。列車の上でのアクションは、同作を思い出さずにはいられません。また、列車が途切れた橋から落ちるというモチーフも映画の歴史上古くから繰り返し用いられてきたもので既視感があります。
イーサンとグレースが、崖から宙吊りになった車両を上っていくのが、本作の最後の見せ場。この場面はゲーム『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』のオープニングを思い出します。緊張感抜群で、かなり力の入るシーンですが、やや間延びしているのが残念なところ。
厨房の車両だったり、ピアノのある車両だったりと、次々に現れる障害物を乗り越えていくのは、ゲームならそのバリエーションが面白さに直結しますが、映画だと繰り返しが単調に感じられてしまいます。
シリーズのマンネリ化を打破する新たな挑戦
さて、過去作のレビュー記事でも述べてきた通り、本シリーズは第4作で格段に面白くなって、そのスタイルを踏襲する形で第5作、第6作と型を確立した印象です。その一方で、決まった型を繰り返すことで、シリーズのマンネリ化を感じる部分もありました。そんな流れの中での本作。過去作のパターンは踏襲して大事なところは押さえつつ、新たな挑戦を感じる部分もあり、新鮮さを感じながら観ることができました。
大きなところでは、シリーズ初の2部構成を採用した点が挙げられます。シリーズ第7作が製作され、しかもそれが2部作であると言うことを知った時には、トム・クルーズの絶えることのない製作意欲に感服したものです。
しっかりと第1部のクライマックスを盛り上げていったんの満足感を提供しているので、物語の途中で映画が終わる物足りなさは感じませんでした。鍵がライターにすり替えられたことを知ったガブリエルが地団駄を踏むシーンなんて、嫌いな人いないでしょう(笑)。
また、脅威的なAIというこれまでになかった敵の登場や、イルサの死といった展開によって物語のトーンの重みが増し、映画にこれまでにない雰囲気を醸成しています。
さらに言えば、上でやや否定的に書いたパリスのちょっと浮いたキャラクターも、シリーズのマンネリ化を防ぐスパイスだと考えれば、それも一つの挑戦と言えるかもしれません。
最後に
今回は映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』の解説&感想でした。シリーズの伝統的なパターンの中に新たな挑戦も感じられる第7作。前半を中心に、ストーリーや演出に不満も目立ちましたが、クライマックスは十分に盛り上がり、一定の満足を与えてくれる作品でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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