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映画『007/スカイフォール』解説&感想 素晴らしい脚本とサム・メンデス演出が光る第23作

どうも、たきじです。

 

今回は2012年公開の映画『007/スカイフォール』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/慰めの報酬』に続く第23作。また、6代目ジェームズ・ボンドとしてダニエル・クレイグを迎えてリブートされた新シリーズ第3作となります。

 

 

↓ 前作の解説&感想はこちら

↓ その他のシリーズ作品の解説&感想はこちらから(各作品へのリンクあり)

 

作品情報

タイトル:007/スカイフォール

原題  :Skyfall

製作年 :2012年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :サム・メンデス

出演  :ダニエル・クレイグ
     ハビエル・バルデム
     レイフ・ファインズ
     ナオミ・ハリス
     ベレニス・マーロウ
     ベン・ウィショー
     ロリー・キニア
     オーラ・ラパス
     アルバート・フィニー
     ジュディ・デンチ
上映時間:143分

 

解説&感想(ネタバレあり)

"古き者"ボンドを描き込む脚本

本作は、個人的に007シリーズで最も好きな作品。本作は何より脚本が素晴らしいのです。


本作のストーリーは、シリーズの他の作品と比べてかなり独特。冒頭でジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)が死んだと認識されたり(これは第5作『007は二度死ぬ』でもやっていたけど)、MI6本部が爆破されたり、メインのボンドガールがM(ジュディ・デンチ)だったり、クライマックスが籠城戦だったり、メインキャラクターであるMが殉職したり。特に、MI6本部の爆破やMの死は、1作完結だった旧シリーズではできない大胆なストーリー展開です。


そんなストーリーも目を引くのですが、本作の脚本が素晴らしいのは、ボンドをある意味で"古き者"という立ち位置で描き、それを軸に他のキャラクターとの関係や物語を描きこんでいる点です。


怪我や年齢からボンドの肉体は衰えを隠せず、マロリー(レイフ・ファインズ)からは引退を促されます。ボンドがL字カミソリで髭を剃る様子を見たイヴ(ナオミ・ハリス)からは、古風だと言われます。


また、新シリーズとしてはQが本作で初登場しますが、これがベン・ウィショー演じる30歳前後の若者。旧シリーズで36年に渡ってQを演じたデズモンド・リュウェリンが引退時85歳だったこともあり、Qの若さが余計に際立つので、対照的にボンドの"古さ"が際立っています。絵画を見た時の「立派な軍艦もやがてはクズ鉄」というQの台詞もまたボンドに突き刺さる言葉になっています。


また、かつてはボンドと同じMI6のエージェントだった敵のシルヴァ(ハビエル・バルデム)もボンドと対になる存在。シルヴァは最新のサイバー技術を使う犯罪者であり、これがまた"古き者"ボンドと対照的です。

 


こうして、序盤から中盤にかけては、ある意味でボンドのネガティブな面(古さ)が強調して描かれる一方で、終盤にかけてはそれが変化してきます。


映画において、公聴会でMがアルフレッド・テニスンの詩「ユリシーズ」を引用するのがその転機となります。

 

かつて天と地を動かしたあの強さを我々は失った

だが英雄的な心は今も変わらずに持っている

時代と運命に翻弄され弱くはなったが

意志は強く戦い、求め、見いだし、屈服することはない


肉体は衰えても、不屈の精神を持った英雄。そう"古き者"ボンドを肯定し、讃えるかのような引用。この台詞をバックに、Mの元へ駆けるボンド。本作において、ボンドが真に復活する瞬間です。


そしてMとの逃避行のためにボンドが乗り換える車がアストンマーティンDB5。第3作『ゴールドフィンガー』を始めしばしば登場する往年のボンドカーです(同作のものと同様、イジェクトシートやフロント部の機関銃も内蔵)。そしてここで初めて流れるテーマ曲。「過去に戻る」というボンドの言葉と共に、古き時代が偲ばれます。


劇中でこの台詞が意味するところは、過去="ボンドの生家「スカイフォール」"。ボンドはシルヴァを迎え撃つためにスカイフォールに向かったわけですが、ボンドにとっては自らの過去に向き合うことも意味します。こうして絶妙な流れの中でタイトルの意味が明らかになり、クライマックスにかけて興奮を盛り上げます。


前作でも復讐心を抱える自らと向き合い、乗り越えたボンド。これは、復讐心でMに執着するシルヴァと対照的です。そして、最後にシルヴァを倒す武器が昔ながらの武器であるナイフであるというのも見事でした(直前に湖に落ちたことで銃を使えなくなるという流れもうまい)。


このように"古き者"としてのボンドを軸とした描き込みが、本作に深みを与えていることは間違い無いでしょう。

 

シリーズ初のオスカー監督

さて、007シリーズは、著名な監督がメガホンを取ることは少なく、どちらかと言えば007の監督を務めながらキャリアを築いていくパターンの方が多い印象です。そんな中で本作はオスカー監督のサム・メンデスが監督を務めています。


監督デビュー作にしてアカデミー賞を受賞した『アメリカン・ビューティー』や、次作の『ロード・トゥ・パーディション』が大好きな私としては、サム・メンデスが007を撮ると聞いた時は興奮しましたし、何より『ロード・トゥ・パーディション』では小物の悪役を演じていたダニエル・クレイグと、このような形で再びタッグを組むということは感慨深いものがありました。


サム・メンデスは撮影にこだわりの強い監督というイメージがあります。自身の監督作品のうち、3作でアカデミー撮影賞を受賞しているのは、撮影監督が素晴らしいだけではないでしょう。『アメリカン・ビューティー』では、アカデミー賞を3度受賞したコンラッド・L・ホールが撮影監督を務めていますが、同作のDVDのオーディオ・コメンタリーでコンラッド・L・ホールが引くくらい、各シーンの画面構図について語っていたのが印象的です(笑)。


鏡やガラスへの反射を効果的に使う映像が多いのはサム・メンデス監督作品の特徴の一つ。本作でも、上海のビルで敵と対峙するシーンで、ガラス窓にこれでもかとネオンを反射させたり、スカイフォールではシルヴァの一味が迫り来る様子をサイドミラーの側面に映したりといった印象的な映像が記憶に残ります。クライマックスの銃撃戦でも、アルバート・フィニー演じるキンケイドが鏡を使って敵を欺きます。

 


進化するアクション

007シリーズにはよくあることですが、本作のアクションはプレタイトル・シークエンスのアクションが一番でした。仲間が襲撃を受けた建物を散策する緊迫のシーン。ボンドが敵を追うために建物の外に出た瞬間に街の喧騒とBGMが入り、すぐにカーチェイスが始まります。そこからは、バイクチェイス、列車上での攻防と続くノンストップアクション。静と動のコントラストが効いていて、いきなりボルテージを上げてくれます。


列車の上でのアクションというのは、昔から使い古されたシチュエーションではあるものの、貨物のショベルカーのアクションを絡めたり、イヴの車を並走させたりといった味付けによって、新鮮さを生み出しています。


個人的には、列車上のアクションというと『ミッション・インポッシブル』のクライマックスのイメージが強いのですが、本作は他にも『ミッション・インポッシブル』シリーズを思い起こさせる部分が多いですね。本作に出てくる"NOCリスト"は同シリーズ第1作のキーアイテムでしたし、ボンドとイヴがイヤホンマイクで連絡を取り合いながら連携する様子なんかは同シリーズの定番です。

 

ボンドが上海のビルで敵を尾行するシーンで、エレベーターの下にぶら下がって敵を追うなんて、いかにも同シリーズでトム・クルーズがやりそうなアクションですよね。と思っていたら、本作の公開から6年後に『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』で実際にやっていました(笑)。


007はスパイ映画シリーズの元祖であり後の様々な映画に影響を与えてきたわけですが、前作ではボーン・シリーズ、本作では『ミッション・インポッシブル』シリーズの影響が感じられるなど、後輩達の良い部分も取り入れているように見えます。


こうして様々な映画が互いに影響を与え合い、進化していくというのは素晴らしいことだと思います。

 

シルヴァを熱演したハビエル・バルデム

ハビエル・バルデムは数々の映画賞を受賞している演技派俳優。そんな彼が本作で悪役を演じたことが本作をより良いものにしていることは間違いありません。


オスカーを受賞した『ノーカントリー』の殺し屋役でもそうでしたが、ヤバい人の演技が上手すぎます。いや、演技をしているのを全く感じさせない演技で、この人は本当にこういう人なんだと錯覚しそうになります。


シルヴァの登場シーンでは、奥行きのある画面構図での長回しで、顔が見えないくらい遠くからカメラの方に歩きながらボンドに語りかけます。彼が語る「共食いの末に生き延びた2匹のネズミ」のエピソードの秀逸さも相俟って、登場シーンからすっかり惹きつけられました。


ちなみにシルヴァが本拠としている廃墟の島のモデルは軍艦島として知られる長崎市の端島(世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産の一つ)。エンドロールでも日本語で「軍艦島・長崎市」と記載されているせいか、軍艦島がロケ地になったという誤情報も散見されますが、セット作製のモデルとなっただけでロケは行われていません。

 

廃墟の島のモデルとなった長崎市・端島(2011年5月撮影)

 


旧シリーズにつながるラストシーン

本作のラストシーンは、旧シリーズから観てきた人にとっては思わずニンマリさせられるものになっていましたね。本作でボンドに協力するエージェントとして登場した新キャラクターのイヴでしたが、彼女は途中でマロリーの助手に配置転換されます。


彼女は映画の最後に初めてフルネームで名乗るわけですが、その名前がイヴ・マネーペニー。マネーペニーと言えばMの秘書として旧シリーズの全20作に登場したキャラクター。イヴが名を明かし、マロリーが後任のMに就任することで、旧シリーズの設定が完成するのはちょっとした快感です。


しかもマネーペニーとMそれぞれの執務室の間取りや内装も旧シリーズを意識したものになっています。ショーン・コネリーやロジャー・ムーアのボンドの頃はマネーペニーの執務室の帽子掛けに、ボンドが帽子を投げるのがお約束でしたが、本作にもこの帽子掛けがしっかり登場。スーツに帽子を合わせるスタイルが流行らなくなった現代では、流石に帽子は出てこないものの、イヴがコートを掛けるという形でフィーチャーされています。


他にもQが初登場したり、アストンマーティンDB5のボンドカーが登場したり、旧シリーズの要素がふんだんに盛り込まれた本作。「ボンド、ジェームズ・ボンド」の名乗りやカジノなどのお約束のシーンもしっかり登場します。


個人的に好きなのはカジノのバーでカクテルを受け取るシーン。バーテンがシェイカーを振るところからシーンが始まり、バーテンがカクテルをグラスに注ぐと、ボンドが"Perfect."と応えます。


通常はステアして作られるウォッカ・マティーニをステアではなくシェイクして作らせるのがボンドの嗜好。注文のシーンを省略してシェイクのシーンから始めるとは、なんとオシャレでユーモラスな演出でしょう。

 

最後に

今回は映画『007/スカイフォール』の解説&感想でした。"古き者"としてのジェームズ・ボンドを軸として描き込まれた脚本を始め、サム・メンデス監督の演出も冴え渡った名作です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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★サム・メンデス監督作品の解説&感想

映画『ゴジラ-1.0』解説&感想 胸熱の物語と反核のエッセンス

どうも、たきじです。

 

今回は2023年公開の日本映画『ゴジラ-1.0』の解説&感想です。アジア映画で初めてアカデミー視覚効果賞を受賞しています。

 

 

作品情報

タイトル:ゴジラ-1.0

製作年 :2023年

製作国 :日本

監督  :山崎貴

出演  :神木隆之介
     浜辺美波
     山田裕貴
     青木崇高
     吉岡秀隆
     安藤サクラ
     佐々木蔵之介

上映時間:125分

 

解説&感想(ネタバレあり)

終わっていない戦争

本作は、太平洋戦争末期の1945年から戦後の1947年を舞台としています。時代としてはゴジラ第1作の『ゴジラ』(1954年)に近く、同作と同様、本作でも戦後復興の最中の日本をゴジラが襲います(無論、第1作ではそれがリアルタイムだったわけですが)。


戦争の惨禍とゴジラが重ねられるのは共通しますが、ストーリー上の意味合いは全く異なります。本作は元特攻隊員の敷島(神木隆之介)の主観で描かれ、「俺の戦争はまだ終わっていない」を主軸として物語がうまくまとめられています。ゴジラは「終わっていない戦争」の象徴というわけですね。


戦争で特攻を成し遂げられなかった敷島。大戸島ではゴジラを撃てず、多くの兵隊を死なせてしまいました。敷島がこうしたトラウマを抱える様子や、典子(浜辺美波)とのいびつな関係を含め、ゴジラシリーズの中でも、本作のドラマ性は随一です。


終盤で、幼い明子や国を守るために特攻という策を秘めた敷島の覚悟には胸が熱くなります。しかし、本作が描くのは自己犠牲の美学ではありません。敷島は、橘(青木崇高)の助けもあって、ゴジラを倒しつつ生き残るすべを見い出します。「生きる」ことの意味を前面に押し出した本作の物語には、さらに胸が熱くなります。


ラストシーンの意味

本作は、そうして物語の骨格がしっかりしつつ、いい意味でベタにストーリーが展開するのが心地よくもあります。


飛行技術は高いが臆病だった男が、最後には意を決してゴジラに挑むという展開は熱いですし、冒頭に登場した橘が震電を整備するというのも然り。クライマックスではピンチでここぞとばかりに水島(山田裕貴)が登場。ゴジラに特攻すると思われた敷島は射出座席で無事に脱出。中盤で死んだかと思われた典子も無事に生存していました。


ところが、ラストシーンでそれは覆ります。敷島と再会を果たした典子の首元には、何やら黒いアザのようなものがうごめいています。ゴジラの放射線の影響なのか何なのか定かではないものの、これは明らかに不穏です。さらには、海中に沈むゴジラの身体には復活の兆しが見て取れます。


ここまで変に捻らずに気持ちよくストーリーが展開してきた中でのこの不穏なラストシーン。正直言って、最初は少し違和感を覚えました。しかし、よくよく考えれば、日本のゴジラ映画として、これは描くべきことだったと気づきます。


ゴジラ誕生の経緯は作品によって多少の変化がありますが、共通するのは核実験がきっかけになっているということ。第1作の『ゴジラ』は核実験によって安住の地を追われて出現したと作中で推測されています。また、本作を含む多くの作品では、核実験で放射線を浴びたことで変異したという設定です。ゴジラと核は切っても切れない関係にあり、ゴジラは核兵器のメタファーであるとも言えます。


本作においても、ゴジラの銀座襲撃のシークエンスでゴジラが熱線を吐いた後のキノコ雲のような描写や、典子を失って叫ぶ敷島に降り注ぐ黒い雨のような描写は、原爆を思い起こさせます。


ゴジラが核兵器のメタファーであり、"反核"がゴジラ映画に欠かせないエッセンスと考えれば、ゴジラの熱線による爆風を真っ向から受けた典子が、怪我だけで済むなんていう結末はありえないこと。ラストシーンの描写は、放射能の漠然とした恐怖を落とし込んだものでしょう。この辺りは、核兵器をただの強力な爆弾のように描くことの多いアメリカ映画とは一線を画しています。


また、2016年の『シン・ゴジラ』では、ゴジラは自然災害(特に原発事故を伴った東日本大震災)も想起させるものとして描かれていました。本作の場合、時節柄、コロナ禍も想起させます。つまり、ゴジラは核兵器のみならず、戦争、自然災害、パンデミックといった、人類が容易には解決できない災厄のメタファー。なればこそ、ゴジラをやっつけてめでたしめでたしとはいきません。ラストシーンにおけるゴジラ復活の兆しは、災厄は必ずまたやってくることの示唆でしょう。第1作のラストシーンでの台詞「あのゴジラが最後の一体だとは思えない」とも共通しますね。


アカデミー賞に輝いた視覚効果

『シン・ゴジラ』のゴジラは無感情で動物を超越したようなある種の神々しさがありました。一方、本作のゴジラは野生味溢れ、縄張りを荒らされた動物のような凶暴性があります。それがシン・ゴジラとはまた違った恐怖を演出しています。


銀座襲撃のシークエンスは特に印象的。上でも触れた熱線を吐くシーンもそうですし、典子の乗った列車が破壊されるシーン(第1作のオマージュ?)も痺れました。

 

冒頭述べた通り、本作はアジア映画で初めてアカデミー視覚効果賞を受賞しています。ハリウッド映画とは比べものにならないくらいの少人数、低予算で、これだけの映像を作り上げたことが評価されたとも聞きます。


山崎貴監督は、VFXを前面に押し出した作品を数々手掛けてきましたが、10年20年前の作品は、まだまだハリウッド映画の視覚効果に見劣りするものでした。それが本作ではハリウッド映画と同レベルの視覚効果を見せてくれました。


素人感覚では、視覚効果の技術は行くところまで行っていて、ある程度コモディティ化しているように感じます。技術がコモディティ化した時、勝者となるのは低コストでそれを実現できた者。いくつかの産業で日本企業が中国企業にシェアを奪われたのと同じようなことが、視覚効果の世界でも起きているのかもしれません。


その他あれこれ
  • 本作では第1作から多くのゴジラ映画で音楽を担当した伊福部昭の音楽も使われています。ゴジラの銀座襲撃のシーンで流れる『モスラ対ゴジラ』の有名な音楽や、海神作戦のシーンで満を持して流れるゴジラのテーマ曲は鳥肌モノ。ゴジラを象徴するこの2曲が流れるタイミングは完璧ですね。
  • あっという間に傷が修復してしまうゴジラの再生能力は、あまりにも現実離れしています。まあ、ゴジラという存在自体が現実離れしているのですけどね。
  • ゴジラを深海に沈めることには成功するが、引き揚げに苦戦するという展開を読んでいたかのように、絶妙なタイミングで水島達の船が応援に駆けつけるのは、ややご都合主義を感じました。
  • 主演2人もさることながら、脇を固める安藤サクラや佐々木蔵之介の演技が素晴らしく印象に残ります。アクの強いキャラクターを、臭い芝居にならずに極めて自然に表現していて、いい味を出しています。

 

最後に

今回は映画『ゴジラ-1.0』の解説&感想でした。胸が熱くなる物語、反核のエッセンス、アカデミー賞に輝いた視覚効果、それらが合わさって素晴らしいゴジラ映画に仕上がっています。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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映画『007/慰めの報酬』解説&感想 クレイグ版では最も不満の残る第22作

どうも、たきじです。

 

今回は2008年公開の映画『007/慰めの報酬』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/カジノ・ロワイヤル』に続く第22作。また、6代目ジェームズ・ボンドとしてダニエル・クレイグを迎えてリブートされた新シリーズ第2作となります。

 

 

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作品情報

タイトル:007/慰めの報酬

原題  :Quantum of Solace

製作年 :2008年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :マーク・フォースター

出演  :ダニエル・クレイグ
     オルガ・キュリレンコ
     マチュー・アマルリック
     ジャンカルロ・ジャンニーニ
     ジェマ・アータートン
     アナトール・トーブマン
     イェスパー・クリステンセン
     デヴィッド・ハーバー
     ロリー・キニア
     ティム・ピゴット=スミス
     ホアキン・コシオ
     ジェフリー・ライト
     ジュディ・デンチ
上映時間:106分

 

解説&感想(ネタバレあり)

007シリーズは、第1作から第20作までのシリーズでは、5人の俳優がジェームズ・ボンドを演じてきました。この旧シリーズでは、基本的に一作完結の映画になっていました。


悪の組織スペクターや、その首領ブロフェルドが度々登場したり、第6作『女王陛下の007』でボンドが妻を殺されたことが後の作品でも言及されたりと、一部の要素が作品を跨ぐことはありましたが、ストーリーとしては一作一作に大きなつながりはありませんでした。


一方、前作でリブートされた新シリーズにおいては、作品間で明確にストーリーが繋がっています。本作のストーリーは、前作のラストシーンの直後から始まります。そして、前作でボンドが愛し、命を落としたヴェスパーをめぐるエピソードも本作に引き継がれています。


前作において、ヴェスパーは恋人を人質に取られており、恋人を守るためにボンドを利用していたことが明らかになりました。本作では、ヴェスパーの恋人は敵の組織の人間であり、ヴェスパーは利用されていたことが明らかになります。


ヴェスパーのことで心に傷を負い、復讐心にかられていたボンドでしたが、真実と対峙し、ヴェスパーの恋人を殺すことなくMI6に引き渡すことで、ボンドとヴェスパーの物語は一旦の結末を迎えたわけです。


前作の流れを汲んだこうしたドラマ性は本作の魅力の一つですし、前作以上にボンドの内面を炙り出すようなダニエル・クレイグの演技も光っていました。

 


一方で、本作を手放しで賞賛できないのは、ぎこちない脚本のためです。描くべきことを描いていないので分かりづらいシーンがすごく多いんですよね(日本語字幕が悪いだけの可能性も?)。


ボンドがカミーユと出会うシーンあたりは、特に分かりづらくて混乱してしまいました。

 

  • あのケースの中身は何を意味しているか?
  • スレイトは何者なのか?
  • カミーユは何者なのか?
  • バイクの男は何者なのか?
  • なぜスレイトはカミーユを殺そうとしていたのか?
  • そもそも何の取引をしようとしていたのか?


もちろん、よく考えれば分かること、後になれば分かることもあるのですが、ほんの数分のうちに、疑問が噴出しすぎで頭で処理しきれなくなってしまいます(笑)。序盤は観客に疑問を抱かせつつ、後のシーンでその解が与えられる、というのはクリストファー・ノーラン監督の作品でよく見られる構成ですが、ノーラン作品の場合は観客に適度に引っかかりを与えつつ、ストーリーにぐいぐいと引き込んでいきます。


本作の場合は、ただただ散らかっていて分かりづらいという感じです。上記のシーンはほんの一例に過ぎず、全編通してこうした分かりづらさがあって、少々辟易してしまいました。秀逸な脚本を数々手掛けてきたポール・ハギスが(共同で)脚本を務めているのにこうなってしまったのは意外なところではあります。

 


このように、脚本には微妙なところが多かったですが、アクションはなかなか見どころがありました。


冒頭から、迫力のカーチェイス、シエーナでの裏切り者の追跡劇、スレイトとの格闘、ボートでのチェイス、歌劇場での銃撃戦、飛行機アクション、そして砂漠のホテルでのクライマックスと、ノンストップアクションと言っていいほど盛りだくさんです。


カーチェイスや格闘のシーンを始めとして、本作はポール・グリーングラス監督の『ボーン・スプレマシー』や『ボーン・アルティメイタム』の影響が感じられました。目まぐるしいカッティングや手ブレを効果的に使った映像は、ボーン・シリーズと同様、アクションに臨場感を与えています。


シエーナの追跡劇ではアクションと街の喧騒をカットバックで描き、歌劇場での銃撃戦ではアクションとオペラ『トスカ』をカットバックで描くなどといった編集も特徴的でしたが、こちらはいまひとつカッコよく決まってはいない印象です。ボンドvsグリーン、カミーユvsメドラーノ将軍をカットバックで描いたクライマックスはそれなりに決まっていましたが。


さて、最後に触れておきたいのは、過去作へのオマージュ。過去の作品を観てきた方なら誰もがハッとするのは、フィールズが真っ黒なオイルまみれで殺されているシーンでしょう。これは明らかに第3作『ゴールドフィンガー』へのオマージュですね。同作では全身金粉まみれで殺された女性が登場します。皮膚呼吸ができなくなって死ぬという、よく分からない話でしたね(笑)。


また、オマージュかどうかは別として本作のストーリーは、第16作『消されたライセンス』を思わせるところがありました。同作では、ボンドは殺しのライセンスを取り消されながらも、復讐のために私情で敵を殺します。本作で、ボンドが復讐心を胸に冷徹に殺しを重ねる姿は、同作のボンドと印象が重なりました。

 

最後に

今回は映画『007/慰めの報酬』の解説&感想でした。アクションシーンやドラマ性にはそれなりの見どころがあったものの、全体としては脚本のぎこちなさに不満の残る作品でした。シリーズ随一の完成度だった前作とは打って変わって、ダニエル・クレイグの007としては最もクオリティの低い作品という印象です。

 

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映画『BLUE GIANT』感想 「ジャズってなんかいいな」

どうも、たきじです。

 

今回は、2023年公開の日本のアニメ映画『BLUE GIANT』の感想です。

 

 

作品情報

タイトル:BLUE GIANT

製作年 :2023年

製作国 :日本

監督  :立川譲

声の出演:山田裕貴
     間宮祥太朗
     岡山天音
     木下紗華
     青山穣
     乃村健次
     木内秀信
     東地宏樹
     近藤雄介
     須田美玲
     高橋伸也
     加藤将之
     四宮豪

上映時間:120分

感想(ネタバレあり)

仙台に暮らす宮本大は、毎日河原でサックスの練習に明け暮れます。高校を卒業した大は、世界一のジャズプレイヤーを目指し上京します。そんなところから本作の物語は始まります。

 

原作未読で予備知識ゼロの私でしたが、まっすぐに迷いなくサックスに打ち込む大の姿に、冒頭からすっと映画に引き込まれました。

 

「真剣であることは恥ずかしいことではない」

「何かに一心に打ち込むことは素晴らしい」

「"音楽"とは言え、これはスポ根映画だ」

 

そんな感想が浮かんできそうな導入でしたが、映画が進んでいくと、思っていたのとは少し違いました(笑)。

 

大は何の挫折もなく、黙々と練習し、そして評価されます。大自身に特別なドラマはありません。大は物語の軸ではあるものの、ドラマの中心はむしろ他の2人にあります。すなわち、自分だけ初心者である中で必死にもがく玉田や、類稀な実力を持ちながら高慢さが仇となり挫折する雪祈です。

 

そんな脚本には少し違和感を覚えましたが、本作の魅力は脚本ではなく音楽でしょう。

 

フェスでの3人のパフォーマンスには興奮させられますし、コットンズでのライブにおける雪祈のソロには感動させられます。ショッキングな展開からのデュオでの演奏と、トリオでのアンコールは言わずもがな(観客が少し泣きすぎとは思いますが笑)。

 

演奏シーンにおける、音楽とシンクロしたアニメーション、そして楽器から閃光が走るような視覚効果も良い表現でした。一方で、ところどころで演奏者がモーションキャプチャっぽいアニメーションになるのは、少し安っぽい印象があって気に入りませんでした。

 

ところで、大の声は山田裕貴さん、雪祈の声は間宮祥太朗さんですか。意外にと言っては失礼ですが、とても上手くてびっくりしました。てっきり本職の声優さんが演じていると思いましたよ。

 

さて、空缶でリズムをとり初めて大とセッションした玉田がそうであったように、本作を観て「ジャズってなんかいいな」と感じた人は多いでしょう。そしてその中の何人かは玉田と同じようにジャズを始めるかもしれません。

 

私はジャズについて専門的な知識は何ら持ち合わせていませんが、20代の頃にジャズ発祥の地であるアメリカ、ニューオーリンズを一人旅したことがあります。その際にいくつかのジャズバーをハシゴして本場のジャズに触れ、大変感動しました。

 

私の場合はそれで終わってしまいましたが、それが10代の頃だったら違ったでしょうか?いや、私の場合はいろんなことに興味を持ち過ぎて、なかなか一つのことだけに打ち込むことができずにここまできているので、変わらないのだろうな…。いろんなことを楽しめる自分に幸せを感じつつも、一つのことに打ち込み、極めることへの羨ましさも感じさせられる作品でした。

 

最後に

今回は、映画『BLUE GIANT』の感想でした。演奏シーンが非常に素晴らしく、玉田が言ったように「ジャズってなんかいいな」と改めて感じさせられる作品でした。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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映画『007/カジノ・ロワイヤル』解説&感想 シリーズ最高傑作との声も多い第21作

どうも、たきじです。

 

今回は2006年公開の映画『007/カジノ・ロワイヤル』の解説&感想です。

 

007シリーズとしては、前作『007/ダイ・アナザー・デイ』に続く第21作。また、6代目ジェームズ・ボンドとしてダニエル・クレイグを迎えてリブートされた新シリーズ第1作となります。

 


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作品情報

タイトル:007/カジノ・ロワイヤル

原題  :Casino Royale

製作年 :2006年

製作国 :イギリス、アメリカ、チェコ、ドイツ

監督  :マーティン・キャンベル

出演  :ダニエル・クレイグ
     エヴァ・グリーン
     マッツ・ミケルセン
     ジャンカルロ・ジャンニーニ
     カテリーナ・ムリーノ
     シモン・アブカリアン
     イザック・ド・バンコレ
     イェスパー・クリステンセン
     イワナ・ミルセヴィッチ
     トビアス・メンジーズ
     クラウディオ・サンタマリア
     セバスチャン・フォーカン
     ジェフリー・ライト
     ジュディ・デンチ
上映時間:144分

 

解説&感想(ネタバレあり)

シリーズ第21作にしてリブート

007シリーズは、ストーリー自体は基本的に一作で完結する形式。ただし、ボンドの結婚や妻の死など、個々の作品での出来事は後の作品でも言及されるなど、ボンド俳優が変わっても作品は繋がっているという設定でした。MやQ、マネーペニーなどの主要なキャラクターを長らく同じ役者が演じたことも、作品の繋がりを感じさせました。


それが本作で遂にリセット。ダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドが007になる前から始まるストーリーで、シリーズがリブートされました。M役はジュディ・デンチが引き続き演じていますが、それ以外のキャストは一新されています。


『カジノ・ロワイヤル』は原作小説の第1作でもあるので、リブートには相応しい作品と言えますね。1967年に同名の映画が公開されていますが、同作は同じ小説を原作に007のパロディとして制作されたコメディ映画ですので実質的に初めての映画化と考えていいでしょう。

 

実力で評価を覆したダニエル・クレイグ

さて、本作を語る上で真っ先に言及すべきはダニエル・クレイグのことでしょう。原作におけるボンドの設定とは異なる金髪で、過去のボンド俳優ほど長身でもなければ、エレガントな雰囲気も持ち合わせていない。そんなクレイグは、ボンド役に決まった当初から一部から猛烈なバッシングを受けました。


私も、クレイグと言えば『ロード・トゥ・パーディション』で演じた小物感たっぷりの悪役のイメージしか持っていなかったので、「あの悪役顔の役者がボンド?」という感じでした。しかし、その印象は映画が公開されるとがらりと変わりました。


シリアスな作風の中で、クールで、人間的で、ややダーティなキャラクターがただならぬ魅力を放つクレイグのボンドは、私を含め、世界中の人々を魅了しました。猛烈なバッシングを実力で覆したということも含めてかっこよすぎて、すっかりクレイグのファンになってしまいましたよ。

 

ダニエル・クレイグのボンド像

クレイグの演じるボンド像は、プレタイトル・シークエンスでの登場シーンから、私達を惹きつけます。ボンドが、00に昇進するために必要な"2度目の殺し"を行うシーンです。


ターゲットを待ち伏せし、暗闇から現れたボンドは、悪役かと間違えてしまいそうな雰囲気を醸し出しています(モノクロの映像がまたハマっていまる)。"1度目の殺し"をフラッシュバックで挟みながら交わされる会話。ボンドはターゲット目掛けて、真顔で躊躇なく引き金を引き、「(2度目の殺しは)ずっと楽だ」と言い放ちます。


ロジャー・ムーアのボンドのようなコミカルかつエレガントなイメージとは対極にあるような、シリアスかつ荒削りなイメージが非常にセンセーショナルです。


このシーンは、フラッシュバックで描かれる"1度目の殺し"で、ボンドがターゲットを撃ち抜くところでガンバレル・シークエンス(銃口越しにボンドを捉えたカメラに向かって、ボンドが銃を放つ)に切り替わるのが、また見事に決まっています(過去作では、ガンバレル・シークエンスの後に映画が始まる)。


クレイグのボンド像が際立つシーンとしてもう一つ印象的なのが、ボンドが旅客機の爆破テロを阻止しようと奮闘するシークエンス。ボンドはテロリストとの格闘の末、旅客機を爆破するための爆弾をテロリストの体に密かに付け替えています。それを知らずに、勝ち誇った顔でボンドを見ながら爆破スイッチを押すテロリスト。それを見たボンドは悪そうな顔でニヤリと笑います。


このシーン。ショーン・コネリーのボンドならしかめ面、ロジャー・ムーアのボンドなら少しおどけた困り顔、ピアース・ブロスナンのボンドなら皮肉の効いた一言台詞を決めるところでしょう。しかしここで悪そうに笑うのがクレイグのボンドなのです。シリアス路線のボンドというと、4代目のティモシー・ダルトンのボンドも同様でしたが、それと比較してもかなりダーティな印象が際立つシーンでした。

 

多様なアクションシーン

さて、シリーズの他の作品に違わず、アクションシーンは本作の魅力の一つと言えるでしょう。ボンドは世界各地を飛び回りながら、様々なシチュエーションで多様なアクションを見せてくれます。


タイトルバック後のマダガスカルのシーンでは、パルクールを取り入れた派手な追跡劇で、序盤から一気に盛り上げます。このシーンでボンドに追われる男を演じているのパルクールの第一人者であるセバスチャン・フォーカン。やはり身のこなしがカッコよく、見入ってしまいます。


第17作『ゴールデンアイ』の戦車を思い出させる重機での突撃や、高所での手に汗握るアクションを含め、クレイグ=ボンドの挨拶代わりのアクションとして十分過ぎる出来映えでした。


上でも触れたマイアミの空港のシークエンスでは、テロリストを尾行するシーンの緊張から一気に開放されたかのような派手なアクションシーンに魅せられます。爆破テロのターゲットである旅客機めがけて疾走する自動車のスピード感と、爆弾の存在が生む緊張感がたまりませんね。


ヴェネツィアでのアクションシーンは、上述の2つのシーンに比べると興奮がやや劣るでしょうか。とは言え、銃撃や格闘による敵との戦い主体のアクションにヴェスパーの救出という要素も重なって、興奮のクライマックスとなっています。

 

サスペンス要素とドラマ性

このように、本作はアクションシーンが大きな魅力ですが、アクション一辺倒になっていないのがまた素晴らしいところ。本作はサスペンス要素やドラマ性も持ち合わせています。


例えば、カジノ・ロワイヤルにおけるポーカーゲームでは、かなり時間を割いてサスペンスフルな駆け引きが描かれています。


ここでプレイされているポーカーは、日本人に馴染み深いファイブカード・ドロー(5枚の手札でハンドを作るクローズド・ポーカー)ではなく、現在世界的に主流になっているテキサス・ホールデムと呼ばれるタイプ。手札2枚と、全プレイヤー共通の札(最大5枚)でハンドを作ります。


このシークエンスでは、相手との心理戦となるテキサス・ホールデムの醍醐味がそのまま映し出されているように感じられます。それは、ダニエル・クレイグはもちろんのこと、ル・シッフルを演じたマッツ・ミケルセンの演技力の賜物でしょう。


さらには、味方の裏切りという要素が加わることで、より緊張感を高めています。裏切ったのはマティスだということで物語が進みますが、実際に裏切り者だったのは恋人を人質に取られていたヴェスパーでした。


ボンドとヴェスパーの関係は、作品を通じてかなり丁寧に描き込まれていました。出会った直後の会話での知的な応酬、敵の襲撃の後のシャワー室での接近、ポーカー後のレストランでの会話。それらを通じて、2人が徐々に距離を縮め、惹かれあっていく過程が説得力を持って描かれていたからこそ、ヴェスパーの裏切りには意外性がありました。ポーカーゲームと同様の駆け引きが、現実にも行われていたというのもうまいですね。


本作でヴェスパーを演じたエヴァ・グリーンは美しさと知性が溢れていて、とても魅力的でした。私が初めてエヴァ・グリーンを見たのは、本作の前年に公開されたリドリー・スコット監督の『キングダム・オブ・ヘブン』でしたが、正直言って、同作ではいまいち輝いていなかったように見えました。そのマイナスイメージを見事に払拭する演技でした。

 


シリーズのお約束

リブートされて作風も一新された本作ですが、シリーズのお約束もたっぷりと描かれています。


原作小説があるので当然と言えば当然ですが、国際的舞台、カジノ、タキシード、マティーニといった要素が、作風が変わっても007らしさを演出しています。上述の通り、少し趣向を変えたガンバレル・シークエンスも然り。


また、Mやフェリックス・ライターらお馴染みのキャラクターも登場します。一方で、過去20作のほとんどに登場したQとマネーペニー(第8作『死ぬのは奴らだ』にQが登場しない以外は全作に登場)は、本作には登場しません。これは次作以降に持ち越しとなります。


さて、シリーズのお約束の描き方として、何より素晴らしいのはラストシーンでしょう。


今回の事件の裏で糸を引いていたミスター・ホワイトを銃撃するボンド。倒れ込み、ボンドを見上げるホワイトに対し、


"The name’s Bond… James Bond"

 

そして、間髪入れずにテーマ曲が流れ出し、エンドロールが始まります。


お決まりのフレーズでの名乗りと、かの有名なテーマ曲を誰もが待ちわびる中、最後の最後で、最高に熱いシチュエーションでやってくれました。これは痺れましたね。

 

最後に

今回は映画『007/カジノ・ロワイヤル』の解説&感想でした。独自のボンド像を作り上げ、前評判を実力で覆したダニエル・クレイグのカッコ良さ、多様なアクション、サスペンス、ドラマ性と、非常に見どころの多い作品。シリーズ最高傑作との声も納得の一本です。

 

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映画『フェイブルマンズ』解説&感想 スピルバーグの葛藤と覚悟が垣間見える自伝的作品

どうも、たきじです。

 

今回は2022年公開のアメリカ映画『フェイブルマンズ』の解説&感想です。

 

 

作品情報

タイトル:フェイブルマンズ

原題  :The Fabelmans

製作年 :2022年

製作国 :アメリカ

監督  :スティーヴン・スピルバーグ

出演  :ミシェル・ウィリアムズ
     ポール・ダノ
     セス・ローゲン
     ガブリエル・ラベル
     ジャド・ハーシュ
     デヴィッド・リンチ

上映時間:151分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作はスティーヴン・スピルバーグ監督の自伝的内容の作品。私はそれくらいのことしか知らずに本作を鑑賞しました。


私はスピルバーグが最も好きな映画監督というわけではなありませんが、史上最も偉大な映画監督であると思っています。それ故に、スピルバーグの自伝的内容だと聞くと、どうしても"映画作り"の部分にフォーカスした物語を期待してしまいます。彼がいかにして映画に興味を持ち、映画監督になり、監督としての腕を磨き、認められていったか、そんな物語です。


しかし、本作はそういう作品ではありません。本作は、主人公のサミー・フェイブルマン(ガブリエル・ラベル)と家族(特に両親)の関係を主軸にし、サミーが映画とどう向き合ってきたかを描いたドラマです。原題は『The Fabelmans』。"The 〜s"という表現は"〜家"を意味しますから、"フェイブルマン家"という意味ですね。このタイトルからも、本作が家族の物語であることが分かります。


ただ、やはり個人的には"映画作り"にフォーカスした自伝的作品が見たかったですね。サミーが映画に興味を持つきっかけとなる初めての映画鑑賞とか、おもちゃの列車の衝突シーンを撮影するエピソードとか、映画序盤のその手の描写が良かっただけになおさらです。

 


もちろん、作品の出来自体は全然悪いものではないです。特に、現実と理想(あるいは合理と非合理)のような対立軸で作品をまとめているのはうまいですね。


サミーの作品を認めつつも、映画を「たかが趣味」であると捉えている父バート(ポール・ダノ)は"現実"を生きています。架空の物語ではなく、実際に役立って人々が使えるものを作るよう、サミーを諭します。


一方、サミーと同様に芸術家(ピアニスト)である母ミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)は"現実"よりも"理想"。ミッツィはバートのことを「あまりにもいい人」と理解しつつ、友人のベニーと友人以上の関係になります。


サミーが撮影した家族のキャンプのフィルムに映し出されたのは見たくもない現実。サミーの映画作品は創られた理想。高校の「おサボり日」の記録映画もクラスメイトのローガンを美化した理想(虚構)。ローガンは現実とのギャップに戸惑い、怒ります。


こうした対立軸が象徴するのは、サミーが直面している家族(現実)芸術(理想)の板挟みです。サミーの大伯父ボリス(ジャド・ハーシュ)は言います。「芸術は輝く栄冠をもたらす。だが一方で胸を裂き孤独をもたらす。」


こうした描写の数々に、スピルバーグが経験した葛藤と、それを乗り越えた上での覚悟のようなものを垣間見たような気がしました。

 

サミーがジョン・フォード監督と出会い、映画監督への道を踏み出すラストシーンは印象的。デヴィッド・リンチ監督がフォードを演じているというのも目を引きますが、何よりその強烈なキャラクターよ。キスマークをつけてランチから帰ってくる登場シーンは吹き出してしまいました(笑)。


サミーに対してぶっきらぼうに画面構図について指南するフォード。わずかな会話の後、スタジオを出たサミーの充実した表情と軽やかな足取り。そして、フォードの教えに従い、慌ててティルトアップするカメラ。なんとも茶目っ気のあるラストシーンでした。

 

最後に

今回は映画『フェイブルマンズ』の解説&感想でした。期待した内容とは違ったものの、若きスピルバーグが経験した葛藤と、それを乗り越えた上での覚悟のようなものが垣間見える作品でした。

 

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映画『007/ダイ・アナザー・デイ』解説&感想 荒唐無稽に振れた第20作

どうも、たきじです。

 

今回は2002年公開の英米合作映画『007/ダイ・アナザー・デイ』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』に続く第20作です。

 


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作品情報

タイトル:007/ダイ・アナザー・デイ

原題  :Die Another Day

製作年 :2002年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :リー・タマホリ

出演  :ピアース・ブロスナン
     ハル・ベリー
     トビー・スティーブンス
     ロザムンド・パイク
     リック・ユーン
     マイケル・マドセン
     ケネス・ツァン
     ウィル・ユン・リー
     エミリオ・エチェバリア
     ミハイル・ゴアヴォイ
     ローレンス・マコール
     ジュディ・デンチ
     ジョン・クリーズ

上映時間:133分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作はかなり荒唐無稽な作品になっています。ショーン・コネリーやロジャー・ムーアがジェームズ・ボンドを演じていた頃の007は、荒唐無稽な作品も少なくなかったですが、最近の007に慣れている人には受け入れ難いところがあるかもしれません。


もうファーストシーンから飛ばしていますね。警備の目をかいくぐって北朝鮮に上陸するために、ボンドと2人の仲間はサーフィンで波に乗って上陸します(笑)。さらに、ボンドが病院で心拍数のコントロールをやってのけたかと思えば、敵はDNA組み換え療法によって別人の顔になりすまします。ボンドカーに至っては、透明になって敵の目を欺きます。


私は元々、荒唐無稽でコミカルな路線よりも現実的でシリアスな路線の方が好きなので、最初は冷めた目で見てしまいました。が、こう言う映画は基本的に楽しんだもの勝ち。途中で心を入れ替えて(笑)、そういう心構えで観るようにしてからはそこそこ楽しく観られました。

 


プレタイトル・シークエンスは相変わらず迫力のアクションを見せてくれます。ホバークラフトでチェイスしながらの銃撃戦が楽しいですね。ピアース・ブロスナンの007はプレタイトル・シークエンスの力の入れようが強い印象です。


それはそれでいいですが、本編のアクションがなかなかそれを上回れないのは問題です。前作ほどではないにせよ、本作も本編のアクションの完成度がやや物足りない印象がありました。


中盤の剣闘は、展開に無理があるのでなかなかアクションに乗りづらいのが難点。あの場面で真剣を使って戦うというのがどうも嘘っぽくて、この人達は何をやっているんだろう、と冷めてしまいました(笑)。


氷上でカーチェイスを行うという趣向はユニークで面白いですね。ただ、結局はカーチェイスというよりガジェット合戦なのがどうも…。


クライマックスは飛行機でのアクション。SFチックな装備を身につけた悪役と戦うボンドと、ボンドガール2人の戦いが並行して描かれます。ここはそれなりに楽しめましたが、特筆するほどではないですね。

 


本作の悪役グスタフ・グレーブスはやや迫力に欠ける印象でした。演じたのはトビー・スティーブンス。後で知りましたが、マギー・スミスの息子なんですね。言われてみれば顔が似ています。


メインのボンドガールは米NSAのエージェントを演じたハル・ベリー。第18作『トゥモロー・ネバー・ダイ』のミシェル・ヨーには及ばずとも、余裕たっぷりにアクションをこなしています。


ボンドとのラブシーンはシリーズの他の作品と比べてもかなり濃厚な印象。ボンドも14ヶ月の監禁生活でいろいろ溜まっていたんでしょう(笑)。


ラブシーンと言えば、本作ではボンドとマネーペニーのラブシーンもあります。これはQのガジェットを使用したバーチャル空間での出来事であり、言わばマネーペニーの妄想ですが、このシーンは蛇足でしょう。


マネーペニーはボンドに憧れを抱いているわけですが、ボンドからは毎度軽妙なリップサービスでいなされるのがお約束。マネーペニーもしつこく食い下がることもなければ、はっきりと気持ちを表現することもしません。そんな不文律のようなものがあっただけに、このような直接的な表現は避けて欲しかったところです。

 


さて最後に、本作は過去作へのオマージュが散りばめられているのも、007ファンには楽しいところでしょう。


ホテルの鏡がマジックミラーになっていて、ボンドの行為を撮影しようとしているのは第2作『ロシアより愛をこめて』のネタですね。


ハル・ベリー演じるジンクスが海から上がってくる登場シーンは、第1作『ドクター・ノオ』のボンドガール、ハニー・ライダーの登場シーンとよく似ています。


ジンクスが拘束されてレーザーで殺されそうになるシーンや、ボンドカーのイジェクトシートは、第3作『ゴールドフィンガー』の有名なシーンからの引用ですね。


それからQの研究所のシーンでは、これまでに登場したガジェットがたくさん並んでいるのが面白いです。第13作『オクトパシー』に登場したワニがこれ見よがしに飾られているのを見て思わずニヤけてしまいました。


まあ、この辺まではオマージュとして成立しているのですが、敵の兵器がレーザー兵器を搭載した人工衛星という点(第7作『ダイヤモンドは永遠に』と同じ)や、飛行機に銃弾で穴が開いて機内が乱れるという展開(第3作『ゴールドフィンガー』と同じ)などは、ストーリーの引用とも言えるので、オマージュというより"安易な使い回し"に感じられなくもないです。

 

最後に

今回は映画『007/ダイ・アナザー・デイ』の解説&感想でした。シリーズとしては久々に荒唐無稽な方に振れた作品になっている印象の本作。そこを許容できるかどうかで評価が分かれそうな作品でした。

 

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映画『ウエスト・サイド・ストーリー』感想 良くも悪くも旧作と変わらぬ魅力

どうも、たきじです。

 

今回は2021年公開のアメリカ映画『ウエスト・サイド・ストーリー』の感想です。1957年上演のミュージカル『ウエスト・サイド物語』の2度目の映画化です。

 

 

作品情報

タイトル:ウエスト・サイド・ストーリー

原題  :West Side Story

製作年 :2021年

製作国 :アメリカ

監督  :スティーヴン・スピルバーグ

出演  :アンセル・エルゴート
     レイチェル・ゼグラー
     アリアナ・デボーズ
     デヴィッド・アルヴァレス
     マイク・ファイスト
     ジョシュ・アンドレス
     コリー・ストール
     リタ・モレノ
     ブライアン・ダーシー・ジェームズ

上映時間:156分

 

感想(ネタバレあり)

本作の原作は1957年にブロードウェイで初演が行われた『ウエスト・サイド物語』。1961年にロバート・ワイズの製作・監督(ジェローム・ロビンズと共同)で映画化された同名映画は、アカデミー賞で作品賞を含む11部門受賞するなど、映画史に残る名作となっています。そして、同作から60年を経てリメイクされたのが本作ということになります。


私はもともと名作のリメイクには否定的でした。名作のネームバリューがあるから、話題にはなりやすいでしょう。しかし、せっかく素晴らしい旧作(オリジナル版)があるのに、それをわざわざ作り直す必然性が感じられず、金儲けのために旧作を汚す行為に思えたからです。


しかし、映画が娯楽として確立してから100年。近年は面白い映画の作り方が論理的に確立された印象があります。また、撮影や編集の技術は時代を経て進化しますし、映像表現のトレンドも移り変わります。そういう意味で、過去の名作を現代にアップデートする価値はあると考えるようになりました。本作のように前作から半世紀以上も経っていればなおさらです。

 


本作は旧作に対して特別目立った魅力があるわけではありませんが、旧作の魅力そのままに、うまく現代にアップデートされた作品になっているという印象です。


私はこのミュージカルの魅力は歌よりもダンスにあると思っています。集団で見せるダンスの迫力と美しさには見入ってしまいます。ダンスシーンの撮影や編集は旧作からアップデートされ、より臨場感をもって楽しむことができました。「マンボ」とか「アメリカ」とか、大好きです。


旧作でもそうでしたが、主役のトニーやマリアよりも、ダンスの見せ場の多いベルナルドやアニータが輝いています。旧作ではベルナルド役のジョージ・チャキリスとアニータ役のリタ・モレノ、本作ではアニータ役のアリアナ・デボーズがオスカーを受賞していることもそれを表していますね。


さて、上で「このミュージカルの魅力は歌よりもダンス」と書きましたが、そんな中で、本作の代表曲である「トゥナイト」は最強のミュージカルナンバーになっています。特に、ジェッツ、シャークス、アニータ、トニー、マリアのアンサンブルで歌われる「トゥナイト・クインテット」は旧作のものを何度も何度も聞いたくらい好きなナンバー。愛と憎しみを交錯させた五重唱は鳥肌ものです。


さて、本作のストーリーはシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を下敷きにしていますが、その翻案という意味ではなかなかうまくできています。


『ロミオとジュリエット』における世代を越えた2つの旧家の対立を、本作ではポーランド系とプエルトリコ系という人種の異なる2つの不良少年グループの対立に置き換え、うまく現代(と言っても既に前世紀ですが)の物語に翻案しています。また、最後の悲劇に繋がるトニーとマリアの行き違いも、うまくこのストーリーに乗せる形で翻案されていて、この点は感心しましたね(旧作を観た時に)。

 


まあ、ストーリーの細かいところまで真剣に考えると気になるところは多いですよ。ただ私は、基本的にミュージカル作品というものは歌やダンスを楽しむものであって、ストーリーを真剣に考えてはいけないものだと思っています。


なので、トニーとマリアが出会って速攻で恋に落ちてキスすることも難なく受け入れます(笑)。友人の死に直面し、うっかり人を殺してしまった直後にトニーがマリアとベッドインすることもです(たぶんそういう時は人肌恋しくなるんでしょう。知らんけど)。映画のラスト時点で、トニーとマリアは出会って1日しか経っていないことも、悲劇性が弱まってしまうので考えてはダメです(笑)。


さて、最後に触れておきたいのは原作におけるドクの役回りであるバレンティーナを演じたリタ・モレノ。リタ・モレノは上述の通り、旧作でアニータを演じてオスカーを受賞した女優。本作公開の翌日に90歳になるという年齢で、まだまだ精力的に活動されていることに驚くばかりです(彼女は本作の制作総指揮も務めています)。


ちなみに彼女は、エミー賞、グラミー賞、オスカー(アカデミー賞)、トニー賞をすべて受賞しています(それぞれの頭文字を取ってEGOTと呼ばれる)。2023年時点で19人しか達成していない偉業です。

 

最後に

今回は映画『ウエスト・サイド・ストーリー』の感想でした。旧作に対して特別目立った魅力があるわけではありませんが、旧作の魅力そのままに、うまく現代にアップデートされた作品です。リメイク作品として大成功とは言えないまでも、現代の人々にこの名作ミュージカルを知ってもらうという点においては成功と言えるのではないでしょうか。

 

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映画『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』解説&感想 オープニングがピークの第19作

どうも、たきじです。

 

今回は1999年公開の英米合作映画『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』に続く第19作です。

 


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作品情報

タイトル:007/ワールド・イズ・ノット・イナフ

原題  :The World Is Not Enough

製作年 :1999年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :マイケル・アプテッド

出演  :ピアース・ブロスナン
     ソフィー・マルソー
     ロバート・カーライル
     デニス・リチャーズ
     デヴィッド・カルダー
     ロビー・コルトレーン
     ゴールディー
     ジュディ・デンチ
     デスモンド・リュウェリン
     ジョン・クリーズ
     コリン・サーモン
     サマンサ・ボンド
     マイケル・キッチン
     マリア・グラツィア・クチノッタ
     セレナ・スコット・トーマス
     ウルリク・トムセン

上映時間:127分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作は他の作品に比べてプレタイトル・シークエンスが長いですね。銀行のオフィスでの銃撃と脱出劇の後、舞台はMI6本部に移り、紙幣に仕掛けられた爆薬の爆発からボートアクションへと移行します。テムズ川でのボートチェイスはなかなかの見どころ。ジェームズ・ボンド(ピアース・ブロスナン)はQが作製中のボートで敵の殺し屋を追いかけます。

 

ガジェット満載で黒いボディのボートはバットマンが乗ってそうな代物。ガジェットの説明も受けずに乗り込んだボンドですが、見事に使いこなす辺りはさすが(笑)。Qのやりそうなことはお見通しといったところでしょうか。潜水機能を使って水中に潜った際に、ボンドがネクタイを直す仕草を見せるのが個人的にツボでした。このボートはQが引退後の楽しみとして作っていた釣り船だというオチも笑ってしまいます。

 

ボートが陸上も駆け抜けるという荒唐無稽さや、敵がボート大破後には気球に乗り込んで逃げるというスペクタクルは、何となくロジャー・ムーアの頃の007を思い起こさせます。

 

この豪華なプレタイトル・シークエンスはなかなか楽しめたのですが、正直言って、これが本作のピークでした(笑)。本編中もアクションシーンは多いのですが、これを超えてくるものはなくて、あまり興奮するものではありませんでした。

 

ストーリーの方は、ボンドガールのエレクトラ(ソフィー・マルソー)が敵か味方か、その真意が分からずに二転三転する部分があり、様々な思惑が絡んで複雑性を帯びています。が、それがあまり効果的には作用しているようには感じられず、変にややこしい印象しか受けませんでした。

 

もう1人のボンドガールのクリスマスを演じたデニス・リチャーズは、明らかにお色気担当。科学者なのにやたらと露出が多いのは明らかに狙ってますよね(笑)。第1作『ドクター・ノオ』で初代ボンドガールのハニー・ライダーが何の脈絡もなく水着で海から現れたように、ボンドガールってもともとこういうものだよな、と妙に納得してしまいました。


また、本作ではM(ジュディ・デンチ)がストーリーを通じて登場し、本部を出て敵に捕まるなど、これまでにない展開を見せます。しかしながら、Mが特別活躍するわけでもなくやや消化不良に終わってしまいました。

 

最後に、本作は第2作『ロシアより愛をこめて』から36年にわたってQを演じたデズモンド・リュウェリンの遺作ということも触れておきたいところ。リュウェリンは本作公開の直後に交通事故で亡くなりましたが、もともと本作で引退を表明していました。


劇中でもQとしての引退を示唆し、後継者(モンティ・パイソンのジョン・クリーズ)を紹介しています。ボンドに対し、「君にはいつも2つのことを教えてきた」と語り、その2つ目として「常に逃げ道を準備しておくこと」と告げて画面から姿を消していくシーンは、Qの最後のシーンとして象徴的でした。

 

最後に

今回は映画『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』の解説&感想でした。全体的に、退屈こそしませんが、特筆するような素晴らしい点はあまり見られない作品でした。オープニングは素晴らしいのですが、それがピークでは、どうしても物足りなく感じてしまいますね。

 

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映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』解説&感想 待望のアニメ映画化

どうも、たきじです。

 

今回は、2023年公開の日米合作映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の解説&感想です。マリオの生みの親にして、現在は任天堂の代表取締役フェローを務める宮本茂氏がプロデューサー(共同)を務めています。

 

 

作品情報

タイトル:ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

原題  :The Super Mario Bros. Movie

製作年 :2023年

製作国 :アメリカ、日本

監督  :アーロン・ホーバス
     マイケル・イェレニック

声の出演:クリス・プラット
     チャーリー・デイ
     アニャ・テイラー=ジョイ
     ジャック・ブラック
     キーガン=マイケル・キー
     セス・ローゲン
     フレッド・アーミセン
     ケビン・マイケル・リチャードソン
     セバスティアン・マニスカルコ
     チャールズ・マーティネー

上映時間:93分

解説&感想(ネタバレあり)

待望のアニメ映画化

世界一有名なゲームキャラクターと言っても過言ではないマリオ。1981年、アーケードゲーム『ドンキーコング』(後にゲーム&ウォッチやファミコンに移植)のプレイキャラクターとしてデビューし、1983年発売のゲーム&ウォッチ『マリオブラザーズ』(後にアーケード版やそれが移植されたファミコン版も発売)でルイージと共にタイトル・ロールになりました。


そして、1985年。史上最も多くの人にプレイされたゲーム『スーパーマリオブラザーズ』(ファミコン)が発売され、マリオは大人気キャラクターになりました。本作はこの『スーパーマリオブラザーズ』シリーズをモチーフとし、『ドンキーコング』シリーズや『マリオカート』シリーズなどの要素も取り入れてアニメ映画化した作品になっています。

 


至ってシンプルなストーリー

『スーパーマリオブラザーズ』はクッパにさらわれたピーチ姫をマリオ(とルイージ)が助けに向かうというシンプルな設定があるだけで、その背景や過程に明確なストーリーがあるわけではありません。それ故に、映画として物語は自由に作りやすいですね(1993年公開の実写映画『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』はさすがに自由すぎましたが笑)。


本作のストーリーは至ってシンプル。異世界に迷い込んだマリオが、クッパに捕まったルイージとキノコ王国の危機を救うために奮闘するというものです。ピーチではなくルイージが捕まるというのは時代を反映していますね。「ヒーローがか弱いヒロインを助ける」という旧来の物語だと批判も出ますから…。当然、ピーチは"戦う女"になります。もっともこれは本作に限るものではなく、ゲームを含め昨今の流れです。


それはさておき、ピクサー作品のように脚本が作り込まれたアニメ映画を見慣れていると、どうしても本作の物語はあっさりしていてドラマ性は浅く感じるところがあります。"兄弟の絆"的なものが物語の主題にはありますが、描き込みはあまり深くありません(ルイージの幼少期の回想が1シーンだけ入るのもとってつけたよう)。

 


ゲームを想起させるアクションと音楽

一方、アクションの楽しさは文句なし。マリオらしい躍動感たっぷりですし、時々ゲームのように横スクロールになるのがいいですね。「心に残った」よりも「すごく楽しかった」と言ってもらえることを目指したと宮本茂氏が仰っていましたが、まさにそれを実現したアクションでした。


上述の通りドラマ性は浅めなので、ストーリーとアクションの相乗効果による盛り上がりは不足してはいます。一方で、本作は音楽がアクションシーンを含め映画を盛り上げてくれます。


マリオとルイージがスーパースターによって無敵になるクライマックスはその最たるもの。お馴染みのゲーム音楽として、スーパースターの曲としてあらかじめ意識付けされているので、作中で初めて流れた時点で音楽がライトモティーフとして機能しています。観ている私達としては、「待ってました!」という感じですよね。


このシーンに限らず、マリオがキノコ王国に来たシーンで『スーパーマリオブラザーズ』や『スーパーマリオ64』のメロディーが流れ、ジャングル王国を訪れたシーンでは『スーパードンキーコング』のメロディーが流れるなど、ちょっとしたモチーフだけでもワクワクさせてくれます。


それだけに、冒頭の氷の国で流れる布袋寅泰の"BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY"(『キル・ビル』のメインテーマとして有名)とか、マリオの訓練シーンで流れるボニー・タイラーの"Holding Out for a Hero"(『フットルース』の挿入歌)とか、他の映画のイメージのある既存曲を使ったのは疑問です。

 


ゲームファンを楽しませる小ネタ

音楽以外にも、ゲームを知ってるからこその面白さは満載です。


冒頭、マリオとルイージがCMを見ているピッツェリアの名前は「Punch-Out」。マリオがレフェリーとして登場するボクシングゲーム『パンチアウト!!』に因んでいますね。


店内で絡んでくるマリオの元同僚スパイクは、マリオがビルの解体屋に扮するゲーム『レッキングクルー』の敵キャラです。日本では「ブラッキー」という名前でしたが、本作公開直前に日本でも「スパイク」という名前に変更することが任天堂から公式に発表されました。本作で彼が被っているキャップには「WRECKING CREW」と書かれているのも注目です。


マリオがピーチ城を訪れた際の門番の台詞「Our princess is in another castle(プリンセスは別のお城だ)」は、ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』でマリオが途中のステージのクッパ(偽物)を倒した時のキノピオの台詞(英語表示)。日本語字幕にも小さく英語を併記してくれるという親切さ(笑)。


マリオがドンキーコングと戦う赤い鉄材のような足場は、ゲーム『ドンキーコング』のステージをイメージしていますね(マリオがこの闘技場に出て、コロッセオのような客席を見回すショットは、映画『グラディエーター』のオマージュでしょう)。


と、こういうファミコン時代のネタは分かるのですが、私がゲームをがっつりやっていたのはファミコン〜ロクヨンくらいまで。最近のゲームはやっていないので、最近のネタがあったとしても気づけません。


クッパに囚われていた青い星のキャラクターも知りません。何となく、物語のキーになるキャラクターのような意味深な描かれ方をしているように私には見えましたが、何もなく終わったので拍子抜けでした。これならいなくてよかったのでは?

 


任天堂のIP活用

本作は記録的なヒットを飛ばし、任天堂にとっては『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』のトラウマを払拭するものになりましたね。2021年にオープンしたUSJのスーパー・ニンテンドー・ワールドや、待望の映画化となった本作など、近年の任天堂は豊富なIPの積極活用を経営方針として掲げています。私は子供の頃からマリオが大好きでしたが、当時は現在のようなIP活用はあまり見られず、例えばマリオ関連のグッズなんかもほとんど見かけませんでした。今の子供達が羨ましい限りです(笑)。


宮本茂氏はしばしば「任天堂はタレント事務所」という発言をしていて、今後も様々なゲームを題材に映画化を進めていくようですから、引き続き期待したいところです。ネタは大量にありますから、後はいい脚本さえあれば、名作が続々と生まれるでしょうね。

 


その他あれこれ
  • 冒頭登場するペンギンの王の台詞、日本語訳では「今のは序の口だ」なんて言ってます。このようなファンタジーの世界で、「序の口」という相撲由来の用語を使うのはどうなの?
  • ピーチ姫はもっと頭身高めのスタイリッシュなキャラクターデザインでも良かったな。(ゲームのデザインの流用かな?)
  • クライマックスでマリオとルイージがクッパにとどめを刺す攻撃は完全にライダーキックです(笑)
  • ヨッシーが卵から孵化するポストクレジットは、某怪獣映画のラストにそっくり。

 

最後に

今回は、映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の解説&感想でした。ストーリーはシンプルながら、ゲームを想起させるアクションや音楽、ゲームファンを楽しませる小ネタ満載でたっぷり楽しめる作品でした。

 

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映画『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』解説&感想 戦うボンドガールが輝く第18作

どうも、たきじです。

 

今回は1997年公開の英米合作映画『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/ゴールデンアイ』に続く第18作です。

 


↓ 前作の解説&感想はこちら

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作品情報

タイトル:007/トゥモロー・ネバー・ダイ

原題  :Tomorrow Never Dies

製作年 :1997年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ロジャー・スポティスウッド

出演  :ピアース・ブロスナン
     ジョナサン・プライス
     ミシェル・ヨー
     テリー・ハッチャー
     ジョー・ドン・ベイカー
     リッキー・ジェイ
     ゲッツ・オットー
     デスモンド・リュウェリン
     ヴィンセント・スキャベリ
     ジョフレー・パーマー
     コリン・サーモン
     サマンサ・ボンド
     ジュディ・デンチ

上映時間:119分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作を初めて観たのは劇場公開から数年後のテレビ放送だったと記憶しているので、今回は20数年ぶりの再鑑賞ということになります。初回鑑賞時、私は本作に対してあまり好意的な印象を持たなかったのですが、今回改めて見直してみるとがらりと印象が変わりました。


本作の魅力はなんと言ってもメインのボンドガールを演じたミシェル・ヨーにあります。正直に言うと、初回鑑賞時には、私はミシェル・ヨーのボンドガールがあまり好きになれませんでした。私は子供ながらに、ボンドガールには欧米人のセクシーなお姉さんを求めていたのでしょう(笑)。それに、アジア人の中でも、ミシェル・ヨーは突出して美人というわけでもないですし、35歳という年齢もボンドガールとしては高齢です。そこにある種の違和感を覚えていたのだと思います。

 

それはそれで当時の正直な感想なのですが、時が経つと印象は変わるものです。理由の1つとして、近年のダイバーシティ重視の流れがあるでしょうね。多様な人種、年齢、外見の俳優が登場することが当たり前になった近年の映画に見慣れた結果、上記のような違和感がなくなったのでしょう。そして、その違和感を取っ払って本作を見ると、ミシェル・ヨーのなんと魅力的なことでしょう。

 

これまでもボンドと共に敵と戦うボンドガールはいましたが、ミシェル・ヨーほどバリバリにアクションをこなして、ボンドと同等に敵と戦った例はありません。彼女が切り開いたボンドガールの新境地に、私は感動すら覚えましたよ。


ミシェル・ヨーはアクション女優のパイオニアとして、その後も地道にキャリアを積み、60歳になった2023年には『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー主演女優賞に輝きます(アジア人初)。そうした彼女の後の物語を知っているがゆえに、その原点とも言える本作に、余計に感動してしまいます。本作は香港映画から世界に進出し、ミシェル・ヨーを名乗った第一作目にあたります。

 

もちろん、ジェームズ・ボンドを演じたピアース・ブロスナンも負けていません。武器取引現場を舞台にしたプレタイトル・シークエンスでは、その活躍ぶりがとにかくカッコいいですね。ボンドは、ミサイルによる核魚雷の爆発を阻止するために、核魚雷を搭載したジェット機を奪って飛び立ち、追っ手も撃退して核爆発を阻止します。このシーンでは、"群衆の視点"、すなわち遠隔でボンドの活躍を見守るMI6の視点を設けることで、そのヒロイックな活躍が強調されています。

 

中盤でも、潜入した敵のビルでのアクションでは随分と魅せてくれます。敵から身を隠してビル内を探る緊張感の中、ミシェル・ヨー演じるウェイ・リンと鉢合わせになったところで唐突にアクションが始まります。本作の音楽は全体的に過剰な印象がありますが、このシーンでのテンポの良い音楽はアクションのリズムを演出していて素晴らしかったです。


その後はパリス(『デスパレートな妻たち』のスーザンで有名なテリー・ハッチャー)の死のシーンを挟んで、今度はホテルからの脱出劇。ここでは携帯電話によるラジコン操作のボンドカーを駆使したアクション。連続するアクションはなかなかの満足度です。

 

そして本作の大きな見どころの1つは、サイゴンの敵の拠点から、ウェイ・リンと共に脱出するシークエンスでしょう。垂れ幕を利用したビルからの大ジャンプはいささかリアリティにかけるものの、それに続くバイクアクションは見事なもの。ボンドとウェイ・リンが手錠で繋がれた状況や、サイゴンの街並みもうまくアクションの味付けになっています。

 

ブロスナンは2作目にして、すっかりボンド役が板についている印象でした。第21作『カジノ・ロワイヤル』でブロスナンの後任としてダニエル・クレイグがボンド役に就任することが決まった際には、クレイグに否定的な意見が湧き上がりましたが、それもブロスナンのボンドのイメージが鮮烈であったからこそだと理解できますね。


まあ、クレイグは実力で否定的な意見を吹き飛ばし、映画公開後には多くの人が手のひらを返したわけですけど(笑)。私自身、クレイグのボンドが一番好きではありますが、今回シリーズを第1作から通して観てみて、ボンド俳優一人ひとりに、それぞれの魅力があるのをひしひしと感じました。

 

さて、本作の悪役はメディア王のカーヴァー。彼の陰謀は、イギリスと中国に戦争させ、そのスクープを独占すると共に中国における放送権を得ること。やっていることがリスク高すぎじゃないかと思ったのは私だけでしょうか?もともとアウトロー稼業の悪役とは違い合法的な手段でも十分に稼げそうなメディア王が、イデオロギーや復讐の類ではなく、"利益"を目的としてそのようなリスクを冒すことに違和感がありました。


また、カーヴァーはなかなかキャラの濃い悪役ではありますが、個人的にはあまり魅力的に映りませんでした。演じるジョナサン・プライスはうまい役者ではありますが、ビジュアル的に面白みがないというか。

 

さて、最後に野暮なツッコミを。ボンドが行く先々にウェイ・リンがいるのはご都合主義じゃないですか?ボンドがパリスの協力を得て潜入するビルや、CIAの協力を得て潜入する沈没船に、自力で辿り着いているウェイ・リンはどんだけ有能なエージェントなのかと(笑)。敵も敵で、沈没船の上方の海上でしっかり2人を待ち受けているし…。

 

最後に

今回は映画『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』の解説&感想でした。ストーリー、キャラクター、ガジェットなどでこれまでの007らしさをしっかり演出しつつ、これまでにない戦うボンドガールの魅力が際立った作品でした。個人的には、シリーズの中でもなかなか好きな一本です。

 

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映画『007/ゴールデンアイ』解説&感想 シリーズの大きな転換点の第17作

どうも、たきじです。

 

今回は1995年公開の英米合作映画『007/ゴールデンアイ』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/消されたライセンス』に続く第17作です。

 

 

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作品情報

タイトル:007/ゴールデンアイ

原題  :GoldenEye

製作年 :1995年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :マーティン・キャンベル

出演  :ピアース・ブロスナン
     ショーン・ビーン
     イザベラ・スコルプコ
     ファムケ・ヤンセン
     ジョー・ドン・ベイカー
     ロビー・コルトレーン
     チェッキー・カリョ
     ゴットフリード・ジョン
     アラン・カミング
     マイケル・キッチン
     セレーナ・ゴードン
     デスモンド・リュウェリン
     サマンサ・ボンド
     ジュディ・デンチ
上映時間:130分

 

解説&感想(ネタバレあり)

5代目ジェームズ・ボンドの登場

前作から6年を経て公開された本作。それまではほぼ1〜2年ごとに公開されてきたシリーズとしては、かなり長いインターバルと言えます。このインターバルを挟み、本作ではシリーズとして大きな転換を図っています。


まず、ジェームズ・ボンド役は、前2作で演じたティモシー・ダルトンに代わり、5代目となるピアース・ブロスナンが演じています。


映画序盤、カジノでウォッカ・マティーニを注文して「ボンド、ジェームズ・ボンド」と名乗るなど、早速、ボンドのお約束をコンボで決めています(笑)。


私の主観も入りますが、ブロスナンはこれまでのボンド俳優の中でも特にハンサムでスタイルもよく、その佇まいやアクションのキレも含め、シンプルにカッコいいのが特徴でしょう。シーンの最後などでの一言ユーモアも多いですね。一作目にして、すでに独自のボンド像が出来上がっている印象です。


ただ、かつての同僚であり友人であったアレックが敵だったことに思い悩む描写は不要かな。その辺のドラマがそこまで掘り下げられている印象は受けないので、夕暮れのビーチで物思いにふけるシーンなんかも取ってつけたように感じられます。このシーンは、ボンドガールの水着をお披露目する意図もあるのかもしれませんが(笑)。

 

冷戦終結がもたらした変化

また、本作ではMI6のメンバーもボンドと共に変更されています。M役は前作まで4作で演じたロバート・ブラウンからジュディ・デンチに、マネーペニー役は前2作で演じたキャロライン・ブリスからサマンサ・ボンドに代わっています。そんな中でQだけは第2作から演じ続けているデズモンド・リュウェリンが続投です。


役者のみならず、MI6のシーンの描かれ方も随分と変化しています。これまでは、Mの執務室のような場所でボンドが任務を引き受けるのが常(入口でのマネーペニーとの会話を含め)でしたが、本作ではやけに近代的な作戦室のような場所が舞台となり対応を巡る議論も含めて描かれます。


また、Mはとにかく数字を重視し、プロの勘に頼る諜報部員との間に確執めいたものが示唆されるなど、これまでになかったドラマ的要素も含んでいます(特段深掘りされることはありませんでしたが)。


こうした種々の変更は、第1作からシリーズをプロデュースしてきたアルバート・R・ブロッコリが退任したことも大きいでしょう。が、もう一つ忘れてはならないのが、前作公開後に冷戦が終結したことです。


これまでのシリーズは、冷戦がストーリーの根底にあり続けました。そして、そうした世界情勢の中にジェームズ・ボンドら諜報部員の大きな存在意義があり、その活躍がありました。


ボンドに対するMの「あなたは女性蔑視の太古の恐竜で冷戦の遺物」という台詞や、米CIAのウェイドの「この時代にまだ合言葉ごっこか」という台詞にも、時代の変化に対する意識が伺えます。


冷戦の終結という、大きな時代の変化を踏まえ、作品の在り方を見直すというのは極めて自然な流れと言えます。一方で、こうした変化は作品の色を変えてしまい、007らしさがいくらか失われる面もあります。

 

変わらないQ

上述のようなシリーズの変化にいくらかの寂しさもある中で、これまでと変わらずに登場するQと彼の研究所の描写には嬉しくなりますね。研究所のシーンはいずれの作品でもユーモアたっぷりに描かれますが、本作には最も笑わされました。


シーン冒頭では、車椅子で登場するQ。足にはギプスを装着しています。ボンドは骨折かと心配しますが、ギプスからはロケット弾が発射されます。


シーン最後には、ボンドがサンドイッチを見つけます。研究所にあるものはあんなものからこんなものまでカムフラージュされた兵器。ボンドはサンドイッチを手に取り興味深そうに見つめますが、Qはそれを奪い取り一言。「私の昼食だ!」


いずれも声を出して笑ってしまいました(笑)。全編にわたってコミカルなシーンを散りばめるよりも、シリアスを基調にこういうコミカルなシーンをポイントで挿入する方が、私は好きです。

 

アクションは平凡

本作では撮影や編集といったアクションシーンの見せ方という点においても、90年代らしくアップデートされています。とは言え、全体としてさほど興奮するようなものではなく、平凡な印象を受けました。


記憶に残ったのは、ボンドが敵の車を戦車で追いかけるシーンくらいでしょうか。やや荒唐無稽ではありますが、なかなかユニークで、007らしいといえばらしいです。

 

その他のキャラクター

さて、本作のメインのボンドガールはイザベラ・スコルプコ演じるナターリア。ITエンジニアとしてコンピュータを操りボンドを助けるなど活躍を見せますが、そこまで印象には残りませんでした。


一方、敵側のボンドガールのオナトップは強烈な印象を残します。まあ、印象に残るだけで、魅力的なキャラクターとは思いませんけど。演じるファムケ・ヤンセンは明らかにオーバーアクト。あのベッドシーンはなんなのよ(笑)。


本作の悪役はアレック。ボンドの元同僚で006だった男が敵になるというのはなかなかユニークな展開でした。演じるのは『ロード・オブ・ザ・リング』のボロミア役で有名なショーン・ビーン


また、本作にはCIAのウェイドというキャラクターが登場します。ボンドに協力するCIAという役柄はこれまでの作品ではフェリックス・ライターが担っていました。フェリックスを出さなかったのは、前作と本作の連続性を曖昧にするためでしょうか?フェリックスは前作で脚を失っていますらかね。


ちなみにウェイドを演じたジョー・ドン・ベイカーは第15作『リビング・デイライツ』では悪役を演じていました。本シリーズでは、同じ役者が違う役を演じるケースが時々あります。第5作『007は二度死ぬ』でボンドの協力者を演じたチャールズ・グレイが第7作『ダイヤモンドは永遠に』で敵のボスのブロフェルドを演じていたり。


さて、最後に付け加えて言えば、クラブで歌っている歌手の役で、デビュー間もない頃のミニードライヴァーが出演しているのも注目ポイント。前作ではデビュー間もないベニチオ・デル・トロが出演していましたね。デル・トロが敵の殺し屋の役で出演シーンも多かったのに対し、ドライヴァーはほんの1シーンの出演。そんな彼女が2年後には『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でアカデミー助演女優賞にノミネートされるわけですから、すごいスピード出世ですね。

 

最後に

今回は映画『007/ゴールデンアイ』の解説&感想でした。俳優陣や演出に大きな変化が見られ、シリーズの大きな転換点となった本作。アクションは平凡で、ストーリーや演出も特別ワクワクするものではありませんでした。一方で、5代目ジェームズ・ボンドに就任したピアース・ブロスナンの魅力は十分に感じられる作品でした。

 

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映画『007』シリーズのレビューまとめ

スパイ映画シリーズの草分けとも言える007シリーズ。当ブログでも、本シリーズ作品のレビュー記事(解説&感想)を多数アップしてきました。

 

そこで、今回は007シリーズの映画のレビューをまとめたいと思います(本ページではネタバレなしで記載します。ネタバレありの解説&感想はリンク先の個別記事をご覧ください)。

 

007シリーズについて

007シリーズは、イギリスの諜報機関MI6のエージェントであるジェームズ・ボンドを主人公とした、イアン・フレミングの小説群を原作とした映画シリーズです(ただし、後期の作品の多くは小説に基づかないオリジナル脚本)。


1962年の第1作『ドクター・ノオ』でショーン・コネリーがジェームズ・ボンドを演じたのを皮切りに、ダニエル・クレイグまで6人の俳優がジェームズ・ボンドを演じてきました。冷戦の終結に代表される国際情勢や社会的変化を踏まえて、作風やボンドのキャラクターも変化しながら、長年にわたって人々を魅了しています。


個性的な悪役、その悪役達による国際的な陰謀、ボンドガールと呼ばれるヒロイン、多彩なアクション、ユニークなガジェット、胸踊るテーマ曲など、シリーズに共通する魅力的な要素によって、独自のスタイルを確立しています。

 

作品レビュー

本ページでは、007の映画作品を対象とします。したがって、1954年のテレビドラマ『カジノ・ロワイヤル』は除外します。また、1967年の映画『カジノ・ロワイヤル』は、パロディ的な位置付けのコメディ映画のため除外します。

 

(1) 007/ドクター・ノオ(1962)

My評価: ☆☆☆☆☆☆★★★★

アメリカのロケット発射を失敗させようとするドクター・ノオの陰謀にボンドが挑む第1作。今となってはストーリー構成もアクションも平凡。見ていて退屈するわけではないのですが、ワクワクもしません。本作の唯一の価値は、大人気シリーズの第1作である点と言わざるを得ません。

 

(2) 007/ロシアより愛をこめて(1963)

My評価: ☆☆☆☆☆☆☆★★★

ボンドへの復讐を謀る犯罪組織スペクターにボンドが対峙する第2作。スペクターからの刺客の存在がもたらす緊張感、ボンドガールの魅力、Qの提供するガジェット、クライマックスの畳みかけと、あらゆる点で前作を大きく上回る満足度の作品。

 

(3) 007/ゴールドフィンガー(1964)

My評価: ☆☆☆☆☆☆★★★★

大富豪ゴールドフィンガーの陰謀にボンドが立ち向かう第3作。登場人物、ガジェット、演出など、全体的に奇想天外。ある意味ではエンターテインメント性を高めたとも言えますが、リアリティは無視してネタに走った印象の強い作品。

 

(4) 007/サンダーボール作戦(1965)

My評価: ☆☆☆☆☆☆★★★★

再び犯罪組織スペクターを敵に据えた第4作。奇想天外な前作とは違って現実路線に戻りボンドの安定した活躍を楽しめます。何よりボンドガールのクローディーヌ・オージェの魅力が強い印象を残す作品。

 

(5) 007は二度死ぬ(1967)

My評価: ☆☆☆☆☆★★★★★

日本を舞台に、ボンドがスペクターの陰謀と戦う第5作。トンデモな日本描写や、シリーズ中でも抜きんでて荒唐無稽な内容を受け入れられるかどうかで評価の分かれる作品。シリーズ中、唯一イギリス本土のシーンがない異色作です。

 

(6) 女王陛下の007(1969)

My評価: ☆☆☆☆☆★★★★★

ボンドが犯罪組織スペクターの首領ブロフェルドと対峙する第6作。ジョージ・レーゼンビーがジェームズ・ボンドを演じた唯一の作品にして、ロマンス要素が強めの異色の作品。現実路線には好感を持ちつつも、個人的にはドラマもアクションも物足りない一作です。

 

(7) 007/ダイヤモンドは永遠に(1971)

My評価: ☆☆☆☆☆☆★★★★

ダイヤモンドの密輸事件を捜査するボンドが、その背後に潜む陰謀に対峙する第7作。ボンド役に復帰したショーン・コネリーを始めとして、舞台設定やキーアイテムなど、シリーズにおいて非常に華やかな作品。ストーリーも見どころ十分で、シリーズ初期の作品の中では個人的にそこそこ好きな作品です。

 

(8) 007/死ぬのは奴らだ(1973)

My評価: ☆☆☆☆★★★★★★

イギリスの諜報部員が3人殺害された事件を追うボンドがブードゥー教の闇と対峙する第8作。3代目ジェームズ・ボンドに就任したロジャー・ムーアが就任し、コミカルな要素が高められています。見どころはそれなりにあるものの、冗長なシーンも少なくない作品です。

 

(9) 007/黄金銃を持つ男(1974)

My評価: ☆☆☆☆☆★★★★★

 ボンドが黄金銃を持つ殺し屋スカラマンガと対決する第9作。ロジャー・ムーアがジェームズ・ボンドを演じた作品の中でも際立ってコミカルな要素やツッコミどころが満載の本作。その辺を好意的に受け止められるかで評価が分かれるところでしょう。

 

(10) 007/私を愛したスパイ(1977)

My評価: ☆☆☆☆☆☆★★★★

英ソ両国の原潜が消息を断ち、ボンドがソ連の女スパイと競り合いながら、そしてやがては協力しながら真相を追う第10作。これまでにないくらいに派手になったアクションシーンが楽しい作品。ルイス・ギルバート監督にしては荒唐無稽さが抑えられているのも好感。

 

(11) 007/ムーンレイカー(1979)

My評価: ☆☆☆☆★★★★★★

宇宙船ムーンレイカーがハイジャックされた事件を追って、ボンドが宇宙に飛び出す第11作。オープニングは傑出した出来栄えながら、脚本のご都合主義と荒唐無稽なところが目立つ作品。コメディ映画と割り切って見れば、結構面白い?

 

(12) 007/ユア・アイズ・オンリー(1981)

My評価: ☆☆☆☆☆★★★★★

英国のミサイル誘導装置を奪わんとするソ連の企みにボンドが挑む第12作。荒唐無稽だった前作とは打って変わっての現実路線で、アクションの見せ場もそれなり。ただ、尻すぼみな印象があるのが残念なところです。

 

(13) 007/オクトパシー(1983)

My評価: ☆☆☆☆☆☆★★★★

オクトパシー率いる宝石窃盗団と、その背後に隠された陰謀にボンドが挑む第13作。いくらかの興奮と、いくらかの荒唐無稽さと、いくらかの笑い。007としてはある意味で平均的な作品と言えるかもしれません。

 

(14) 007/美しき獲物たち(1985)

My評価: ☆☆☆☆☆☆☆★★★

ボンドが半導体メーカーの社長ゾリンの陰謀に立ち向かう第14作。シリアス路線のストーリーで、アクションも見どころ十分。ロジャー・ムーアによるジェームズ・ボンドの集大成として、有終の美を飾ったと言える作品。

 

(15) 007/リビング・デイライツ(1987)

My評価: ☆☆☆☆☆★★★★★

ボンドがKGBや武器商人が絡む陰謀に立ち向かう第15作。ティモシー・ダルトンが4代目ジェームズ・ボンドに就任。シリアス路線の比較的真面目なボンド像は肯定的に捉えているものの、ストーリーが弱く、あまり満足度は高くない作品。

 

(16) 007/消されたライセンス(1989)

My評価: ☆☆☆☆☆☆☆★★★

友の復讐のため、ボンドが本来の任務を放棄して敵を追う異色の第16作。あまり評価された作品ではないものの、個人的にはなかなか出来のいい作品だと思っています。そろそろ見直されてもいいと思う作品です。

 

(17) 007/ゴールデンアイ(1995)

My評価: ☆☆☆☆☆☆★★★★

ボンドがロシアの犯罪組織ヤヌスの陰謀に立ち向かう第17作。俳優陣や演出に大きな変化が見られ、シリーズの大きな転換点となった作品。ストーリーやアクションは平凡ですが、5代目ジェームズ・ボンドに就任したピアース・ブロスナンの魅力は十分に感じられます。

 

(18) 007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)

My評価: ☆☆☆☆☆☆☆★★★

ボンドがメディア王の巨大な陰謀に立ち向かう第18作。これまでの007らしさをしっかり演出しつつ、ミシェル・ヨー演じる戦うボンドガールのこれまでにない魅力が際立った作品。個人的には、シリーズの中でもなかなか好きな一本です。

 

(19) 007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)

My評価: ☆☆☆☆☆★★★★★

ボンドが元KGBのテロリストと対峙する第19作。全体的に、退屈こそしませんが、特筆するような素晴らしい点はあまり見られない作品。オープニングは素晴らしいですが、それがピークです。

 

(20) 007/ダイ・アナザー・デイ(2002)

My評価: ☆☆☆☆☆☆★★★★

ボンドがダイヤモンド王の恐るべき陰謀に立ち向かう第20作。シリーズとしては久々に荒唐無稽な方に振れた作品になっている印象。そこを許容できるかどうかで評価が分かれそうな作品です。

 

(21) 007/カジノ・ロワイヤル(2006)

My評価: ☆☆☆☆☆☆☆☆★★

殺しのライセンスを得て007となったボンドが、爆破テロ計画とその背後にあるテロ組織に迫るリブート第1作。独自のボンド像を作り上げ、前評判を実力で覆した6代目ボンドのダニエル・クレイグのカッコ良さ、多様なアクション、サスペンス、ドラマ性と、非常に見どころの多い作品。

 

(22) 007/慰めの報酬(2008)

My評価: ☆☆☆☆☆☆★★★★

復讐心にかられたボンドが、前作に続いて組織を探るリブート第2作。アクションシーンやドラマ性にはそれなりの見どころがあるものの、全体としては脚本のぎこちなさに不満の残る作品。リブートされた新シリーズとしては最もクオリティの低い作品という印象です。

 

(23) 007/スカイフォール(2012)

My評価: ☆☆☆☆☆☆☆☆★★

 〜準備中〜

 

(24) 007/スペクター(2015)

My評価: ☆☆☆☆☆☆☆★★★

 〜準備中〜

 

(25) 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)

My評価: ☆☆☆☆☆☆☆★★★

 〜準備中〜

 

(番外) ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)

My評価: ☆☆☆☆★★★★★★

シリーズを製作しているイーオン・プロダクションズが関与しておらず、本家007シリーズとは無関係の番外編的な作品(本家の第4作『サンダーボール作戦』と同じ原案)。本家の初代ボンドであるショーン・コネリーのボンドが再び楽しめるのはいいものの、クオリティは本家に大きく水をあけられた印象。全体の作風も本家とあまり変わらない劣化版007。

 

Myランキング

1. 007/スカイフォール
2. 007/カジノ・ロワイヤル
3. 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
4. 007/スペクター
5. 007/トゥモロー・ネバー・ダイ
6. 007/消されたライセンス
7. 007/ロシアより愛をこめて
8. 007/美しき獲物たち
9. 007/慰めの報酬
10. 007/ダイヤモンドは永遠に

 

最後に

今回は007シリーズのレビューをまとめさせていただきました。「My評価」が全体的に低めであることからも分かるように、私自身は、007シリーズが特別好きというわけではありません。ただ、今回改めてシリーズ通して作品を鑑賞してみると、やはりシリーズとしての魅力は多分に感じます。


6人のボンド俳優にはそれぞれの魅力がありますし、シリーズ通してのお約束の数々も毎度楽しませてくれます。今回はどんな悪役だろう、どんなボンドガールだろう、どんなガジェットが登場するだろう、と言った楽しみもあります。作品自体は今ひとつであっても、「時間を無駄にした」とは感じないのは、シリーズとして楽しめているからでしょう。ぜひ今後も続いて欲しいと思います。

 

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映画『007/消されたライセンス』解説&感想 ボンドが復讐に燃える異色の第16作

どうも、たきじです。

 

今回は1989年公開の英米合作映画『007/消されたライセンス』の解説&感想です。007シリーズとしては、前作『007/リビング・デイライツ』に続く第16作です。

 

 

↓ 前作の解説&感想はこちら

↓ その他のシリーズ作品の解説&感想はこちらから(各作品へのリンクあり)

 

 

作品情報

タイトル:007/消されたライセンス

原題  :Licence to Kill

製作年 :1989年

製作国 :イギリス、アメリカ

監督  :ジョン・グレン

出演  :ティモシー・ダルトン
     キャリー・ローウェル
     ロバート・デヴィ
     タリサ・ソト
     ベニチオ・デル・トロ
     アンソニー・ザーブ
     エヴェレット・マッギル
     フランク・マクレー
     デヴィッド・ヘディソン
     ロバート・ブラウン
     デスモンド・リュウェリン
     キャロライン・ブリス

上映時間:133分

 

解説&感想(ネタバレあり)

本作はシリーズの中でもかなりの異色作。


シリーズでも度々登場し、ボンドに協力してきたCIAのフェリックス・ライターが、本作の冒頭で結婚します。シリーズの主要キャラに、結婚という大きなステータス変更がなされることにもいくらかの驚きがありましたが、驚きはそれにとどまりません。


なんとフェリックスは妻を悪役に殺されてしまった上に、フェリックス本人も鮫の水槽に落とされて片脚を失ってしまいます。この唐突なヘビーな展開には驚かされました。シリーズのこれまでの悪役たちも大勢の人を殺す大悪人には変わりないですが、こうも生々しく、その残忍さが描かれることはなかったですからね。

 


こうして敵の残忍さが強調されたのは、本作がボンドによる復讐劇の形式をとっているからでしょう。本作のボンドは、友人であるフェリックスの復讐のため、本来の任務そっちのけで敵に対します。それ故に、殺しのライセンスを取り消されてしまうのです。これはかなり異色のストーリーと言えるでしょう。


ボンドが感情を露わにし、復讐に燃える姿は、ティモシー・ダルトンによるシリアスなボンドだからこそ親和性があります。公開当時はダルトン主演の007はあまり受け入れられませんでしたが、これはロジャー・ムーア主演のコミカルな007とのギャップによるところも大きいと思われます。「こんなの007じゃない」というわけですね。


しかし、後のダニエル・クレイグのボンドだったり、アメコミ原作の映画がそうであったりするように、近年の映画はなんでもシリアス路線で描かれることが多くなっています。それを踏まえれば、ダルトンの007も再評価されてもいい頃かなと思ったりします。

 


私自身は本作を気に入っていて、シリーズの中では好きな作品の一つ。


もともとシリアス路線の方が好きですし、上述のようにストーリーはこれまでとは違い新鮮さがあります。殺しのライセンスを失っているボンドが私情のために敵を殺すことの是非は置いておいて、まあ復讐ものは観ているこちらも気持ちが入ってしまうのが人間の性というものでしょう。フェリックス夫妻から贈られたライターで敵にとどめを刺すラストではどうしても気持ちが昂ってしまいます。


アクションシーンも要所要所でしっかり見せてくれますね。特に中盤、ボンドが敵の船に潜入した後のシークエンスでは、水中、水上、空中へと場所を移しながら、迫力と緊迫感をに満ちたアクションが素晴らしいです。


また、ボンドは単に武力を使うだけでなく、うまく敵の懐に入り、敵を欺いていくという展開も面白いところ。黒澤明監督の『用心棒』などとも共通のする面白さです。

 


メインのボンドガールのパム(キャリー・ローウェル)も、個人的には歴代ボンドガールの中でも上位に入るくらい好き。勝気な性格でボンドと共に戦うのもいいですし、何より美しくてエレガントで素敵です。


そして、本作ではQの登場シーンが多いのも面白いところ。本作では、ボンドは任務とは関係ない行動をとっているわけですが、マネーペニーの計らいによって、休暇中のQがボンドの元に赴きます。いつもなら様々なガジェットを提供して終わるところ、本作ではずっと残ってボンドに協力します。


運転手、水先案内人、清掃員と姿を変えて現れるQはコメディリリーフとして絶妙な塩梅で機能しています。ほうきにカムフラージュしたトランシーバーを使い捨てのように投げ捨てる様子には笑ってしまいました。


さて、最後に付け加えて言えば、敵の殺し屋ダリオ役で、デビュー間もない頃のベニチオ・デル・トロが出演しているのも注目ポイント。若かりし頃のフレッシュな姿を見ることができます。彼がアカデミー助演男優賞を受賞することになる『トラフィック』に出演するのは本作から11年後のことになります。

 

最後に

今回は映画『007/消されたライセンス』の解説&感想でした。あまり評価された作品ではないものの、個人的にはなかなか出来のいい作品だと思っています。007好きなら見ておいて損はない異色作です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!!

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映画『裏窓』解説&感想 絶妙な設定とストーリーで魅せるヒッチコックの傑作サスペンス

どうも、たきじです。

 

今回は1954年公開のアメリカ映画『裏窓』の解説&感想です。サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の代表作の一つです。

 

youtu.be

 

作品情報

タイトル:裏窓

原題  :Rear Window

製作年 :1954年

製作国 :アメリカ

監督  :アルフレッド・ヒッチコック

出演  :ジェームズ・ステュアート
     グレース・ケリー 
     ウェンデル・コーリイ
     セルマ・リッター
     レイモンド・バー

上映時間:112分

 

解説&感想(ネタバレあり)

カメラマンのジェフ(ジェームズ・ステュアート)は事故に遭って車椅子生活中。外出もままならず、できることと言えば裏窓から向かいのアパートの住人たちを覗き見ることくらい。エアコンが普及していない時代、夏場はどの家も窓を開け放しているのです。


向かいのアパートの部屋の一つに暮らす夫婦は、セールスマンの男ソーワルドと寝たきりの妻。喧嘩の絶えない2人です。ある夜、ジェフは裏庭の方から女性の悲鳴を聞きます。そして、ソーワルドが真夜中に大きなトランクを持って何度も外出するのを目撃します。翌朝になっても妻の部屋はブラインドが下りたまま。やがて、ジェフは男が大きな刃物を片付けているのを目撃し…。


この設定、このあらすじを聞くだけでワクワクしますよね。しかもサスペンス映画を撮らせたら右に出る者がいないアルフレッド・ヒッチコック監督が演出するのですから。ヒッチコック監督の作品は数多く見ていますが、本作はその中でもトップクラスに好きな作品の一つです。

 


映画は、ジェフのいる部屋から窓枠越しに裏庭の風景を写したショットから始まります。視点は前方に進み、やがて窓枠がフレームアウト。そのまま裏庭に出るのかと思いきや、カメラは窓を出ずに止まります。


まるで、本作においてはカメラが窓の外に出ないという宣言のようですね。そうです。本作では、カメラはジェフのいる部屋から出ないのです。唯一の例外はクライマックスでジェフが窓の外に落とされるシーン。ジェフが外に出ればカメラは外に出るというわけですね。本作はジェフの主観で綴られる物語ですから。


冒頭、ジェフの部屋を映すカメラワークもいいんですよ。汗をかいて眠るジェフの姿、ギプスをはめた足、壊れたカメラ、クラッシュして画面に向かって飛んでくるレーシングカーの写真…。ジェフはカメラマンであり、カーレースの撮影で事故に巻き込まれて足を怪我したという映画の背景が、流れるようなカメラワークで映し出されます。もちろん後の会話がそれを補足するわけですが、このような映像による背景説明はとても映画的で好きです。


そして、向かいのアパートの人々の人間模様の描写。ここでも映像で簡潔に登場人物を紹介。ベランダで眠る夫婦、若いバレリーナ、作曲家の男、喧嘩の絶えない夫婦、新婚の夫婦、空想の恋人と酒を交わす"ミス・ロンリーハート"——。これらによって物語がうまく味付けされています。

 

序盤では、下着姿で踊るバレリーナやイチャつく新婚カップルなど、やや扇情的な描写が印象的。それらが、自由に身動きの取れないジェフの悶々とした感情を掻き立てるようで面白いところです。まあ、観客がジェフに抱くシンパシーは、圧倒的な魅力を放つグレース・ケリーがジェフの恋人リザとして登場することですべて吹き飛ぶわけですけど(笑)。

 


こうして、まだ何も起きていない映画冒頭からぐっと観客の心を掴むわけですが、"事件"が起きてからはさらに面白くなっていきます。上述のように、ソーワルドの部屋に起こる異変、ソーワルドの不可解な行動、それらを遠くから覗くという状況にはゾクゾクさせられます。死体や血といった直接的な描写を用いずとも、このサスペンスを演出するのはヒッチコックらしいところですね。


ソーワルドの妻殺しは、刑事のドイルから徹底的に否定され、一時はジェフ達の思い込みかのように展開してきます。そこから、向かいの夫婦の飼っている犬が殺されることで一気にストーリーが反転し、クライマックスに向けて加速していきます。


人々が犬の飼い主の悲鳴に反応して窓から顔を出す中、ソーワルドは真っ暗な部屋に篭ったまま、タバコの火だけが浮かび上がるなんて、見事な演出です。


クライマックスでは、ジェフが身動きを取れないという設定が最大限生かされています。


リザがソーワルドの部屋に忍び込むのはそれだけでもスリリングですが、そこにソーワルドが帰宅するという一展開。リザに危険が迫っていてもどうにもできないという状況が、サスペンスを盛り上げています。


警察を呼ぶことで何とか危機を脱しますが、リザがジェフに送ったジェスチャーによって、ジェフの存在がソーワルドにばれてしまいます。ソーワルドと目が合う瞬間は心底ドキッとしますね。ここまではジェフが一方的に人々を観察していたわけですが、ここで初めてジェフ(=我々観客)に視線が向けられるわけですからね。


そして最後にはジェフの部屋に乗り込んでくるソーワルド。ここまでの"静"の恐怖に対し、最後は"動"の恐怖でうまく物語を締めています。カメラのフラッシュで応戦する様子はやや間延びした印象はありましたけど。

 


さて、上述の通り、人々の人間模様の描写が本作の物語をうまく味付けしているわけですが、そうした人々が時にメインのストーリーに絡んでいくのもうまいところ。例えば、上述の犬もそうですし、リザがソーワルドと鉢合わせしてしまうシーンにおけるミス・ロンリーハートもそう(ジェフとステラはミス・ロンリーハートの様子に目を奪われたことでソーワルドの帰宅を見逃してしまう)。


また、人々の人間模様は、映画のエピローグでもうまく描かれています。作曲家の男は初めてのレコードが完成、傍にはミス・ロンリーハートの姿、犬を失った夫婦の元には新しい犬の姿、バレリーナの元には恋人と見られる男の姿。それぞれのその後が描かれ、映画にいい余韻を残します。


一方、ジェフの部屋にはのんびりくつろぐリザの姿があり、ジェフが彼女と別れることなく、関係を前に進めることが示唆されています。が、こちらは足のギプスが両足になっているというユーモアが勝るオチですね(笑)。

 

最後に

今回は映画『裏窓』の解説&感想でした。絶妙な設定とストーリーにヒッチコック演出が加わったサスペンス映画の傑作。何度見ても面白い作品です。


なお、ヒッチコック作品では、必ずと言っていいほどヒッチコック監督がカメオ出演します。本作では、作曲家の部屋で時計のネジを巻いているヒッチコックを見ることができます。

 

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