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映画『十三人の刺客』(2010年)解説&感想 昭和時代劇の魂を現代的エンタメに昇華した名作

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どうも、たきじです。

 

今回は2010年公開の日本映画『十三人の刺客』の解説&感想です。1963年公開の同名映画のリメイク作品です。

 

↓ オリジナル版の解説&感想はこちら

 

作品情報

タイトル:十三人の刺客

製作年 :2010年

製作国 :日本、イギリス

監督  :三池崇史

出演  :役所広司
     松方弘樹
     山田孝之
     伊勢谷友介
     沢村一樹
     古田新太
     高岡蒼甫
     六角精児
     波岡一喜
     近藤公園
     石垣佑磨
     窪田正孝
     伊原剛志
     光石研
     吹石一恵
     谷村美月
     斎藤工
     阿部進之介
     内野聖陽
     岸部一徳
     平幹二朗
     松本幸四郎
     稲垣吾郎
     市村正親

上映時間:141分

 

解説&感想(ネタバレあり)

豪華キャストによる群像劇

三池崇史監督による『十三人の刺客』は、1963年の同名映画のリメイク作品として、現代的なエンターテインメント作品として再構築された一本です。

 

本作の魅力の一つは、豪華キャストによる群像劇というスタイルでしょう。序盤は人物紹介的パートですが、次々に画面に現れる豪華キャスト一人ひとりの存在感によって、まったく飽きることがありません。

 

主人公・島田新左衛門を演じる役所広司はもちろん、平幹二朗、松本幸四郎(現・松本白鸚)、市村正親、松方弘樹といった実力派俳優が立て続けに登場。平幹二朗は冒頭だけの出演ながら、渋い良い声で観客を時代劇の空気に引き込みます。松方弘樹は殺陣を含めさすがの安定感。そして市村正親の存在が敵方にいることで物語全体が締まります。

 

個人的に印象に残ったのは松本幸四郎。登場時間は決して長くありませんが、その存在感は圧倒的。役目を果たした後、自ら腹を切るシーンは、武士としての矜持を体現する振る舞いに涙させられました。

 

また、新左衛門のもとに集う侍たちは、皆いい面構えをしています。死に場所を求める者、正義の剣の行き場を求めるもの、思いは様々ですが、みな侍の魂を持っていることが伝わってくる演技でした。彼らの演技に加え、悪役である斉韶の"悪行"がこれでもかとばかりに描かれていることもあって、映画序盤から終始血がたぎるような興奮がありました。

 

物語と演技の噛み合う名シーン

敵味方に分かれた旧知の二人、新左衛門と半兵衛が、参勤交代を前に対峙する場面はとても記憶に残るシーンでした。新左衛門ら十三人の刺客は、参勤交代で斉韶が明石まで向かう道中で斉韶を狙うことになります。そして半兵衛もそれを悟っています。次に会う時には斬り合うしかない2人ですが、互いに思いをぶつけあいながらも、それについて直接は口にしません。そして交わされる最後の台詞。

 

半兵衛:播州明石まで141里19丁

新左衛門:また会おう

半兵衛:しかと!

 

本当にかっこいいやりとりです。1963年のオリジナル版の落ち着いたやりとりもそれはそれで良かったですが、私は本作の方が好み。互いに感情を乗せて交わされる熱のこもった会話が、とにかく観客の感情を煽ってくる本作の演出に絶妙にマッチしていました。

 

役者の演技を引き立てる照明

本作は照明による陰影も非常に印象的でした。

 

夜の場面では蝋燭の灯が人物を照らすライティングで、画面に江戸時代らしい質感を生み出しています。

 

また、印象的なのは、戦いを目前に控えた13人が集まり、新左衛門が「覚悟はいいな」と語りかける場面。

 

薄暗い室内に窓から光が差す逆光。わずかな瞳の輝きや陰影が新左衛門の表情に決意と恐れを映し出します。役所広司の演技を引き立てる見事な表現でした。

 

昭和時代劇のエッセンス

本作を観て感じたのは、昭和時代劇のエッセンスが多分に盛り込まれた作品だということです。

 

十三人の侍が集まるまでの仲間集めパート、決戦の準備パート、そして最後の決戦パートという構成は、『七人の侍』を思わせます。

 

また、義のために命を捨てる侍たちの姿は『忠臣蔵』の精神が重なります。

 

そして、理不尽な権力に翻弄される人々や、敵方となった旧友との対決には『上意討ち』を彷彿とさせるテーマも感じられます。

 

本作のストーリーはオリジナル版の踏襲ですが、本作が再現しているのはオリジナル版の魅力だけではありません。上述のような昭和時代劇が積み重ねてきたエッセンスまでも受け継ぎ、それを現代の映像技術と潤沢な製作費で再構築しています。単なるリメイクではなく、昭和時代劇への敬意を込めて、それを現代に蘇らせた作品と言えるでしょう。

 

一部キャラクター描写には違和感も

全体として、とても楽しいエンターテインメント作品に仕上がった本作ですが、気になったところもいくつか。

 

その最たるものは伊勢谷友介演じる山の民・小弥太です。

 

自由奔放なキャラクターは作品のアクセントになっていますが、徳兵衛と交わったり(笑)、最後に謎の復活を遂げたり、よく分からない演出も目立ち、少々浮いている印象を受けました。オリジナル版のように郷士という設定の方が、物語全体には自然に馴染んでいたように思います。

 

もうひとつは本作の悪役、稲垣吾郎演じる松平斉韶。そのキャラクターはかなり強烈です。冒頭からの斉韶の残虐行為の畳みかけは、観客を主人公たちに感情移入させる上で確かに大きな役割を果たしています。一方で、斉韶を悪役としてデフォルメし過ぎた結果、個人的には作り物臭さを感じてしまいました。

 

また、終盤で死を前にして恐怖を口にするのも不満です。彼は映画序盤から、残虐行為すら楽しむサイコパスのような狂気を見せていました。そして、刺客たちの襲撃を受けて命の危機に瀕しても、それを楽しむような言動を見せます。自分を守る者が全員やられてもなお余裕の態度。それは決して強がりには見えませんでした。

 

そんな彼が恐怖を口にする。それも人間らしさ、あるいは、サイコパスゆえと言ってしまえばそれまでですが、私にはキャラクターがぶれて見えてしまいました。

 

クライマックスにもやや不満

クライマックスは本作最大の見せ場です。宿場全体を要塞化した仕掛け、怒涛の殺陣、次々と倒れていく侍たち。圧倒的なスケールには驚かされます。しかしその一方で、間延びも感じてしまいました。オリジナル版も約30分の殺陣が売りでしたが、本作は約45分にも及びます。

 

例えば『七人の侍』は、戦いが何段階かに区切られ、攻防にリズムがありました。一方、本作は序盤こそ奇策で敵を翻弄する面白さがありますが、その後は長時間にわたって消耗戦のチャンバラが続きます。殺陣をここまで続けるのは素直にすごいと思いますが、長ければいいというものではありません。

 

また、数百人を相手に十三人が戦い続ける展開は、まるでコーエーテクモのゲームの無双シリーズのよう。いかに映画的誇張と言えど、ちょっと誇張が過ぎて、一歩引いて観てしまいました。

 

最後に

今回は映画『十三人の刺客』の解説&感想でした。

 

序盤から中盤で高められた期待に対しては、クライマックスがやや物足りない印象はありました。とはいえ、オリジナル版とは違う方向性でエンターテインメントを突きつめ、感情を揺さぶる作品に仕上がっていて満足度は高いです。

 

オリジナル版と本作、それぞれに魅力と弱点がありますが、トータルで見れば、私はオリジナル版以上に本作を楽しめました。

 

個人的な満足度:8/10

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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